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第一話『きみ、異世界転生って知ってるかね?』
その2 かみさまとの出会い
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★貴方の隣で呼吸がしたい。 第一話『きみ、異世界転生って知ってるかね?』その2 かみさまとの出会い
それは、私、京極千歳がまだ学生の頃の話だ。
十年ほど、前になるだろうか。
当時、教職を志して――実際、教師になったわけだが、教育大学に通っていた私は、その日もいつも通りに淡々と日常を過ごしていた。
朝起きて、身支度を整えて、家を出て。
私らしくもなく少し寝坊をしたから、なるべく遅れないように、高校の時から使っている駅までの近道を使った。
そこは、当時は何か大規模な工事現場の傍にあった。
あまり人が訪れないような場所で、混雑もなく、道も短く、ショートカットには丁度良かったのだ。
そんな、日常の中。
「きみ、この道はもう、通らない方がいいよ」
彼は、現れた。
黒髪、全てを見透かすかのような澄んだ灰色の瞳。
小学生くらいの、どこか神秘的な雰囲気を纏った冗談みたいな美少年が、私の前に立ち塞がっていた。
私と目が合うと、少年はひどく愉快そうに、人懐っこい笑みを浮かべた。
こんな子どもにいきなり声をかけられても、私は上手い対処法を知らない。
教職志望失格だと思われるかもしれないが、あまりにも幼すぎる子どもとの接し方は、良くわからなかったのだ。
「……そうですか。ご忠告、どうも」
だから、私は淡々と、素っ気なく彼にそう返して、すたすたと早足で彼の横を通り過ぎた。
早く大学に行かなければ、講義に遅れてしまう。
「この忠告は、聞いておいた方がいいよ」
それでも彼は、私の背中に声をぶつけてきた。
訝しげに私が振り返ると、彼は得意気に笑った。
「――なんたって、おれは、『神様』だからね」
何だ、子どもの戯言か。
馬鹿馬鹿しい。
私はそう息をついて、今度は完全に少年を無視して、大学に向かった。
その間も、ずっと、刺さるような視線が背中に向けられていた気がした。
この時の彼の忠告を覚えておかなかったことを、私はずっと、後悔している。
○
その日は教授に雑用を言い渡されて、帰りが少し遅くなった。
朝に不思議な少年と出会ったことなんて記憶から抜け落ちているくらいには、忙しい一日だった。
早く帰って、課題を片付けてしまわなければ。
そう思って暗い空の下、いつもの『近道』を私は通った。
その時、ひゅっと風を切るような音が、上から聞こえた。
何だ、と上を見上げると、近くの工事現場から鉄骨がこちらに落ちて来るのが見えて。
どうやら人間は、本当に危機的状況に陥った時、固まってしまうらしい。
呆然と立ち尽くすことしかできない私に、後ろからどん、と衝撃が遅いかかった。
誰かに、突き飛ばされたのだ、それも、力いっぱい。
不意打ちの出来事に、倒れ込みそうな程にふらついた頃、轟音が響いた。
鉄骨が地面に衝突した音だった。
反射的に振り返って、私は目を見開き、息を呑んだ。
そこには、朝出会ったあの少年が居た。
少年は倒れていた、少年の片足が、鉄骨で潰れていた。
それでも。
――それでも彼は、愉しそうに私に笑いかけて、言った。
「――だから、言ったじゃないか」
これが、私が一人の少年から未来を奪ってしまった日。
大罪を犯した日。
―― 神前 聖という、『神様』に出会った日だ。
それは、私、京極千歳がまだ学生の頃の話だ。
十年ほど、前になるだろうか。
当時、教職を志して――実際、教師になったわけだが、教育大学に通っていた私は、その日もいつも通りに淡々と日常を過ごしていた。
朝起きて、身支度を整えて、家を出て。
私らしくもなく少し寝坊をしたから、なるべく遅れないように、高校の時から使っている駅までの近道を使った。
そこは、当時は何か大規模な工事現場の傍にあった。
あまり人が訪れないような場所で、混雑もなく、道も短く、ショートカットには丁度良かったのだ。
そんな、日常の中。
「きみ、この道はもう、通らない方がいいよ」
彼は、現れた。
黒髪、全てを見透かすかのような澄んだ灰色の瞳。
小学生くらいの、どこか神秘的な雰囲気を纏った冗談みたいな美少年が、私の前に立ち塞がっていた。
私と目が合うと、少年はひどく愉快そうに、人懐っこい笑みを浮かべた。
こんな子どもにいきなり声をかけられても、私は上手い対処法を知らない。
教職志望失格だと思われるかもしれないが、あまりにも幼すぎる子どもとの接し方は、良くわからなかったのだ。
「……そうですか。ご忠告、どうも」
だから、私は淡々と、素っ気なく彼にそう返して、すたすたと早足で彼の横を通り過ぎた。
早く大学に行かなければ、講義に遅れてしまう。
「この忠告は、聞いておいた方がいいよ」
それでも彼は、私の背中に声をぶつけてきた。
訝しげに私が振り返ると、彼は得意気に笑った。
「――なんたって、おれは、『神様』だからね」
何だ、子どもの戯言か。
馬鹿馬鹿しい。
私はそう息をついて、今度は完全に少年を無視して、大学に向かった。
その間も、ずっと、刺さるような視線が背中に向けられていた気がした。
この時の彼の忠告を覚えておかなかったことを、私はずっと、後悔している。
○
その日は教授に雑用を言い渡されて、帰りが少し遅くなった。
朝に不思議な少年と出会ったことなんて記憶から抜け落ちているくらいには、忙しい一日だった。
早く帰って、課題を片付けてしまわなければ。
そう思って暗い空の下、いつもの『近道』を私は通った。
その時、ひゅっと風を切るような音が、上から聞こえた。
何だ、と上を見上げると、近くの工事現場から鉄骨がこちらに落ちて来るのが見えて。
どうやら人間は、本当に危機的状況に陥った時、固まってしまうらしい。
呆然と立ち尽くすことしかできない私に、後ろからどん、と衝撃が遅いかかった。
誰かに、突き飛ばされたのだ、それも、力いっぱい。
不意打ちの出来事に、倒れ込みそうな程にふらついた頃、轟音が響いた。
鉄骨が地面に衝突した音だった。
反射的に振り返って、私は目を見開き、息を呑んだ。
そこには、朝出会ったあの少年が居た。
少年は倒れていた、少年の片足が、鉄骨で潰れていた。
それでも。
――それでも彼は、愉しそうに私に笑いかけて、言った。
「――だから、言ったじゃないか」
これが、私が一人の少年から未来を奪ってしまった日。
大罪を犯した日。
―― 神前 聖という、『神様』に出会った日だ。
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