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第三話:折れたる忠義の刀『無念丸(むねんまる)』
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梅雨明け間近の蒸し暑い日、桐谷一葉の鑑定所を訪れたのは、見るからに疲弊しきった様子の老人だった。痩せ細った顔に刻まれた深い皺は、長年の苦労を物語っている。
「桐谷先生…ご高名、かねがね。まことに突然に、申し訳ございませぬ。」
老人は深々と頭を下げた。声は枯れ、力ない。名を山岡(やまおか)といい、かつては名門として知られた武家の出だという。今は零落(れいらく)し、細々と暮らしているらしい。
「どうぞ、楽に。どのようなご用件でしょう?」
一葉は静かに促した。山岡は、懐から丁寧に布に包まれた長いものを取り出した。それを一葉の前に置くと、さらに深々と頭を下げた。
「これは…我が家に、代々伝わる刀にございます。しかし…ご覧の通り…」
山岡は、布を開いた。現れたのは、見るも無残に折れた刀だった。刀身は中間あたりで激しくひしゃげ、無残に断ち切られている。折れた断面は鋭利で、痛々しい。
「…ひどい有様で。」一葉は思わず呟いた。鑑定台の上に置かれた折れた刀は、『無念丸(むねんまる)』と呼ばれていた。
「先祖が…ある合戦で佩用(はいよう)し、その最期を共にした刀にございます。」山岡の声は震えている。「ですが…この刀は、我が家にとって…不名誉の象徴でございまして。」
山岡によると、この『無念丸』を佩用していた先祖の武将は、その合戦で敵前逃亡を図り、その際に刀を折ってしまった、という伝承が残っているらしい。家名を汚した「無念の刀」として、代々人目に触れぬよう蔵に仕舞われていたのだという。
「ですが…本当にそうなのでしょうか。我が祖先が…名門の武士が、敵前逃亡などと…私は、どうしても信じきれませぬ。先生…どうか、この刀を見て、真実をお教えいただけませぬか? この『無念丸』が…我が祖先の真の姿を語ってくれるのではないかと…。」
山岡の目は、一葉に一縷(いちる)の望みを託していた。不名誉な家伝を覆し、祖先の無念を晴らしたい。その切実な思いが伝わってくる。
一葉は、折れた『無念丸』を手に取った。ずしりとした重み。無残な姿ではあるが、鉄の質は良い。折れた断面を詳しく観察する。当時の技術で可能な範囲で、断面の金属組織を目視で確認し、破断した際の力の加わり方を推測する。
「この折れ方…尋常ではございません。並大抵の力では、これほど激しく折れることはない。過度な力が、瞬間的に加わった…あるいは、極限の状態で繰り返される衝撃に耐えきれなくなった結果でしょう。」
刀身に残された無数の傷も丹念に調べる。刃こぼれ、打ち傷、そして、他の武器によるものと思われる痕跡。それらの傷の種類、深さ、角度から、刀がどのような状況で使われたかを推理する。
「この刃こぼれは…硬いものと激しく打ち合った痕。そして、この打ち傷は…槍か、あるいは別の刀を受けた時のものでしょう。多くの傷を受けている。激しい戦闘の中で、この刀が使われたことが分かります。」
さらに、一葉は柄(つか)や、そこに取り付けられていたであろう鍔(つば)にも目を向けた。山岡が、刀と一緒に持ってきたという鍔を差し出した。それは、錆びついているが、独特の意匠が刻まれた鍔だった。
「これは…」
一葉は鍔を手に取り、その意匠に目を凝らした。精緻(せいち)な彫刻。それは、どこか龍を思わせるような、力強く、しかし流れるような意匠だった。
一葉の脳裏に、ある伝説の言葉がよぎる。
「…青龍の太刀…風を呼ぶと言われた…。」
「五龍の剣」伝説。江戸時代に囁かれる、五振りの伝説の刀剣。その一つ、「青龍の太刀」は、風を呼ぶと言われ、その鍔には龍の意匠が施されていたという伝承がある。
この鍔は、その「青龍の太刀」と関連があるのか?
一葉は鍔の材質や製作技法も調べた。古い時代のものだが、確かな技術で作られている。
意匠は、単なる飾りではない。何か意味が込められているように見える。
「この鍔の意匠…どこかで…」
一葉は、自身の記憶の中にある刀剣図録や伝承の記録を辿る。そして、ある記録とこの鍔の意匠が符合することを見出す。
「この鍔は…『青龍の太刀』と呼ばれた刀に付属していたと伝えられる鍔の意匠と、非常によく似ています。あるいは…その写し、あるいは、その意匠を受け継いだ刀剣に使われた鍔かもしれません。」
山岡は驚いた。まさか、自分の家の折れた刀が、伝説の刀と関連があるかもしれないとは。
一葉は続けた。「『青龍の太刀』が風を呼ぶという伝承は、おそらく、その刀が持つ物理的な特性…例えば、非常に薄く鋭利で、振るう際に特有の風切り音を発し、それが『風を呼ぶ』と誇張されて伝えられたか…あるいは、特定の祭祀や儀式で使われ、天候を祈願する象徴であったことから生まれたのでしょう。」
そして、この鍔。その意匠に込められた意味は? 単なる装飾か、あるいは、何か別の…
一葉は、折れた刀「無念丸」の鑑定結果、鍔の意匠、そして山岡の家伝や当時の合戦記録を突き合わせて、推理を始めた。刀が折れたのは、敵前逃亡を図ったからではない。あの激しい折れ方と無数の傷は、刀が極限の戦闘の中で使われた証だ。
「藤井様。当時の合戦記録に、貴殿の祖先がどのような状況で戦われたか、記録はございますか?」
山岡は、家伝を語った。祖先は、味方が壊滅する中で孤立無援となり、殿(しんがり)を務め、奮戦の末に討ち死にした、と。しかし、敵前逃亡の噂が広まり、家名を汚したのだという。
一葉は、その家伝と、刀の鑑定結果を照らし合わせた。
「この刀の傷は…殿を務め、多勢の敵と戦った際に負ったものでしょう。過度な力が加わった折れ方も…多くの敵を相手に、刀を酷使した結果と推測されます。」
そして、鍔。なぜ、「青龍の太刀」に関連する鍔を佩用していたのか。それは、単なる縁起物か、あるいは、祖先が「青龍の太刀」を探していたのか?
一葉は、刀の鑑定結果と、歴史的事実、そして自身の人間洞察を組み合わせ、武将の最期を再構築した。
「貴殿の祖先は…敵前逃亡などされてはおりません。むしろ、孤立無援の状況で、殿を務め、最後まで忠義を尽くされた。この刀の無数の傷が、それを語っています。」
一葉は、折れた刀を指し示した。
「この折れ方は、貴殿の祖先が、力の限り刀を振るい、敵に立ち向かった、忠義の証です。『無念丸』という名は…敵前逃亡という汚名を着せられたことへの、祖先の無念の思いが込められたものかもしれません。しかし、この刀は…真の『忠義の刀』です。」
山岡は、一葉の言葉を聞き、目を見開いた。刀の傷が語る真実。祖先が、敵前逃亡などしていなかった。最後まで、武士としての誇りを持って戦い抜いたのだ。
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。長年の家名の汚名、祖先への疑念が、一葉の言葉によって洗い流されていく。
「無念丸」は、無念の刀ではなかった。それは、壮絶な最期を迎えた武将の、揺るぎない忠義が刻み込まれた、真の「忠義の刀」だったのだ。
一葉は、山岡に、折れた刀と鍔を返した。
「この刀は…貴殿の祖先の誇りです。どうか、今後は不名誉の象徴としてではなく、忠義の証として、大切に受け継いでください。」
山岡は、震える手で折れた『無念丸』を受け取った。その無残な姿が、今は何よりも尊いものに見えた。彼は、一葉に何度もお礼を言い、鑑定所を後にした。
山岡が去った後、一葉は一人、鍔の意匠について思いを巡らせた。「青龍の太刀」に関連する鍔。それが、偶然、折れた「無念丸」と一緒に伝えられていたのだろうか?
そして、一葉の脳裏に、「影追」という存在がよぎる。曰くつきの刀を集めている者たち。もし、この鍔が「青龍の太刀」と関連があるとしたら…「影追」がこの鍔に関心を持たないはずがない。
一葉は、田島同心に、山岡の件、そして鍔が「青龍の太刀」と関連がある可能性について伝えた。田島同心は、山岡の家が代々その鍔を所持していたことを確認し、過去に不審な者が山岡家に近づこうとした形跡がないか、密かに探りを入れることを約束した。
後日、田島同心から報告があった。数年前に、山岡家に不審な人物が接近しようとした形跡があったという。その人物は、曰くつきの刀剣に関わる裏社会の者であり、「影追」と繋がりのある可能性が高いというのだ。しかし、山岡家は既に零落しており、家宝の管理も厳重ではなかったため、不審者の接近に気づいていなかったらしい。幸い、その時は鍔を奪われることはなかったが、「影追」がこの鍔、あるいは「青龍の太刀」に関連する何かを探しているのは間違いないだろう。
一葉は、静かに頷いた。やはり、「影追」は「五龍の剣」伝説に関わる何かを追っている。
そして、曰くつきの刀を集める彼らの目的は、「五龍の剣」伝説と深く繋がっているのだろう。
折れた「無念丸」と、それに付属していた鍔。それは、単なる武将の最期を語るだけでなく、「五龍の剣」伝説、そして「影追」という謎に繋がる、新たな糸口となったのだ。
一葉は、鑑定台の上に置かれたままの、山岡が忘れていったらしい小さな布切れを見つめた。その布切れに、微かに鉄の匂いが染み付いている。
「無念丸」…そして、「青龍の太刀」の鍔。刀が語る真実は、まだ、始まったばかりだ。
そして、「影追」という影は、江戸の闇に潜んでいる。一葉の、刀剣に秘められた真実を追う探求の道は、さらに続いていく。
「桐谷先生…ご高名、かねがね。まことに突然に、申し訳ございませぬ。」
老人は深々と頭を下げた。声は枯れ、力ない。名を山岡(やまおか)といい、かつては名門として知られた武家の出だという。今は零落(れいらく)し、細々と暮らしているらしい。
「どうぞ、楽に。どのようなご用件でしょう?」
一葉は静かに促した。山岡は、懐から丁寧に布に包まれた長いものを取り出した。それを一葉の前に置くと、さらに深々と頭を下げた。
「これは…我が家に、代々伝わる刀にございます。しかし…ご覧の通り…」
山岡は、布を開いた。現れたのは、見るも無残に折れた刀だった。刀身は中間あたりで激しくひしゃげ、無残に断ち切られている。折れた断面は鋭利で、痛々しい。
「…ひどい有様で。」一葉は思わず呟いた。鑑定台の上に置かれた折れた刀は、『無念丸(むねんまる)』と呼ばれていた。
「先祖が…ある合戦で佩用(はいよう)し、その最期を共にした刀にございます。」山岡の声は震えている。「ですが…この刀は、我が家にとって…不名誉の象徴でございまして。」
山岡によると、この『無念丸』を佩用していた先祖の武将は、その合戦で敵前逃亡を図り、その際に刀を折ってしまった、という伝承が残っているらしい。家名を汚した「無念の刀」として、代々人目に触れぬよう蔵に仕舞われていたのだという。
「ですが…本当にそうなのでしょうか。我が祖先が…名門の武士が、敵前逃亡などと…私は、どうしても信じきれませぬ。先生…どうか、この刀を見て、真実をお教えいただけませぬか? この『無念丸』が…我が祖先の真の姿を語ってくれるのではないかと…。」
山岡の目は、一葉に一縷(いちる)の望みを託していた。不名誉な家伝を覆し、祖先の無念を晴らしたい。その切実な思いが伝わってくる。
一葉は、折れた『無念丸』を手に取った。ずしりとした重み。無残な姿ではあるが、鉄の質は良い。折れた断面を詳しく観察する。当時の技術で可能な範囲で、断面の金属組織を目視で確認し、破断した際の力の加わり方を推測する。
「この折れ方…尋常ではございません。並大抵の力では、これほど激しく折れることはない。過度な力が、瞬間的に加わった…あるいは、極限の状態で繰り返される衝撃に耐えきれなくなった結果でしょう。」
刀身に残された無数の傷も丹念に調べる。刃こぼれ、打ち傷、そして、他の武器によるものと思われる痕跡。それらの傷の種類、深さ、角度から、刀がどのような状況で使われたかを推理する。
「この刃こぼれは…硬いものと激しく打ち合った痕。そして、この打ち傷は…槍か、あるいは別の刀を受けた時のものでしょう。多くの傷を受けている。激しい戦闘の中で、この刀が使われたことが分かります。」
さらに、一葉は柄(つか)や、そこに取り付けられていたであろう鍔(つば)にも目を向けた。山岡が、刀と一緒に持ってきたという鍔を差し出した。それは、錆びついているが、独特の意匠が刻まれた鍔だった。
「これは…」
一葉は鍔を手に取り、その意匠に目を凝らした。精緻(せいち)な彫刻。それは、どこか龍を思わせるような、力強く、しかし流れるような意匠だった。
一葉の脳裏に、ある伝説の言葉がよぎる。
「…青龍の太刀…風を呼ぶと言われた…。」
「五龍の剣」伝説。江戸時代に囁かれる、五振りの伝説の刀剣。その一つ、「青龍の太刀」は、風を呼ぶと言われ、その鍔には龍の意匠が施されていたという伝承がある。
この鍔は、その「青龍の太刀」と関連があるのか?
一葉は鍔の材質や製作技法も調べた。古い時代のものだが、確かな技術で作られている。
意匠は、単なる飾りではない。何か意味が込められているように見える。
「この鍔の意匠…どこかで…」
一葉は、自身の記憶の中にある刀剣図録や伝承の記録を辿る。そして、ある記録とこの鍔の意匠が符合することを見出す。
「この鍔は…『青龍の太刀』と呼ばれた刀に付属していたと伝えられる鍔の意匠と、非常によく似ています。あるいは…その写し、あるいは、その意匠を受け継いだ刀剣に使われた鍔かもしれません。」
山岡は驚いた。まさか、自分の家の折れた刀が、伝説の刀と関連があるかもしれないとは。
一葉は続けた。「『青龍の太刀』が風を呼ぶという伝承は、おそらく、その刀が持つ物理的な特性…例えば、非常に薄く鋭利で、振るう際に特有の風切り音を発し、それが『風を呼ぶ』と誇張されて伝えられたか…あるいは、特定の祭祀や儀式で使われ、天候を祈願する象徴であったことから生まれたのでしょう。」
そして、この鍔。その意匠に込められた意味は? 単なる装飾か、あるいは、何か別の…
一葉は、折れた刀「無念丸」の鑑定結果、鍔の意匠、そして山岡の家伝や当時の合戦記録を突き合わせて、推理を始めた。刀が折れたのは、敵前逃亡を図ったからではない。あの激しい折れ方と無数の傷は、刀が極限の戦闘の中で使われた証だ。
「藤井様。当時の合戦記録に、貴殿の祖先がどのような状況で戦われたか、記録はございますか?」
山岡は、家伝を語った。祖先は、味方が壊滅する中で孤立無援となり、殿(しんがり)を務め、奮戦の末に討ち死にした、と。しかし、敵前逃亡の噂が広まり、家名を汚したのだという。
一葉は、その家伝と、刀の鑑定結果を照らし合わせた。
「この刀の傷は…殿を務め、多勢の敵と戦った際に負ったものでしょう。過度な力が加わった折れ方も…多くの敵を相手に、刀を酷使した結果と推測されます。」
そして、鍔。なぜ、「青龍の太刀」に関連する鍔を佩用していたのか。それは、単なる縁起物か、あるいは、祖先が「青龍の太刀」を探していたのか?
一葉は、刀の鑑定結果と、歴史的事実、そして自身の人間洞察を組み合わせ、武将の最期を再構築した。
「貴殿の祖先は…敵前逃亡などされてはおりません。むしろ、孤立無援の状況で、殿を務め、最後まで忠義を尽くされた。この刀の無数の傷が、それを語っています。」
一葉は、折れた刀を指し示した。
「この折れ方は、貴殿の祖先が、力の限り刀を振るい、敵に立ち向かった、忠義の証です。『無念丸』という名は…敵前逃亡という汚名を着せられたことへの、祖先の無念の思いが込められたものかもしれません。しかし、この刀は…真の『忠義の刀』です。」
山岡は、一葉の言葉を聞き、目を見開いた。刀の傷が語る真実。祖先が、敵前逃亡などしていなかった。最後まで、武士としての誇りを持って戦い抜いたのだ。
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。長年の家名の汚名、祖先への疑念が、一葉の言葉によって洗い流されていく。
「無念丸」は、無念の刀ではなかった。それは、壮絶な最期を迎えた武将の、揺るぎない忠義が刻み込まれた、真の「忠義の刀」だったのだ。
一葉は、山岡に、折れた刀と鍔を返した。
「この刀は…貴殿の祖先の誇りです。どうか、今後は不名誉の象徴としてではなく、忠義の証として、大切に受け継いでください。」
山岡は、震える手で折れた『無念丸』を受け取った。その無残な姿が、今は何よりも尊いものに見えた。彼は、一葉に何度もお礼を言い、鑑定所を後にした。
山岡が去った後、一葉は一人、鍔の意匠について思いを巡らせた。「青龍の太刀」に関連する鍔。それが、偶然、折れた「無念丸」と一緒に伝えられていたのだろうか?
そして、一葉の脳裏に、「影追」という存在がよぎる。曰くつきの刀を集めている者たち。もし、この鍔が「青龍の太刀」と関連があるとしたら…「影追」がこの鍔に関心を持たないはずがない。
一葉は、田島同心に、山岡の件、そして鍔が「青龍の太刀」と関連がある可能性について伝えた。田島同心は、山岡の家が代々その鍔を所持していたことを確認し、過去に不審な者が山岡家に近づこうとした形跡がないか、密かに探りを入れることを約束した。
後日、田島同心から報告があった。数年前に、山岡家に不審な人物が接近しようとした形跡があったという。その人物は、曰くつきの刀剣に関わる裏社会の者であり、「影追」と繋がりのある可能性が高いというのだ。しかし、山岡家は既に零落しており、家宝の管理も厳重ではなかったため、不審者の接近に気づいていなかったらしい。幸い、その時は鍔を奪われることはなかったが、「影追」がこの鍔、あるいは「青龍の太刀」に関連する何かを探しているのは間違いないだろう。
一葉は、静かに頷いた。やはり、「影追」は「五龍の剣」伝説に関わる何かを追っている。
そして、曰くつきの刀を集める彼らの目的は、「五龍の剣」伝説と深く繋がっているのだろう。
折れた「無念丸」と、それに付属していた鍔。それは、単なる武将の最期を語るだけでなく、「五龍の剣」伝説、そして「影追」という謎に繋がる、新たな糸口となったのだ。
一葉は、鑑定台の上に置かれたままの、山岡が忘れていったらしい小さな布切れを見つめた。その布切れに、微かに鉄の匂いが染み付いている。
「無念丸」…そして、「青龍の太刀」の鍔。刀が語る真実は、まだ、始まったばかりだ。
そして、「影追」という影は、江戸の闇に潜んでいる。一葉の、刀剣に秘められた真実を追う探求の道は、さらに続いていく。
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