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第四部:大団円 ~からくりと人情が結ぶ未来~
第四十四話:残党の巣
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信号傍受からくりが示した発信源は、江戸の賑やかな通りから少し入った、目立たない裏長屋の一室だった。一見、普通の長屋だが、その部屋だけは不自然に窓が閉ざされ、僅かに光が漏れている。夜、周囲の長屋が静まり返る中で、そこだけが妙な気配を放っていた。ここが、「影」の残党が潜む、新たな隠れ家だろう。
甚兵衛とお絹は、その裏長屋の向かいにある、より背の高い建物の屋根の上に身を潜めた。夜の帳が下り、町の音が遠のく。隠れ家からの光だけが、闇の中に浮かび上がる。
「ここが…奴らの新しい巣か…」
甚兵衛が、遠見からくりを構えながら呟いた。改良した遠見からくりは、微かな光でも内部の様子を鮮明に映し出す。お絹も、集音からくりを耳に当て、中の音を聞こうとする。
遠見からくりを通して見えたのは、複数の「影」の者たちだ。顔に見覚えのある者もいれば、見慣れない者もいる。皆、疲労した様子だが、警戒を怠っていない。部屋の中では、地図を広げて何かを話し合っていたり、道具の手入れをしていたりする。中には、包帯を巻いている者もいる…あの地下工房からの逃走で、傷を負ったのだろう。
集音からくりからは、断片的な会話が聞こえてくる。「…地下はもう使えぬ…」「…次の指示は…」「…氷雨様は…」「…辰五郎の情報は…」
やはり、ここは地下工房から逃れた残党の隠れ家だ。そして、彼らは氷雨からの次の指示を待っている。氷雨は、ここにはいないらしい。別の場所にいるのか、あるいは…
「氷雨は、ここにはいないようですい…でも、まだ指揮を執ってる…」
お絹が、集音からくりの情報を伝える。これは重要な手掛かりだ。氷雨は生きている。そして、まだ組織を動かしている。彼らが捕らえるべき首謀者は、まだ自由だ。
「辰五郎については…?」甚兵衛が尋ねた。
会話から、辰五郎に関する手掛かりを探る。彼らは、辰五郎から得た情報が、計画に不可欠だったこと、そして、その情報自体は無事であること、あるいは、辰五郎自身についても何か言及しているかもしれない。
「『辰五郎殿の知識は…』って言ってますい…何か情報が無事だとか…本人は…別の場所にいるんでしょうか…」
会話は途切れ途切れで、全てを理解することは難しい。しかし、辰五郎がまだ「影」にとって価値のある存在であり、地下工房の事故で失われたわけではないらしいことが分かった。彼がどこにいるのかは不明だが、この残党が彼の所在を知っている可能性がある。
さらに監視を続けると、「影」の者たちが、特定の時刻に部屋の隅にある通信用からくりで、短い信号を送受信しているのが分かった。これが、彼らが氷雨と連絡を取り合う手段だろう。
甚兵衛は、この信号のパターンを記録した。将来、この信号を傍受することで、氷雨の居場所や、次の動きを特定できるかもしれない。そして、写し取りからくりを使い、部屋の中の様子、地図の印、そして残党の顔を、音もなく記録した。これらは、後に役人に見せるための、具体的な証拠となる。
監視を続けていると、不意に残党の一人が外を窺うように窓に近づいた。甚兵衛とお絹は、咄嗟に身を隠す。心臓が跳ね上がる。彼は、しばらく外の様子を窺っていたが、やがて窓を離れた。危機一髪だった。長時間の監視は、危険を伴う。
得られる情報は十分に得た。この隠れ家の場所、中にいる残党の顔と人数、彼らが氷雨と連絡を取り合っていること、そして、辰五郎に関する僅かな手掛かり。
「引き上げよう。深入りは禁物だ」
甚兵衛が判断した。二人は、音もなく屋根の上から降り、裏長屋から距離を取った。夜の闇に紛れて、その場を離れる。
残党の隠れ家の監視は、成功だった。彼らは「影」がまだ組織として活動していること、氷雨が健在であること、そして辰五郎がまだ奴らの手中にあり、彼の知識が重要なままであることを突き止めた。そして、新たな追跡の手掛かりとなる、通信方法や隠れ家の場所、残党の顔といった具体的な情報を得たのだ。
長屋に戻る帰り道、二人の顔には疲労と共に、新たな決意が宿っていた。戦いは終わっていない。地下から地上へ舞台は移った。彼らは、得られた糸口を頼りに、氷雨と辰五郎を追う、新たな局面へと進む。大団円へ向け、物語は続く。
甚兵衛とお絹は、その裏長屋の向かいにある、より背の高い建物の屋根の上に身を潜めた。夜の帳が下り、町の音が遠のく。隠れ家からの光だけが、闇の中に浮かび上がる。
「ここが…奴らの新しい巣か…」
甚兵衛が、遠見からくりを構えながら呟いた。改良した遠見からくりは、微かな光でも内部の様子を鮮明に映し出す。お絹も、集音からくりを耳に当て、中の音を聞こうとする。
遠見からくりを通して見えたのは、複数の「影」の者たちだ。顔に見覚えのある者もいれば、見慣れない者もいる。皆、疲労した様子だが、警戒を怠っていない。部屋の中では、地図を広げて何かを話し合っていたり、道具の手入れをしていたりする。中には、包帯を巻いている者もいる…あの地下工房からの逃走で、傷を負ったのだろう。
集音からくりからは、断片的な会話が聞こえてくる。「…地下はもう使えぬ…」「…次の指示は…」「…氷雨様は…」「…辰五郎の情報は…」
やはり、ここは地下工房から逃れた残党の隠れ家だ。そして、彼らは氷雨からの次の指示を待っている。氷雨は、ここにはいないらしい。別の場所にいるのか、あるいは…
「氷雨は、ここにはいないようですい…でも、まだ指揮を執ってる…」
お絹が、集音からくりの情報を伝える。これは重要な手掛かりだ。氷雨は生きている。そして、まだ組織を動かしている。彼らが捕らえるべき首謀者は、まだ自由だ。
「辰五郎については…?」甚兵衛が尋ねた。
会話から、辰五郎に関する手掛かりを探る。彼らは、辰五郎から得た情報が、計画に不可欠だったこと、そして、その情報自体は無事であること、あるいは、辰五郎自身についても何か言及しているかもしれない。
「『辰五郎殿の知識は…』って言ってますい…何か情報が無事だとか…本人は…別の場所にいるんでしょうか…」
会話は途切れ途切れで、全てを理解することは難しい。しかし、辰五郎がまだ「影」にとって価値のある存在であり、地下工房の事故で失われたわけではないらしいことが分かった。彼がどこにいるのかは不明だが、この残党が彼の所在を知っている可能性がある。
さらに監視を続けると、「影」の者たちが、特定の時刻に部屋の隅にある通信用からくりで、短い信号を送受信しているのが分かった。これが、彼らが氷雨と連絡を取り合う手段だろう。
甚兵衛は、この信号のパターンを記録した。将来、この信号を傍受することで、氷雨の居場所や、次の動きを特定できるかもしれない。そして、写し取りからくりを使い、部屋の中の様子、地図の印、そして残党の顔を、音もなく記録した。これらは、後に役人に見せるための、具体的な証拠となる。
監視を続けていると、不意に残党の一人が外を窺うように窓に近づいた。甚兵衛とお絹は、咄嗟に身を隠す。心臓が跳ね上がる。彼は、しばらく外の様子を窺っていたが、やがて窓を離れた。危機一髪だった。長時間の監視は、危険を伴う。
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