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第四部:大団円 ~からくりと人情が結ぶ未来~
第四十五話:別の場所
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長屋に戻り、僅かな休息の後、甚兵衛とお絹は工房で再び向き合った。残党の隠れ家から持ち帰った情報は、少なかったが、確かな手応えがあった。地下工房は使えず、奴らは分散している。氷雨はここにはいないが、まだ指揮を執っている。そして、辰五郎は…「別の場所」に囚われている。
「『辰五郎殿の知識は無事』…そう言ってましたい。奴らは、まだ辰五郎さんの知識を必要としてるんですいね」
お絹が、監視で聞き取った言葉を反芻した。辰五郎の知識が計画に不可欠だったことは分かっている。地下工房の件で計画は狂ったが、氷雨はまだ何かを諦めていない。辰五郎は、そのための重要な駒なのだ。
「『別の場所』か…」
甚兵衛は呟いた。地下工房のような大規模な場所ではないかもしれない。だが、重要な囚人を閉じ込めておくには、相応に厳重な場所だろう。そして、氷雨が指揮を執っている「別の場所」と、辰五郎が囚われている「別の場所」は…同じかもしれないし、違うかもしれない。
新たな追跡が必要だ。残党の隠れ家を叩くのも手だが、それでは氷雨と辰五郎には届かない。奴らの通信からくりと、氷雨の指揮系統を辿るのが、最も確実な道だろう。
甚兵衛は、工房にある材料と道具を調べ始めた。以前造った信号傍受からくりを、さらに改良する必要がある。残党が送受信していた信号を、より精密に解析し、発信源や受信源を特定するためのからくりだ。
「この信号…短いが、特定のパターンを持っている。これを逆探知できれば…氷雨の居場所が分かるかもしれない」
甚兵衛は、設計図を描き始めた。信号の強弱だけでなく、方向性をより正確に捉える機構、複数の地点からの情報を統合して位置を特定する三角測量のような仕組み(江戸時代の技術で可能な範囲の原理を応用)をからくりに組み込む。
お絹も、からくり製造を手伝う。精密な歯車、細い金属線の加工…彼女の手つきは正確だ。辰五郎の顔が、彼女の脳裏に焼き付いている。彼を助け出したいという強い思いが、彼女を突き動かす。
「辰五郎さんが、どこにいるか…必ず突き止めてみせますい」
数日後、改良された信号傍受からくりが完成した。それは、以前のものより複雑で、特定の信号を捉えると、小さな針が方向を示す仕組みになっている。
甚兵衛とお絹は、江戸の各所…残党の隠れ家から比較的近い場所や、氷雨が以前使用した水路に関わる地域などで、このからくりを使い始めた。夜や早朝、残党が通信を行う時間帯を狙う。
江戸の町を歩き回りながら、からくりを操作する。針が微かに震え、特定の方向を示す。別の場所へ移動し、再び方向を確認する。地道な作業だ。しかし、確実に信号の発信源…つまり、氷雨が指揮を執っている場所へと近づいている手応えがあった。
追跡は困難を極める。信号は短く、断続的だ。町の建物や地形が、信号の受信を妨げることもある。そして、何より、追跡している相手は氷雨だ。奴が、自分たちの通信を傍受されていることに気づき、対策を講じる可能性もゼロではない。
しかし、彼らは諦めない。辰五郎を救い出すために。そして、氷雨の野望に終止符を打つために。
数日間の追跡の末、信号の発信源が、江戸の中心部から少し外れた、川沿いにある古びた大店(おおだな)の建物であることを突き止めた。周囲には蔵も多く、人通りは昼間は多いが、夜は静まり返る地域だ。
「ここか…」
信号傍受からくりの針が、その大店の建物の一点を指し示している。夜間、建物からは僅かに灯りが漏れているが、外見は普通の店と変わらない。
しかし、甚兵衛とお絹には分かる。ここが、「影」の新たな拠点の一つ…おそらく、氷雨が指揮を執り、あるいは辰五郎を閉じ込めている、「別の場所」なのだ。
新たな糸口を見つけた二人の顔に、緊張が走る。地下工房のような大規模な場所ではないかもしれない。しかし、ここに氷雨がいる可能性は高い。そして、辰五郎も。
彼らは、その大店の周囲を警戒しながら、偵察を開始した。この場所へどう近づき、中の様子を探るか。新たな危険が、彼らを待っている。
大団円へ向けた追跡は、新たな舞台へと移る。氷雨と辰五郎を巡る最後の局面が、今、始まった。
「『辰五郎殿の知識は無事』…そう言ってましたい。奴らは、まだ辰五郎さんの知識を必要としてるんですいね」
お絹が、監視で聞き取った言葉を反芻した。辰五郎の知識が計画に不可欠だったことは分かっている。地下工房の件で計画は狂ったが、氷雨はまだ何かを諦めていない。辰五郎は、そのための重要な駒なのだ。
「『別の場所』か…」
甚兵衛は呟いた。地下工房のような大規模な場所ではないかもしれない。だが、重要な囚人を閉じ込めておくには、相応に厳重な場所だろう。そして、氷雨が指揮を執っている「別の場所」と、辰五郎が囚われている「別の場所」は…同じかもしれないし、違うかもしれない。
新たな追跡が必要だ。残党の隠れ家を叩くのも手だが、それでは氷雨と辰五郎には届かない。奴らの通信からくりと、氷雨の指揮系統を辿るのが、最も確実な道だろう。
甚兵衛は、工房にある材料と道具を調べ始めた。以前造った信号傍受からくりを、さらに改良する必要がある。残党が送受信していた信号を、より精密に解析し、発信源や受信源を特定するためのからくりだ。
「この信号…短いが、特定のパターンを持っている。これを逆探知できれば…氷雨の居場所が分かるかもしれない」
甚兵衛は、設計図を描き始めた。信号の強弱だけでなく、方向性をより正確に捉える機構、複数の地点からの情報を統合して位置を特定する三角測量のような仕組み(江戸時代の技術で可能な範囲の原理を応用)をからくりに組み込む。
お絹も、からくり製造を手伝う。精密な歯車、細い金属線の加工…彼女の手つきは正確だ。辰五郎の顔が、彼女の脳裏に焼き付いている。彼を助け出したいという強い思いが、彼女を突き動かす。
「辰五郎さんが、どこにいるか…必ず突き止めてみせますい」
数日後、改良された信号傍受からくりが完成した。それは、以前のものより複雑で、特定の信号を捉えると、小さな針が方向を示す仕組みになっている。
甚兵衛とお絹は、江戸の各所…残党の隠れ家から比較的近い場所や、氷雨が以前使用した水路に関わる地域などで、このからくりを使い始めた。夜や早朝、残党が通信を行う時間帯を狙う。
江戸の町を歩き回りながら、からくりを操作する。針が微かに震え、特定の方向を示す。別の場所へ移動し、再び方向を確認する。地道な作業だ。しかし、確実に信号の発信源…つまり、氷雨が指揮を執っている場所へと近づいている手応えがあった。
追跡は困難を極める。信号は短く、断続的だ。町の建物や地形が、信号の受信を妨げることもある。そして、何より、追跡している相手は氷雨だ。奴が、自分たちの通信を傍受されていることに気づき、対策を講じる可能性もゼロではない。
しかし、彼らは諦めない。辰五郎を救い出すために。そして、氷雨の野望に終止符を打つために。
数日間の追跡の末、信号の発信源が、江戸の中心部から少し外れた、川沿いにある古びた大店(おおだな)の建物であることを突き止めた。周囲には蔵も多く、人通りは昼間は多いが、夜は静まり返る地域だ。
「ここか…」
信号傍受からくりの針が、その大店の建物の一点を指し示している。夜間、建物からは僅かに灯りが漏れているが、外見は普通の店と変わらない。
しかし、甚兵衛とお絹には分かる。ここが、「影」の新たな拠点の一つ…おそらく、氷雨が指揮を執り、あるいは辰五郎を閉じ込めている、「別の場所」なのだ。
新たな糸口を見つけた二人の顔に、緊張が走る。地下工房のような大規模な場所ではないかもしれない。しかし、ここに氷雨がいる可能性は高い。そして、辰五郎も。
彼らは、その大店の周囲を警戒しながら、偵察を開始した。この場所へどう近づき、中の様子を探るか。新たな危険が、彼らを待っている。
大団円へ向けた追跡は、新たな舞台へと移る。氷雨と辰五郎を巡る最後の局面が、今、始まった。
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