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可愛い義弟 【ローズ】
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その後、慈善事業の一環としてお父様が孤児を養子として迎え入れた。
初めてその子を見た時には感激した。
くりくりの目、ぷっくりとした柔らかそうなほっぺ。
華奢で色白の手足。
まるでお人形さん。
可愛い可愛い義弟となったニコルだった。
ゲームの中では幼い頃のニコルは描かれておらず、こんなに破壊力のある幼少期とは知らなかった。
けれどその表情は暗く、瞳にも光を宿していない。
その理由はゲームの設定で知っていた。
ニコルは実の父親と母親から殴る蹴るなどの虐待を受けてきたのだ。
貧しいスラム街で父親は酒に溺れ、母親は売春婦だったという。
両親がニコルに酒や食料を盗みに行かせるなど日常茶飯事だったらしい。
ニコルには十分な食料を与えず、挙句の果てに真冬の路地裏に捨てたのだ。
孤児院で食事を与えられ、やせ細った体は膨らみを取り戻したが、傷ついた心はそのままだった。
そんな過去を持つニコルをゲームの中のローズは忌み嫌い、両親の目の届かないところで罵声を浴びせ、手を上げるなどの虐待をしていた。
そんなニコルはローズと同じ学園に入学し、ヒロインと出会って恋に落ちる。
誰からも愛情を向けてもらえなかったニコルをヒロインは優しく愛したのだ。
可哀想な子。
この子が成長して学園に入ってヒロインと結ばれるのかどうかは分からないが、それまでは何不自由なく心穏やかに過ごしてほしい。
幼いニコルの頭をそっと撫でた。
殴られると思ったのか、その体がびくりと震える。
「ごめんなさい、驚かせて。でももう怯えることはないわ。これからは、あなたにひどい言葉を浴びせる人も、痛い思いをさせる人もいないんだから」
「あ、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「僕が生まれてきたから……何も価値がないのに、ここで暮らすことになってしまって……」
それ以上言わせないようにもう一度頭を撫でる。
「悪い夢を見ていたのね」
「夢?」
「そう、今までのことは全て悪い夢よ。もう夢から覚めたの。これからはきっと幸せな現実が待っているわ」
ニコルの両手をとり、微笑んでみせる。
「私はローズ。あなたが生まれてきてくれたこと、この家へ来てくれたこと、心より祝福するわ。これからよろしくね」
「あ、えっと……僕は、ニコル……あの……よろしくお願いします……義姉さん……」
ゲームの中でニコルがローズのことを「義姉さん」と呼んでいるのを聞いたことがない。
もちろんただゲームのシナリオに出てこなかっただけかもしれないが、なんだかその言葉が胸を熱くさせた。
ヒロインとは結ばれないかもしれない。
悲しい片思いで終わるかもしれない。
でもどうか、幸せになってほしいと心から願った。
初めてその子を見た時には感激した。
くりくりの目、ぷっくりとした柔らかそうなほっぺ。
華奢で色白の手足。
まるでお人形さん。
可愛い可愛い義弟となったニコルだった。
ゲームの中では幼い頃のニコルは描かれておらず、こんなに破壊力のある幼少期とは知らなかった。
けれどその表情は暗く、瞳にも光を宿していない。
その理由はゲームの設定で知っていた。
ニコルは実の父親と母親から殴る蹴るなどの虐待を受けてきたのだ。
貧しいスラム街で父親は酒に溺れ、母親は売春婦だったという。
両親がニコルに酒や食料を盗みに行かせるなど日常茶飯事だったらしい。
ニコルには十分な食料を与えず、挙句の果てに真冬の路地裏に捨てたのだ。
孤児院で食事を与えられ、やせ細った体は膨らみを取り戻したが、傷ついた心はそのままだった。
そんな過去を持つニコルをゲームの中のローズは忌み嫌い、両親の目の届かないところで罵声を浴びせ、手を上げるなどの虐待をしていた。
そんなニコルはローズと同じ学園に入学し、ヒロインと出会って恋に落ちる。
誰からも愛情を向けてもらえなかったニコルをヒロインは優しく愛したのだ。
可哀想な子。
この子が成長して学園に入ってヒロインと結ばれるのかどうかは分からないが、それまでは何不自由なく心穏やかに過ごしてほしい。
幼いニコルの頭をそっと撫でた。
殴られると思ったのか、その体がびくりと震える。
「ごめんなさい、驚かせて。でももう怯えることはないわ。これからは、あなたにひどい言葉を浴びせる人も、痛い思いをさせる人もいないんだから」
「あ、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?」
「僕が生まれてきたから……何も価値がないのに、ここで暮らすことになってしまって……」
それ以上言わせないようにもう一度頭を撫でる。
「悪い夢を見ていたのね」
「夢?」
「そう、今までのことは全て悪い夢よ。もう夢から覚めたの。これからはきっと幸せな現実が待っているわ」
ニコルの両手をとり、微笑んでみせる。
「私はローズ。あなたが生まれてきてくれたこと、この家へ来てくれたこと、心より祝福するわ。これからよろしくね」
「あ、えっと……僕は、ニコル……あの……よろしくお願いします……義姉さん……」
ゲームの中でニコルがローズのことを「義姉さん」と呼んでいるのを聞いたことがない。
もちろんただゲームのシナリオに出てこなかっただけかもしれないが、なんだかその言葉が胸を熱くさせた。
ヒロインとは結ばれないかもしれない。
悲しい片思いで終わるかもしれない。
でもどうか、幸せになってほしいと心から願った。
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