チュー犬くんと隠れっ子

はる

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舎弟と相棒とチュー犬くん

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翌日



右腕の包帯をさすりながら、ぼんやり座り込む。





「……顔も、ちゃんと見えなかった」





昨日からずっと頭にあるのはあの人のこと












空き教室のドアが開き、舎弟の拓斗と相棒の秀が同じタイミングで入ってくる。





拓斗は明るく声を張る。







「翔さーん!!おにぎり買ってきました!!




鮭、ツナマヨ、明太子、どれが良いっすか!?」




「なんでも良い……」



声が小さく出る。



拓斗は目を丸くして驚いている。



「あ、あの翔さんがなんでも良いなんて!?






もしかして傷痛みますか!?






あいつら、



あんな大人数で翔さん1人に攻めてきやがって!!





でもちゃーんと仕返ししたからもう大丈夫っすよ!!」






「おー……」




ぼんやり返す。言葉はそれだけ。




俺は、自分の腕の包帯を無意識にギュッと握る。








「それ、誰が手当てしてくれたの?」





相棒の秀の視線が、俺の腕に落ちる。


「……昨日、何かあったんじゃない?




喧嘩以外のこと。」


何かと鋭い秀に俺は少しだけ目を細める。



反応はするけど、口は閉じたまま。




拓斗が首をかしげる。



「喧嘩以外? って、何すか?」



秀は軽く微笑む。



「さぁね。でも、翔の顔……いつもと違う。」




その言葉に、少しだけ口を開く。






「……助けられた」




拓斗の顔がきょとんと上がる。



「え? 誰にっすか?」




俺は渡されたおにぎりを見つめたまま、短く息を吐く。




「……雨ん中で倒れててさ。



誰かが……傘、差してくれて。



……手当てもしてくれた」




拓斗の声が弾む。




「えっ!?誰っすか?女?美人?!」






「……顔ははっきり見えてねぇ。




ただ、あったかくて……優しくて……




なんか離れねぇんだよ」








しばらく沈黙が流れる。




秀がゆっくりと頷く。






「それって……






その人に、もう一度会いたいって思ってる?」






俺は小さく息をつく。





「……思ってる、どころじゃねぇ。




名前も知らねぇのに、ずっと考えてる」











それを聞いた秀がほんの少し笑い、淡々と続ける。









「それって……恋じゃない?」







俺は一瞬固まり、思わず顔を上げる。






「はぁ!? んなわけねぇーだろ!!」







拓斗は吹き出して、笑いが止まらない。





「うわ、照れてる~!翔さんが恋かぁ~!」




頬が熱くなるのが分かる。




「照れてねぇっつの!!」






ニヤつく二人から顔を逸らし、机の横を見る。



昨日の傘が、立てかけてある。



自然と目が吸い寄せられる。



少し眉をひそめ、ぼそっと呟く。






「……そういや、これ……借りっぱなしだな」




その声に反応して、後ろから拓斗が顔を出す。




「え?その傘、昨日助けてくれた人の?」



少し気まずそうに頷く。




「……ああ。返さねぇと、なんか落ち着かねぇ」




秀が椅子の背にもたれて、淡々と口を開く。





「返すって……相手の学校、わかるの?」



少し考え込み、曖昧に答える。



「……制服、見えた。


たぶん……森園学園……」



心の中で、驚きと少し引け目を感じる。



「あの進学校の!?」



拓斗の目が輝く。







「え~!行きましょうよ!傘返しミッション!」






「はぁ!? なんでお前らも来んだよ!」




「翔さんの恋応援したいです!!」




「面白そうだから」





俺はため息をつく。





でも、拒否できずに、三人で学校を出る。
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