黄昏の国家

旅里 茂

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深層の闇

黄昏の国家38

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ギークの特異な能力と機密隊の並外れた行動力。
個人戦闘ならば、米国のデルタフォースと対峙出来る能力を保持していると言われる。
ギークの活躍は先の述べたが、特殊な能力を保持している。
まず、国会議事堂の参議院執務に潜入を試る。認識阻害システムを駆使し、三人一組で行動する。
IRの内容が極秘機密であり、かつて一般市民が署名運動をして、最終的に四十万を超える人の真意を集めたが、政府はごり押しで通した。
その度に市民は、政治に食い込む事への虚しさを感じた。
IRの総資産が十二兆円を超えることも政府は黙殺している。
そこへオーイックスの年間資産を合わせて、動かせるように計画しているものと思われる。
その証拠を探るのが、ギークと機密隊の連携任務となる。
ギークの一人が議員の一人、長浜優紀を電子マーカーで確保する。
サイキックに近い能力を秘めている為、極めて超常的な方法で縛りを掛けて、電子音声のやり取りを取り込み、機密隊にリアルタイムで通達する。
その動きは一秒毎に記録される。
二十三秒後にもう一人議員が通る。そこで長浜と立ち話を始めた。
直接デバイスで話をしているが、筒抜けである。
長浜『総理も遊心ゆうしんが過ぎるよな』
相手『いや、あの「オーイックス」とやらを認めさせたんだ。得るもの得るに越したことはないさ』
どうやら議員間ではオーイックスが今回の件で出費する事を念頭に、既に話が進んでいるような内容である。
少しの間、彼らの話を記録しながら聞いていた。
其処へ興味深い話が飛び出した。
長浜『IRの儲けを新藤啓介会長に、三割引き渡す件はちょっと、な』
相手『おいおい、迂闊に言うなよ。首が飛ぶぜ!」
長浜『ま、俺たちノーキャリアには関係ない話なんだがな…』
相手『美味しい話は全てお偉いさんに流れるってか』
会話はここで済んだ。
機密隊は、その会話を聞いて「成程、そういう事か」と、改めて確認した。
オーイックスに可成りの資金を引き出し、それを黙殺して、更に会長職に大玉が入る算段か…。
IRの流れは大まか確認を取った。あとは総理の周辺を確認する事が重要である。
金に汚い連中はどの時代においても徘徊するものだ。
機密隊は更に首相官邸に近付く。
首相官邸の内部に程なく侵入した隊員は、総理が居ない事に気付く。
おかしい、今の時間帯は他の議員たちと雑談をしている頃だ。
その瞬間、機密隊の一人が「がっ!」と大きな声をたて、その場に崩れ落ちた。
狙撃!そこに居る全員がそう判断した。
何故だ?認識阻害システムで侵入を図った。それが何故ばれる?
よく見るとサイトサーチライトが当たっている。その途端にギークがデジタルスモークを掛けた。
すると一斉に狙撃が行われた。
撃たれた隊員を担ぎ、ギークの誘導で官邸を脱出した。
上空には戦闘ヘリが二機待ち構えており、機密隊の位置を把握している。
ギークは戦闘ヘリのローターをジャミングし、操縦不能に陥れた。
その間に機密隊の脱出には大いなる時間稼ぎとなった。
戦闘ヘリは二機とも首相官邸に激突し、炎上した。
駆け付ける警備兵、直ぐ傍にある消防から消化に駆け付ける消防車。
機密隊の正体を知られたかどうかはわからないが、一先ず安全な場所に待機する事は出来た。
これはギークたちのお陰である。
しかしなぜ、最新システムである認識阻害システムを作動している中、見破られたのが全く腑に落ちない。お陰で重要な部下を一人失った。
だがもっと不可解のは、何故に戦闘ヘリまでが待機していたのか?
ギークたちにデバイスの深層体への侵入を命令する。
オーイックスの何百万とあるネットワークシステムの中、VPNの一つに不審な点が見つかる。
それは、今回の機密隊とギークとの作戦内容を記載した電子メモの一部が、漏れていたのだ。直ぐにパッチで防ぐ。
エラー監視システムは常時走っているが、その間にホールを作った形跡があった。
と、なれば今回の作戦は逆に筒抜けだったことが分かる。
そうなれば、何処で認識阻害システムを突破するシステムを開発したのか。
それも短期間で…。
これもVerアップをしなければいけない。
見えてはいけない物が認識されれば、全く意味がないからだ。
侮っていた、という他無い。
日本政府も可成りの技量を積んできたと思える。
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