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二十四話

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「何してるんですか?」

「死体漁り」

めっちゃ物騒、と思ったけれど確かにデスした後の場所には袋のようなものが残されていた。へー、プレイヤーをキルしたときってこういう感じでアイテムが残るのか。袋の近くによるとインベントリのようなタブが開かれ、袋の中のアイテムが一覧表示される。

「いらなそうなのでも取っておけばあとで売れるし、最悪クラン内で共有できる」

「え、でもプレイヤーを倒して手に入れたアイテムって盗品なんですよね?」

「PKを倒したときは別。一応最初のプレイヤーの名前は出るから探せば返せるけど。メリットがない」

まぁ優しさとか……。そりゃ元の持ち主からしたら証明書にはなるんだろけど。それよりPKを倒したときにメリットがあるならPKKのしがいがありそうだな、という感想が起きる。対人楽しそうだしPKKってカッコいいし、アリだな。
ミヅキさんは手馴れているようで素早く二つの袋を漁るといらない者だけを棄却し、袋を消滅させた。一方僕は何をすればいいのかよくわからないので本当に袋の中身を適当に全部インベントリ内に入れて後を追う。

よく考えたらPKKになったらPKとPKKが同じクラン内にいることになるな。
そういえばこのPKたちはどこでリスポーンするのだろうか。この洞窟の奥とか言われたらいくらデスペナルティがあるとはいえゾンビが完成するけど。

「一番近い町の中央広場で蘇生される」

「そうなんですね。……でも、あれ?PKとかしすぎると守衛に」

「そうなる。だからだいたいはPKKされるとアイテム全損だし、ゲーム内で拘束されるからめんどくさい」

PKも大変だなぁ。まぁ多くのデメリットを享受して対人やアイテム収集を楽しんでるのだからしょうがないのだろう。
それにしてもそんな気概があるならやっぱり悪人顔にしてほしかった。



最初のモブ顔三人は偵察のような人だったらしく、あれ以降プレイヤーが一切現れない。まぁそこまで規模の広い洞窟でもないし、戦闘も結果的に見れば秒殺だったので応援の部隊がこないのもそうか。

するとミヅキさんが伏せていた顔をあげると左右に首を振り、道の奥を見つめる。どうかしたのだろうか。

「一人来る。でもたぶん弱い」

「何をどうしたらそんなことがわかるんですか」

「説明は後でするから合図したら全力で走って攻撃して、三,二,一」

Goの合図の元前方へ思いっきり駆け出す。幸い洞窟は直線が多く、壁に激突することもない。数秒もしない、何ならコンマ数秒という値で相手が視界に映る。

弱いという言葉通りか唐突に目の前に現れた僕に反応もできていなそうだった。失礼しまーす。

【 Action Skill  : 《スラッシュ》 】
【 Action Skill-chain  : 《飛燕》 】
【 Action Skill-chain  : 《ピアス》 】

人型相手になら一番ダメージがでるコンボ。袈裟切りに≪スラッシュ≫を放ち警戒されていないほうの手で飛燕を放つ、ここは当たっても外れてもいいが飛び上がった瞬間に足に展開しピアスで頭部を貫く。
今回はすべてが無防備な体に叩き込まれ、最後のピアスは頭部を狙ったことによりクリティカルとなる。つまり柔らかかったこの人は無事デスした。僕よりもレベルが上だったようで、先ほどの戦闘とも合わせて結構な経験値が入り、レベルが上昇する。ごちです。ワンコンボで倒せると気持ちいいですねこのゲーム。

後からきて袋の中を見るミヅキさんは驚いたような顔をしてこちらを見る。その目は今までと違って少し申し訳なさそうに見ていた。あの、何かしました?

「これ盗品になってる……たぶんこのクランのPKじゃない」

「えっ」

「ちょっとカルマ値ついちゃったかも」

いやいやいや、そんなまさか。僕はトレーナーに襲えと指示された哀れなモンスター……いや、危険地帯にいた人を完全に通り魔したな。ちなみにこちらが先に気づいた要因としてはミヅキさんは耳がよくなるスキルも持っているらしく、それで存在を感じ取れたらしいけど。今回はそのスキルが誤作動してほしかった。

「一応格上討伐はカルマ値あんまり上がらない」

「ならいいんですけど……仲良くしてるNPCから嫌われたりしないですよね」

「それは保証する。一回くらいは事故」

とんでもない事故もあったもんだ。まぁいずれあの人と会うことがあるかもしれないし一応アイテムは回収しておこう。返せるといいな……。

「それにしてもいいダメージ出てる」

「【血兎《アルミラージ》】の基礎ダメージが高いのと、防具の【素兎《しろうさぎ》】に不意打ち・クリティカルのダメージを上昇の効果がついてるんですよね」

血兎が神話の角で血を吸うアルミラージモチーフで、攻撃した分のヒールがついているのだとしたら素兎は日本神話の因幡の白兎モチーフなのだろう。兎が不意打ちクリティカル攻撃された側だけど。

「リーシュが作る装備はだいたい便利」

「ミヅキさんの装備もリーシュ君作なんですね」

「クランの装備はだいたいリーシュが作ってる。これもそう」

と言ってフードを被ってくるくると回る。そのフード防具だったんだ。

「視認性低下・鑑定看破阻害・情報系スキル耐性」

「僕が言うのもなんですけどそれだけでも特盛ですね」

「他にもいろいろついてる。効果の代わりに防具性能低いけど」

そこらへんも僕の防具と似ているんだな。そういわれるとあのクラン服っぽい装備だったり軽装の人が多かったけどリーシュ君の趣味なのか。

「他の人の防具もそうなんですか」

「だいたいその人に合った効果をリーシュがつけてる」

僕の効果も助かってるからな。戦闘を一回見ただけでなんでそんなぴったりの効果を付けれたリーシュ君がすごいのか。雑談をしながら歩いているとミヅキさんが止まる。

「この先に数人の声、たぶん本メンバーがいる」

「そういえばPKクラン潰しに来たんでした」

「目的が人殺すことになってる、才能ある」

ミヅキさんに認めてもらったようなのは嬉しいのだが、だんだんPKへの勧誘が多くなっている気がする。まさかクラン内に仲間を作ろうとしてる?いやいや、孤高っぽい雰囲気あるミヅキさんがまさかそんな。

思考をしている暇もなくミヅキさんが奥の扉を開けた。あの、ボス戦前みたいなものなのでもう少し心構えとかする時間はないのでしょうか。なさそうですね。

扉を開けるとアイテムが詰まっていると思われる収納箱、壁に立てかけられた剣や斧、そして部屋の奥に置かれた一際大きな椅子に男が座っていた。片手に酒と思わしき物を持ち、片目に大きな傷跡が付いた筋骨隆々の大男……

僕は感動している。なぜだろう、今日で一番感動したかもしれない。

「なんで感動してるの?」

「盗賊のボスっぽい人が……盗賊のボスっぽいアバターをしている……」

一切視界に影響がないのだろうけど片目に歴戦を思わせる傷跡、華奢なアバターでもちょいイケメン顔でもない、ハゲたマッチョとかいうセンス。この人はわかっている。PKとかではなくこの世界に賊として生きていく覚悟がある。

あとは声だ。僕は人を声で判別するような人ではないけれど、少しでも低い声がいい。渋いおじさんみたいな声は要求しないからせめて、せめて成人男性で大声が……

「よく来たわね……あなたたちが入り口で暴れてた子?」

そして大男の口から放たれたのは女性言葉……というか完全に女性の声。
……トランスジェンダーな感じかな。うん、いいね。そういうのも悪くはない。オカマかつボスは強いって法則が。

「男?女?」

「あ、女の子可愛い~。アバターこんなだけど私も女の子だよ~」

「スーッ……失礼ですが、なぜそのようなアバターを」

我慢できず大きく息を吸い込み、思い切って質問してみた。いや別になんでもいいんですけどね。いや別に現実の性別なんてゲーム内に持ち込む意味なんてないし。

「最近のゲームやってる子の中でこういう女子のがモテるって聞いて~。半信半疑だったんだけど~、結局貢がれたりしてて、お付きの子たちでこんなクランも作っちゃったっ!」

なるほどなるほど。賊のリーダーは姫プ目的で、最近の姫は男アバターにすることにより媚びてなんていないアピールをすると、しかし声が女性なのですぐバレる、ただ結果的に媚びてない姫が好きなプレイヤーに貢がれ、そして貢ぐのが好きなプレイヤーにそれが伝わり結局貢がれると……

なるほどなるほど。初心者を襲っていたのも、姫だからPSがないから。構成人数がそこそこ多いのも、ボスが女性なのに吊られたから。ここにきてこの部屋にまで男性プレイヤーしかいなく、全員が少しイケメンくらいの顔なのも……全部これが理由と。

よし殺そう。巨悪は生かしちゃおけない。
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