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六十五話
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カラスさんに貰った素材をよく見ていなかったが、なんか長そうな名前だったし少なくとも僕が知っているモンスターの名前ではなかったので恐らく告げられたとおりにレアな素材だったのだろう。最悪これをお土産にしよう。
黒鳥会、なんだったのだろうか。突然喧嘩を売って帰っていった人たちという印象なのだけれど。
まぁいいか。今度帰ったときに事情通、もとい掲示板常駐してるドリさんに聞いてみればなにかわかるかもしれないし。
それにしてもかっこよかったなぁ、カラスさんの登場の仕方。それに統一された衣装に加えて刀使いに謎に包まれた女性。譲宣さんが主人公な異能力バトルが始まりそう。
でもその場合悪役僕じゃん。じゃあダメだわ。
いや、悪役というのも悪くないのでは?さんざん舐めプをした挙句に仲間の女性にまで喧嘩を売るし……ダメだな、僕の器じゃあ悪役は無理そう。というか自分で言うのもなんだけどカリスマ性とかなさそうだし。
山賊の時にも怒ったけど僕は僕なりに悪役には拘りがある。悪役であるならそれなりの矜持と使命を持っていてほしいものである。
例えばそうそう、あんな感じに岩肌に腰掛ける眼帯をし、とんでもなく巨大な盾を担いだおじさん……うわこわ。
背中に担いだ巨大な盾、ゲームなので視界が遮られることはない眼帯。浅黒い肌に筋骨隆々の姿、そしてそれを見せつけるかのような上裸姿。
ちなみに眼帯は一応目に対する攻撃や光などの目くらまし攻撃に耐性をくれるらしい。ただあれ頭防具扱いなんだよね。目だけ隠すのに。
ゲーム内とはいえ見た目に拘る必要もないと思うけれど、だいたいの人が人よりもかっこよく作ったり、可愛く作ったりする物だが、一定数あんな感じの人がいる。僕も知り合いで肉焼いてる情報屋がそんな感じだ。
ドリさんに聞いたが彼らのほとんどがSTRに極振りをし、自身の体を見せつけるように半裸の姿晒すらしい。
正直見た目だけの威圧感はとんでもない。しかも極振りなのだとしたら撫でられただけで爆散しそう。今日はただでさえ変な人と遭遇する率が高いのだから目を合せないように慎重に通り過ぎよう。
そーっと、そーっと……
「そこの君……」
まさか僕のことじゃないよね?確かにここの周囲には僕しかいないし、半裸のおじさんの視界にはたぶん僕しか映ってないし、なんなら僕の方を向いて声をかけられた気がするけどまさか僕のことではないだろう。
いやまさかまさか。
上半身を軽く倒し、足を引く。頭の中でよーいどんと声をあげ、≪紫電…≫
「そこまで身構えないでくれ……少し道が聞きたいだけだ」
なんだただの迷子のおじさんか。足元に半分集まりかけていた紫色のエフェクトを解除しおじさんの方へ向き直る。うーん、まじまじ見ても凶悪な顔だ。現実で会ったら110番しそうなレベルで。子供とか通り過ぎただけで泣きわめきそう。
「質問なのだが……第二の街はあちらでよかったか」
そういっておじさんが指を指した方向は第二の街からやってきた僕が来た方向……とは見当違いの、恐らく森の中とかついてそのまま世界の端まで行けるんじゃないかなってところ。
「俺の見立てではこちらなのだが……」
「見立てと別の方向に行けばもしかしたら安定するかもしれないですね」
「そうか……」
おじさんは肩を深く落とし落胆を明らかにした。道に迷うのってなんか悲しくなるよね。それはわかるけどさ。わかるけど……
「一応なんですけど、ゲームなんでマップ機能とかあるんですけど、見ました?」
僕の言葉を聞いたおじさんは何かを思い出したようにメニュー画面を開き、マップを開く。そして目を見開くとこちらを向いた。
「GMか……?」
「いや、たぶんほとんどのプレイヤーが知っていることだと思います」
いくら運営が不親切だからってメニュー開いたらマップ機能くらいはあるのわかると思うし、そして不親切な運営のGMはこんなところで歩いて迷子の案内をしない。
「そうか……感謝する」
「いえいえ、力になれてよかったです」
明らかにメニューのマップを見たまま視線を動かさなくなったおじさん相手に笑顔で言葉を返す。また変な人に絡まれたなって気持ちの方が強いけど。
「では……」
と言っておじさんは先ほど指さした方向の反対側へ歩いて行った。ってちょいちょいちょーい。
「いや、マップ見てますよね」
「見ている……こちらだろう」
というとまた歩いていた方向とは別方向を指さす。しかしそちらも第二の街方向ではない。えっと……わざとではないんですよね。
「残念ながらそちらでも……」
本人は本気でそっちだと思っていたらしく、手元に展開されたマップを上下にぐるぐると回したり、本人がぐるぐると回って見たりしている。なお、そんなことをしてもマップの向きは変わらない。矢印とかは変わるかもしれないけど。
「壊れているのか……?」
「いや、正常に働いていると思いますけど」
「しかし……マップの本人マーカーが回転しかしない……」
「今動いてないんで当たり前ですね」
そう告げるとまたハッとした顔をする。そして口を開く前に腕を前に出し静止する。もういいですから、そのくだり。
「なんか可哀想なんで途中まで一緒に行きますか?」
「しかしそれでは君の……」
「でもたぶん辿り着けないですよね?」
質問を投げかけると無言で力強くうなずいた。そんなことで誇られましても。
「世話になる……俺の名前はレーベリオ……レオとでも呼んでくれ」
方向音痴おじさん、もといレオさんが仲間になった。今日は本当に、いろいろな人と会う日だ。
「では行こうか……」
「そっちじゃないですし前歩かないでほしいですしとりあえず僕についてきてください」
エスコートは始まったばかりだというのに前途多難だ。
◇
「すまないな……」
「それは言わない約束で……とも言ってないですね」
レオさんの方向感覚は愉快ではあるがあまり喋りが上手なタイプではないらしく、僕が先導をしレオさんがついてくるだけの道中になっている、沈黙に耐えかねた僕がたまに質問をしたり、あちらから質問を投げかけられたりと特に何が起こるでもない旅路を過ごしている。
「そういえばなんで上裸なんですか?極振りの人たちでそういう人がいるってのは聞きましたけど」
「歩くときは外しているだけで戦闘の際は鎧を着る……重いから歩きづらいんだ」
なんだ、極振りの民ではなかったのか。
「極振りではないが、ほとんどVITとSTRに振っている……」
極振りではないけど僕のことは捻り殺せそうで間違いなかった。
「というかなんであんな場所に?第三の街からなら別に第二の街に飛べますよね?」
「いや……第一の街にいたのだが、歩いていたらいつの間にかあそこにいた。もっと先だと思っていたのだが通りすぎていたとは……」
「まずどうやって第二の街辿り着いてたんですかそれ」
「最初は仲間がいた……第一の街へは戻るだけだったからよかったのだがな……」
第二の街もたぶん戻るだけだと思いますよ。仲間の人もこの方向音痴を一人で出歩かせたりしないでほしい。
もう少しで第二の街に辿り着く……というところで熊とであう。しかもただの熊ではなく、少し上位の個体なのだろう。前回討伐した赤い熊ではなく、青い熊だ。空中にいる鳥を爪で叩き落とし、そのまま鋭い牙で噛みちぎっている。
そしてどこからか鹿を加えた赤い熊が数匹集まってくると、その場で熊たちの食卓が開かれていた。
こういう野生動物たちの生活的なの見るの好きだ。モンスターとか関係なく。なんとなく見ていたくなるよね。動物番組とか好きだったからかな。
「どうする……通り過ぎることはできるが……」
レオさんはいつの間にか鎧に着替えて戦闘態勢でいた。全身鎧姿は半裸の時よりも威圧感がすごく、正直攻撃が通る気すらしないほどの丈夫さがある。
「まぁ別に襲われたわけでもないですし、そっと脇を通り過ぎればいいんじゃないですかね」
「そうか……俺も賛成だ」
そう言うと鎧を脱ぎまた半裸になる。これはこれで暑苦しいし威圧感あるけど。
そしてそっと熊たちが食事をしている横を見つからないようにそっと通り過ぎる。……通り過ぎようとしたとき、レオさんが思いっきり転び、その際の勢いで小さい木をへし折った。
当然メキメキと大きな音を立てて倒れる木に、こちらを注目する熊たち。起き上がり、周囲を見渡すと熊と僕を見て、そっと鎧を着るレオさん。
「戦闘だな……」
「レオさあああああああああん!?」
今日は本当に色んな人に絡まれる。
黒鳥会、なんだったのだろうか。突然喧嘩を売って帰っていった人たちという印象なのだけれど。
まぁいいか。今度帰ったときに事情通、もとい掲示板常駐してるドリさんに聞いてみればなにかわかるかもしれないし。
それにしてもかっこよかったなぁ、カラスさんの登場の仕方。それに統一された衣装に加えて刀使いに謎に包まれた女性。譲宣さんが主人公な異能力バトルが始まりそう。
でもその場合悪役僕じゃん。じゃあダメだわ。
いや、悪役というのも悪くないのでは?さんざん舐めプをした挙句に仲間の女性にまで喧嘩を売るし……ダメだな、僕の器じゃあ悪役は無理そう。というか自分で言うのもなんだけどカリスマ性とかなさそうだし。
山賊の時にも怒ったけど僕は僕なりに悪役には拘りがある。悪役であるならそれなりの矜持と使命を持っていてほしいものである。
例えばそうそう、あんな感じに岩肌に腰掛ける眼帯をし、とんでもなく巨大な盾を担いだおじさん……うわこわ。
背中に担いだ巨大な盾、ゲームなので視界が遮られることはない眼帯。浅黒い肌に筋骨隆々の姿、そしてそれを見せつけるかのような上裸姿。
ちなみに眼帯は一応目に対する攻撃や光などの目くらまし攻撃に耐性をくれるらしい。ただあれ頭防具扱いなんだよね。目だけ隠すのに。
ゲーム内とはいえ見た目に拘る必要もないと思うけれど、だいたいの人が人よりもかっこよく作ったり、可愛く作ったりする物だが、一定数あんな感じの人がいる。僕も知り合いで肉焼いてる情報屋がそんな感じだ。
ドリさんに聞いたが彼らのほとんどがSTRに極振りをし、自身の体を見せつけるように半裸の姿晒すらしい。
正直見た目だけの威圧感はとんでもない。しかも極振りなのだとしたら撫でられただけで爆散しそう。今日はただでさえ変な人と遭遇する率が高いのだから目を合せないように慎重に通り過ぎよう。
そーっと、そーっと……
「そこの君……」
まさか僕のことじゃないよね?確かにここの周囲には僕しかいないし、半裸のおじさんの視界にはたぶん僕しか映ってないし、なんなら僕の方を向いて声をかけられた気がするけどまさか僕のことではないだろう。
いやまさかまさか。
上半身を軽く倒し、足を引く。頭の中でよーいどんと声をあげ、≪紫電…≫
「そこまで身構えないでくれ……少し道が聞きたいだけだ」
なんだただの迷子のおじさんか。足元に半分集まりかけていた紫色のエフェクトを解除しおじさんの方へ向き直る。うーん、まじまじ見ても凶悪な顔だ。現実で会ったら110番しそうなレベルで。子供とか通り過ぎただけで泣きわめきそう。
「質問なのだが……第二の街はあちらでよかったか」
そういっておじさんが指を指した方向は第二の街からやってきた僕が来た方向……とは見当違いの、恐らく森の中とかついてそのまま世界の端まで行けるんじゃないかなってところ。
「俺の見立てではこちらなのだが……」
「見立てと別の方向に行けばもしかしたら安定するかもしれないですね」
「そうか……」
おじさんは肩を深く落とし落胆を明らかにした。道に迷うのってなんか悲しくなるよね。それはわかるけどさ。わかるけど……
「一応なんですけど、ゲームなんでマップ機能とかあるんですけど、見ました?」
僕の言葉を聞いたおじさんは何かを思い出したようにメニュー画面を開き、マップを開く。そして目を見開くとこちらを向いた。
「GMか……?」
「いや、たぶんほとんどのプレイヤーが知っていることだと思います」
いくら運営が不親切だからってメニュー開いたらマップ機能くらいはあるのわかると思うし、そして不親切な運営のGMはこんなところで歩いて迷子の案内をしない。
「そうか……感謝する」
「いえいえ、力になれてよかったです」
明らかにメニューのマップを見たまま視線を動かさなくなったおじさん相手に笑顔で言葉を返す。また変な人に絡まれたなって気持ちの方が強いけど。
「では……」
と言っておじさんは先ほど指さした方向の反対側へ歩いて行った。ってちょいちょいちょーい。
「いや、マップ見てますよね」
「見ている……こちらだろう」
というとまた歩いていた方向とは別方向を指さす。しかしそちらも第二の街方向ではない。えっと……わざとではないんですよね。
「残念ながらそちらでも……」
本人は本気でそっちだと思っていたらしく、手元に展開されたマップを上下にぐるぐると回したり、本人がぐるぐると回って見たりしている。なお、そんなことをしてもマップの向きは変わらない。矢印とかは変わるかもしれないけど。
「壊れているのか……?」
「いや、正常に働いていると思いますけど」
「しかし……マップの本人マーカーが回転しかしない……」
「今動いてないんで当たり前ですね」
そう告げるとまたハッとした顔をする。そして口を開く前に腕を前に出し静止する。もういいですから、そのくだり。
「なんか可哀想なんで途中まで一緒に行きますか?」
「しかしそれでは君の……」
「でもたぶん辿り着けないですよね?」
質問を投げかけると無言で力強くうなずいた。そんなことで誇られましても。
「世話になる……俺の名前はレーベリオ……レオとでも呼んでくれ」
方向音痴おじさん、もといレオさんが仲間になった。今日は本当に、いろいろな人と会う日だ。
「では行こうか……」
「そっちじゃないですし前歩かないでほしいですしとりあえず僕についてきてください」
エスコートは始まったばかりだというのに前途多難だ。
◇
「すまないな……」
「それは言わない約束で……とも言ってないですね」
レオさんの方向感覚は愉快ではあるがあまり喋りが上手なタイプではないらしく、僕が先導をしレオさんがついてくるだけの道中になっている、沈黙に耐えかねた僕がたまに質問をしたり、あちらから質問を投げかけられたりと特に何が起こるでもない旅路を過ごしている。
「そういえばなんで上裸なんですか?極振りの人たちでそういう人がいるってのは聞きましたけど」
「歩くときは外しているだけで戦闘の際は鎧を着る……重いから歩きづらいんだ」
なんだ、極振りの民ではなかったのか。
「極振りではないが、ほとんどVITとSTRに振っている……」
極振りではないけど僕のことは捻り殺せそうで間違いなかった。
「というかなんであんな場所に?第三の街からなら別に第二の街に飛べますよね?」
「いや……第一の街にいたのだが、歩いていたらいつの間にかあそこにいた。もっと先だと思っていたのだが通りすぎていたとは……」
「まずどうやって第二の街辿り着いてたんですかそれ」
「最初は仲間がいた……第一の街へは戻るだけだったからよかったのだがな……」
第二の街もたぶん戻るだけだと思いますよ。仲間の人もこの方向音痴を一人で出歩かせたりしないでほしい。
もう少しで第二の街に辿り着く……というところで熊とであう。しかもただの熊ではなく、少し上位の個体なのだろう。前回討伐した赤い熊ではなく、青い熊だ。空中にいる鳥を爪で叩き落とし、そのまま鋭い牙で噛みちぎっている。
そしてどこからか鹿を加えた赤い熊が数匹集まってくると、その場で熊たちの食卓が開かれていた。
こういう野生動物たちの生活的なの見るの好きだ。モンスターとか関係なく。なんとなく見ていたくなるよね。動物番組とか好きだったからかな。
「どうする……通り過ぎることはできるが……」
レオさんはいつの間にか鎧に着替えて戦闘態勢でいた。全身鎧姿は半裸の時よりも威圧感がすごく、正直攻撃が通る気すらしないほどの丈夫さがある。
「まぁ別に襲われたわけでもないですし、そっと脇を通り過ぎればいいんじゃないですかね」
「そうか……俺も賛成だ」
そう言うと鎧を脱ぎまた半裸になる。これはこれで暑苦しいし威圧感あるけど。
そしてそっと熊たちが食事をしている横を見つからないようにそっと通り過ぎる。……通り過ぎようとしたとき、レオさんが思いっきり転び、その際の勢いで小さい木をへし折った。
当然メキメキと大きな音を立てて倒れる木に、こちらを注目する熊たち。起き上がり、周囲を見渡すと熊と僕を見て、そっと鎧を着るレオさん。
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