ちょっとした小話

ラズ

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病院で

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これは、お見舞いに行った時のお話です。

私はもともと病院があまり好きではありませんでした。(好きな人も珍しいとは思いますが)
病院独特のにおいが嫌いで顔をしかめるくらいには…。

とはいえ、入院したのは母親でした。しかも入院準備をする前に入院してしまったので、必要なものを届けなければなりません。

お見舞いに行けば、母は結構元気な姿でした。
とりあえず、顔色は悪くないしまだ楽そうにしています。

一安心して持って来た荷物を専用のロッカーに入れようとします。
母のロッカーを開けた時…私は固まりました。

そこには……青白くなった赤ん坊がいたからです。

母が

「どうしたの?」

と聞いて来ますが、私には答えられませんでした。
その赤ん坊は私の方に手を伸ばして来たからです。

だけど、私にはそれをどうすることもできません。

(なんで、こんなのがここにいるの?)

ハッとした時に気づいたのは母のいた棟が産婦人科医の棟だったということです。

産婦人科は命が生まれる場所でもあるけど、中絶や死産なので死ぬ場所でもあります。

私はゆっくりと後ずさりをして赤ん坊から離れます。
赤ん坊は心なしか悲しげな顔をして消えました。

私はホッとしたのもつかの間、その部屋の人の気配が明らかに増えたことに気がつきました。
赤ん坊を見てしまったことで何かスイッチが入ってしまったようです。

私はそれに気がつかないふりをして持って来た荷物をロッカーに入れました。

そして、顔を上げた時に見たのは無数の青白い赤ん坊たち…。

水子というのは普通母親に憑いているものだと思いましたが、そこにいたのは違ったのでしょうか…。

私は母に悪いと思いつつ、留まることなく一言二言話してから病室を飛び出しました。

病室を出ても私は顔を上げることができませんでした。

病室を出た時に見えたのは、

血まみれの赤ん坊を抱きかかえて泣いている女性がいたからです。

これは想像になりますが、彼女は母子ともに死んでしまった方なのでしょう。
彼女には影がありませんでした。

それから、最初にがっつり見てしまったのがいけないのか、病院から出るまで私は顔を上げることができませんでした。

結局お見舞いに行ったのはその一回だけです。

私は今も病院が嫌いです。
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