12 / 12
旅は道づれ?
街と村
しおりを挟む
案の定剣を振っていたルプスさんには苦~い化膿止めを飲んでもらった。
忠告したのに傷口を開くほどやっていたので反論は許さない。
ものすごく顔を顰めているルプスさんに水を渡して、落ち着いたら出発する。
優しい風が頬を撫でる。
ここは整地された街道なのでかなり歩きやすい。
そう思っていると、ルプスがポツリと呟いた。
「ここの道は狭いな」
「そうですか?どこもこのくらいなのでは?」
「いや、狭い。馬車が一台通れるくらいだろう。これではすれ違えない」
「なるほど、そうなんですね。うーん、この先には私たちの村しかありませんし、商人さんもさほど頻繁にきませんからこれで十分なのかもしれません」
「そうか…。この先の村はなんという村なんだ?」
「リーデアです」
「リーデア…な。結構遠いのか?」
「いいえ、歩いて一日くらいの距離ですよ?」
「そうか、そこそこ近いのだな」
大きな街や村がいくつか先にある街道なら広いのだろうけど、平和といえど森の奥。
自然豊かと言えば聞こえはいいけど、自然の脅威は馬鹿にできない。
それゆえに、村や里になりにくいのだ。
「ルプスさんは大きな街に住んでいるんですか?」
「?なぜだ?」
「いえ、街道が狭いと言っていたので」
「あぁ。まぁ、結構広い街には住んでいる…な」
「どんなところなんですか?」
「活気があってみんな威勢がいいな。それに港もあるからいろんなものが入ってくるんだ」
「想像できません」
「そうか?そういう、リーデアはどうなんだ?」
「こじんまりとした村ですよ?村人全員が仲良しで、喧嘩も滅多にありません。入ってくる物資は月一で来る商人さんが主で、他にどうしても必要があれば男性が街へ行ってくれます」
「全員仲良しなのはすごいな」
「そうなんですか?」
「だいたいどこに行っても仲の悪い奴はいるだろう?」
「…仲が悪いと死活問題では?」
「?どういうことだ?」
「だって、助け合えないじゃないですか。人は助け合って生きるものでしょう?」
「…そういうことか。人が少ないと確かに死活問題だな。それが抑止力になっているのか」
「?どういうことですか?」
「人が多いと一人や二人中の悪い奴がいても、他の助け合える者に会えるということだ」
「なるほど」
「だからこそ争いは起きないし、平和なんだな」
マイアはそう言われて村が平和な理由に初めて気づいた。
小さな頃にはよく言われたことの本当の意味も。
『みんなと仲良くしなさい。手を出して喧嘩するより、声を出して話し合いなさい。助け合うために』
小さな村だから諍いはかなり目立つ。
どちらが原因でも、付き合いやすいのか不安にはなるだろう。
さらに手を出してしまえば乱暴者というレッテルが貼られてしまう。尚更そんな者と付き合いたくはないと思うのが普通だ。
それを避けるためだったのだと、今更ながら気づいた。
(大きな街だと違うんだ…。これが普通だと思ってた)
マイアは一人そんなことを思ったのだった。
忠告したのに傷口を開くほどやっていたので反論は許さない。
ものすごく顔を顰めているルプスさんに水を渡して、落ち着いたら出発する。
優しい風が頬を撫でる。
ここは整地された街道なのでかなり歩きやすい。
そう思っていると、ルプスがポツリと呟いた。
「ここの道は狭いな」
「そうですか?どこもこのくらいなのでは?」
「いや、狭い。馬車が一台通れるくらいだろう。これではすれ違えない」
「なるほど、そうなんですね。うーん、この先には私たちの村しかありませんし、商人さんもさほど頻繁にきませんからこれで十分なのかもしれません」
「そうか…。この先の村はなんという村なんだ?」
「リーデアです」
「リーデア…な。結構遠いのか?」
「いいえ、歩いて一日くらいの距離ですよ?」
「そうか、そこそこ近いのだな」
大きな街や村がいくつか先にある街道なら広いのだろうけど、平和といえど森の奥。
自然豊かと言えば聞こえはいいけど、自然の脅威は馬鹿にできない。
それゆえに、村や里になりにくいのだ。
「ルプスさんは大きな街に住んでいるんですか?」
「?なぜだ?」
「いえ、街道が狭いと言っていたので」
「あぁ。まぁ、結構広い街には住んでいる…な」
「どんなところなんですか?」
「活気があってみんな威勢がいいな。それに港もあるからいろんなものが入ってくるんだ」
「想像できません」
「そうか?そういう、リーデアはどうなんだ?」
「こじんまりとした村ですよ?村人全員が仲良しで、喧嘩も滅多にありません。入ってくる物資は月一で来る商人さんが主で、他にどうしても必要があれば男性が街へ行ってくれます」
「全員仲良しなのはすごいな」
「そうなんですか?」
「だいたいどこに行っても仲の悪い奴はいるだろう?」
「…仲が悪いと死活問題では?」
「?どういうことだ?」
「だって、助け合えないじゃないですか。人は助け合って生きるものでしょう?」
「…そういうことか。人が少ないと確かに死活問題だな。それが抑止力になっているのか」
「?どういうことですか?」
「人が多いと一人や二人中の悪い奴がいても、他の助け合える者に会えるということだ」
「なるほど」
「だからこそ争いは起きないし、平和なんだな」
マイアはそう言われて村が平和な理由に初めて気づいた。
小さな頃にはよく言われたことの本当の意味も。
『みんなと仲良くしなさい。手を出して喧嘩するより、声を出して話し合いなさい。助け合うために』
小さな村だから諍いはかなり目立つ。
どちらが原因でも、付き合いやすいのか不安にはなるだろう。
さらに手を出してしまえば乱暴者というレッテルが貼られてしまう。尚更そんな者と付き合いたくはないと思うのが普通だ。
それを避けるためだったのだと、今更ながら気づいた。
(大きな街だと違うんだ…。これが普通だと思ってた)
マイアは一人そんなことを思ったのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる