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第7章 パーティーは荒れ模様
パーティー本番(はじめましてと海の楔)
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「あら?どうしたのかしら?」
「母上。なにをしてたんですか?」
「お喋りかしら?」
「で、なぜ泣きそうに?」
「うーん。リシアちゃん。どうしたのか聞かせてちょうだいな」
(え、え?)
直球で聞かれて頭がパニックを起こしている。私は悪くない。
アウアウするばかりでどうにも受けごたえができない。
「彼女は貴族に慣れていないんじゃないか?」
そう助け舟を出してくれたのはサイスが連れてきた見知らぬ男性だった。
しかし、その言葉に首を傾げたのはサイスだ。
「それだと俺やフェルトにも慣れていないということになりますが…」
「ああ、違う。深く知り合ってもいない高貴な人物に気後れしている…というところか?」
コクコクコクコクコク
(すごい!心を読んだみたい!)
全力で頭を縦に振ったら納得された。
「リシアは人見知りでした。普段は我々といるので失念していました」
「あらあら。ごめんなさいね」
「気づいてやれず、すまなかったな」
フルフル
みんな謝ってくれるけど、謝ることではないと思って首を横に振る。
だって、仲良くしてくれようとしたのは嬉しいことだから。
浮いていた涙を拭ってニコッと笑う。
一瞬の沈黙の後…………
「かわいい!妹に欲しいわ!いや、姉でもいいわ」
「そうね。クロウギリア!お嫁にしなさい」
「だめよ。彼女はサイスのお嫁になって私の娘になるのですもの」
「ずるいですわ」
「確かに愛らしいな」
「サイスの婚約者か。俺は紹介されていないんだか…」
と、ちょっとした騒ぎになったのはなんでだろう?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
小腹が空いてきたのでサイスにエスコートされながら、軽食を取りに来た。
色とりどりの美味しそうな料理が並ぶ中、サイスが手際よくサーヴしてくれる。
「うまいか?」
コクリ
どの料理も綺麗でなおかつ美味しい。
さすが王宮の料理人である。
「リシアはクロウギリア殿下は知っているな?」
コクリ
「それじゃあ俺が連れて来たのは父だ。名前はレイブランド・ハイ=コーエンズ。また会うかもしれないから覚えておいて欲しい」
コクリ
本人のいない場所だが問題はないだろう。
さっき会ったばかりだから、覚えている。
パシャリ!!
「あーら、ごめんなさい。かかっちゃったかしら?」
耳から離れない声。染み付いた過去が体の震えを伝える。
ドレスがそこそこ厚いので冷たさは感じないが、震えは止まらない。
「ねえ、あなた。そんな奴より、私とこない?」
とっさにサイスの袖を震える手で握ってしまう。今はシワになるとか型が崩れるとか考えられなかった。
顔さえ上げられず、伏せたまますがりつくしかない。
「そんなに握ればシワになるわ!お離しなさい!!」
(離した方がいいのだろうか……)
そっと手を離そうとした時、背中にそっと腕がまわされた。
「母上。なにをしてたんですか?」
「お喋りかしら?」
「で、なぜ泣きそうに?」
「うーん。リシアちゃん。どうしたのか聞かせてちょうだいな」
(え、え?)
直球で聞かれて頭がパニックを起こしている。私は悪くない。
アウアウするばかりでどうにも受けごたえができない。
「彼女は貴族に慣れていないんじゃないか?」
そう助け舟を出してくれたのはサイスが連れてきた見知らぬ男性だった。
しかし、その言葉に首を傾げたのはサイスだ。
「それだと俺やフェルトにも慣れていないということになりますが…」
「ああ、違う。深く知り合ってもいない高貴な人物に気後れしている…というところか?」
コクコクコクコクコク
(すごい!心を読んだみたい!)
全力で頭を縦に振ったら納得された。
「リシアは人見知りでした。普段は我々といるので失念していました」
「あらあら。ごめんなさいね」
「気づいてやれず、すまなかったな」
フルフル
みんな謝ってくれるけど、謝ることではないと思って首を横に振る。
だって、仲良くしてくれようとしたのは嬉しいことだから。
浮いていた涙を拭ってニコッと笑う。
一瞬の沈黙の後…………
「かわいい!妹に欲しいわ!いや、姉でもいいわ」
「そうね。クロウギリア!お嫁にしなさい」
「だめよ。彼女はサイスのお嫁になって私の娘になるのですもの」
「ずるいですわ」
「確かに愛らしいな」
「サイスの婚約者か。俺は紹介されていないんだか…」
と、ちょっとした騒ぎになったのはなんでだろう?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
小腹が空いてきたのでサイスにエスコートされながら、軽食を取りに来た。
色とりどりの美味しそうな料理が並ぶ中、サイスが手際よくサーヴしてくれる。
「うまいか?」
コクリ
どの料理も綺麗でなおかつ美味しい。
さすが王宮の料理人である。
「リシアはクロウギリア殿下は知っているな?」
コクリ
「それじゃあ俺が連れて来たのは父だ。名前はレイブランド・ハイ=コーエンズ。また会うかもしれないから覚えておいて欲しい」
コクリ
本人のいない場所だが問題はないだろう。
さっき会ったばかりだから、覚えている。
パシャリ!!
「あーら、ごめんなさい。かかっちゃったかしら?」
耳から離れない声。染み付いた過去が体の震えを伝える。
ドレスがそこそこ厚いので冷たさは感じないが、震えは止まらない。
「ねえ、あなた。そんな奴より、私とこない?」
とっさにサイスの袖を震える手で握ってしまう。今はシワになるとか型が崩れるとか考えられなかった。
顔さえ上げられず、伏せたまますがりつくしかない。
「そんなに握ればシワになるわ!お離しなさい!!」
(離した方がいいのだろうか……)
そっと手を離そうとした時、背中にそっと腕がまわされた。
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