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旅に出てトロールに出くわしても動じない
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翔が異世界に来て五日目。
翔は目を覚ます。
顔を洗い、朝食をとる。
海の幸、山の幸が惜しみなく使われた豪勢な食事だった。
「ショウ様!」
マリーが翔に声をかける。
「何だ?」
「ううううう!今日はなにをするんですか?」
マリーはウサギの耳をピョコピョコ動かす。
「そうだな、外を見て回ろうと思う」
「そ、そとをみてまわる????」
マリーは翔の言葉を理解出来なかった。
「そうだ。この世界はまだまだ広がっている。国の基礎は整えた。俺が直接指示を出さずとも、ある程度まで発展するだろう。次の陣頭指揮が必要になるまでの期間、外界を散策しようと考えている」
「出かけるんですか?」
「ああ」
「マリーも付いていきますう!!」
「アタイも連れて行っておくれ!」
「レイナも御一緒させてください」
「ウチも付いて行ってよろしいですか?」
「ボクもいきたい!!」
「わたくしの背に乗って行ってください」
マリーとユリアとレイナとカッサンドラとバネッサとシャーロットは、翔に付き従う。
「ならば、そろそろ出掛けるか」
翔は立ち上がり、準備をする。
「行くぞ!」
「ショウ様―――――!!お気をつけて―――――!!!」
皆は手を振り翔と六人を見送る。
翔と六人は、旅に出た。
翔と六人は荒野を歩く。
「うううううう、暑いですう。。。。」
「こりゃあ参るね」
「特にマーメイドには堪えますわ」
「リザードマンにも辛いです」
「ボクは全然平気だよ」
「わたくしも平気ですわ」
種族ごとに適した環境がある。
それは分かり切っていたことだが、それをまざまざと見せつけられていた。
「何処か休息をとれる場所を探すか」
翔たちは歩く。
荒野を歩いていると、砂埃の向こうから音が聞こえる。
馬の蹄の音と、車輪の音。
そして罵声と悲鳴。
「オラオラオラァ!!金目のモン置いてけや――――!!!!」
「うわ―――――!!!」
翔は剣を構える。
「な、なんですか!?」
六人は怯える。
「馬車強盗だ、多分な」
一陣の風が吹き、砂煙が晴れる。
「おお!?何だお前ら!?お前らも金目のモン寄こせ!!」
強盗は人間の三人組だった。それぞれ馬に跨り、剣で武装している。その中の一人が、翔たちにも恫喝する。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
一閃、一閃、一閃。
翔の抜刀は音も無く、ただ刹那に反射された太陽光だけが其れを知らせた。
「ぐあ!」
「がっ」
「うぐ」
馬車強盗の三人組は大地に転げ落ちる。
馬車の御者は、翔の神業に唖然とする。
「い、今のは、あなたが。。。。?」
御者が翔に訊ねる。
「そうだが」
「す、すばらしい!!!あなたのような達人は初めて見た!!!」
御者は鼻息荒く、まくし立てる。
「お前は、何処から来て、何処へ行くんだ?」
翔が御者に訊ねる。
「あっしはレットハ村からギルデンスターン王国へと向かう途中なのです」
「ギルデンスターン王国とは栄えているのか?」
「はい、それはもう!この辺りでは随一の繁栄を誇っています」
「ふむ、俺達を乗せて行ってくれないか?」
「し、しかし」
「道中で襲いかかる敵は全員撃退してやる」
「そうですね、それでしたら」
翔たちは馬車に乗り込み、ギルデンスターン王国を目指す。
「それで、どれ位でギルデンスターン王国に到着するんだ?」
「ここからギルデンスターン王国へ行くには、ドミニク沼地を通過して、次にジョン岩山を通過して、到着です。二日ほどですかね」
「そうか」
≪ドミニク沼地≫
「此処がドミニク沼地か」
と翔。
「ううう、なんだか不気味ですう」
とマリー。
「不穏な気配を感じるよ」
とユリア。
「怖いです」
とレイナ。
「何かに見られている気がします」
とカッサンドラ。
「こんな場所があったんだ」
とバネッサ。
「自分では歩きたくない場所ですわ」
とシャーロット。
ドミニク沼地は仄暗く、陰惨な空気が立ち込めている。
心なしか荷車を牽引する馬も歩くのが嫌そうだ。
荒野は湿度が極端に低く、土埃やうだるような暑さが有り、とても快適とは言えなかった。
それとは真逆の沼地だが、やはり快適とは言えない。
荒野を行く馬の蹄は軽快な音を鳴らしていたが、沼地の其れは耳障りですらある。
「ここらへん、出るって噂なんでさあ」
御者が誰に言うともなくこぼした。
「何が出ると言うんだ?」
翔は問う。
「トロールが出るって噂があるんですよ」
御者はトロールと言う単語を忌々しげに発音する。
「トロールは有害なのか」
「はい、そりゃもう。旦那は強盗を瞬殺してくれやしたが、ありゃあ人間でしたからね。トロールは怪物でさあ。会わぬが吉ってやつですよ」
「そんなにトロールが嫌なら、別のルートを選べば良い」
翔は一般論を語る。事情が有ることを予想しながら。
「へへ、そうしたいのは山々なんですが、あっしは商人でして。積み荷を期日内にギルデンスターン王国へ届けにゃあならんのです」
「このルートが最短なのか」
「へい、それもありやすが、他のルートも安全とは言えないもんで」
「安心しろ。俺は人間以外も倒せる」
翔は誇張の無い事実を言葉にした。
「うううう!そうです!ショウ様は誰にも負けません!」
とマリー。
「そうさ!ショウ様ほど強い御方はいないよ!」
とユリア。
「レイナはショウ様を誰よりも信じています」
とレイナ。
「ウチはショウ様のお役に立てるなら、なんでもします」
とカッサンドラ。
「ボクは誰が相手でもショウ様が勝つと思うな!」
とバネッサ。
「わたくしはショウ様ほど優れた御方を知りません」
とシャーロット。
「へへ、ずいぶん信頼されてやすね、旦那」
と御者。
「ヒヒーン!!」
と馬。
沼地のそこかしこで生物が蠢く。
岩を伝うヤモリ。
空を切る蝙蝠。
地を這う蛇。
木々に巣を張り移動する蜘蛛。
生物の面影が白骨だけの荒野とは対極だった。
今のところ、トロールの気配はしない。
万事順調に運ぶかと御者が安堵した矢先、
ズシン!
「!!!」
御者は沼地の足場にも響く不吉な音を聞いた。
それは当然、翔にも聞こえる。
しかし二人とも、それを言葉にしない。
御者は、不気味な足音が幻聴であることを祈り、現実を受け入れたくなかったから。
翔は、迎撃に時間が必要では無いが故に、その姿を現すまでは気に留めない。
ズシン!!
再び足音が響く。少なくとも、その足音は馬よりも重量が有ることを示していた。
ズシン!!!
三度足音が響く。御者は汗まみれだった。足音が大きくなる事が、接近を知らせる。
「、、、、、だ、、旦那、、、、、守ってくれるんですよ、、、ね。。。。?」
御者は受け入れ難い現実に向き合い、翔に臨戦態勢を取ることを仄めかす。
「安心しろ。此の馬車には俺と、俺の大事な人が六人も乗っているんだからな。今ここで別れることは上手くない」
翔は剣の柄に手を添える。
「ううううう!ショウ様の大事な人ってマリーですね!!」
とマリー。
「ア、 アタイがショウ様の大事な人なのかい?」
とユリア。
「レイナはショウ様と相思相愛だと信じていました」
とレイナ。
「ウチ、ショウ様のそばにいられて幸せです」
とカッサンドラ。
「ボクはショウ様の大事な人だったのか」
とバネッサ。
「わたくしはショウ様のためなら何でもしますわ」
とシャーロット。
「イチャイチャすんのは結構ですが、頼みますぜ?」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
ズシン!!!!
「で、出たあ!!!」
とうとうトロールが其の不気味な巨体を現した。
全長三メートルは優に有り濁った緑色の皮膚からは粘液が漏れ出る。
知性は感じ取れないが、漂う凶暴な敵意がトロールに自我が有る事を明示していた。
「グガガ、、、ガガ」
トロールは言葉では無く唸り声を上げる。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
翔は馬車から身を乗り出す。
ズバッ!!!
翔の一振りでトロールは真っ二つになった。
ドスウウン!!!
トロールの死体が地面に崩れ落ちる。
「す、すげえ、すげえよ旦那!」
御者が狂喜する。
「ううううう!ショウ様かっこよすぎますう!!」
とマリー。
「アタイはショウ様にメロメロだよ~」
とユリア。
「レイナはショウ様に一生ついていきます」
とレイナ。
「ウチはショウ様と出会うために生れて来たんやと思います」
とカッサンドラ。
「ボク、ショウ様が大好き」
とバネッサ。
「ショウ様と出会えてわたくしは幸せです」
とシャーロット。
トロールを倒したが、翔は剣を鞘に納めない。
「まだ終わっていない」
翔は辺りを見渡す。
「脅かさないで下さいよ、旦那」
御者は冗談でしょ、と言いたげに聞く。
「ボオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」
地の底から響くようなトロールの声が沼地を包む。
ズシン! ズシン! ズシン! ズシン! ズシン!
ズシン! ズシン! ズシン! ズシン! ズシン!
トロールの声が沼地を包むと、四方八方からトロールが出現した。
一体目のトロールは歩いて現れたが、今回は走って現れる。
「ひいい!旦那ァ!!」
御者は悲鳴を上げる。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
翔は高く舞い上がり、トロールの群れに飛び込んだ。
トロールは翔を攻撃しようとするが、翔の周りに光が走るとトロールは動きを止める。
翔の斬撃がトロールを瞬殺したのだ。
翔が着地すると、その僅かな衝撃で三体のトロールが地面に崩れ落ちる。
「ボオオオ!!」
トロールは怒りを露わにして翔に襲いかかる。
しかし、翔とトロールの間には、絶対的な速度の差が有った。
トロールに包囲されても、翔は難なくそれを潜り抜ける。
トロールの岩をも砕く一撃が翔にヒットするよりも前に、翔の一太刀はトロールを葬っていた。
三体に囲まれようと、五体に囲まれようと、トロールの一撃が当たる事は無い。
翔と其の剣は最速で敵を討伐する。
「ボオ」
「ボオ」
トロール達は、戦意を喪失し始めている。
「ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
先ほどのトロールの声がした。
ズシン!!!ズシン!!!ズシン!!!
一際大きなトロールが現れた。
「お前が此処の支配者か」
翔はトロールのドンに呟く。
「ボオオオオオオオ!!!!」
トロール・ドンの右手が翔に襲いかかる。
ゴアッ!!
「!!!」
翔はトロール・ドンの攻撃を回避した、が。
着地が完了する前にトロール・ドンの追撃が翔を襲う。
ボギャ!!!!
鈍い音がして、翔は弾き飛ばされる。
「ショウ様!!!」
六人は悲鳴を上げる。
「っがあ!」
翔は岩に激突した。岩を這っていたヤモリは翔の背中につぶされる。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔はダメージを回復した。
「ボオオオオオオ!!!!」
他のトロールの攻撃が翔を襲う。
ドゴッ!!
攻撃をしかけてきたトロールの内、一体は倒したが、もう一体からの攻撃は食らった。
ズバッ!!!
即座に反撃し、もう一体を倒す。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔はダメージを回復した。
「先に雑魚から片付けるか」
翔は跳躍し、次々とトロールを葬っていく。
ズバン!
「ボオオオ!!」
トロール・ドンは翔に襲いかかる。
しかし翔はトロール・ドンの攻撃を回避し、他のトロールを倒していく。
ズバッ!!
「片付いたか」
翔は剣を振るい、付着した血液を払い飛ばす。
「お前が最後だ」
翔はトロール・ドンに剣の切っ先を向ける。
「ボオオオ!!」
トロール・ドンは怒り狂い、翔に突進する。
「お前のターンは一度だけだったんだよ」
一筋の閃光がトロール・ドンを通過し、トロール・ドンは崩れ落ちた。
翔は一太刀でトロール・ドンを討伐した。
「ううううう!ショウ様かっこいいですう!」
とマリー。
「アタイはショウ様にメロメロだよ~」
とユリア。
「レイナはショウ様だけを愛しています」
とレイナ。
「ウチはショウ様が居ないと生きていけません」
とカッサンドラ。
「ボクはショウ様になら、なにされてもいいよ」
とバネッサ。
「わたくしの心はショウ様で満たされていますわ」
とシャーロット。
「あっしは旦那を尊敬してやす」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
沼地を抜けて、馬車はジョン岩山へと向かう。
ショウ・タイム(翔の時間)は加速する。
翔は目を覚ます。
顔を洗い、朝食をとる。
海の幸、山の幸が惜しみなく使われた豪勢な食事だった。
「ショウ様!」
マリーが翔に声をかける。
「何だ?」
「ううううう!今日はなにをするんですか?」
マリーはウサギの耳をピョコピョコ動かす。
「そうだな、外を見て回ろうと思う」
「そ、そとをみてまわる????」
マリーは翔の言葉を理解出来なかった。
「そうだ。この世界はまだまだ広がっている。国の基礎は整えた。俺が直接指示を出さずとも、ある程度まで発展するだろう。次の陣頭指揮が必要になるまでの期間、外界を散策しようと考えている」
「出かけるんですか?」
「ああ」
「マリーも付いていきますう!!」
「アタイも連れて行っておくれ!」
「レイナも御一緒させてください」
「ウチも付いて行ってよろしいですか?」
「ボクもいきたい!!」
「わたくしの背に乗って行ってください」
マリーとユリアとレイナとカッサンドラとバネッサとシャーロットは、翔に付き従う。
「ならば、そろそろ出掛けるか」
翔は立ち上がり、準備をする。
「行くぞ!」
「ショウ様―――――!!お気をつけて―――――!!!」
皆は手を振り翔と六人を見送る。
翔と六人は、旅に出た。
翔と六人は荒野を歩く。
「うううううう、暑いですう。。。。」
「こりゃあ参るね」
「特にマーメイドには堪えますわ」
「リザードマンにも辛いです」
「ボクは全然平気だよ」
「わたくしも平気ですわ」
種族ごとに適した環境がある。
それは分かり切っていたことだが、それをまざまざと見せつけられていた。
「何処か休息をとれる場所を探すか」
翔たちは歩く。
荒野を歩いていると、砂埃の向こうから音が聞こえる。
馬の蹄の音と、車輪の音。
そして罵声と悲鳴。
「オラオラオラァ!!金目のモン置いてけや――――!!!!」
「うわ―――――!!!」
翔は剣を構える。
「な、なんですか!?」
六人は怯える。
「馬車強盗だ、多分な」
一陣の風が吹き、砂煙が晴れる。
「おお!?何だお前ら!?お前らも金目のモン寄こせ!!」
強盗は人間の三人組だった。それぞれ馬に跨り、剣で武装している。その中の一人が、翔たちにも恫喝する。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
一閃、一閃、一閃。
翔の抜刀は音も無く、ただ刹那に反射された太陽光だけが其れを知らせた。
「ぐあ!」
「がっ」
「うぐ」
馬車強盗の三人組は大地に転げ落ちる。
馬車の御者は、翔の神業に唖然とする。
「い、今のは、あなたが。。。。?」
御者が翔に訊ねる。
「そうだが」
「す、すばらしい!!!あなたのような達人は初めて見た!!!」
御者は鼻息荒く、まくし立てる。
「お前は、何処から来て、何処へ行くんだ?」
翔が御者に訊ねる。
「あっしはレットハ村からギルデンスターン王国へと向かう途中なのです」
「ギルデンスターン王国とは栄えているのか?」
「はい、それはもう!この辺りでは随一の繁栄を誇っています」
「ふむ、俺達を乗せて行ってくれないか?」
「し、しかし」
「道中で襲いかかる敵は全員撃退してやる」
「そうですね、それでしたら」
翔たちは馬車に乗り込み、ギルデンスターン王国を目指す。
「それで、どれ位でギルデンスターン王国に到着するんだ?」
「ここからギルデンスターン王国へ行くには、ドミニク沼地を通過して、次にジョン岩山を通過して、到着です。二日ほどですかね」
「そうか」
≪ドミニク沼地≫
「此処がドミニク沼地か」
と翔。
「ううう、なんだか不気味ですう」
とマリー。
「不穏な気配を感じるよ」
とユリア。
「怖いです」
とレイナ。
「何かに見られている気がします」
とカッサンドラ。
「こんな場所があったんだ」
とバネッサ。
「自分では歩きたくない場所ですわ」
とシャーロット。
ドミニク沼地は仄暗く、陰惨な空気が立ち込めている。
心なしか荷車を牽引する馬も歩くのが嫌そうだ。
荒野は湿度が極端に低く、土埃やうだるような暑さが有り、とても快適とは言えなかった。
それとは真逆の沼地だが、やはり快適とは言えない。
荒野を行く馬の蹄は軽快な音を鳴らしていたが、沼地の其れは耳障りですらある。
「ここらへん、出るって噂なんでさあ」
御者が誰に言うともなくこぼした。
「何が出ると言うんだ?」
翔は問う。
「トロールが出るって噂があるんですよ」
御者はトロールと言う単語を忌々しげに発音する。
「トロールは有害なのか」
「はい、そりゃもう。旦那は強盗を瞬殺してくれやしたが、ありゃあ人間でしたからね。トロールは怪物でさあ。会わぬが吉ってやつですよ」
「そんなにトロールが嫌なら、別のルートを選べば良い」
翔は一般論を語る。事情が有ることを予想しながら。
「へへ、そうしたいのは山々なんですが、あっしは商人でして。積み荷を期日内にギルデンスターン王国へ届けにゃあならんのです」
「このルートが最短なのか」
「へい、それもありやすが、他のルートも安全とは言えないもんで」
「安心しろ。俺は人間以外も倒せる」
翔は誇張の無い事実を言葉にした。
「うううう!そうです!ショウ様は誰にも負けません!」
とマリー。
「そうさ!ショウ様ほど強い御方はいないよ!」
とユリア。
「レイナはショウ様を誰よりも信じています」
とレイナ。
「ウチはショウ様のお役に立てるなら、なんでもします」
とカッサンドラ。
「ボクは誰が相手でもショウ様が勝つと思うな!」
とバネッサ。
「わたくしはショウ様ほど優れた御方を知りません」
とシャーロット。
「へへ、ずいぶん信頼されてやすね、旦那」
と御者。
「ヒヒーン!!」
と馬。
沼地のそこかしこで生物が蠢く。
岩を伝うヤモリ。
空を切る蝙蝠。
地を這う蛇。
木々に巣を張り移動する蜘蛛。
生物の面影が白骨だけの荒野とは対極だった。
今のところ、トロールの気配はしない。
万事順調に運ぶかと御者が安堵した矢先、
ズシン!
「!!!」
御者は沼地の足場にも響く不吉な音を聞いた。
それは当然、翔にも聞こえる。
しかし二人とも、それを言葉にしない。
御者は、不気味な足音が幻聴であることを祈り、現実を受け入れたくなかったから。
翔は、迎撃に時間が必要では無いが故に、その姿を現すまでは気に留めない。
ズシン!!
再び足音が響く。少なくとも、その足音は馬よりも重量が有ることを示していた。
ズシン!!!
三度足音が響く。御者は汗まみれだった。足音が大きくなる事が、接近を知らせる。
「、、、、、だ、、旦那、、、、、守ってくれるんですよ、、、ね。。。。?」
御者は受け入れ難い現実に向き合い、翔に臨戦態勢を取ることを仄めかす。
「安心しろ。此の馬車には俺と、俺の大事な人が六人も乗っているんだからな。今ここで別れることは上手くない」
翔は剣の柄に手を添える。
「ううううう!ショウ様の大事な人ってマリーですね!!」
とマリー。
「ア、 アタイがショウ様の大事な人なのかい?」
とユリア。
「レイナはショウ様と相思相愛だと信じていました」
とレイナ。
「ウチ、ショウ様のそばにいられて幸せです」
とカッサンドラ。
「ボクはショウ様の大事な人だったのか」
とバネッサ。
「わたくしはショウ様のためなら何でもしますわ」
とシャーロット。
「イチャイチャすんのは結構ですが、頼みますぜ?」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
ズシン!!!!
「で、出たあ!!!」
とうとうトロールが其の不気味な巨体を現した。
全長三メートルは優に有り濁った緑色の皮膚からは粘液が漏れ出る。
知性は感じ取れないが、漂う凶暴な敵意がトロールに自我が有る事を明示していた。
「グガガ、、、ガガ」
トロールは言葉では無く唸り声を上げる。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
翔は馬車から身を乗り出す。
ズバッ!!!
翔の一振りでトロールは真っ二つになった。
ドスウウン!!!
トロールの死体が地面に崩れ落ちる。
「す、すげえ、すげえよ旦那!」
御者が狂喜する。
「ううううう!ショウ様かっこよすぎますう!!」
とマリー。
「アタイはショウ様にメロメロだよ~」
とユリア。
「レイナはショウ様に一生ついていきます」
とレイナ。
「ウチはショウ様と出会うために生れて来たんやと思います」
とカッサンドラ。
「ボク、ショウ様が大好き」
とバネッサ。
「ショウ様と出会えてわたくしは幸せです」
とシャーロット。
トロールを倒したが、翔は剣を鞘に納めない。
「まだ終わっていない」
翔は辺りを見渡す。
「脅かさないで下さいよ、旦那」
御者は冗談でしょ、と言いたげに聞く。
「ボオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」
地の底から響くようなトロールの声が沼地を包む。
ズシン! ズシン! ズシン! ズシン! ズシン!
ズシン! ズシン! ズシン! ズシン! ズシン!
トロールの声が沼地を包むと、四方八方からトロールが出現した。
一体目のトロールは歩いて現れたが、今回は走って現れる。
「ひいい!旦那ァ!!」
御者は悲鳴を上げる。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
翔は高く舞い上がり、トロールの群れに飛び込んだ。
トロールは翔を攻撃しようとするが、翔の周りに光が走るとトロールは動きを止める。
翔の斬撃がトロールを瞬殺したのだ。
翔が着地すると、その僅かな衝撃で三体のトロールが地面に崩れ落ちる。
「ボオオオ!!」
トロールは怒りを露わにして翔に襲いかかる。
しかし、翔とトロールの間には、絶対的な速度の差が有った。
トロールに包囲されても、翔は難なくそれを潜り抜ける。
トロールの岩をも砕く一撃が翔にヒットするよりも前に、翔の一太刀はトロールを葬っていた。
三体に囲まれようと、五体に囲まれようと、トロールの一撃が当たる事は無い。
翔と其の剣は最速で敵を討伐する。
「ボオ」
「ボオ」
トロール達は、戦意を喪失し始めている。
「ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
先ほどのトロールの声がした。
ズシン!!!ズシン!!!ズシン!!!
一際大きなトロールが現れた。
「お前が此処の支配者か」
翔はトロールのドンに呟く。
「ボオオオオオオオ!!!!」
トロール・ドンの右手が翔に襲いかかる。
ゴアッ!!
「!!!」
翔はトロール・ドンの攻撃を回避した、が。
着地が完了する前にトロール・ドンの追撃が翔を襲う。
ボギャ!!!!
鈍い音がして、翔は弾き飛ばされる。
「ショウ様!!!」
六人は悲鳴を上げる。
「っがあ!」
翔は岩に激突した。岩を這っていたヤモリは翔の背中につぶされる。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔はダメージを回復した。
「ボオオオオオオ!!!!」
他のトロールの攻撃が翔を襲う。
ドゴッ!!
攻撃をしかけてきたトロールの内、一体は倒したが、もう一体からの攻撃は食らった。
ズバッ!!!
即座に反撃し、もう一体を倒す。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔はダメージを回復した。
「先に雑魚から片付けるか」
翔は跳躍し、次々とトロールを葬っていく。
ズバン!
「ボオオオ!!」
トロール・ドンは翔に襲いかかる。
しかし翔はトロール・ドンの攻撃を回避し、他のトロールを倒していく。
ズバッ!!
「片付いたか」
翔は剣を振るい、付着した血液を払い飛ばす。
「お前が最後だ」
翔はトロール・ドンに剣の切っ先を向ける。
「ボオオオ!!」
トロール・ドンは怒り狂い、翔に突進する。
「お前のターンは一度だけだったんだよ」
一筋の閃光がトロール・ドンを通過し、トロール・ドンは崩れ落ちた。
翔は一太刀でトロール・ドンを討伐した。
「ううううう!ショウ様かっこいいですう!」
とマリー。
「アタイはショウ様にメロメロだよ~」
とユリア。
「レイナはショウ様だけを愛しています」
とレイナ。
「ウチはショウ様が居ないと生きていけません」
とカッサンドラ。
「ボクはショウ様になら、なにされてもいいよ」
とバネッサ。
「わたくしの心はショウ様で満たされていますわ」
とシャーロット。
「あっしは旦那を尊敬してやす」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
沼地を抜けて、馬車はジョン岩山へと向かう。
ショウ・タイム(翔の時間)は加速する。
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ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
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※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
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【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
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