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ゴブリンを全滅させてDQNに鼻血を出させて失禁させる
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≪ジョン岩山≫
蹄の音が軽快に鳴り響く。
「いやあ、旦那のお陰で予定よりも、ずっと早くギルデンスターン王国へ到着できそうでさあ」
御者は機嫌よく馬を駆る。
「そうか」
翔は素っ気なく返事をした。
「、、、、、、そう言えば、この辺りは安全なのか?」
翔は確認を怠らない。
「この辺りには、ゴブリンが出るって噂でさあ。ま、旦那ならゴブリンなんて、一捻りでしょう?また、頼みますぜ。へへへ」
御者は気楽に笑う。
「、、、、、だと良いんだがな。。。。。」
翔は周囲を観察する。
岩山は隆起により高低差が生じている。
ゴブリンが短絡的な戦闘を挑んでくればいとも容易く撃退できるが、地形の活用を戦法に組み込んでくれば面倒になりそうだな、と翔は思った。
「ギャア!ギャア!」
怪鳥が数羽、空を舞う。
不穏な空気が辺りを包む。
馬の一部が黒くなる。
「!!!」
翔は飛び出し抜刀した。
ズバッ!!!!
翔はゴブリンを両断する。
馬の一部が黒くなっていたのは、飛びかかって来たゴブリンの影だった。
「ひい!!」
御者は悲鳴を上げる。
「やはりか」
翔は周囲を見渡す。
すでに馬車はゴブリンのチームに包囲されていた。
沼地のトロールとは違い、一体やられたからといって、安易に襲いかかってこない。
ゴブリンの戦略がどの水準に有るのかはともかく、激情に駆られて動いていない事は確かである。
「だ、旦那ァ」
御者は力無く翔に縋る。
「このまま進め。攻撃は全て無力化してやる」
翔は馬車の幌に登る。
「へ、へい!」
御者は馬に鞭を打ち、先を急ぐ。
「ヒヒーン!!」
馬も危険を感じ取ったのか、先ほどよりも早いペースで馬車を曳く。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
ビュッ!!
ゴブリンの投石。
ズバッ!!!
翔はゴブリンの投石を切り裂く。
ゴブリンは翔の実力を知り、投石を四方八方から行う。
ケンタウロスの矢の嵐を難無く切り抜けた翔にとって、ゴブリンの行う原始的な遠距離攻撃は欠伸が出るほど緩慢だった。
「グオアアアア!!!」
痺れを切らし、ゴブリンの群れが襲いかかってくる。
「この程度か」
トロールよりは戦略性が有るが、ゴブリンには忍耐力が決定的に欠落していた。
ズバッ!ズババッ!!
翔は次々とゴブリンを両断する。
「さ、さすが旦那でさァ!!」
御者は改めて翔の強さを認識した。
スゥ。。。。。。
巨大な黒い影が頭上に現れる。
暗雲では無い。
翔は即座に理解した。
「全速力で走れ!!巨石が落ちてくる!!!」
翔は大声で御者に命令する。
「は、はい!!」
御者は短く返事をすると、馬に強い一撃を鞭で入れた。
「ヒヒーン!!!」
馬は全速力で走りだす。
しかし、間に合わない。
「うおりゃあああああああああああああああ!!!」
翔は雄叫びを上げて、落下する巨石に剣を振るう。
ズバァァァァァン!!!!!!!!!!
翔は巨石を切り裂いた。
しかし。
ズガッ!!
ゴブリンの投げつけた拳大の石が翔の頭に直撃する。
「があっ!!」
一瞬意識が朦朧とするが、即座に身体の制御を再構築して立て直す。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔のダメージが回復した。
「旦那!大丈夫ですか!?」
「良いから走り続けろ!!」
翔には致命的な弱点が有る。
それは攻撃の射程距離が短い事だ。
だが、翔は不屈の精神で戦う。
馬、御者、幌に被害が及ばぬように、文字通り身を呈して戦った。
馬車が岩山を通過するまで、それを続ける積りでいる。
段々と岩山の隆起は激しくなり、左右は完全に壁のようになっていく。
引き返すことの出来ない一本道になっていた。
「ショウ様!マリーも戦います!」
とマリー。
「ショウ様!アタイも戦うよ!」
とユリア。
「ショウ様!レイナも戦います!」
とレイナ。
「ショウ様!ウチも戦います!」
とカッサンドラ。
「ショウ様!ボクも戦うよ!」
とバネッサ。
「ショウ様!わたくしも戦いますわ!」
とシャーロット。
「大人しくしていろ!足手まといだ!」
翔は声を荒げた。
勇者の腕輪により誰であれ回復出来るが、死者の復活は出来ない。
翔は自身の死を全く考えていない。
六人の内、誰か一人でも外に出れば一気に防御が困難になる。
ゴブリンの投石は止まない。
拳大の投石から、巨大な落石まで、不規則だが継続して行われる。
巨石は崖から落とす作業に時間がかかる分、予測が容易で対処しやすいとも言えた。
翔が巨石を両断する際、拳大の投石は受けるしかない。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔のダメージは回復した。
翔は前方を見る。岩山の狭い出口に、巨大な岩石が落とされようとしている。
そうすれば出口は塞がってしまう。
御者も最悪の危機に気付き、目一杯馬を走らせる。
「行け――――――――!!!!」
御者は叫ぶ。
ズズズズウウウウンンン!!!!!!!
巨石は落下し、岩山の出口を塞いだ。
「お、終わった。。。。。」
御者は涙と鼻水と涎を垂れ流す。
馬は出口を塞ぐ巨石の前で止まり、立ち往生する。
「終わりだ」
翔は呟いた。
「ショウ様。。。。???」
六人は翔の言葉で激しい動揺に誘われる。
「投げつける小石も、落下させる巨石も尽きた様だな。石は無限では無い。これでお前らターンは終わりだ」
翔は清々しい顔をして呟いた。
翔は高く跳躍し、巨石の上に軽々と立つ。
そして道の左右に隆起する岸壁に飛び移る。
まるで今、戦い始めたかのように、翔は疾走する。
ゴブリンを一筋の閃光が通過すると、血飛沫が溢れて崩れ落ちた。
次々とゴブリンが討伐されて行く。
しばらくして、翔は馬車に戻ってきた。
「ショウ様!」
六人は翔の帰還に歓声を上げる。
「旦那、無事でしたか」
御者も胸を撫で下ろす。
「少し下がれ」
翔の言葉に従い、馬車は距離を置く。
ズバン!!!
岩山の出口を塞ぐ巨石は、真っ二つに切り裂かれた。
ズズウウウン。。。。!!!
岩山の出口が開いた。
「うううううう!ショウ様すごいですう!」
とマリー。
「ああ~。ショウ様かっこよすぎるよ~」
とユリア。
「ショウ様といると、ドキドキが止まりません」
とレイナ。
「ショウ様かっこいいです」
とカッサンドラ。
「ボク、ショウ様大好き」
とバネッサ。
「わたくしの心はショウ様に抱く愛で、満たされています」
とシャーロット。
「旦那、あっしは旦那を信じてやしたぜ」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
翔と一行はジョン岩山を抜けて、ギルデンスターン王国へ向かう。
レットハ村からギルデンスターン王国へ向かう速度としては、史上最速だった。
ショウ・タイム(翔の時間)の真骨頂である。
雲は空を泳ぎながら形を変え、太陽は少しずつ地平線へ向かう。
荒野や沼地、岩山と違い、のどかで緑や命の溢れる場所に突入した。
「そろそろか?」
翔は御者に問う。
「へい、そろそろギルデンスターン王国に到着しやす。こんなに早く到着出来るなんて、旦那のお陰でさあ」
御者は機嫌良く返事をする。
ビュウ。
一陣の風が吹いた。
靄が晴れ、進む先に景色が現れる。
≪ギルデンスターン王国≫
「ほお」
翔は感嘆の声を上げた。
それは見事な王国だった。
並び立つ民家は人口の多さを物語り、乱れ立つ商館は経済の興隆を物語る。
そして中央にそびえ立つ巨大で荘厳な城は王の権威と文化の爛熟を物語っていた。
「見に来た甲斐が有る」
翔は二ヤリと笑う。
六人も馬車から身を乗り出し、ギルデンスターン王国を興味深そうに見る。
「それじゃあ旦那、あっしはこの辺で。ありがとうございやす。少ないですが、こいつは礼金でさあ。受け取ってくんせえ」
御者は布袋を取り出し、翔に渡す。
それを受け取る時に、金属音がチャリンと鳴る。
中は貨幣で、貨幣と言う文化が広まっている事が明らかになった。
翔と六人は馬車を降り、御者は手を振りながら王国の街並みへと姿を消す。
「ううううう!すごいですう!」
マリーはウサギの耳をピョコピョコと動かす。
「ああ、大した街並みだな」
翔は同意した。
「違いますよ!すごいのはショウ様ですう!」
マリーは目を輝かせながら翔に抱きつく。
「何を言っているんだ?」
翔はマリーに問う。
「マリー達は、ずっと自然の中で貧しく暮らしていました。でも、ショウ様が現れて数日で立派な国を作ってくれました!」
マリーは翔に豊満な胸を押しつけながら興奮して話す。
「このギル何とか王国はもっともっと時間がかかったはずなのに、ショウ様のお陰でマリー達は立派な国に住めました!」
そう言う見方も有るのかな、と翔は思った。
「マリーはショウ様に感謝してもしきれません」
マリーは翔の顔をペロペロと舐める。
「アタイの方がショウ様に感謝してるよ!」
とユリア。
「レイナが一番ショウ様に感謝しています!」
とレイナ。
「ウチだって誰にも負けないぐらいショウ様に感謝してます!」
とカッサンドラ。
「ボクが一番ショウ様にありがとうって思ってるよ!」
とバネッサ。
「わたくしこそショウ様に感謝していますわ!」
とシャーロット。
六人が翔に抱きつく。
「分かったから離れろ」
翔は御者から貰った貨幣の使い道を考えていた。
「あれ、翔じゃね?」
道を歩く二人組の男の片方が、翔を見て呟いた。
「翔って誰だよ」
もう片方が聞き返す。
「ほら、いたじゃん、いつも隅っこで本読んでるやつ」
「あー、あの陰キャぼっち」
二人は現世から召喚された翔のクラスメイトだった。
「オメーら遅えぞ!」
気の強そうな男が現れ、二人を怒鳴りつける。風貌からしてDQNだった。
「わりーわりー。陰キャぼっち見つけたからさ」
「誰だそれ!?」
DQNは二人が指差す方を見る。
「あんな奴、オレらの学校にいたか!?」
「いや、同じクラスだって。いつも一人で本読んでる奴」
片方の男がDQNに説明する。
「なんだそれ?いつも一人で本読んでんのかよ!?ネクラじゃねえか!!キモッ!!」
DQNは嘲笑する。
「つかなんだ、アイツ女に囲まれてっぞ。しかもコスプレさせてるし。キメェ!」
DQNは翔と六人を見た。
「いや、あれ多分、ビーストヒュームって奴だよ」
片方の男が言った。
「アァ!?ンだそりゃ!?」
「聞いてねえのかよ」
片方の男が呆れ気味に答える。
「ンだテメェ!?ブッ殺すぞ!!」
DQNは片方の男の胸倉を掴む。DQNの沸点は異常に低かった。知能もだが。
「アイツら、あーいう生き物なんだよ!この世界には、人間と動物が混ざったみてぇなヤツらがいるんだよ!」
胸倉を掴まれていない方の男が慌てて説明した。
「ンだそりゃ!?バケモンかよ!?アイツバケモンといっしょにいたのかよ!?ウケル!!つかキメェ!!ギャハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
DQNは腹を抱えて笑う。
「だよな」
「マジウケル」
二人の男はDQNに同調して笑った。
「あーハラいてぇ」
DQNは笑いが一段落すると、涙を拭う。
「ヒマだしイジメてやっか」
DQNは翔たちに向って歩き出す。
「やさしー♪」
片方の男が悪ノリして応える。
「ブハッ」
もう片方の男が吹きだす。
DQNと二人の男が翔たちに向って歩き出した。
「すいませーん」
DQNが翔に声をかける。
「ペットショップってドコにあるんすかー?」
DQNの質問に、取り巻きの二人はニヤニヤと笑う。
「ペットショップ?」
翔は振り向く。
「さあ、知らないな」
翔は素っ気なく答える。
「えー?イジワルしないで教えてくださいよー」
DQNはふざけた態度で質問を続けた。
「知らないと言っている」
翔は不愉快に思いながらも簡潔に答える。
「嘘つかないでくださいよー。それとも拾ったんすかー?」
「拾った?」
DQNと翔の会話を、不安そうにマリー達は見守る。
「拾ったなら、ドコで拾ったのか教えてくださいよー」
「何の話をしているんだ?お前」
翔はDQNを睨み付ける。
「お兄さんが連れてる六匹のペット、ドコで拾ったんすかー?」
「ブハッ」
「ククク」
取り巻きの二人が笑う。
「何の話か興味も無いが、動物に動物の世話など出来ないぞ。人間に進化してから考えろ」
翔は冷たく言い放つ。
「、、、、ア!?誰にモノいってんだ!?テメェ!?ブッ殺すぞ!!陰キャぼっちのオタクが調子乗ってんじゃねぇぞコラ!!?」
DQNは翔に殴りかかる。
ドガッ!!!
DQNの攻撃は回避され、カウンターで顔面に拳骨を喰らった。
「うぎゃあ!!」
DQNは倒れこむ。
「ッテエ、、、ナニシテくれてンだ!!?アアン!!?」
鼻血を流しながらもDQNは虚勢を張る。
ビュッ!!!
翔の振り下ろした剣がDQNの鼻先に止まり、鼻の頭から血が滲み出る。
「ブッ殺すらしいな。その前にお前が死ね」
翔が冷たい眼でDQNを見下ろすと、DQNは震えだした。
ジョロロロロロ。。。。。。。
水音と共に臭気が立ち込める。
「うあ、うあ」
DQNは小便を漏らしていた。
「ヒイィ」
取り巻きの二人は我先にと逃げ出す。
DQNは白目を剥き、口から泡を吹いて気絶した。
翔は呆れ果て、剣を収める。
「馬鹿馬鹿しい」
DQNに憐れみと嫌悪を抱きながら、翔は六人を連れてその場を後にした。
蹄の音が軽快に鳴り響く。
「いやあ、旦那のお陰で予定よりも、ずっと早くギルデンスターン王国へ到着できそうでさあ」
御者は機嫌よく馬を駆る。
「そうか」
翔は素っ気なく返事をした。
「、、、、、、そう言えば、この辺りは安全なのか?」
翔は確認を怠らない。
「この辺りには、ゴブリンが出るって噂でさあ。ま、旦那ならゴブリンなんて、一捻りでしょう?また、頼みますぜ。へへへ」
御者は気楽に笑う。
「、、、、、だと良いんだがな。。。。。」
翔は周囲を観察する。
岩山は隆起により高低差が生じている。
ゴブリンが短絡的な戦闘を挑んでくればいとも容易く撃退できるが、地形の活用を戦法に組み込んでくれば面倒になりそうだな、と翔は思った。
「ギャア!ギャア!」
怪鳥が数羽、空を舞う。
不穏な空気が辺りを包む。
馬の一部が黒くなる。
「!!!」
翔は飛び出し抜刀した。
ズバッ!!!!
翔はゴブリンを両断する。
馬の一部が黒くなっていたのは、飛びかかって来たゴブリンの影だった。
「ひい!!」
御者は悲鳴を上げる。
「やはりか」
翔は周囲を見渡す。
すでに馬車はゴブリンのチームに包囲されていた。
沼地のトロールとは違い、一体やられたからといって、安易に襲いかかってこない。
ゴブリンの戦略がどの水準に有るのかはともかく、激情に駆られて動いていない事は確かである。
「だ、旦那ァ」
御者は力無く翔に縋る。
「このまま進め。攻撃は全て無力化してやる」
翔は馬車の幌に登る。
「へ、へい!」
御者は馬に鞭を打ち、先を急ぐ。
「ヒヒーン!!」
馬も危険を感じ取ったのか、先ほどよりも早いペースで馬車を曳く。
「ショウ・タイム(俺の時間)だ」
ビュッ!!
ゴブリンの投石。
ズバッ!!!
翔はゴブリンの投石を切り裂く。
ゴブリンは翔の実力を知り、投石を四方八方から行う。
ケンタウロスの矢の嵐を難無く切り抜けた翔にとって、ゴブリンの行う原始的な遠距離攻撃は欠伸が出るほど緩慢だった。
「グオアアアア!!!」
痺れを切らし、ゴブリンの群れが襲いかかってくる。
「この程度か」
トロールよりは戦略性が有るが、ゴブリンには忍耐力が決定的に欠落していた。
ズバッ!ズババッ!!
翔は次々とゴブリンを両断する。
「さ、さすが旦那でさァ!!」
御者は改めて翔の強さを認識した。
スゥ。。。。。。
巨大な黒い影が頭上に現れる。
暗雲では無い。
翔は即座に理解した。
「全速力で走れ!!巨石が落ちてくる!!!」
翔は大声で御者に命令する。
「は、はい!!」
御者は短く返事をすると、馬に強い一撃を鞭で入れた。
「ヒヒーン!!!」
馬は全速力で走りだす。
しかし、間に合わない。
「うおりゃあああああああああああああああ!!!」
翔は雄叫びを上げて、落下する巨石に剣を振るう。
ズバァァァァァン!!!!!!!!!!
翔は巨石を切り裂いた。
しかし。
ズガッ!!
ゴブリンの投げつけた拳大の石が翔の頭に直撃する。
「があっ!!」
一瞬意識が朦朧とするが、即座に身体の制御を再構築して立て直す。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔のダメージが回復した。
「旦那!大丈夫ですか!?」
「良いから走り続けろ!!」
翔には致命的な弱点が有る。
それは攻撃の射程距離が短い事だ。
だが、翔は不屈の精神で戦う。
馬、御者、幌に被害が及ばぬように、文字通り身を呈して戦った。
馬車が岩山を通過するまで、それを続ける積りでいる。
段々と岩山の隆起は激しくなり、左右は完全に壁のようになっていく。
引き返すことの出来ない一本道になっていた。
「ショウ様!マリーも戦います!」
とマリー。
「ショウ様!アタイも戦うよ!」
とユリア。
「ショウ様!レイナも戦います!」
とレイナ。
「ショウ様!ウチも戦います!」
とカッサンドラ。
「ショウ様!ボクも戦うよ!」
とバネッサ。
「ショウ様!わたくしも戦いますわ!」
とシャーロット。
「大人しくしていろ!足手まといだ!」
翔は声を荒げた。
勇者の腕輪により誰であれ回復出来るが、死者の復活は出来ない。
翔は自身の死を全く考えていない。
六人の内、誰か一人でも外に出れば一気に防御が困難になる。
ゴブリンの投石は止まない。
拳大の投石から、巨大な落石まで、不規則だが継続して行われる。
巨石は崖から落とす作業に時間がかかる分、予測が容易で対処しやすいとも言えた。
翔が巨石を両断する際、拳大の投石は受けるしかない。
≪勇者の腕輪・発動・回復≫
翔のダメージは回復した。
翔は前方を見る。岩山の狭い出口に、巨大な岩石が落とされようとしている。
そうすれば出口は塞がってしまう。
御者も最悪の危機に気付き、目一杯馬を走らせる。
「行け――――――――!!!!」
御者は叫ぶ。
ズズズズウウウウンンン!!!!!!!
巨石は落下し、岩山の出口を塞いだ。
「お、終わった。。。。。」
御者は涙と鼻水と涎を垂れ流す。
馬は出口を塞ぐ巨石の前で止まり、立ち往生する。
「終わりだ」
翔は呟いた。
「ショウ様。。。。???」
六人は翔の言葉で激しい動揺に誘われる。
「投げつける小石も、落下させる巨石も尽きた様だな。石は無限では無い。これでお前らターンは終わりだ」
翔は清々しい顔をして呟いた。
翔は高く跳躍し、巨石の上に軽々と立つ。
そして道の左右に隆起する岸壁に飛び移る。
まるで今、戦い始めたかのように、翔は疾走する。
ゴブリンを一筋の閃光が通過すると、血飛沫が溢れて崩れ落ちた。
次々とゴブリンが討伐されて行く。
しばらくして、翔は馬車に戻ってきた。
「ショウ様!」
六人は翔の帰還に歓声を上げる。
「旦那、無事でしたか」
御者も胸を撫で下ろす。
「少し下がれ」
翔の言葉に従い、馬車は距離を置く。
ズバン!!!
岩山の出口を塞ぐ巨石は、真っ二つに切り裂かれた。
ズズウウウン。。。。!!!
岩山の出口が開いた。
「うううううう!ショウ様すごいですう!」
とマリー。
「ああ~。ショウ様かっこよすぎるよ~」
とユリア。
「ショウ様といると、ドキドキが止まりません」
とレイナ。
「ショウ様かっこいいです」
とカッサンドラ。
「ボク、ショウ様大好き」
とバネッサ。
「わたくしの心はショウ様に抱く愛で、満たされています」
とシャーロット。
「旦那、あっしは旦那を信じてやしたぜ」
と御者。
「ヒヒーン」
と馬。
翔と一行はジョン岩山を抜けて、ギルデンスターン王国へ向かう。
レットハ村からギルデンスターン王国へ向かう速度としては、史上最速だった。
ショウ・タイム(翔の時間)の真骨頂である。
雲は空を泳ぎながら形を変え、太陽は少しずつ地平線へ向かう。
荒野や沼地、岩山と違い、のどかで緑や命の溢れる場所に突入した。
「そろそろか?」
翔は御者に問う。
「へい、そろそろギルデンスターン王国に到着しやす。こんなに早く到着出来るなんて、旦那のお陰でさあ」
御者は機嫌良く返事をする。
ビュウ。
一陣の風が吹いた。
靄が晴れ、進む先に景色が現れる。
≪ギルデンスターン王国≫
「ほお」
翔は感嘆の声を上げた。
それは見事な王国だった。
並び立つ民家は人口の多さを物語り、乱れ立つ商館は経済の興隆を物語る。
そして中央にそびえ立つ巨大で荘厳な城は王の権威と文化の爛熟を物語っていた。
「見に来た甲斐が有る」
翔は二ヤリと笑う。
六人も馬車から身を乗り出し、ギルデンスターン王国を興味深そうに見る。
「それじゃあ旦那、あっしはこの辺で。ありがとうございやす。少ないですが、こいつは礼金でさあ。受け取ってくんせえ」
御者は布袋を取り出し、翔に渡す。
それを受け取る時に、金属音がチャリンと鳴る。
中は貨幣で、貨幣と言う文化が広まっている事が明らかになった。
翔と六人は馬車を降り、御者は手を振りながら王国の街並みへと姿を消す。
「ううううう!すごいですう!」
マリーはウサギの耳をピョコピョコと動かす。
「ああ、大した街並みだな」
翔は同意した。
「違いますよ!すごいのはショウ様ですう!」
マリーは目を輝かせながら翔に抱きつく。
「何を言っているんだ?」
翔はマリーに問う。
「マリー達は、ずっと自然の中で貧しく暮らしていました。でも、ショウ様が現れて数日で立派な国を作ってくれました!」
マリーは翔に豊満な胸を押しつけながら興奮して話す。
「このギル何とか王国はもっともっと時間がかかったはずなのに、ショウ様のお陰でマリー達は立派な国に住めました!」
そう言う見方も有るのかな、と翔は思った。
「マリーはショウ様に感謝してもしきれません」
マリーは翔の顔をペロペロと舐める。
「アタイの方がショウ様に感謝してるよ!」
とユリア。
「レイナが一番ショウ様に感謝しています!」
とレイナ。
「ウチだって誰にも負けないぐらいショウ様に感謝してます!」
とカッサンドラ。
「ボクが一番ショウ様にありがとうって思ってるよ!」
とバネッサ。
「わたくしこそショウ様に感謝していますわ!」
とシャーロット。
六人が翔に抱きつく。
「分かったから離れろ」
翔は御者から貰った貨幣の使い道を考えていた。
「あれ、翔じゃね?」
道を歩く二人組の男の片方が、翔を見て呟いた。
「翔って誰だよ」
もう片方が聞き返す。
「ほら、いたじゃん、いつも隅っこで本読んでるやつ」
「あー、あの陰キャぼっち」
二人は現世から召喚された翔のクラスメイトだった。
「オメーら遅えぞ!」
気の強そうな男が現れ、二人を怒鳴りつける。風貌からしてDQNだった。
「わりーわりー。陰キャぼっち見つけたからさ」
「誰だそれ!?」
DQNは二人が指差す方を見る。
「あんな奴、オレらの学校にいたか!?」
「いや、同じクラスだって。いつも一人で本読んでる奴」
片方の男がDQNに説明する。
「なんだそれ?いつも一人で本読んでんのかよ!?ネクラじゃねえか!!キモッ!!」
DQNは嘲笑する。
「つかなんだ、アイツ女に囲まれてっぞ。しかもコスプレさせてるし。キメェ!」
DQNは翔と六人を見た。
「いや、あれ多分、ビーストヒュームって奴だよ」
片方の男が言った。
「アァ!?ンだそりゃ!?」
「聞いてねえのかよ」
片方の男が呆れ気味に答える。
「ンだテメェ!?ブッ殺すぞ!!」
DQNは片方の男の胸倉を掴む。DQNの沸点は異常に低かった。知能もだが。
「アイツら、あーいう生き物なんだよ!この世界には、人間と動物が混ざったみてぇなヤツらがいるんだよ!」
胸倉を掴まれていない方の男が慌てて説明した。
「ンだそりゃ!?バケモンかよ!?アイツバケモンといっしょにいたのかよ!?ウケル!!つかキメェ!!ギャハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
DQNは腹を抱えて笑う。
「だよな」
「マジウケル」
二人の男はDQNに同調して笑った。
「あーハラいてぇ」
DQNは笑いが一段落すると、涙を拭う。
「ヒマだしイジメてやっか」
DQNは翔たちに向って歩き出す。
「やさしー♪」
片方の男が悪ノリして応える。
「ブハッ」
もう片方の男が吹きだす。
DQNと二人の男が翔たちに向って歩き出した。
「すいませーん」
DQNが翔に声をかける。
「ペットショップってドコにあるんすかー?」
DQNの質問に、取り巻きの二人はニヤニヤと笑う。
「ペットショップ?」
翔は振り向く。
「さあ、知らないな」
翔は素っ気なく答える。
「えー?イジワルしないで教えてくださいよー」
DQNはふざけた態度で質問を続けた。
「知らないと言っている」
翔は不愉快に思いながらも簡潔に答える。
「嘘つかないでくださいよー。それとも拾ったんすかー?」
「拾った?」
DQNと翔の会話を、不安そうにマリー達は見守る。
「拾ったなら、ドコで拾ったのか教えてくださいよー」
「何の話をしているんだ?お前」
翔はDQNを睨み付ける。
「お兄さんが連れてる六匹のペット、ドコで拾ったんすかー?」
「ブハッ」
「ククク」
取り巻きの二人が笑う。
「何の話か興味も無いが、動物に動物の世話など出来ないぞ。人間に進化してから考えろ」
翔は冷たく言い放つ。
「、、、、ア!?誰にモノいってんだ!?テメェ!?ブッ殺すぞ!!陰キャぼっちのオタクが調子乗ってんじゃねぇぞコラ!!?」
DQNは翔に殴りかかる。
ドガッ!!!
DQNの攻撃は回避され、カウンターで顔面に拳骨を喰らった。
「うぎゃあ!!」
DQNは倒れこむ。
「ッテエ、、、ナニシテくれてンだ!!?アアン!!?」
鼻血を流しながらもDQNは虚勢を張る。
ビュッ!!!
翔の振り下ろした剣がDQNの鼻先に止まり、鼻の頭から血が滲み出る。
「ブッ殺すらしいな。その前にお前が死ね」
翔が冷たい眼でDQNを見下ろすと、DQNは震えだした。
ジョロロロロロ。。。。。。。
水音と共に臭気が立ち込める。
「うあ、うあ」
DQNは小便を漏らしていた。
「ヒイィ」
取り巻きの二人は我先にと逃げ出す。
DQNは白目を剥き、口から泡を吹いて気絶した。
翔は呆れ果て、剣を収める。
「馬鹿馬鹿しい」
DQNに憐れみと嫌悪を抱きながら、翔は六人を連れてその場を後にした。
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