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禁忌
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エルストラ王国の女王エルディアナ・エルストラは苦悩していた。
この世界には四つの勢力がある。
精霊・人間・魔族・竜族。
それぞれの種族が各々の領域に分かれ棲んでいた。
人間は精霊と盟約を結び、加護を受けていた。
精霊の加護により魔族や竜族の支配から免れていた。
しかし精霊の王が魔族と竜族に囚われ、状況は一変した。
魔族と竜族が限定的に盟約を結んだのである。
精霊王が幽閉されたことで、精霊は魔族と竜族の脅威に曝された。
そして、精霊に守られていた人間が無事であるはずもなく……。
人間の領域は魔族や竜族に侵食され、人は確実に生存圏を狭めていた。
人間の国でも魔族や竜族の領域に近い場所に位置する国家であるエルストラ王国の女王エルディアナは対策を講じなければならなかった。
そして神官たちを招集し、禁忌に手を伸ばそうとしていた。
異世界召喚である。
この世界の均衡を維持してきた精霊がその力を失いつつある以上、この世界に魔族と竜族の脅威に対抗できる者はいない。
この世界にいないのなら、別の世界から呼び寄せるしかない。
本来、交わることのない世界へと働きかけることは理に反するものである。
世界と世界を結びつける。それは崩壊を招き寄せる行いだ。
異世界との繋がりを時間的、空間的に限定することで世界への負荷を最小に抑える。
その一瞬、一点で現状を打開するために行えることが召喚。
その対象となるのが勇者である。
王の間の床に、巨大な魔法陣が描かれる。
異世界召喚という禁忌の実行に、家臣たちも苦言を呈した。
「許される行いではない」
「王家の歴史に泥を塗る」
「人間の味方をも失うことになる」
しかし、異世界召喚に代わる具体的な解決策を求められると空論ばかりで誰も代案を提示できなかった。
革命や暗殺といった単純な暴力から、宮廷を赤黒く彩る権謀術数まで、様々な妨害があったが、女王はそのすべてを抑えつけ、払いのけた。
神官たちは嬉々として禁忌に取り組み、女王は断腸の思いで指示を出した。
「女王は判断力を失った」
「若くして王位を継承したから慢心しているのだ」
「いや、功を求めて急いているのだ」
「現実が見えていない」
宮廷では噂が飛び交った。
それは誹謗中傷ではあるが、同時に真実でもあった。
魔族と竜族の領域侵食に判断力を失い、若さゆえの慢心があり、功績の提示を急ぎ、現実よりも未来と希望的観測に傾いている。
家臣たちが竜族と魔族の脅威に対し鈍感で、人間の結束や武力に淡い期待を寄せているように、女王は異世界召喚の危険性から目を背け、会ったこともない異世界人に希望と協力を妄信している。
異世界召喚の術式は円陣として床に刻印され、神官たちは呪文を詠唱し始める。
その場にいるものは心なしか寒気を感じ、光る魔法陣と、そこから漏れ出る紫色の煙に恐怖した。
各国の王たちは団結を知らず、エルストラ女王は若く未熟で、精霊王は火山に幽閉されている。
すべての要素が破滅を暗示していた。
絶望だった。
≪この世界≫は――――。
この世界には四つの勢力がある。
精霊・人間・魔族・竜族。
それぞれの種族が各々の領域に分かれ棲んでいた。
人間は精霊と盟約を結び、加護を受けていた。
精霊の加護により魔族や竜族の支配から免れていた。
しかし精霊の王が魔族と竜族に囚われ、状況は一変した。
魔族と竜族が限定的に盟約を結んだのである。
精霊王が幽閉されたことで、精霊は魔族と竜族の脅威に曝された。
そして、精霊に守られていた人間が無事であるはずもなく……。
人間の領域は魔族や竜族に侵食され、人は確実に生存圏を狭めていた。
人間の国でも魔族や竜族の領域に近い場所に位置する国家であるエルストラ王国の女王エルディアナは対策を講じなければならなかった。
そして神官たちを招集し、禁忌に手を伸ばそうとしていた。
異世界召喚である。
この世界の均衡を維持してきた精霊がその力を失いつつある以上、この世界に魔族と竜族の脅威に対抗できる者はいない。
この世界にいないのなら、別の世界から呼び寄せるしかない。
本来、交わることのない世界へと働きかけることは理に反するものである。
世界と世界を結びつける。それは崩壊を招き寄せる行いだ。
異世界との繋がりを時間的、空間的に限定することで世界への負荷を最小に抑える。
その一瞬、一点で現状を打開するために行えることが召喚。
その対象となるのが勇者である。
王の間の床に、巨大な魔法陣が描かれる。
異世界召喚という禁忌の実行に、家臣たちも苦言を呈した。
「許される行いではない」
「王家の歴史に泥を塗る」
「人間の味方をも失うことになる」
しかし、異世界召喚に代わる具体的な解決策を求められると空論ばかりで誰も代案を提示できなかった。
革命や暗殺といった単純な暴力から、宮廷を赤黒く彩る権謀術数まで、様々な妨害があったが、女王はそのすべてを抑えつけ、払いのけた。
神官たちは嬉々として禁忌に取り組み、女王は断腸の思いで指示を出した。
「女王は判断力を失った」
「若くして王位を継承したから慢心しているのだ」
「いや、功を求めて急いているのだ」
「現実が見えていない」
宮廷では噂が飛び交った。
それは誹謗中傷ではあるが、同時に真実でもあった。
魔族と竜族の領域侵食に判断力を失い、若さゆえの慢心があり、功績の提示を急ぎ、現実よりも未来と希望的観測に傾いている。
家臣たちが竜族と魔族の脅威に対し鈍感で、人間の結束や武力に淡い期待を寄せているように、女王は異世界召喚の危険性から目を背け、会ったこともない異世界人に希望と協力を妄信している。
異世界召喚の術式は円陣として床に刻印され、神官たちは呪文を詠唱し始める。
その場にいるものは心なしか寒気を感じ、光る魔法陣と、そこから漏れ出る紫色の煙に恐怖した。
各国の王たちは団結を知らず、エルストラ女王は若く未熟で、精霊王は火山に幽閉されている。
すべての要素が破滅を暗示していた。
絶望だった。
≪この世界≫は――――。
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