美しき怪人は少年少女探偵団を眠らせてくれない

white love it

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第4章

3.〜とあるプロジェクト〜

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「どういうことです?」
 
 愛里がぐっと身を乗り出す。白衣の下の、黒のワンピースのその奥で、完璧なラインを描く鎖骨がくっきりと浮かび上がる。

「あ、ああ。つまりね。コンピューター、いや機械を通す限り、絶対に誤差が生じるんだ。犯罪者が顔を整形していたら、コンピューターが認識を誤るかもしれない。戦争だってそうだ。敵が何かの理由で、全く前例のない行動にでることだってある。過去のデータベースに全くない事柄について、コンピューターに演算させるのは不可能だ」
「まあ。じゃあ、完全にデジタル化しても理想郷は夢物語ということ?」

 アドラーは唾をゴクリと飲み込んだ。耳の奥がジンジンしてくるのが分かる。

「いや、そうじゃない。機械を挟まなきゃいいんだ。つまり、

 愛里は目をパチパチと瞬かせた。何と答えていいか分からないといった顔だ。

「人間には目があり、耳がある。記憶もできるし、思考できる。そして自分達で移動できる。つまり監視カメラであり、集音マイクであり、コンピューターなんだよ。自走式のね。だからその思考や意思や記憶をリアルタイムで互いに直結し統一できれば、いっさいの無駄がない、完璧に秩序の保たれた平和な世界がつくれるんだ」
「……でも、それは不可能でしょ?」
「君は、離れていても互いに考えていることが分かる双子の話について、聞いたことはあるかい?」
「ええ、ありますけど……」
「あれは片方が発した脳波をもう片方が受信している、という説があるんだ」
「脳波……」
「脳が発する電気信号を、そのまま別の脳が受信、解析できれば電話線もコンピューターもいっさい必要ない。たとえば街中で怪しい人物を見かけた時に、周りの人達が瞬時にその脳波を受信できれば、どんなに安全か分かるだろう?」
「でも、脳波の受信なんて可能なの?」

 アドラーは大胆な行動に出た。自分でも思いもよらないような行動に。
 愛里の手を握りしめたのだ。緊張のためか手が汗で濡れていたが、むしろ都合がよかった。
 そしてある言葉を強く念じた。
 心の底から強く。
 最初、驚いた顔の愛里だったが、やがてどこか愉快そうな表情へと変わった。

「……結婚してくれ? ……今のは一体?」
「私の本音だよ、アイリーン。そして肌と肌が密着した状態、それも汗で濡れて通電性が増した状態で、強い感情を伴った思考は相手と共有できる場合があるんだ。今みたいにね。時にはテレパシーの要領で複数の人間の意識を完全に統一し、一つのものにすることもできる。どうやら成功したみたいだ」
「でも離れていては無理ね。そうでしょ? 接触していないと。現実的には使えないわ」
「いや、脳波を増幅する装置、何か電波塔のようなものがあれば可能なハズなんだ。そして脳波だけで、危険察知も情報共有も同時進行でのタスク解決も行えるようになる。。それこそが、プロジェクトの真の目的なんだからな」
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