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流れ流れて
3.
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結局、答えは見つからず、和人と良子は幸子と合流することにした。
良子の話によれば、伊藤一正の住む家がある山自体は簡単に分かるらしい。
「ここからだと、村の反対側に通じる道が、そのまま山の麓につながってるから、幸子さんが待ってるとしたら、その道のどこかしかないわよ」
もう一度、来た道を戻り、旅館の前を通ることになると聞き、和人は少し絶句した。
もともと体力に自信がある方ではない。
「ねえ、やっぱりさ、二人乗りしようよ。こういう田舎のほうが、そういうのって、けっこうユルイんだよ」
「うん、まあ……」
「それとも……」
良子が自転車にまたがったまま、少し視線を下げた。
「幸子さんの自転車だったら、二人乗りするの?」
そう言ったあとも、良子は視線を下げたままだった。
もし一週間前だったら、和人はポカンと口を開けただろう。
いったい、何を言ってるの?
二人乗り?
お巡りさんに見つかりそうだったらやらないし、急いでいたらやるよ。
だが今の和人は違った。
何が違うのかは、自分でも分からなかったが、明らかに何かが変わりつつあった。
「ありがとう」
和人はそれだけ言うと、自転車の後ろにまたがった。
良子の肩にのせた両手からは、想像していたよりも少し熱い体温が伝わってきた。
「落ちないでね」
それだけ言うと、良子はこぎ出した。
力強いこぎ方だった。身体全体の重さを使いながらも、決して上体がぶれない。
風を受けて、緑の中を抜けていくのは心地よかった。
良子の話によれば、伊藤一正の住む家がある山自体は簡単に分かるらしい。
「ここからだと、村の反対側に通じる道が、そのまま山の麓につながってるから、幸子さんが待ってるとしたら、その道のどこかしかないわよ」
もう一度、来た道を戻り、旅館の前を通ることになると聞き、和人は少し絶句した。
もともと体力に自信がある方ではない。
「ねえ、やっぱりさ、二人乗りしようよ。こういう田舎のほうが、そういうのって、けっこうユルイんだよ」
「うん、まあ……」
「それとも……」
良子が自転車にまたがったまま、少し視線を下げた。
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いったい、何を言ってるの?
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「ありがとう」
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