聖女の如く、永遠に囚われて

white love it

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魅入られたのか

1.

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 和人は家に帰ってから、事件について整理しようとした。
 だが、いったいどこから手をつけていいのか、分からなかった。
 だが良子にはあまり相談したくなかった。決して仲たがいしたわけでない。休みが明けて、学校が始まってからも良子とは普通に会話をしていたし、事件について進展があったらすぐに知らせると言われていた。もちろん、和人としてもそれは期待していた。
 ただ話せば話すほど、良子がドッペルゲンガー説をかなり真剣に考えていることが分かってきたのだ。
 これは村に伝わる江戸時代からの言い伝えのみならず、伊藤一正が行ったとされる事件についてもそうだった。インターネット上で情報を集めるだけでなく、海外にいるその筋の専門家にまでコンタクトをとっているほどだった。
 そんな良子の姿勢に、和人としてはどうしても一歩引いてしまうのだった。
 かと言って、幸子と事件について相談するのもある理由からはばかられた。
 家族で緑亭館に家事の手伝いや、ゆきと一緒に遊びに行っても、事件についてはあまり話さないようにしていた。
 そんな和人の気持ちを知ってか知らずか、あるいは単に進展がないからか、幸子も特に事件については触れなかった。ただ事件について頭の中で、猛烈にシミュレーションをしていることだけは想像がついた。ふとした拍子に黙っている幸子の横顔を見ると、真剣な顔で、ときに眉を震わせていることがあった。それが幸子の類まれなる推理力の発揮されている瞬間であることは、和人は子供のときからの経験でよく知っていた。

「ねえ、お兄ちゃん、大丈夫?」

 良子の実家を訪れてから二週間後の、学校の帰り道。
 並んで歩いていたゆきに、和人は突然話しかけられた。

「え? 何が?」

「幸子さんと事件の調査に行ってから、何か変だよ」

 ゆきや両親には、事件の概要と、伊藤一正の家の様子、さらには江戸時代から村に伝わる言い伝えについてすべて話していた。

「いや、なんかさ、事件のその後の展開について、新しい情報でもあればいいんだけど……」

「そういうことじゃなくて」

 ゆきは真剣な顔で、和人の目を覗き込んできた。

「まさか、向こうで何かあった?」

「……何か?」

「幸子さんとの間で」

 和人は目を逸らせなかった。
 妹だったが、子供の頃からゆきはどこか勘のいいところがあり、心まで覗き込まれているような気がしたのだ。
 じっと見たままだったが、ゆきはやがてため息をつくと、途中にある家を指差した。
 そこはどこからどう見てもただの家なのだが、主の趣味で玄関から入った隣の一室がカフェに改装されていた。

「たぶん私に話したほうがいいことがあると思う。きっと力になれると思うよ。お兄ちゃんが思っている以上にね」
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