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きっと忘れない
2.
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伊藤一正がいるかどうかは賭けだった。
また幸子が、訪ねることを事前に知られたくないといい、伊藤一正本人にはもちろん、島津家の人間にも何もいわなかった。
「桂先生のお見舞いはまた今度にしよう。良子さんの話では市内の病院に入院しているらしいからな」
「今、病院は休みなんだよね?」
「いや、桂先生の後輩で、この間まで海外の紛争地域で働いていた医者がアルバイトとして入っているらしい。またしばらくしたら海外に行きたいとかで、短期のアルバイトとして雇ってくれるところをちょうど探していたそうだ」
紛争地で働く医者に敬意を覚えていた田舎の医者が、実際に紛争地で働いていた医者に、しばしの職を与える。
そのことに和人は感じるものがあった。
桂恵という医者は、自分にできる、自分なりのやり方で夢の切れ端を掴んでいるのだ。たとえ夢そのものは掴みきれなくても。
「早く良くなるといいな」
「ああ」
高速を下り、しばらくすると伊藤一正が住むM村が近づいてきたところで、幸子がいった。
「伊藤一正がいるかは分からない。だがいたら、余裕は与えずに一気に先制パンチを浴びせたい。そのほうが本音を漏らす確率は高いだろうからな」
「うん」
和人はスマホを取り出すと、良子につなぎ動作を確認した。
「良子さん、聞こえる?」
「大丈夫。イヤホンマイクでつながってるから。すぐに返事できないかもしれないけど、心配しないで」
幸子と和人の立てた作戦は、突然、伊藤一正のところに乗り込み、動揺しているところで推理を聞かせ、ボロを出させるというものだった。その様子はスピーカーモードにしたスマホを通して、良子に聴かせ、同時に録音もする。
こうすれば証言と証拠を同時に得られる。
「もちろん、どの程度、ボロを出すかは分からないが、ヒントくらいは掴めるかもしれない」
また幸子が、訪ねることを事前に知られたくないといい、伊藤一正本人にはもちろん、島津家の人間にも何もいわなかった。
「桂先生のお見舞いはまた今度にしよう。良子さんの話では市内の病院に入院しているらしいからな」
「今、病院は休みなんだよね?」
「いや、桂先生の後輩で、この間まで海外の紛争地域で働いていた医者がアルバイトとして入っているらしい。またしばらくしたら海外に行きたいとかで、短期のアルバイトとして雇ってくれるところをちょうど探していたそうだ」
紛争地で働く医者に敬意を覚えていた田舎の医者が、実際に紛争地で働いていた医者に、しばしの職を与える。
そのことに和人は感じるものがあった。
桂恵という医者は、自分にできる、自分なりのやり方で夢の切れ端を掴んでいるのだ。たとえ夢そのものは掴みきれなくても。
「早く良くなるといいな」
「ああ」
高速を下り、しばらくすると伊藤一正が住むM村が近づいてきたところで、幸子がいった。
「伊藤一正がいるかは分からない。だがいたら、余裕は与えずに一気に先制パンチを浴びせたい。そのほうが本音を漏らす確率は高いだろうからな」
「うん」
和人はスマホを取り出すと、良子につなぎ動作を確認した。
「良子さん、聞こえる?」
「大丈夫。イヤホンマイクでつながってるから。すぐに返事できないかもしれないけど、心配しないで」
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