一年B組探偵団と盗まれたルビー

white love it

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「それで今月の新聞委員会の集まりなんだけど……」

 郊外にある静かな森の中の道を、四人の中学生が真新しい学ランとセーラー服に身を包んで並んで歩いている。
 残りの三人にきいているのは、キリリとした目つきにおしゃれなショートヘアをした少女だった。名前は葛城南かつらぎみなみという。
 ただ活発そうな外見とはうらはらに、その口調はほんの少し弱々しかった。

「ああ、私ならいつでも大丈夫だから。みんなに合わせるわ」

 そう答えたのは、夢野乃愛ゆめののあ。びっくりするほどの白い肌に、小さくまとまった顔立ちが目をひく美少女だった。

「あれ? 撮影とかないの?」

 無邪気な声でそう聞いたのは藍川和也あいかわかずや。女子2人よりもやや背は低く、クシャクシャの髪がどこかユーモラスで幼い雰囲気の少年だった。

「……うん。まあ、しばらくは……」

 少しだけ顔をしかめて乃愛が返事をする。

「オレもいつでも大丈夫だ」

 間を割るように、ひときわ大きな声でいったのは山形真やまがたまこと。その身長は和也よりも頭一つ高く、足はスラリとのびていた。中学生にはやや不釣り合いなほど髪をのばしていたが、大人っぽい顔立ちにはよく似合っていた。

「試合は? 練習とか大丈夫なの?」

 和也の問いかけに真は前を見たまま、ただ「ああ」とだけ答えた。
 
「和也くん、そういうあなたは大丈夫なの?」

 南が顔を覗きこむようにしてきいてきた。

「ぼく?」

 和也は少し考えこんだ。今月、6月もあと半分。ミステリーの新刊発売あったかな?
 和也にとってミステリー小説は生きがいだった。古今東西あらゆるミステリーを読んできた和也にとって、新刊を逃すことは大きな痛手だった。もちろん全ての新刊を実際に買うわけではない。ネットの読者レビューを参考にしたり、書店で立ち読み(!)したうえで買うかどうかを決めるのが、和也のやり方だった。
 むしろ最近は、わざわざ買うほどのミステリー小説がなくなってきたのが和也の悩みだった。

「うん、大丈夫だよ。特に予定はないから。いつでも平気だ」
「そういう南は大丈夫なのか?」

 真がまた割り込んできた。

「塾だの、英会話だのさ」
「ああ、そうね……」

 しばらくの沈黙のあと、南は口を開いた。

「……大丈夫。実は今、行ってないの。塾も英会話教室も」

 少し寂しげだったが、はっきりとした口調だった。
 和也はそっと右隣りを歩く南の顔を見つめた。
 その顔はまっすぐ前だけを見ていた。
 いったいどうしたんだ? 
 将来世界で活躍するビジネスウーマンになるのは、南の夢だったはずなのに。ついこの間まで、日本の英語教育は遅れている、本当に役立つ英語は学校じゃなくて、外国人を相手にした英会話教室じゃなきゃ身につかないって、あれだけいってたのに。
 だがそのあとの真の答えは、もっと和也を驚かせた。

「……そうか」

 真はそう一言いったきり、黙ってしまったのだ。
 おかしい。
 和也は今度は左隣りの真のほうを見た。
 普段の真ならこんな時、ぜったいにふざけてみせるのだ。からかうようなことをいって、南を怒らせる。それを見て和也や乃愛が笑ったり、間に入って止めるのが、ずっと前からのお決まりの光景だったのに。
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