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第1章 : 慣れろ!てつお

第2.5話「伝説の勇者様」

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僕の名前はタキオ。タータケに住んでる。今は九歳。来週には十歳になる。

本当はこのタイオー王国の首都の学校に通ってたんだけど、僕はダメな奴だから皆と上手くやっていけなかったんだ。魔法も剣術も全然ダメで、先生も僕だけあと十年かけないと卒業出来ないって言ってた。姉さんが一生懸命パン屋をやって稼いでくれたお金なんだから、ダメダメな僕はもう学校に行かない方がいいでしょ?だから学校の寮を抜け出してタータケに戻ったんだ。
みんなに謝りたいなぁ。ちょっと“マナイバ”が人より上手くできただけなのに、村中のみんな大喜びして僕を学校に行かせてくれたんだ。まるで僕はウソつきだ。学校のみんなも、僕が足を引っ張ってるせいで全然はかどらないんだって。本当にごめんなさい。



今は、姉さんのパン屋を手伝ってるんだよ。街中のみんなにパンを届けてるんだ。“オルズ”って名前のパン屋さん。僕のおばあちゃんからとった名前なんだ。
でもそのおばあちゃんが、もう長くないんだって。もうすぐどこか遠くに行っちゃうんだって。最近おばあちゃんはずっと寝てるの。
回復魔法でも薬草でもどうしようもないから、毎日話しかけなきゃいけないって言われたんだ。
だから僕はいっぱい話しかけたよ。学校は僕には難しかったよ、首都は壊れた建物がいっぱいあったよ、そんな感じで毎日毎日。
でもね、おばあちゃんは昔は首都で活躍してた大魔法使いだったし、僕は学校以外の首都の街並みをあんまり知らないから、僕の話なんか退屈だと思うんだ。だから毎日話しかけても話しかけても、おばあちゃんは目を覚まさないんだと思う。



だから僕、おばあちゃんに聞かせるお話を探してるんだ。
川をうんと下って行ったし、旅の人が通りかかると絶対に何かお話をしてもらうの。
僕もいつかは旅に出たいなぁ。おばあちゃんも知らないような、世界の果てまでだって行ってみたい。
でもね、最近はこの辺でも面白いことがいっぱいだよ。昨日は“マナイバ”を一生懸命唱えてみたら、この辺の空の向こうにとんでもなく高いステータスを見つけたんだ。
それで今日も唱えてみたらね、ルチョジャバ山の向こうまで来てたんだ!
だから今日は、配達が終わったらちょっと森の方に行くつもりだよ。もっと近くで唱えてみたいからさ。
心配?大丈夫だよ。危なそうな所には近づかないし、“マナイバ”をこまめに唱えて周りをチェックしとくから。それにまだ森の主は動き出さない時期だもん。
楽しみだなあ。きっとあのステータスは、魔王を倒すために現れた、伝説の勇者様なんじゃないかな?



あっ!何だか森の方で凄い風が吹いてきた!さっそく“マナイバ”を唱えてみよう……
わぁ!あの凄いステータスの人、あっという間に移動して、もうこの村の入り口に来てるんだ!
さっそく行ってみよう!
行ってくるね、おばあちゃん!今日は面白いお話を聞かせてあげられそうだよ!

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