レベル×レベル 〜低レベルで目指す魔王討伐〜

どすこいシロップ

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第2章:飛び立て!てつお

第8.5話「向こうの世界は」

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「ぶっちゃけ、どう思う?」

「な、何が?」

「てつおよてつお!勇者サマのこと!」

「凄い人だよ、本当に、ハァ、ハァ、今日も、思い、知ったよ」

「そーんな状態でよく言えるわ……てつおの奴、結構エグい一面があるわよネ」

「そんな、僕なんて、まだまだ弱いんだから、こ、このぐらい、ハァ、キツい方が、ハァ、ハァ」

「あー、ゴメンゴメン。落ち着くまで休んでなさい。ホレ、あいつの【分解】と【調合】の実験の産物よ。構いやしないから二人で食べちゃいましょ」

「え、でも……むぐっ」

「つべこべいわずしゃぶっときなさい!これはネ、“テルテル草”の花の蜜と“ビゲビゲの針”を調合して出来るの。食べたことないでしょうけど、都会じゃ出回ってるオトナのお菓子なのよ。“テルテル飴”っていうの。そのまんまネ」

「んぁ……美味しいや。甘くてちょっと苦いんだね」

「疲労回復、滋養強壮。お勤めに疲れた大人達が死んだ目でチュパチュパやってるのよ」



「さすが女神様、何でも知ってるんだ……」

「まーね。あ、あとさ、あたしのこと“エマエ”って呼んでくれない?この借り物の妖精の名前なんだけどネ。女神様なのはヒミツにしてさ」

「え、でも……」

「あたしはただの旅の妖精ってことにしたいの。もうあの時計の中はウンザリ。明日てつおにも言っとくわ。あたしも外に出たいし!アイテム整理ばっかやってると気が狂う!キーッ!」

「……う、うん、分かった。エマエだね。覚えとくよ」

「エマエ様……エマエさん……うーん、どうにか敬称をつけさせたいんだけどなー」

「へへ、正直、女神様っぽくないからエマエがしっくりくるや」

「あんた疲れてるからって大胆になってるんじゃないの?ん?」

「あ、ゴメン……良い意味でだよ。親しみやすいし。僕、女神様はもっと厳しいのかと思ってたから……」

「フーン。ま、いいわ……あ、これも食べれそう。ホレ」

「ありがとう……これは?」

「“オドブウの木”の実と“ドプドプ魚”の骨髄からできるゼリーよ。甘くて美味しいの」

「何でも【調合】でできるんだなぁ……あ、美味しい。ねえエマエ、僕も【調合】を覚えたい!」

「かーなーり大変よ?【調合】はネ、炎熱、氷結、電撃、回復それぞれのスキルレベルが20以上必要なの。その状態で、自分の手で何かしらを調合してみせる必要があるの。それで完成したものを魔法で壊すの。そしたら【調合】っていうスキルが使えるのよ」



「ひえー、大変だぁ……凄いなぁ、てつおさん」

「ま、アイツは特別ネ。あたしのエコひいきがあるから」

「それでも魔力の使い方とか、実験?だっけ?その、思いつく力とかは凄いじゃん」

「あー、確かにネ。そこはあたしの人を選ぶ力を褒めなさい!あいつ、高校受験の前日に徹夜でRPGしてたようなアホだから」

「高校?アール……?」

「あ、あっちの世界での話ネ。あいつのいた世界だと、あたし達の世界みたいな所で冒険する遊びがあるのよ」

「凄いなぁ。じゃあその力だけで立派にお仕事になりそうだよね。こっちだと魔王を倒せるんだもの」

「そーもいかないのよネ……あっちの世界のお仕事って厳しいのよ。魔王をどれだけ倒しても、戦争をどれだけ勝たせても、パン一つ買えないのよ」

「えぇ!?何で!?そんなの可哀想だよ!だって徹夜でやるほどの事なんでしょ!?」

「あー……それはその……ややこしいわ」

「じゃあもしかして、てつおさんはこの世界で魔王を倒しても何も貰えないの?」

「う……それは……えーと」

「あ、でも大丈夫か!経験値があるよ!最悪でも経験値はいっぱいになってあっちに帰れるんだ」

「そ……それもね……前も話したでしょ?こっちの世界の経験値が溜まると、あいつは弱くなっちゃうのよ。しかも向こうの世界に経験値はないしマナイバもないの」

「えぇ!?じゃあどうやって自分のステータスを見るの?」

「向こうの世界は誰もステータスを見れないのよ。“何となくこれぐらいじゃないかなー”ぐらいの気持ちでみんな生きてるの」

「それじゃあできないのにできるような気がしたり、できてるのにできないような気がしたらどうするの?」

「そこは……だましだまし……」

「目の前の人がどれぐらい凄い人なのかも分からないじゃん。威張ってるのにステータスは大したことない!みたいな人もいるんじゃない?」

「ええい、うるさい!女神様が何でも知ってる訳じゃないの!」

「ご、ごめんなさい……」



「できたァ!できたぞーッ!!勇者の勝利だーッ!!フハハーッ!!」

「うわっ!びっくりした……何?てつおの奴また何かやらかしたの?」

「よぉし!次は……」

「ちょっと言ってやるワ……いいかげんにしなさいよネ!何時だと思ってんの!?」

「楽しそうだよね、本当に」

「そーネ、無理やりこっちに召喚したみたいなもんなのに……何?わ、悪いとは思ってるわよ」

「な、何も言ってないよ……でも、嫌々やってるような感じじゃないよ」

「ん……そうかもネ……」

「僕も頑張らなきゃ!早くてつおさんを向こうの世界に返してあげないと」

「…………えらいわネ、あんたは」

「てつおさんの方がえらいよ!おやすみ!エマエ!」

「んー」



そっか、てつおが魔王を倒せても、得られるものって何もないのか……
あいつ凄く楽しそうだから、すっかり忘れちゃってたワ。
あいつにとっては体感型RPGみたいなもんなのかな。
魔王を倒したら、ゲームクリア。エンディング画面。
強くてニューゲームなんてない。
電源を切って、魔法もスキルもステータス画面もない毎日と向き合う。
あたしとも、タキオとも……もうそれきり。
そんな感じなのかな……?



あーいかんいかん!深夜テンションってヤツよこれ。
ついつい変なこと考えちゃうヤツね!
こんなことどんだけ考えても魔王倒さなきゃいけないんだし!
向こうに帰ったらそれはその時よ!
あたしはあたしに出来ることを全力でやればいーの!
あたしが考えることじゃなーいもん!寝よ寝よ!



でも、ま、せめてハッピーエンドであってほしいなぁ……
アイツにとってのこの世界がさぁ……
おやすみ。

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