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第2章:飛び立て!てつお
第8話「勇者の勝利だ!!」
しおりを挟むさて、タータケ村から首都タイオーまでの道のりは至って簡単。川を下ればいい。
村長さんの手描きの地図と女神様のナビ魔法によると、この川は海に流れ込む前にもう一本の川と合流する。
その合流地点は見晴らしの良い平地になっていて、それを囲むように城壁がある。
その中身が、首都タイオーだ。
道のりは至って簡単。距離も大したことはない。
だからこそ、この道中にしておきたいことがある。
以下に実験の数々をまとめた。
実験その①
[味方を支援して敵を倒した場合、支援した者に経験値は入るのか]
非常に重要だ。
理想は俺に経験値が入らず仲間にだけ経験値が入る状態。
もし入るのなら、どれぐらい入るのか。場合によっては、タキオくんを支援することは危険だ。
入らないのなら、タキオくんを充分に育てておきたい。
[実験方法]
出会う敵全てにマナイバをかけ、レベルを調べる。仮に経験値が入ってしまっても問題なさそうな低レベルの敵を相手に、タキオくんにありとあらゆる【支援魔法】をかけまくる。
経験値が入った場合、徐々にかける【支援魔法】を減らしていく。
[結果]
レベル1の針ウサギ(正式名称“ビゲビゲ“)を相手に、攻撃力増強魔法“ファイティ”、防御力増強魔法“ガンバ”、素早さ増強魔法“シュダダ”をかけ、見事タキオくんは敵を瞬殺。
50の経験値の内、30がタキオくんに、20が俺に入った。
その後もレベル1のビゲビゲを相手に、“ファイティ”、“シュダダ”をかけたが、この時は50の内15が俺に入った。
“シュダダ”のみをかけた時は5が俺に入った。
[考察]
支援した者にも必ず経験値は入る。
与えたダメージ量に応じて入る経験値が増えるシステム上、ダメージ量に繋がる支援魔法は多く入りやすいと考えられる。
また、3回目の実験時に、タキオくんのダメージを回復したが、俺への経験値量に変動はなかったと思われる。
以上より、基本的にタキオくんに敵を倒してもらい、タキオくんが傷ついたら回復するやり方で敵を突破していくのが好ましい。
実験その②
[召喚獣を経由してタキオくんを支援した場合、経験値は誰にどの程度入るのか]
周りの魔物を強化してくる敵を見て思いついた。
てんとう虫の黒い部分から花が咲いてるような見た目の魔物(正式名称“チュリラペ”)のことだ。
この魔物を【召喚魔法】で捕縛して、魔力増強魔法“イマジナ”をかけ、タキオくんを支援させた場合、経験値の内訳はどうなるのか。
[実験方法]
タキオくんに死ぬほど頑張ってもらい、2時間半の激闘の末、見事捕縛成功。以下、ニックネーム“ツヨシ”とする。
彼を用いて、再びレベル1のビゲビゲを探し、相手とした。
[結果]
ツヨシに“イマジナ”をかけ、ツヨシには“ファイティ”を唱えさせた。
タキオくんの攻撃力は、直接俺がかけた時の半分ほどではあったが急上昇、ビゲビゲを瞬殺。
50の経験値の内、30がタキオくんに、17がツヨシに入り、俺には3だけ入った。
チュリラペをもう一体捕らえ、(この個体には“レイジ”と名付けた)2匹のチュリラペを経由した場合、タキオくんの攻撃力はかなり落ちた。
経験値内訳はタキオくんに35、タキオくんに“ファイティ”をかけたツヨシに10、“イマジナ”を中継したレイジには4、俺には1となった。
[考察]
やはり俺にも経験値は入る。
与えたダメージ量への貢献度に応じているようだ。
とはいえほとんど考慮しなくてもいいほど激減するので、しばらくはタキオくんの育成はこのやり方で行う。
ツヨシとレイジのレベルが上がれば、俺の“イマジナ”も必要なくなるはずであり、その時にはついに俺への経験値は0となる。
この状態に持ち込んでから、タイオーへ入るとしよう。
実験その③
[スキル【分解】が対象に取れるものの境界線は何か]
非常に不謹慎な話だが、オルズさんの魂をタキオくんのペンダントに封じ込めた時からこのことが気になって仕方なかった。
魂なんてものがあること自体驚きだったが、ましてやそれが【分解】や【調合】の対象になるなんて。
もし魔物の死体や魂が【分解】や【調合】の対象になるなら、武器や防具を作るのに役立つかもしれない。
またそれらが高く売れるかもしれない。
[実験方法]
本当はタキオくんのレベル上げも兼ねておきたかったので、タキオくんに魔物を倒してもらうつもりだった。
しかし彼は激闘に次ぐ激闘で目が完全に死んでいたので、ツヨシとレイジに頑張ってもらった。
今回もビゲビゲに犠牲になってもらう。
哀れな仔ウサギよ。
俺がこの世界に来てから最も犠牲になった魔物といえる。
ビゲビゲが元気な時、HPが半分の時、捕縛魔法“ゼットダゲ”の範囲の瀕死の時、完全に死んで経験値がツヨシとレイジに入った時のそれぞれで、スキル【分解】を使用した。
また、そこら辺の草花や石にも手当たり次第に【分解】を使用した。
[結果]
結論から言うと、経験値が入った後の死体でのみ【分解】は使用可能だった。
魂らしきものは確認できなかった。
オルズさんの時は、“昇華の儀式“をしていたから魂が留まっていたものと考えられる。
魔物に魂があるかどうかは分からないが。
また、【分解】出来たものは鉱物、水、枯れた草木、土、魔力、そして排泄物だった。
鉱物は原石の状態であれ加工済みの状態であれ分解可能だ。
それぞれを構成するいくつかの要素に分けられる。
岩の塊から宝石らしきものを見つけたのが今日一番の収穫だ。
水の場合、川の流れの一部分をごっそり抜き取ることができる。
不純物を取り除くことで綺麗な水が飲める。
また、スキル使用時に、自動的に範囲内の【分解】対象に取れないもの、つまり生き物が落ちてくるので、魚を大量に捕らえるのにも使えそうだ。
植物は、枯れているものであれば即座に分解できる。
元気な状態のものは摘んだり切ったり折ったりすれば、しばらくすると分解できる。
土も水と同様で、範囲内の土をごっそり抜き取れる。
大量のミミズやイモムシが降ってきたので必要がなければ二度とやらない。
今回はマジで何も役に立ちそうなものが出てこなかった。
意外な対象物は魔力そのものだ。
俺が唱えた魔法を対象に【分解】を使うと魔法がいくつかの構成要素に分かれた。
例えば炎熱魔法“チアチ”だと、燃料となると思われる、油のように変質した魔力と、着火用の衝撃波となる魔力に分かれる。
これを応用していくことで、魔法を使って何でも出来るようになるのだろう。
今後が楽しみだ。
そして最後に、排泄物。
限界を迎えた俺は生まれて初めて野糞をしたが、周りに拭くものが無かった。
死ぬほど後悔したが、人間は追い詰められると強い。
決して屈することのない気高い精神が、この俺を絶体絶命の窮地から救ったのだ。
おお見よ!
尻の穴の周りの糞が、分解されていく!
勇者の勝利だ!!
俺のうんこさんは“未発酵肥料”なる有用な物資となった!
当然使わないのでもう一度【分解】をした。
すると“未発酵肥料”は跡形もなく消えてなくなった。
これは凄い。マジで凄い。
旅の途中でトイレの心配をしなくてよくなった。
あ、いや、【分解】したものをもう一度【分解】しようとすると、それは消えてなくなる!
[考察]
【分解】をしつこく繰り返す内に、このスキルの本質が何となく掴めた。
【分解】とは何か?
簡単に言えば、魔力で作った網のようなもので対象を括るスキルである。
括られたものの中から、【分解】の対象外のもの、生物や細かすぎる破片などが抜け落ちる。
その網目に残ったものを自分の好きなように取り出すスキルなのだ。
網目はスキルレベルに応じて細かくでき、魔力量を調節すれば粗くすることもできる。
更に注目すべき事実は【分解】してできた素材をもう一度【分解】しようとすると、跡形もなく消えてしまうということだ。
これは気をつけないといけないが、使い方によっては障害物を突破するのに使えそうだ。
以上の水、魔力、排泄物の実験がもたらした結果は旅を円滑にするに違いない。
特に魔力の分解は、可能な限り進めておきたい。
以上のような実験が終わり、生産的な結果をいくつも獲得できた。
何か難しい感じの言い回しがクセになりつつある。
元の世界じゃ勉強は大嫌いだったし、授業が実験の時は遊んでばっかりだったのに。
学ぶことがこんなに楽しいとは。
まだまだ試したいことがいっぱいだ。
「よぉし!次は……」
「いいかげんにしなさいよネ!何時だと思ってんの!?」
流石に怒られちゃったか。
今日だけでタキオくんは半生分戦ったし、女神様は時計と外を反復横跳びしながらアイテムの整理に追われていた。
ごめんって。ついつい夢中になっちった。
テヘペロでござんす。
今日のところは寝て、明日は少しタキオくんのレベルを上げて首都に向かおう。
俺はテント代わりに防御壁魔法をかけて、地面に寝そべった。
今日はありがとな!タキオくん!
先は明るいぜ、女神様!
おやすみ。
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