翡翠Evolution 〜我に宿りしその力〜

えーしろ

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Evo2 「中国娘のルアンユー」

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 誰もが憧れる『魔法』 の力。

 少し……いやかなり内気な性格の高校生である私事、若竹 翡翠は、片思いの光也君を助ける為、魔法の国に住んでいると言う天使のアキナ君により、魔術師の『遣い』 として選定される事となりました。

 だけどその条件として、『神黒翡翠』 と言う魔法石を探して来て欲しいと、魔術師のアグリッタさんに頼まれる事となってしまったのです。


「翡翠さん、先ずは食事をどうぞ」

「……アグリッタさんは、日本語が上手なんですね」

 そう言えばアグリッタさんは、日本人ではない様なのですが、日本語を流暢に話していました。それには理由があり、魔法の国での会話は全て共通語に聞こえるからだそうです。


「私は元々、ドイツの生まれなんだ。でも、日本にも何度か訪れた事があるんだよ」

「翡翠、言葉の共通も便利だけど、もっと素敵な事があるんだ」

 アキナ君は食器を並べながら、私に説明してくれました。この魔法の国にいる限りは、歳をとらない(一般世界での時間が進まない) のだと。


「え、本当ですか?」

「ああ。私は16世紀の生まれだから、実年齢は468歳なんですよ」

「だから、時間を気にせず神黒翡翠を探してよ」


 その後、ざっくりと魔法に関してのルールを聞かされました。先ずアキナ君に言われた通り、一般人に魔法の事を話してはいけない事。

 だけど、私が光也君を助けた時の様な緊急時には、一般世界でも魔法を使う事は許されるそうです。

 その時は当然、誰にも知られてはいけなく、もし見られてしまった場合は、その者と私自身も、数年分の記憶を消さなければいけなくなってしまうとアキナ君は告げていました。

 そしてアグリッタさんは、もう1つ大事な話を私に伝えたのです。


「翡翠さん、魔力には限界があるんだ」

「限界……」


 アグリッタさんは魔術師であり、膨大な魔力をその身に宿しているそうなのですが、神様では無いのです。

 人間はどんなに不思議な力を使えたとしても、その人が持つ魔力量には限界があり、使い果たしてしまうと一般人に戻ってしまうと言っていました。

 今はまだ、アグリッタさんの魔力にも多少の余裕があり、アキナ君やミルキさん達天使を通して、私に魔法の力を使わせる事が出来るらしいのですが、それも有限であるそうなのです。


「だから、成るべく魔法の無駄使いをしてはダメだよ」

「アグリッタ様は、どうでも良い事に使いまくっていますけどね」

 ミルキさんにツッコまれるアグリッタさん。そして本題の神黒翡翠の件なのですが、こればかりは地道に探索するしかないとアグリッタさんは告げていました。


「それより翡翠さん。貴女の進化した姿を見せて頂けませんか? そうだなぁ……バビル、翡翠さんと同化させて貰いなさい」

 バビルエルさんは、10月の誕生石であるオパールを示し、『希望』 の力を持ち合わせている天使だそうです。


「はい、アグリッタ様。それでは翡翠殿、失礼致しますっ」

「ここでですか? ……我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」


 透明白色の光の中で、変身した私。ミルキさんが同化した時はナース姿だったのですが、今回は何故だかリクルート姿に変身していました。


「これは……素晴らしいよ、翡翠さんっ。ここまで透き通った光の輝きを、僕は初めて見た」

「あれ? 私、何でスーツ姿なの?」

 アキナ君が説明するには、変身後の姿は私がイメージした姿になるらしいのです。

 そして、バビルさんは希望の力があると聞かされていた私は、呪文を唱えると同時に、新入社員の姿を想像していた為、スーツ姿になっていたのだとか。


「だからね、翡翠がイメージすればどんな格好にでも返変身出来るんだよ」

「これからは気を付けて変身します……」

 あられもない姿を想像してはいけないと、私は肝に命じました。

 そしてアグリッタさんが驚いた『透き通った光』 とは、一般的に知られている翡翠と呼ばれる石は、緑色をしている事で有名なのですが、私が変身する際に放った光は透明白色であったからだそうです。

 これが意味する事は、私自身が何物にも褐色(塩分や長時間の光を浴びて色が変わる) されていなく、純粋な硬玉の翡翠輝石(ひすいきせき) である様な存在である事を示していたからだと言っていました。

 人にはそれぞれの色があると言います。例えば『オーラ』 と言う言葉がありますが、これもその人によって色が違うとされているそなのだとか。

 勿論、色彩として普通の人が見える訳では無いのでしょうが、言葉を変えれば人それぞれの性格なども色として表現される事なのでしょう。情熱的な赤色や、落ち着いた性格の青色などで、その人に与えられた根本の色があるのだそうです。

 しかし、その色も状況によって大きく変わる事があると、私は聞きました。感情をあらわにする事で様々な色へと変貌を遂げるらしいのです。

 そして成長と共に変わる事もあり、特に私の様なまだ真透明に近い色は、これからの出来事でくすんだ色にも、輝きを放つ色にでも変化を遂げて行くのだと、アグリッタさんは言っていました。


「だから翡翠さん、素敵な色に成長して下さい。貴女ならきっと素晴らしい未来が訪れる筈です」

「……はいっ」

 アグリッタさんは適当なところで話は切り上げ、アキナ君に魔法の国を案内する様指示を出していました。そこで私が見たものは、決して一般世界では見る事の出来ないであろう景色であったのです。

「すご~い。あの山、全部宝石で出来てるんだよね?」

「そうだよ。でもね、魔法の国の物は一切、一般世界に持ち込む事が出来ないんだ」


 当然でありますが、そんな事が出来てしまえば物の価値観が狂ってしまうでしょう。

 そこでアキナ君は、私に素朴な疑問を投げ掛けて来たのです。私には、地位や名誉、お金などの物欲は無いのかと。当然私にもあるのですが、それは欲では無く些細な願いでありました。


「私は……好きな人と一緒にいられれば、それだけで幸せだよ」

 勿論、ゆったりと眠れるベッドがあり、お腹いっぱい食事する事など、最低限の暮らしは前提なのですが、私の望む幸せは欲とはまた違う願いであったと思います。


「……そっか。翡翠はあの時助けた、光也って人が好き何だね?」

「一言も言ってませーんっ! でも……」

 私は、友達の魔美華ちゃんや、光也君とずっと一緒に過ごせる事が出来れば、それが自分にとっての幸せだと言いました。

 その後、アキナ君は私を案内して周り、最後にある場所へと連れて行きました。

 魔法の国には、何人かの魔術師がいるそうなのですが、その魔術師達には領土が決まっているらしいのです。

 そして領土には境界線が引かれていて、そこから先に進むにはその領土を守っている遣いと話し合いをするか、戦いを挑み勝つ事により、入れるルールとなっているのだとアキナ君は説明してくれました。


「え、じゃあアグリッタさんの領土に神黒翡翠が無かったら、別の領土に入れて貰って探すと言う事なの?」

「そうだね。それと、領土は無くなったり、新たに発生したりするんだ」

 アキナ君が言った領土の有無とは、魔術師が魔法の国から居なくなる事により、領土も消えてしまうと言う事でした。逆に新たな魔術師が魔法の国に来ると、領土も増えるのだそうです。

 そして神黒翡翠自体も移動している為、その所在を確定する事が難しいのだと、アキナ君は言っていました。


「そっかぁ。先は長そうだね」

「まあ、気長に行こうよ。時間は幾らでもあるんだからさ」

 時間はいくらでもある……いえ、有限なのです。先程アグリッタさんの城で聞かされた、魔術師の魔力には限界がある為、魔力が尽きてしまうと魔法の国にはいられなくなってしまうのだから……。

 と、そこへ一人の女性が、私達の領土である境界線に現れたのです。


「あんた、アグリッタのとこの天使もどきじゃない。こんな所で何やってんのよ?」

「ん? あぁ、ルアンユーかぁ。まあ、君には内緒にしておくよ」

「ホント、生意気な天使もどきね。てか、その子……あぁ、そう言う事」

 アン ルアンユーさん。この女性もまた、神黒翡翠を探す為に中国の魔術師である、龍 器(りゅう き) さんにより選定された遣いの1人でありました。


「あ、あのぉ……私は、若竹 翡翠と言います。もしかして貴女も神黒翡翠を探しているんですか?」

「やっぱりね。それにしても、翡翠ねぇ……上等な名前を持っているじゃ、ないっ!」

 突然、私に素手で襲い掛かって来たルアンユーさん。と同時に、私は別次元の世界に連れて行かれのです。


「え、ここどこ?」

「翡翠、さっき少しだけ話したけど、相手の領土に入るには、戦いで決める場合もあるんだ」

 通常、相手の領土に入れて貰うには話し合いになるそうです。しかし今回の様に、どちらかが戦いを挑んで来た時は、戦闘での交渉になってしまうらしいのだとか。

 そしてその戦闘は、魔法の国とは別次元で行うルールになっているのだと、アキナ君は言いました。


「え? 私、ケンカとか苦手何ですけどーっ!!」

「了解だよ。マキ、来てっ!」

 マキエルさんは、2月の誕生石であるアメジストを示し、『身を守る守護』 の能力を持つ天使だそうです。


「翡翠ちゃん、同化するわよ」

「はっ、はいっ。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」

  私は、鋼の鎧を武装した姿に変身していました。そして、ルアンユーさんの攻撃を間一髪で防ぐ事になったのです。


「へ~。なら、私の変身姿も見せてあげるわ。我に遣えしその力 今この時この瞬間 十二の衣で纏わん……ルアンユー……エボリューションっ!」

 当然ですが、魔術師に選定されたルアンユーさんも、変身する事が出来るのです。

 そしてルアンユーさんの魔法は、中国皇帝の礼服に用いられる模様の十二章が使われているのだと聞きました。

 更にルアンユーさんは、その十二章の1つ『華虫』 の能力である、『五色の羽毛を持つキジの雛、鳳凰』 を同化させた事により、空高く舞い上がったのです。


「ズル~い。飛ぶの反則ですよ?」

「イモムシは、地を這っていなさい」

 ルアンユーさんを見上げる私に、アキナ君は言いました。『翡翠』 は、水面にいる『カワセミの羽』 から名付けられた言葉である為、私も飛べる筈だと。


「翡翠、空に羽ばたくイメージをするんだ。そうすればきっと飛べるよ」


 地に足を付け暮らして来た一般世界の人達には、空を飛ぶイメージなど中々難しい筈です。

 しかし、私は背中から広がった透き通る羽で、いとも容易く羽ばたく事が出来たのでした。


「うわ、何か変な気分です」

「遣いの初心者の割には中々じゃない。でも、まだぎこちないわねっ!」 

 空を自在に舞うルアンユーさんと、その攻撃を全て受けているものの、マキさんの能力のお陰でダメージは軽減出来ていた私。だけどそれでも、徐々に体力を奪われて行きました。


「ぐっ、このままじゃ……」

「ほんと、カッタイわね。だけど……ピンイン、纏いなさいっ!」

 ピンインとは、十二章の1つで『龍』 を意味するそうです。そしてルアンユーさんは龍と同化し、身体を一本の矢の様な体制にして、私に突っ込んで来たのでした。


「どど、どうしよう? 避けられないよっ!」

「しょうがないなぁ。翡翠ちゃんの為に、少しだけ本気出してあげるわ」

 マキさんは本気を出すと言いましたが、勢いを増し突進して来てしまうルアンユーさん。怯え固まってしまった私は、只々直立不動でいるしか出来ないでいたのです。

「お父さん、お母さん、お世話になりましたーっ!!!」

 龍と化したルアンユーさんは私の胸を目掛け、得意の頭突きを喰らわした……のですが、私の身体は少し後退しただけで、鎧と化したマキさんを砕く事は出来なかったのでした。

 逆にルアンユーはさん、そのまま静かに地面へと落下してしまっていたのです。


「翡翠ちゃん、私の鎧は一瞬だけ通常の何倍もの硬化をしたの。でもそれは、翡翠ちゃんとだから出来た事なのよ」

 アキナ君とマキさんは初めから知っていた事の様ですが、ルアンユーさんと言う名前は日本語に直訳すると、『翡翠』 を意味するそうなのです。

 しかし、私と同じ翡翠同士の争いになったにも関わらず、衝突時に受けたダメージはルアンユーさんの方が大きかったのでした。

 それには理由があったそうなのですが、一概に翡翠と言っても大きく分けて2つの種類があるそうなのです。それは『硬玉』 、『軟玉』 と言い、その名の通り軟玉の方が柔らかい石であるのだと、アキナ君は言っていました。

 そして石の価値としても、硬玉の翡翠輝石の方があるとされていて、私は紛れも無い翡翠輝石の由来を、その身に宿していたそうなのです。

 でもルアンユーさんの名前は、軟玉を意味していたそうなので、私を貫く事が出来なかったのだと聞きました。


「そう……だったんだね。でも、ルアンユーさん大丈夫かな?」

「翡翠、魔法の国では死ぬ事も無いんだ。どんなに切り刻んでもね」 

 である為、魔術師に選定された一般世界の人間を魔法の国から消すには、魔術師自体の魔力を完全に消し去るしかないとアキナ君は言っていました。

 だけど、その遣いを何度か倒していれば、魔術師の魔力消費も大きくなる為、戦いを挑み続けると言う方法もあるのだそうです。


「そっかぁ。あっ、ルアンユーさん、目を覚ましたみたいだよ」

「痛たたぁ……あれ……私、何してたんだっけ?」

 漸く意識を戻したルアンユーさん。そして状況をアキナ君に説明され、私との戦いに敗北した事を理解した様です。


「えとぉ……身体は大丈夫ですか?」

「え? 天使もどき……どう言う事よ?」

 私が掛けた言葉に、驚いていたルアンユーさん。それもその筈だそうなのですが、ルアンユーさんが今まで戦って来た相手は、情けなど掛けない人ばかりであったからだそうです。


「翡翠はね、例え敵だとしても労わる心を持っているんだよ」

「……はあ? 冗談はよしてよね」


 現実世界ならいざ知らず、魔法の国で何故、情けを掛けるのかを不思議がるルアンユーさんでありました。
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