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Evo7 「秘術忍法の雲影」
しおりを挟む私達の学校は夏休みに入り、魔美華ちゃんの提案で光也君とアリスちゃんを引き連れ、海に出かける事になっていました。
そんな中、魔美華ちゃんは私に気を利かせてくれたのか、光也君と2人きりにしてくれたのです。だけど中々言葉が出せない私であった為、光也君から会話をしてくれる事になったのでした。
「もしさ、海の水を全て取り除いたら、きっと宝物とかがいっぱい落ちてるんだろうな」
「え? ……確かにそうかも知れないね。でも、宝物は中々手に入らないから宝物なんだよね」
ほんの少し遠い眼差しをして、『だよな』 と答えた光也君。そして、私はその言葉に何かを察し、話を切り替える事にしました。
「……光也君は、週にどれくらいバイトに行ってるの?」
「何日だと思う?」
私は5日くらいかと答えたのですが、それはハズレであり、特に用事が無い時は毎日バイトに行っていると光也君は言っていました。
バイトは、光也君が中学生の頃からしているらしいのですが、何故こんなにも働いているのかには理由があったのです。
幼い頃から父子家庭で育った光也君は、お父さんのお陰で衣食住に困る事は無かったそうです。だけど、3つ年下の弟さんの為に働いているのだと言ったのでした。
弟さんは成績優秀であるらしいのですが、今の家庭事情では都立高校へ入学する事になってしまうらしいのです。そこで、どうしても私立高校に行かせたいと考えた光也君は、中学生の頃からバイトをし、弟さんの為に蓄えているのだと告げていました。
「弟さんの為に……」
「奨学金制度を使うって手もあるんだけど、大学にも行かせてやりたいから何かと金が必要になるだろ」
自分の苦労を顧みず、弟さんの為に働く光也君に、更に惚れ直した私の瞬間でした。
と、そこで私達から少し離れた沖にて。
「むむむ……がはっ! はぁ、はぁ、やはり生身の身体では、40分が限界でござるな……」
素潜りをしていたこの男性は、滝野 雲影(たきの くもかげ) さんと言うらしいのですが、この人もまた神黒翡翠を探す魔術師(忍者) の遣いであったのです。
そして、私達に戻って。
「翡翠、折角海に来たんだから泳ごうぜ」
「あっ、光也君……私、泳ぎも苦手なのです……」
先に海に入ってしまった光也君。私も恐る恐る足先を浸したのですが、小波に怯え中々入る事が出来ないでいました。
と、その時。
「むっ、この気配は……間違いないでござる。これは魔力の気配っ!」
雲影さんは近くに敵(私) がいると察したらしく、戦闘体勢に入ってしまったのでした。だけどその事により、関係の無い一般の親子を巻き込んでしまう事になってしまうのです。
「玻璃ちゃん、泳ぎ方教えてあげるから、怖がらずにいらっしゃい」
「やだ、海こわ~い」
「我に与えしその力 今この時この瞬間
この身を刃に変幻せん……雲影……進化の術っ!」
変身してしまった雲影さん。そしてそのまま、大波を起こす術を使ってしまったらしいのですが、近くにいた子供が波に流されてしまったのです。
「玻璃……玻璃っ! 誰か娘を助けて下さいっ!!」
雲影さんは助けを乞う叫びを無視し、私の気配に集中していたそうです。
そこで私は、子供が海に流されている事に気が付き、我を忘れ海に飛び込んだのですが……泳げない事を思い出し、そのまま自分も溺れる事になってしまいました……。
「ゴボボホ……あの子を助けなきゃ……アキナ君、来てっ!」
「翡翠、君は何をしているんだい? 今一、状況把握が追いつかないのだけれど」
「おぼべべばぶ(溺れてます)」
何とか、アキナ君に意図を汲み取って貰えた様です。そしてアキナ君は、私の周りに丸い空気の球体を作り、取り敢えず話を出来る様にしてくれたのでした。
「翡翠、君は泳げないんだね」
「うん。いやいや、それどころじゃありませんからっ。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
私は即座に『自由』 の能力を持つウエルさんに同化して貰い、スイマーに変身して子供がいる場所に向いました。
そしてギリギリの所で救出し、お母さんの元へ連れて行く事になったのです。
「玻璃、良かった玻璃っ!」
「今、救護の人が来てくれるみたいなので、待っていて下さい」
私も一安心し、その場を離れ様としました。しかし私の背後には、雲影さんが立っていたのです。そして振り返った私に、雲影さんは手裏剣を投げ付け威嚇して来たのでした。
「我が名は、滝野 雲影。お主が魔術師の遣いでござるな」
雲影さんは名を名乗ると同時に、攻撃を開始して来ました。そして私は訳が分からないまま、手裏剣を受けてしまい傷付く事になってしまったのです。
しかし即座にミルキさんを呼び出し、治癒して貰う事で致命傷にはならずに済んでいたのでした。
だけど、その様子を見ていた雲影さんは、私が魔術師の遣いである事を確信してしまい、魔法の国へと誘い出したのです。
その後、私も後を追う事になったのですが、着いた場所は何故かアグリッタさんの領土でした。
「え? 何で鴨八さんが、ここに入れるの?」
「雲影だーっ! ……ふっ、我の秘術忍法、『空蝉の術』 を使えば結界破りなど容易い事でござる」
「こざる? 見猿聞か猿言わ猿的な? と言うか、私水着姿のままーっ!」
からかっている訳ではなかったのですが、私は雲影さんの言葉使いにキョトンとしてしまうと同時に、一旦普段着に変身し直すのでした。
「……我を愚弄する貴様の運命は、たった今確定したぞ。闇の底で悔やむが良いっ。秘術忍法、金遁の術っ!」
金遁の術とは、素早い動きで手裏剣を投げ付け、物に当たった時の音で自分の場所を特定させる技だそうです。だけど、その場所には既にその術者は居なくっている為、相手が勘違いしている隙に攻撃をする技なのだと、私は後に知る事になりました。
「あれ? 今、右側から投げて来た様な?」
「遅いっ、影縫いの術っ!」
影縫いの術とは、対象者の影に暗示を掛け、その影に手裏剣を投げ付ける事で動きを止める技だそうです。因みに、言葉は発する事が出来ました。
「え? 身体が……全く動かない……」
「ふっ。所詮、オナゴの遣いなどこの程度か。神黒翡翠は我が師、初多理 半助(はったり はんすけ) の物でござるっ!」
雲影さんは秘術忍法の1つ『飛跳雷速』 と言う技を使い、大量の手裏剣を私目掛け放ったのです。
だけど、その時。
「男女差別は許さないわよ。ヴァーゴっ!」
「何っ!?」
アリスちゃんは、私が魔法の世界に行っている事に気が付き、自分も来てくれていたのでした。
そしてアリスちゃんが叫んだヴァーゴとは、『洞察力』 や『パワフル』 の能力を持ち、雲影さんの動きを見極めると同時に、私を救い出してくれたのです。
「翡翠、大丈夫?」
「うん。ありがとう、アリスちゃん」
「さあ、全身黒コスプレのオッさん、覚悟しなさい」
私もアリスちゃんのお陰で影縫いの術から抜け出す事が出来、再戦する事となったのですが、雲影さんは新たな技を放って来たのです。
それは『口寄せの術』 と言うらしく、動物などを呼び寄せる技であり、雲影さんは大蝦蟇(オオガマ) を召喚させていたのでした。
「何かあのカエル君、ヌメヌメしてるね」
「大蝦蟇の餌になるが良いっ!」
ノソっとした姿の大蝦蟇君でしたが、その巨大な身体と脚力で着地する振動は、大地震の如く地面を揺るがしていました。
そして大蝦蟇君は、わたし達が思っていたよりも速いスピードで飛び回り始めたのです。
「ギャー、翡翠、何とかしなさいっ!」
「何とかと言われましても……そうだ。ラムさん、同化して下さいっ」
ラムさんは『実り』 の能力を持つのですが、私はラムさん同化しました。
だけど雲影さんは、如何なる武器を使おうとも大蝦蟇君の身体は弾力がある為、切り刻む事など出来ないと告げたのです。
そこで私は、大蝦蟇君に近付きそっと触れたのでした。そしてラムさんの力を反転する事により、実りでは無く凝縮させる事で、大蝦蟇君を小さくさせたのです。
「翡翠……良くやったわ。これなら踏み潰せるわね」
「待って、アリスちゃん。カエル君は逃してあげようよ」
近くにあった川に、カエルを逃した私。
そして雲影さんも2人の遣いが相手では厄介だと考えたらしく、秘術忍法『水蜘蛛の術』(水の上を自在に動ける) を使い去ろうとしてしまったのです。
「本日はこれにて失礼する。さらばだっ!」
「あっ、水の上を歩いて逃げてる」
水面を歩ける術自体は中々の事なのですが、私やアリスちゃんは空を飛ぶ事が出来る為、先に川の反対側に着き待ち伏せをする事になりました。
「やれやれ。ここまで来れば大丈夫であっ、貴様ら何故そこにおる?」
「魔法の国で、飛行魔術も使えない何てお笑いね。リオ、奴を取り押さえなさい」
アリスちゃんはリオを召喚し、雲影さんを捕まえました。そして流石の雲影さんも降参し、足掻く事を止める事になったのです。
「ぐっ、不覚であった。拙者も飛行術を会得しておれば……」
後悔する雲影さんに対しアリスちゃんは、自分達に迷惑を掛けた償いをして貰うと告げていました。
そして、神黒翡翠の事について知っている事を全て吐く様命じたのです。
だけど当然、雲影さんは知らないと嘘を付き、もし知っていたとしても貴様らなどに言う筈が無かろうと、言葉を吐き捨てるのでした。
「そう。 リオ、締め付け3倍ね」
「ぐうっ……この程度の拷問など」
結局、10倍の締め付けまで耐え続けた雲影さんでしたが、11倍で諦める事になり白状する事となったのです。
雲影さんは偶然だった様ですが、1度だけ神黒翡翠を見た事があると言っていました。その場所は他の魔術師の領土であったのそうなのですが、雲影さんが神黒翡翠を手にしようとした時、強い光を放ち一瞬で消えてしまったと言っていたのです。
「消えた……やっぱり神黒翡翠は移動しているんですね」
「うむ。あの石は膨大な魔力が宿っていると言われるだけの事はある。そしてまるで……人の意思があるかの様にな」
それ以上の事は雲影さんも知らない言う事であった為、アリスちゃんは雲影さんを解放したのでした。
だけど、神黒翡翠を見付ける事が出来たとしても、触る事すら困難である事を知れただけでも収穫です。
そして、一般世界に戻った私達。
「翡翠、今デカイ波が来たけど大丈夫だったか?」
「え? あ、うん。私、別の場所にいたから」
光也君は、私が体育の授業で泳ぎが苦手そうだった事を知っていたらしく、心配をしてくれていたのです。
そしてその事に気付いた私は、一瞬固まってしまいました。光也君は自分の事を見ていてくれたのだと気付いたからです。
と、その時、先程私が助けた子供と、そのお母さんが挨拶に来ました。
「先程は本当に有難う御座いました。今から玻璃、いえ娘と念の為病院に行って来ます」
「はい。大事にならなくて良かったです」
そして一時の安らぎは終わりを告げ、私は本格的に神黒翡翠を探す事となるのです。
だけど1週間程、アグリッタさんの領土を探した私でしたが、神黒翡翠の気配さえ見付け出す事は出来ないままでした。
「やっぱり、アグリッタさんの領土には無いのかなぁ?」
「そうなると、他の領土に行くしかないね」
基本、他の領土に入るには話し合いか、戦闘で勝つしかないのです。そこで私は、一旦アリスちゃんの領土に入れて貰う事になりました。
「勿論それは良いけど、ここは私も探したから多分無いわよ」
「だよねぇ……そうだ。ルアンユーさんの領土は入れてくれないかな?」
中国の魔術師の遣いである、ルアンユーさんの領土へ向かう事になった私達。
だけど、アリスちゃんはルアンユーさんとあまり気が合わない為、乗り気ではなかったみたいです。そしてルアンユーさんは、私達を出迎えてくれたのですが。
「翡翠、と……誰だっけ?」
「アリスよっ! あんたを1度負かしてるでしょっ」
「ああ、あん時の酒乱女か。だけど、勝敗はまだついてないわよ」
こんな調子では領土に入れて貰えないと考えた私は、ある物を取り出し2人に配る事にしたのです。
「昨晩ね、家でクッキーを焼いたの。これを食べながら女子会をしようっ!」
私の発言で、呆気にとられていたアリスちゃんとルアンユーさん。だけど、そのクッキーは私特性で甘めに作っていた為、ルアンユーさんは私達を領土に入れてくれて、お茶を用意し落ちいて話が出来る事となったのでした。
「神黒翡翠? 多分ここにも無いわよ。私も大体探したからね」
「大体って何よ? 隈無く探しなさいよねっ」
また、ケンカが始まりそうになってしまったのですが、私が何とか宥める事となりました。
そして私はルアンユーさんに、雲影さんと会った事はありますかと話を切り替えたのです。
「雲影? ああ、あの全身黒コスプレの奴ね。何か大蝦蟇と散歩しているのを見かけた事があるわよ」
比喩の仕方は、アリスちゃんと同じルアンユーさん。そして私は雲影さんに聞いた、神黒翡翠について話したのですが、ルアンユーさんも同じ経験をしたと言うのでした。
目の前で強い光を放つ物体があったらしいのですが、ルアンユーさんは神黒翡翠だと気付かず放置してしまったらしいのです。
「使えなーい、あんたホンっとに使えないわっ!」
ルアンユーさんの愚かな行動に、完璧ギレしてしまったアリスちゃん。そして魔法は使わなかったのですが、結局取っ組み合いの喧嘩になってしまったのです。
「はぁ、はぁ、はぁ……中々やるわね、アリス」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……あんたこそ。だけど、あんたが馬鹿で助かったわ。神黒翡翠を奪われずに済んだんだからね」
絶対に混ざり合う事は無いでしょうと、私でも確信出来るアリスちゃんとルアンユーさん。
そして神黒翡翠の行くへは、一向に分からずじまいであったのですが、そこで私は無謀にも雲影さんの領土に行こうと考えてしまったのです。
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