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Evo8 「怒りの感情」
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海で出会った、秘術忍法を使う遣い滝野 雲影さん。
私は神黒翡翠を探す為、雲影さんの領土へと出向く事になったのでした。
「ルアンユーさんに教えて貰った場所、ここであってるよね?」
領土ギリギリまで来ていた私でしたが、等の雲影さんは外出している様でした。
そこでアキナ君は、もし雲影さんに会えたとしても、ルアンユーさんと違い、戦闘になる可能性が高いから気を付ける様にと、私に言ってくれたのです。
そして10分程して、大蝦蟇君の散歩を終えた雲影さんが帰宅して来たのでした。
「貴様は海で出会った、魔術師の遣いではないか。そこで何をしておる?」
私は要件を話し、領土に入れて欲しいと頼みましたが、雲影さんは簡単に了承する筈も無く、今一度相見える事になってしまったのです。
「今日は私1人で来たんですけど、ダメですか?」
その言葉を聞いた雲影さんは、私だけならば勝てると考えたらしく、戦いを申し出て来たのです。
そして条件として、私が勝てば雲影さんの領土に入れてくれる事になったのですが、雲影さんが勝てば私達の領土で神黒翡翠を探すと言う事になったのでした。
「はい。よろしくお願いします。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
「我に与えしその力 今この時この瞬間
この身を刃に変幻せん……雲影……進化の術っ!」
考えてみなくとも、私は非常に無謀な行動をしているのです。前回はアリスちゃんがいた為、何とかなったのですが、今回は1対1の戦いであるにも関わらず、忍者の雲影さんにどう戦うのかも、一切考えていなかったからでした。
そして戦闘が始まってしまい、先ず雲影さんが秘術忍法の1つ、電光石火の術』 を放ちました。電光石火の術とは、簡単に言えば『素早い動き』 の術だそうで、私は雲影さんの動きを全く捉える事が出来ずにいたのです。
「ん~、これはピンチです」
雲影さんは、キョロキョロしている私を見て更に見えなくしてやると告げ、次の術を使う事になっていました。
その術は『日遁の術』 と言うらしく、太陽などの光を手裏剣に反射させ目を狙う事により、視界を奪う術であるそうです。
そして、その術をまともに受けてしまった私は、数秒の間視界を失う事になってしまったのでした。
「ふっ。やはり貴様1人ではその程度だな」
視界を奪われた私は、一切の反撃をする事が出来なくなってしまいました。
そこでアキナ君は、防御魔法を使えば良いと支持を出してくれたのですが、私はそれすらせず只立ち尽くしているだけであったのです。
そして、その間に雲影さんは大蝦蟇君を呼び寄せ、私の頭上から押し潰させ様としたのでした。
だけど……。
「信じてたよ、大我慢君」
大蝦蟇君の腹に下敷きにされた筈の私。だけど大蝦蟇君は、1度私に救われた恩を覚えていたらしく、私を潰す瞬間に腹をへこませて守ってくれていたのです。
そして、雲影さんは勝利したと勘違いしていたらしく、高笑いをしていました。
「ふはははっ。これで奴の領土は我の物だ。存分に神黒翡翠を探させて貰うぞっ」
「うちの領土にもありませんでしたよ」
傷一つ負っていない私に、唖然としていた雲影さん。確実に当てた筈ずであった大蝦蟇君の攻撃を、何故交わせたのかと悩んでいたみたいです。
そこで私は状況を説明し、大蝦蟇君を優しい子に育てた雲影さんのお陰ですと伝えました。
「ぐっ、良く分からんが、まだだっ。とっておきの技を見せてやるぞ。……隠剣の神髄っ!」
隠剣の神髄とは別名『神魔滅殺』 と言うらしく、神も魔も薙ぎ払う大技であるらしいのです。
そして私の身体は切り刻まれて行くものの、ミルキさんを同化した事で、治癒魔法を使いながら何とか耐え続けていたのでした。
だけどそれでも押され始めてしまったのです。
「ぐぐぅっ……マキさん、アユさん、お願いっ!」
マキさんは身を守る能力を持ち、アユんは困難を乗り越える能力があります。私は計3天使さん達を同化したのですが、その後も5分程雲影さんの攻撃を受け続ける事になってしまっていました。
「クソっ、しぶとい奴め。これならばどうだっ!!」
「私は……耐えてみせますっ!!」
雲影さんは、神魔滅殺を最大限まで発揮させ追い討ちを掛けて来ました。
だけど私の身体を完全に消滅させる事は出来ず、ついには雲影さん自身の体力が尽きてしまう事になったのです。
「ぐはっ!」
「はぁ、はぁ……皆んな、ありがとう」
私は天使さん達にお礼を言っていたのですが、その光景を見ていた雲影さんは、『我の負けだ』 と言葉をこぼしたのでした。
私が天使さん達を信用していた様に、雲影さんが手なずけていた大蝦蟇君や、今の雲影さんにとって最終秘術であった、神魔滅殺まで破られてしまったからであったそうです。
「心行くまで探すが良い。しかし、この領土にも神黒翡翠は無いであろう」
移動してしまう神黒翡翠。だけどもう1度、同じ領土に戻って来る可能性もある為、私は領土に入れて貰う事にしたのです。
「そう言えば、アキナ君。魔術師は後何人くらいいるの?」
「さあ、僕にも分からないんだ。魔術師は、増えたり減ったりの入れ替わりが多いからね」
魔力を失った人や、何らかの理由で居られなくなってしまった魔術師は、魔法の国を去る事になるらしいのです。
反対に魔術を会得した人達は魔法の国へ出向き、新たな領土を広げるのだとアキナ君は言っていました。因みに、去ってしまった魔術師の領土は、他の魔術師の領土になるか、消滅するらしいです。
だけど領土の範囲が変わったとしても、神黒翡翠自体は魔法の国を出る事は無いと言われている為、探す範囲は決まっているのだと、私はアキナ君に聞きました。
「そっかぁ。神黒翡翠は、どこにいるんだろうね」
と、その時、大蝦蟇君が私の後を追って来ていたのです。そして風呂敷に包まれた物を舌で私に渡して来たのでした。
「何これ?」
「ゲロゲロ」
大蝦蟇君は声を鳴らし、そのまま去ってしまいました。そして、私は風呂敷を広げるとそこには、おにぎりと沢庵、更にお茶まで入っていたのです。
「もう、雲影さんはツンデレ何だから。でも、ありがとうございます」
「と言うか、毒とか入ってないよね?」
私に、人の好意は素直に受け取りましょうねと、説教されるアキナ君。
そして私は、おにぎりを頬張りながら適当に探索したのでした。しかしその日は何の成果も無く、自宅へと帰宅する事になったのです。
「お母さんはさ、何か叶えたい願いってある?」
「何、宝クジの話? そうねぇ……」
私の母は、先ず家を新築し、それからエステ三昧をして、豪華クルージングで世界旅行に……と冗談を言っていました。
だけど本当の願いは、私が立派に育ってくれればそれで良いと答えてくれたのです。
「お母さん……立派かどうかは分からないけど、精進するね」
お母さんは私の成長を願ってくれていて、私は平和な世界を望んでいます。こんなありふれた思いが続き、皆んなに幸せな事ばかりが訪れても良い筈なのですが、人は試練を背負わされ生まれて来た生き物なのでしょう……。
数日後、雲影さんの領土を探索していた私でしたが、やはり神黒翡翠を見付ける事は出来ずにいました。
そこで次は、マリアさんの領土を探させて貰おうかと、アキナ君に相談していた時、私の目の前にソフィーさんが現れたのです。
「あら、翡翠。ここは貴女の領土では無い筈だけど、何をしているの?」
「ソフィーさんこそ、何で雲影さんの領土に……」
「彼、雲影って言うのね。弱かったから、名前は聞かなかったわ」
ソフィーさんもまた神黒翡翠を探していたらしいのですが、偶然雲影さんと出会い領土侵入を賭け戦ったそうです。
そして私は苦戦したのですが、ソフィーさんは雲影さんを弱かったと吐き捨てたのでした。
「雲影さんは大丈夫何ですかっ!?」
「彼なら、今頃治療中じゃないかしら?」
ソフィーさんの言葉を聞い私は、生まれて初めて、『怒る』 と言う感情が芽生えてしまいました。そして……。
「我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
「良いわよ。相手をしてあげるわ。我に誓いしその力 今この時この瞬間 無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ!」
対峙してしまった私とソフィーさん。しかし私は、ソフィーさんに勝つ事は出来ないでしょう。ソフィーさんは以前、アグリッタさんに遣えていた事があるのですが、天使さん達の能力は全て知り尽くしている筈だからです。
「ソフィーさん……雲影さんに謝って貰いますっ!」
私はウエルさんの能力である『自由』 と、バビルさんが持つ『希望』 の能力を同化させ、雲影さんの影響からか侍姿に変身し、刀を携え戦いに挑みました。
「翡翠、貴方は何に対して興奮しているの?」
「戦う事は仕方ありません。でも、やり過ぎはダメですっ!」
ウエルさんの能力で、私は何とか刀を振り回す事が出来ていまきた。だけどソフィーさんは距離を取り、一旦会話を始めたのです。
「やり過ぎ? 翡翠、貴女はさっきから何を言っているの?」
ソフィーさんは言っていました。魔法の国では話し合いか、相手を倒さなければ領土には入れないのです。だけど手加減をしていたら、自身が危うくなる事くらい私でも分かっている筈であろうと。
勿論、私もこれまで何度か戦って来ているので、その事は重々承知してるつもりです。しかし、それでも平和を優先したい私は、相手を完膚無きまでに倒す事はしたくないと考えていました。
そして私は、そんな最中ある事を想像してしまったのです。
「まさか……大我慢君まで……」
「大我慢君? ああ、あのカエルの事ね。勿論あいつも、川に沈めたわよ。あんなのをペットにしているなんて、どうかしているわよね」
「ラムさんっ!!」
私は 『実り』の能力を使い、近くにあった木を大木化させ、ソフィーさんに攻撃を開始しました。
しかしソフィーさんは軽々と攻撃を交わし、逆にその大木を使い反撃に転じていたのです。
「ドゥーズっ!」
ドゥーズとはフランス語で数字の『12』 を示し、『発芽』 の能力を持つそうです。そして大木から葉っぱを大量に精製させ、私に向け放って来たのでした。
その葉はまるでカミソリの様な鋭さで、私の身体を切り裂いていたのです。
「ぐうっ……ミルキさん、お願いっ!」
私は、身を守るミルキさんの魔法で、何とかソフィーさんの攻撃力を半減させていました。だけどそれでも、私の体力は奪われてしまい、そして……。
「オンズっ!」
オンズとはフランス語で『11』 を示し、『強い力』 の能力を持つそうです。更にソフィーさんはオンズの能力により身体を硬化させ、私は渾身の一撃を与えられてしまう事になったのでした。
「ごほっ!! …………」
「これで分かったでしょ? 翡翠では私に勝てない事をね」
「ぐうっ……それでも……」
一瞬で気を失ってもおかしくないソフィーの攻撃を、まともに受けてしまった私。だけど、辛うじて立ち上がりました。
「無理をしなさんな。ミルキの治癒能力を使っても、3日は痛みが続く筈よ」
「それでも……雲影さんと大我慢君に謝って下さいっ!!」
その時、私を薄く黒みを帯びた光が覆い出したのでした。本来、私が放つ光は透明白色の筈なのですが、怒りの感情が爆発してしまい、濁ってしまったらしいのです。
そしてその光は拡大して、周辺を巻き込んで行ったのでした。
その頃、アグリッタさんは。
「何だ? 魔力に不純な力が混じっているぞ?」
その不純の力は、私の行いだと気付いたアグリッタさん。それは怒りの感情による濁りであり、今私がその状況に陥っているのだと。
そしてアグリッタさんは念の為、不運などを払拭する能力を持つ天使のエナさんを、私の元へ行かせる事にしたそうです。
「アキナ、翡翠姉さんに何かあったのかい?」
「翡翠は今、ソフィーと戦っているんだ」
「ソフィーとだって? 勝てる見込みあるのかい?」
アキナ君は一瞬間を置き、無理だろうねと答えらしいです。私を遣いとして、他の者を超える素質を持っていると思っていてくれた様なのですが、ソフィーさんもまた、いえそれ以上の魔法に対するセンスを持っている為、私の経験不足も踏まえ、勝てる可能性は0だとアキナ君は言い切ったらしいのでした。
「エナ、君も知っている通り、ソフィーの根本にあるものは『執着』 なんだ」
勝ちへの執着、願いを叶える為の執着、物事を完遂させる為の執着。そして今のソフィーさんには、生への執着が備わっているそうです。
生き残る為に、神黒翡翠が必要だと知っているソフィーさんは、如何なる相手にも負けを許してはいけないと言う執着で行動している為、私とは根本的に覚悟が違うのでしょう。
「翡翠、私を相手にここまで耐えた事は褒めてあげるわ」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「だけど私、偏頭痛持ちでそろそろ帰りたいの。だから、次の攻撃で終わらせるわよ。トロア……オンズっ!」
ソフィーさんはオンズの能力を3倍の力にし、私にトドメの一撃を浴びせました。そそう言った能力の応用の仕方にしても、私は完敗だったのです……。
「翡翠っ、大丈夫かい?」
「アキナ、アグリッタに伝えておきなさい。その内、貴方も倒すとね」
そう言い残し、その場を立ち去ったソフィーさん。そう言えば、まだ語られていなかったのですが、領土進出を含め戦いに於いて魔術師自身は基本、姿を見せないらしいのです。
その理由は、もし魔術師同士の戦いになってしまうと『大戦』 になってしまい、それこそ領土其の物が消滅してしまう恐れがある為、遣いの者達での戦いをさせているのだと、私は聞きました。
そして私の身体はアキナ君により、アグリッタさんの城へと運ばれていたらしいのですが、ソフィーさんとの戦いにより1週間程動けない状態になってしまっていたのです。
私は神黒翡翠を探す為、雲影さんの領土へと出向く事になったのでした。
「ルアンユーさんに教えて貰った場所、ここであってるよね?」
領土ギリギリまで来ていた私でしたが、等の雲影さんは外出している様でした。
そこでアキナ君は、もし雲影さんに会えたとしても、ルアンユーさんと違い、戦闘になる可能性が高いから気を付ける様にと、私に言ってくれたのです。
そして10分程して、大蝦蟇君の散歩を終えた雲影さんが帰宅して来たのでした。
「貴様は海で出会った、魔術師の遣いではないか。そこで何をしておる?」
私は要件を話し、領土に入れて欲しいと頼みましたが、雲影さんは簡単に了承する筈も無く、今一度相見える事になってしまったのです。
「今日は私1人で来たんですけど、ダメですか?」
その言葉を聞いた雲影さんは、私だけならば勝てると考えたらしく、戦いを申し出て来たのです。
そして条件として、私が勝てば雲影さんの領土に入れてくれる事になったのですが、雲影さんが勝てば私達の領土で神黒翡翠を探すと言う事になったのでした。
「はい。よろしくお願いします。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
「我に与えしその力 今この時この瞬間
この身を刃に変幻せん……雲影……進化の術っ!」
考えてみなくとも、私は非常に無謀な行動をしているのです。前回はアリスちゃんがいた為、何とかなったのですが、今回は1対1の戦いであるにも関わらず、忍者の雲影さんにどう戦うのかも、一切考えていなかったからでした。
そして戦闘が始まってしまい、先ず雲影さんが秘術忍法の1つ、電光石火の術』 を放ちました。電光石火の術とは、簡単に言えば『素早い動き』 の術だそうで、私は雲影さんの動きを全く捉える事が出来ずにいたのです。
「ん~、これはピンチです」
雲影さんは、キョロキョロしている私を見て更に見えなくしてやると告げ、次の術を使う事になっていました。
その術は『日遁の術』 と言うらしく、太陽などの光を手裏剣に反射させ目を狙う事により、視界を奪う術であるそうです。
そして、その術をまともに受けてしまった私は、数秒の間視界を失う事になってしまったのでした。
「ふっ。やはり貴様1人ではその程度だな」
視界を奪われた私は、一切の反撃をする事が出来なくなってしまいました。
そこでアキナ君は、防御魔法を使えば良いと支持を出してくれたのですが、私はそれすらせず只立ち尽くしているだけであったのです。
そして、その間に雲影さんは大蝦蟇君を呼び寄せ、私の頭上から押し潰させ様としたのでした。
だけど……。
「信じてたよ、大我慢君」
大蝦蟇君の腹に下敷きにされた筈の私。だけど大蝦蟇君は、1度私に救われた恩を覚えていたらしく、私を潰す瞬間に腹をへこませて守ってくれていたのです。
そして、雲影さんは勝利したと勘違いしていたらしく、高笑いをしていました。
「ふはははっ。これで奴の領土は我の物だ。存分に神黒翡翠を探させて貰うぞっ」
「うちの領土にもありませんでしたよ」
傷一つ負っていない私に、唖然としていた雲影さん。確実に当てた筈ずであった大蝦蟇君の攻撃を、何故交わせたのかと悩んでいたみたいです。
そこで私は状況を説明し、大蝦蟇君を優しい子に育てた雲影さんのお陰ですと伝えました。
「ぐっ、良く分からんが、まだだっ。とっておきの技を見せてやるぞ。……隠剣の神髄っ!」
隠剣の神髄とは別名『神魔滅殺』 と言うらしく、神も魔も薙ぎ払う大技であるらしいのです。
そして私の身体は切り刻まれて行くものの、ミルキさんを同化した事で、治癒魔法を使いながら何とか耐え続けていたのでした。
だけどそれでも押され始めてしまったのです。
「ぐぐぅっ……マキさん、アユさん、お願いっ!」
マキさんは身を守る能力を持ち、アユんは困難を乗り越える能力があります。私は計3天使さん達を同化したのですが、その後も5分程雲影さんの攻撃を受け続ける事になってしまっていました。
「クソっ、しぶとい奴め。これならばどうだっ!!」
「私は……耐えてみせますっ!!」
雲影さんは、神魔滅殺を最大限まで発揮させ追い討ちを掛けて来ました。
だけど私の身体を完全に消滅させる事は出来ず、ついには雲影さん自身の体力が尽きてしまう事になったのです。
「ぐはっ!」
「はぁ、はぁ……皆んな、ありがとう」
私は天使さん達にお礼を言っていたのですが、その光景を見ていた雲影さんは、『我の負けだ』 と言葉をこぼしたのでした。
私が天使さん達を信用していた様に、雲影さんが手なずけていた大蝦蟇君や、今の雲影さんにとって最終秘術であった、神魔滅殺まで破られてしまったからであったそうです。
「心行くまで探すが良い。しかし、この領土にも神黒翡翠は無いであろう」
移動してしまう神黒翡翠。だけどもう1度、同じ領土に戻って来る可能性もある為、私は領土に入れて貰う事にしたのです。
「そう言えば、アキナ君。魔術師は後何人くらいいるの?」
「さあ、僕にも分からないんだ。魔術師は、増えたり減ったりの入れ替わりが多いからね」
魔力を失った人や、何らかの理由で居られなくなってしまった魔術師は、魔法の国を去る事になるらしいのです。
反対に魔術を会得した人達は魔法の国へ出向き、新たな領土を広げるのだとアキナ君は言っていました。因みに、去ってしまった魔術師の領土は、他の魔術師の領土になるか、消滅するらしいです。
だけど領土の範囲が変わったとしても、神黒翡翠自体は魔法の国を出る事は無いと言われている為、探す範囲は決まっているのだと、私はアキナ君に聞きました。
「そっかぁ。神黒翡翠は、どこにいるんだろうね」
と、その時、大蝦蟇君が私の後を追って来ていたのです。そして風呂敷に包まれた物を舌で私に渡して来たのでした。
「何これ?」
「ゲロゲロ」
大蝦蟇君は声を鳴らし、そのまま去ってしまいました。そして、私は風呂敷を広げるとそこには、おにぎりと沢庵、更にお茶まで入っていたのです。
「もう、雲影さんはツンデレ何だから。でも、ありがとうございます」
「と言うか、毒とか入ってないよね?」
私に、人の好意は素直に受け取りましょうねと、説教されるアキナ君。
そして私は、おにぎりを頬張りながら適当に探索したのでした。しかしその日は何の成果も無く、自宅へと帰宅する事になったのです。
「お母さんはさ、何か叶えたい願いってある?」
「何、宝クジの話? そうねぇ……」
私の母は、先ず家を新築し、それからエステ三昧をして、豪華クルージングで世界旅行に……と冗談を言っていました。
だけど本当の願いは、私が立派に育ってくれればそれで良いと答えてくれたのです。
「お母さん……立派かどうかは分からないけど、精進するね」
お母さんは私の成長を願ってくれていて、私は平和な世界を望んでいます。こんなありふれた思いが続き、皆んなに幸せな事ばかりが訪れても良い筈なのですが、人は試練を背負わされ生まれて来た生き物なのでしょう……。
数日後、雲影さんの領土を探索していた私でしたが、やはり神黒翡翠を見付ける事は出来ずにいました。
そこで次は、マリアさんの領土を探させて貰おうかと、アキナ君に相談していた時、私の目の前にソフィーさんが現れたのです。
「あら、翡翠。ここは貴女の領土では無い筈だけど、何をしているの?」
「ソフィーさんこそ、何で雲影さんの領土に……」
「彼、雲影って言うのね。弱かったから、名前は聞かなかったわ」
ソフィーさんもまた神黒翡翠を探していたらしいのですが、偶然雲影さんと出会い領土侵入を賭け戦ったそうです。
そして私は苦戦したのですが、ソフィーさんは雲影さんを弱かったと吐き捨てたのでした。
「雲影さんは大丈夫何ですかっ!?」
「彼なら、今頃治療中じゃないかしら?」
ソフィーさんの言葉を聞い私は、生まれて初めて、『怒る』 と言う感情が芽生えてしまいました。そして……。
「我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
「良いわよ。相手をしてあげるわ。我に誓いしその力 今この時この瞬間 無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ!」
対峙してしまった私とソフィーさん。しかし私は、ソフィーさんに勝つ事は出来ないでしょう。ソフィーさんは以前、アグリッタさんに遣えていた事があるのですが、天使さん達の能力は全て知り尽くしている筈だからです。
「ソフィーさん……雲影さんに謝って貰いますっ!」
私はウエルさんの能力である『自由』 と、バビルさんが持つ『希望』 の能力を同化させ、雲影さんの影響からか侍姿に変身し、刀を携え戦いに挑みました。
「翡翠、貴方は何に対して興奮しているの?」
「戦う事は仕方ありません。でも、やり過ぎはダメですっ!」
ウエルさんの能力で、私は何とか刀を振り回す事が出来ていまきた。だけどソフィーさんは距離を取り、一旦会話を始めたのです。
「やり過ぎ? 翡翠、貴女はさっきから何を言っているの?」
ソフィーさんは言っていました。魔法の国では話し合いか、相手を倒さなければ領土には入れないのです。だけど手加減をしていたら、自身が危うくなる事くらい私でも分かっている筈であろうと。
勿論、私もこれまで何度か戦って来ているので、その事は重々承知してるつもりです。しかし、それでも平和を優先したい私は、相手を完膚無きまでに倒す事はしたくないと考えていました。
そして私は、そんな最中ある事を想像してしまったのです。
「まさか……大我慢君まで……」
「大我慢君? ああ、あのカエルの事ね。勿論あいつも、川に沈めたわよ。あんなのをペットにしているなんて、どうかしているわよね」
「ラムさんっ!!」
私は 『実り』の能力を使い、近くにあった木を大木化させ、ソフィーさんに攻撃を開始しました。
しかしソフィーさんは軽々と攻撃を交わし、逆にその大木を使い反撃に転じていたのです。
「ドゥーズっ!」
ドゥーズとはフランス語で数字の『12』 を示し、『発芽』 の能力を持つそうです。そして大木から葉っぱを大量に精製させ、私に向け放って来たのでした。
その葉はまるでカミソリの様な鋭さで、私の身体を切り裂いていたのです。
「ぐうっ……ミルキさん、お願いっ!」
私は、身を守るミルキさんの魔法で、何とかソフィーさんの攻撃力を半減させていました。だけどそれでも、私の体力は奪われてしまい、そして……。
「オンズっ!」
オンズとはフランス語で『11』 を示し、『強い力』 の能力を持つそうです。更にソフィーさんはオンズの能力により身体を硬化させ、私は渾身の一撃を与えられてしまう事になったのでした。
「ごほっ!! …………」
「これで分かったでしょ? 翡翠では私に勝てない事をね」
「ぐうっ……それでも……」
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「無理をしなさんな。ミルキの治癒能力を使っても、3日は痛みが続く筈よ」
「それでも……雲影さんと大我慢君に謝って下さいっ!!」
その時、私を薄く黒みを帯びた光が覆い出したのでした。本来、私が放つ光は透明白色の筈なのですが、怒りの感情が爆発してしまい、濁ってしまったらしいのです。
そしてその光は拡大して、周辺を巻き込んで行ったのでした。
その頃、アグリッタさんは。
「何だ? 魔力に不純な力が混じっているぞ?」
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そしてアグリッタさんは念の為、不運などを払拭する能力を持つ天使のエナさんを、私の元へ行かせる事にしたそうです。
「アキナ、翡翠姉さんに何かあったのかい?」
「翡翠は今、ソフィーと戦っているんだ」
「ソフィーとだって? 勝てる見込みあるのかい?」
アキナ君は一瞬間を置き、無理だろうねと答えらしいです。私を遣いとして、他の者を超える素質を持っていると思っていてくれた様なのですが、ソフィーさんもまた、いえそれ以上の魔法に対するセンスを持っている為、私の経験不足も踏まえ、勝てる可能性は0だとアキナ君は言い切ったらしいのでした。
「エナ、君も知っている通り、ソフィーの根本にあるものは『執着』 なんだ」
勝ちへの執着、願いを叶える為の執着、物事を完遂させる為の執着。そして今のソフィーさんには、生への執着が備わっているそうです。
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「翡翠、私を相手にここまで耐えた事は褒めてあげるわ」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「だけど私、偏頭痛持ちでそろそろ帰りたいの。だから、次の攻撃で終わらせるわよ。トロア……オンズっ!」
ソフィーさんはオンズの能力を3倍の力にし、私にトドメの一撃を浴びせました。そそう言った能力の応用の仕方にしても、私は完敗だったのです……。
「翡翠っ、大丈夫かい?」
「アキナ、アグリッタに伝えておきなさい。その内、貴方も倒すとね」
そう言い残し、その場を立ち去ったソフィーさん。そう言えば、まだ語られていなかったのですが、領土進出を含め戦いに於いて魔術師自身は基本、姿を見せないらしいのです。
その理由は、もし魔術師同士の戦いになってしまうと『大戦』 になってしまい、それこそ領土其の物が消滅してしまう恐れがある為、遣いの者達での戦いをさせているのだと、私は聞きました。
そして私の身体はアキナ君により、アグリッタさんの城へと運ばれていたらしいのですが、ソフィーさんとの戦いにより1週間程動けない状態になってしまっていたのです。
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国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢
マルグリット・フォン・ルーヴェン。
感情を表に出さず、
功績を誇らず、
ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは――
偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。
だが、マルグリットは嘆かない。
怒りもしない。
復讐すら、望まない。
彼女が選んだのは、
すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。
彼女がいなくなっても、領地は回る。
判断は滞らず、人々は困らない。
それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。
一方で、
彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、
「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。
――必要とされない価値。
――前に出ない強さ。
――名前を呼ばれない完成。
これは、
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