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Evo10 「ゼロの為に」
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他人の幸せを心から望む事が出来る人は、そう多くはいないのかも知れません。人を思いやる事が出来る人間は、先ず己が幸せでなければいけないのだから。
そして、その幸せとは人によって価値観がそれぞれ違い、一概にこれが幸せなのだとは言い切れません。だけどその幸せの根本にはきっと、互いが『笑顔』 に慣れる事が必要不可欠であるのだと私は信じたいです。
「ソフィー、お疲れ様」
「お疲れ様、セレナ」
「しかしソフィーは、ホント仕事が早いわよね」
これは、ソフィーさんの日常に起こった話しだそうです。仕事終わりの、ちょっとした会話中、ソフィーは一瞬視線を対面の路肩に向けたのでした。そしてそこには、まだ生後1カ月程の子猫がトボトボと歩いていたそうなのです。
「……(ノラ猫かしら?)」
「どうしたの、ソフィー?」
「いえ、何でもないわ。また明日、セレナ」
ソフィーさんの家は会社から歩いて30分程の場所にあり、1人暮らしをしているそうです。そしてその帰り道は、先程歩いていた子猫と同じ方向であった為、ソフィーさんもトボトボと歩き出したと言っていました。
と、そこへどこに隠れていたのか、ソフィーさんの目の前に、先ほどの子猫が現れ鳴き出したそうなのです。
「な~」
「随分、痩せ細ってるわね。狩りの仕方を教えて貰っていないの?」
人語が通じる筈も無いのでしょうが、子猫に話し掛けたソフィーさん。そして一瞬、手を差し伸べ猫を抱き上げ様としたらしいのですが、途中で止めてしまいそのまま歩き出してしまったそうなのです。
「な~」
「…………」
「な~」
小さな歩幅で追い掛けて来る子猫と、無視をするソフィーさん。実を言うとソフィーさんは猫アレルギーで、触ってしまうとクシャミが止まらなくなってしまう体質なのだそうです。
しかし、いつまでも着いて来る子猫に観念したのか、ソフィーさんは立ち止まりバッグの中を何やら探し出したと、私は聞いています。
「はぁ……これはね、私の非常食なの。あなたにとってもそうでしょうけど、私にとっても食べ物というのは」
「な~」
話の途中だったのですが、鳴き出す子猫。ソフィーさんはシブシブ、携帯していた鯖缶のフタを開け子猫に半分だけ与える事にしたそうです。
「どう、満足した? 後は私の分よ」
「な~」
どうやら、子猫は相当お腹が空いていた様で、ソフィーさんは泣く泣く残りの半分を、分け与える事になってしまったと言っていました。
「もう無いわよ。後は自分の力で探しなさい」
「な~」
今度は催促では無く、『ありがとう』 と言っているのか、子猫はソフィーさんの足元に身体を擦り寄せて来たそうです。
「分かったから、行きなさい。じゃあね」
「な~」
これ以上接していると、クシャミが止まらなくなってしまうと考えたソフィーさんは、足早にその場を後にしたと言っていました。
だけど50m程歩いた所で、後方から車のブレーキ音が響き渡ったそうです。そして、ソフィーさんは直ぐに駆戻ったらしいのですが、運転手は走り去っしまい、グッタリとしている子猫だけが残されていたと、私は聞きました。
「くっ、どうすれば良いのよ? この近くには動物病院も無いし、役所だってもう終わっている時間じゃない……」
「な…………」
今にも息が絶えそうな子猫を見つめていたソフィーさん。そしてその状況を、自分が事故にあった時と重ね合わせてしまっていたそうです。
「……良いわ。今度は私が救う番よ。我に誓いしその力 今この時この瞬間 無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ!」
ソフィーさんは子猫を抱き抱え、路地裏に行き変身したと言っていました。
そして自分以外に初めて掛ける魔法であった様なのですが、『ヌフ』 と叫んだそうです。
ヌフは『終わりと始まり』 の能力を持ち、瀕死のソフィーさんを救った魔法であったのだと私は聞きました。
その後、その魔法の効果は発揮し、子猫の傷は治癒される事となったそうなのですが……。
「……な~」
「……良かった。自分以外にもヌフの効果は効くのね。……いや、待って。まさかこの子……」
ソフィーさんは過去に起きた自分の状況を思い出していたそうです。この子猫と同じで、車に轢かれ重体になってしまったらしいのですが、咄嗟にヌフと叫ぶ事により、魔術師エリファスさんが現れ救われたと言っていました。
だけどそれは、ソフィーさんに魔力を使う適正があったからなのです。でも、この子猫を何故、救えたのかと言い疑問がソフィーさんに浮かび、即座に回答を導き出す事になったと聞きました。
そうなのです。もしかするとこの子猫にも、魔法に関する適正があるのではないのかと。
そしてソフィーさんは子猫を抱え、魔法の国へと行く事にした様です。魔法の国へは、適正が無い者は入れない為の試みであったからだと言っていました。
「な~」
「……やっぱり、そうだったのね。猫の適正者に会ったのは初めてよ」
その後、この子猫が普通の猫であった場合は、そのまま帰すつもりであったらしいのですが、適正があると分かった以上、側にいさせてあげる事にしたソフィーさん。
そして早速、名前を付けてあげる事にしたそうです。
「な~な~」
「そうねぇ、あなたの名前は……ゼロよ。これからヨロシ……あっ!」
子猫を抱き抱え名を付けたソフィーさんでしたが、ある事を思い出してしまったのです。そうです。自分は猫アレルギーの体質である事を。だけど現時点でクシャミの出る感じは無く、魔法の国では平気なのだと気付いと言っていました。
でもそこで、もう1つ問題が起きてしまったらしいのです。ゼロ君は先程から鳴いていたのですが、ソフィーさんと目線を合わせずキョロキョロしていたと言っていました。
「な~な~な~」
「あなた、まさか……目が見えないの?」
ヌフの能力を使いゼロ君の一命は取り留めたのですが、ソフィーさんはヌフの力を他の者に使ったのは初めてであった為、不完全な回復をしてしまっていたらしいのです。
そこでソフィーさんは、ある方法を思い付いたのでした。今は私が使っている能力、ミルキさんの治療を施せばゼロ君の視力を取り戻せるのではないかと。
でも私の領土に行くには、途中でルアンユーさんの領土を通らなくてはいけないのでした。魔法の国で人望など全く無いと自負しているソフィーさんは、私の領土に行く為にルアンユーさんと戦う事になってしまったそうなのです。
「な~な~」
「待ってなさい。今、治して貰ってあげるから」
「な~」
そして、ルアンユーさんの領土ギリギリまで辿り着いたソフィーさんは、らしからぬ大声を出しルアンユーさんを呼んだそうです。
「ルアンユー、出て来なさいっ!」
「誰よ? 人の名前を大声で叫んでる奴……何でソフィーがここにいるのよっ!?」
ルアンユーさんもソフィーさんがいた事で、大声を張り上げる事となったと言っていました。
そしてソフィーさんは時間が無い為、黙ってこの領土を通しなさいとルアンユーさんに命令したそうです。
「通してくれれば、何もしないわ」
「随分と、上から目線ね? 翡翠ならともかく、アンタを易々と入れる訳ないでしょ」
話し合いでは通して貰えないと察したソフィーさんは、数秒考え変身呪文を唱える事となったそうです。
そしてルアンユーさんも、ソフィーさんとは戦いたく無かった様なのですが、変身して構える事となったと言っていました。
「貴女が纏うには、勿体無いくらい綺麗な模様の礼服ね」
「やかましやーっ。纏いなさい、黻、黼っ!」
黻(ふつ) は『悪に背き善に向かう』 能力を持ち、黼(ほ) は『斧で断ち切る』 能力を持つそうです。
そしてこの技は、ルアンユーさんにとっても本気の戦いをする時に使う魔法であるらしいのですが、ソフィーさん相手では初めから全開で行かなければという、余裕の無さを示していたそうです。
だけどルアンユーさんは、まだとっておきの魔法は隠していたらしいのでした。
「成る程。私は悪という事ね。なら……来なさいトロア、ドゥっ!」
トロアは数字の『3』 を示し、『アセンデッドマスター(聖職者)』 に変身する能力で、ドゥは数字の『2』 を示し、『信じる心』 などの能力を持つそうです。
「アンタが聖職者ですって? 笑わせないでよねっ!」
黼の斧で、ソフィーさんを両断したルアンユーさん。だけどソフィーさんは傷1つ負わされていなかったそうです。
「ルアンユー、貴女は魔法の組み合わせを間違えたわ」
ルアンユーさんは黻の能力である『悪に背き善に向かう』 を纏っていた為、聖職者に変身したソフィーさんを斬り裂く事が出来なかったそうなのです。
更にソフィーさんは、ドゥの『信じる心』 の能力で自分は斬られないと念じていた為、無傷でいられたと言っていました。
そこでルアンユーさんは、とっておきの魔法を見せてあげると告げ、新たな礼服を纏う事になったそうです。
「我に纏え……華虫っ!!」
華虫(かちゅう) とは 『五色の羽毛を持つキジの雛、若しくは鳳凰』 の能力であり、これを纏ったルアンユーさんは、『力、速さ、神々しさ』 で、ソフィーさんを圧倒する事になったそうです。
「くっ、流石に鳳凰相手ではドゥの能力も追いつかないわね。だけど……アン、キャトル、サンク、力を貸しなさいっ!」
ソフィーさんはドゥとトロアを解除し、数字の『1』 を示すアンの能力である『思考を現実化させる』 を呼び寄せたそうです。
続いて数字の『4』 を示すキャトルの『安定』 、そして数字の『5』 を示す『変化』 の能力を使い、ルアンユーさんと同じく鳳凰の翼を、思考の安定と変化の現実化で創造し舞い上がったのだと言っていました。
「そんなその場凌ぎの偽鳳凰なんかに、私の鳳凰が負けるもんですかっ!!」
「そうかしら? セットゥっ!!」
セットゥとは数字の『7』 を示し、『正しい道を照らす』 能力を持つそうです。そしてソフィーさんはこの4つの目数字を使い、ルアンユーさんのどこを狙えば良いかを見極めたのだと言っていました。
「いっけーっっっ!!!」
「無駄よ。そこっ!」
2体の鳳凰と化した身体がぶつかり合ったそうです。そして凄まじい衝突音と共に激しい光を放ち、2人は地面へと落下してしまったと、私は聞きました。
だけど、立ち上がった人は。
「……ふぅ。良い攻撃だったわ、ルアンユー。悪いけど先を急ぐから、領土には入らせて貰うわよ」
僅差だったそうですが、ソフィーさんの魔力が上回っていたそうです。
そしてゼロ君を抱え、わたしの領土へと向かったソフィーさん。だけどその身体もまた、ルアンユーさんの攻撃により傷付けられていたのです。
「な~」
「大丈夫よ。私の性でゼロは視力を失ってしまったのだから、必ず取り戻してあげるわ……」
そう言えば、ソフィーさんは仕事帰りにそのまま魔法の国へ来ていました。途中で鯖缶とは別の携帯食を食べていたそうなのですが、流石にそれだけでは足りなく、傷と空腹で今にも倒れそうな状態であったそうです。
だけどゼロ君の為、何とか私の領土近くまで辿り着く事になったらしいのです。
「あれ、ソフィーじゃないか。何でルアンユーの領土にいるんだい?」
「アキナ……翡翠はどこにいるの?」
ソフィーさんは事の成り行きを簡潔に話、私を連れて来て欲しいとアキナ君に頼んだそうです。
「へ~、猫に適正がある何て、僕も始めて知ったよ。まあ、良いか。翡翠、来て」
「は~い。どうしたのアキナ君? って、ソフィーさん?」
天使さん達もそうなのですが、私もアキナ君に呼ばれる事で、直ぐに駆け付ける事が出来るのです。
「翡翠、貴女にお願いがあるの。ミルキの能力を使って、この子の視力を治して欲しいのよー
「え? 猫の視力? それより、ソフィーさんの方がボロボロですよ?」
自分は大丈夫であるから、子猫の視力を治し欲しいと頭を下げていたソフィーさん。アキナ君でもこんな状況のソフィーさんを初めて見たらしいのですが、一先ず私はミルキさんを呼ぶ事にしました。
「どうしたの、翡翠ちゃん?」
「えとね、ソフィーさんが抱えている猫の視力を治して貰いたいんだって。ミルキさん、出来る?」
ミルキさんは少し間を置き、出来ない事はないと言いました。だけど、やらないとも。
ソフィーさんはアグリッタさんの元遣いで、知った仲ではあるのですが今は敵だと言う事だそうです。そして私の不利になりそうな事はしないと、ミルキさんは断ったのでした。
「……ミルキの言う通りね。私は恩を受けたとしても、神黒翡翠を手に入れる為なら翡翠を倒すわ。だけど……」
私自身はソフィーさんが敵であろうと、救いたいと考えていました。そこで、アキナ君がある提案をしたのです。
「ソフィー、ならこうしよう。君の数字の能力の秘密を教えてよ。それなら良いだろ、ミルキ?」
「確かに数字の能力は危険。秘密が分かれば、翡翠ちゃんも戦い易くなるわね」
数字の能力は、他の魔法に比べても上級位の力を持つそうです。その秘密を聞きだそうとしたアキナ君でしたが、ソフィーさんは数秒黙り込み言葉を発したのでした。
「……良いわ、教える。但し、この子の治療が先よ」
「ソフィーさん……。ミルキさん、同化して。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
ミルキさんと同化し、白衣姿に変身した私。そしてソフィーさんから子猫を預り、顔に優しく手を当てました。
「ゼロ……」
「この子はゼロ君って言うんですね。大丈夫、ミルキさんの力ならきっと治せます」
勿論、ソフィーさんもミルキさんを同化させた事はあるのですが、今回の様な能力の使い方はした事がなかった様です。
だけど、ミルキさんの能力を信じない訳ではなかったのですが、やはり不安は残こす事になっていた様でした。ヌフの能力で一度蘇生させている為、重ね掛けの魔法に効果があるのかと。
「…………終了ですよ、ソフィーさん」
「……ゼロ?」
「な~っ!」
ゼロ君はソフィーさんを見つめ、大声で鳴き出していました。どうやら治癒魔法は成功した様です。
そして約束通り、ソフィーさんは数字の能力の秘密を語り出そうと口を開き掛けたのですが、私は言わなくて良いですよと言いました。それを知ってしまえば、ソフィーさんと本気で戦えなくなってしまうと思ったからです。
その後、ソフィーさんの部屋にて。
「あっくしっ!! やっぱり薬貰って来よう……ズズ」
「な~?」
そして、その幸せとは人によって価値観がそれぞれ違い、一概にこれが幸せなのだとは言い切れません。だけどその幸せの根本にはきっと、互いが『笑顔』 に慣れる事が必要不可欠であるのだと私は信じたいです。
「ソフィー、お疲れ様」
「お疲れ様、セレナ」
「しかしソフィーは、ホント仕事が早いわよね」
これは、ソフィーさんの日常に起こった話しだそうです。仕事終わりの、ちょっとした会話中、ソフィーは一瞬視線を対面の路肩に向けたのでした。そしてそこには、まだ生後1カ月程の子猫がトボトボと歩いていたそうなのです。
「……(ノラ猫かしら?)」
「どうしたの、ソフィー?」
「いえ、何でもないわ。また明日、セレナ」
ソフィーさんの家は会社から歩いて30分程の場所にあり、1人暮らしをしているそうです。そしてその帰り道は、先程歩いていた子猫と同じ方向であった為、ソフィーさんもトボトボと歩き出したと言っていました。
と、そこへどこに隠れていたのか、ソフィーさんの目の前に、先ほどの子猫が現れ鳴き出したそうなのです。
「な~」
「随分、痩せ細ってるわね。狩りの仕方を教えて貰っていないの?」
人語が通じる筈も無いのでしょうが、子猫に話し掛けたソフィーさん。そして一瞬、手を差し伸べ猫を抱き上げ様としたらしいのですが、途中で止めてしまいそのまま歩き出してしまったそうなのです。
「な~」
「…………」
「な~」
小さな歩幅で追い掛けて来る子猫と、無視をするソフィーさん。実を言うとソフィーさんは猫アレルギーで、触ってしまうとクシャミが止まらなくなってしまう体質なのだそうです。
しかし、いつまでも着いて来る子猫に観念したのか、ソフィーさんは立ち止まりバッグの中を何やら探し出したと、私は聞いています。
「はぁ……これはね、私の非常食なの。あなたにとってもそうでしょうけど、私にとっても食べ物というのは」
「な~」
話の途中だったのですが、鳴き出す子猫。ソフィーさんはシブシブ、携帯していた鯖缶のフタを開け子猫に半分だけ与える事にしたそうです。
「どう、満足した? 後は私の分よ」
「な~」
どうやら、子猫は相当お腹が空いていた様で、ソフィーさんは泣く泣く残りの半分を、分け与える事になってしまったと言っていました。
「もう無いわよ。後は自分の力で探しなさい」
「な~」
今度は催促では無く、『ありがとう』 と言っているのか、子猫はソフィーさんの足元に身体を擦り寄せて来たそうです。
「分かったから、行きなさい。じゃあね」
「な~」
これ以上接していると、クシャミが止まらなくなってしまうと考えたソフィーさんは、足早にその場を後にしたと言っていました。
だけど50m程歩いた所で、後方から車のブレーキ音が響き渡ったそうです。そして、ソフィーさんは直ぐに駆戻ったらしいのですが、運転手は走り去っしまい、グッタリとしている子猫だけが残されていたと、私は聞きました。
「くっ、どうすれば良いのよ? この近くには動物病院も無いし、役所だってもう終わっている時間じゃない……」
「な…………」
今にも息が絶えそうな子猫を見つめていたソフィーさん。そしてその状況を、自分が事故にあった時と重ね合わせてしまっていたそうです。
「……良いわ。今度は私が救う番よ。我に誓いしその力 今この時この瞬間 無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ!」
ソフィーさんは子猫を抱き抱え、路地裏に行き変身したと言っていました。
そして自分以外に初めて掛ける魔法であった様なのですが、『ヌフ』 と叫んだそうです。
ヌフは『終わりと始まり』 の能力を持ち、瀕死のソフィーさんを救った魔法であったのだと私は聞きました。
その後、その魔法の効果は発揮し、子猫の傷は治癒される事となったそうなのですが……。
「……な~」
「……良かった。自分以外にもヌフの効果は効くのね。……いや、待って。まさかこの子……」
ソフィーさんは過去に起きた自分の状況を思い出していたそうです。この子猫と同じで、車に轢かれ重体になってしまったらしいのですが、咄嗟にヌフと叫ぶ事により、魔術師エリファスさんが現れ救われたと言っていました。
だけどそれは、ソフィーさんに魔力を使う適正があったからなのです。でも、この子猫を何故、救えたのかと言い疑問がソフィーさんに浮かび、即座に回答を導き出す事になったと聞きました。
そうなのです。もしかするとこの子猫にも、魔法に関する適正があるのではないのかと。
そしてソフィーさんは子猫を抱え、魔法の国へと行く事にした様です。魔法の国へは、適正が無い者は入れない為の試みであったからだと言っていました。
「な~」
「……やっぱり、そうだったのね。猫の適正者に会ったのは初めてよ」
その後、この子猫が普通の猫であった場合は、そのまま帰すつもりであったらしいのですが、適正があると分かった以上、側にいさせてあげる事にしたソフィーさん。
そして早速、名前を付けてあげる事にしたそうです。
「な~な~」
「そうねぇ、あなたの名前は……ゼロよ。これからヨロシ……あっ!」
子猫を抱き抱え名を付けたソフィーさんでしたが、ある事を思い出してしまったのです。そうです。自分は猫アレルギーの体質である事を。だけど現時点でクシャミの出る感じは無く、魔法の国では平気なのだと気付いと言っていました。
でもそこで、もう1つ問題が起きてしまったらしいのです。ゼロ君は先程から鳴いていたのですが、ソフィーさんと目線を合わせずキョロキョロしていたと言っていました。
「な~な~な~」
「あなた、まさか……目が見えないの?」
ヌフの能力を使いゼロ君の一命は取り留めたのですが、ソフィーさんはヌフの力を他の者に使ったのは初めてであった為、不完全な回復をしてしまっていたらしいのです。
そこでソフィーさんは、ある方法を思い付いたのでした。今は私が使っている能力、ミルキさんの治療を施せばゼロ君の視力を取り戻せるのではないかと。
でも私の領土に行くには、途中でルアンユーさんの領土を通らなくてはいけないのでした。魔法の国で人望など全く無いと自負しているソフィーさんは、私の領土に行く為にルアンユーさんと戦う事になってしまったそうなのです。
「な~な~」
「待ってなさい。今、治して貰ってあげるから」
「な~」
そして、ルアンユーさんの領土ギリギリまで辿り着いたソフィーさんは、らしからぬ大声を出しルアンユーさんを呼んだそうです。
「ルアンユー、出て来なさいっ!」
「誰よ? 人の名前を大声で叫んでる奴……何でソフィーがここにいるのよっ!?」
ルアンユーさんもソフィーさんがいた事で、大声を張り上げる事となったと言っていました。
そしてソフィーさんは時間が無い為、黙ってこの領土を通しなさいとルアンユーさんに命令したそうです。
「通してくれれば、何もしないわ」
「随分と、上から目線ね? 翡翠ならともかく、アンタを易々と入れる訳ないでしょ」
話し合いでは通して貰えないと察したソフィーさんは、数秒考え変身呪文を唱える事となったそうです。
そしてルアンユーさんも、ソフィーさんとは戦いたく無かった様なのですが、変身して構える事となったと言っていました。
「貴女が纏うには、勿体無いくらい綺麗な模様の礼服ね」
「やかましやーっ。纏いなさい、黻、黼っ!」
黻(ふつ) は『悪に背き善に向かう』 能力を持ち、黼(ほ) は『斧で断ち切る』 能力を持つそうです。
そしてこの技は、ルアンユーさんにとっても本気の戦いをする時に使う魔法であるらしいのですが、ソフィーさん相手では初めから全開で行かなければという、余裕の無さを示していたそうです。
だけどルアンユーさんは、まだとっておきの魔法は隠していたらしいのでした。
「成る程。私は悪という事ね。なら……来なさいトロア、ドゥっ!」
トロアは数字の『3』 を示し、『アセンデッドマスター(聖職者)』 に変身する能力で、ドゥは数字の『2』 を示し、『信じる心』 などの能力を持つそうです。
「アンタが聖職者ですって? 笑わせないでよねっ!」
黼の斧で、ソフィーさんを両断したルアンユーさん。だけどソフィーさんは傷1つ負わされていなかったそうです。
「ルアンユー、貴女は魔法の組み合わせを間違えたわ」
ルアンユーさんは黻の能力である『悪に背き善に向かう』 を纏っていた為、聖職者に変身したソフィーさんを斬り裂く事が出来なかったそうなのです。
更にソフィーさんは、ドゥの『信じる心』 の能力で自分は斬られないと念じていた為、無傷でいられたと言っていました。
そこでルアンユーさんは、とっておきの魔法を見せてあげると告げ、新たな礼服を纏う事になったそうです。
「我に纏え……華虫っ!!」
華虫(かちゅう) とは 『五色の羽毛を持つキジの雛、若しくは鳳凰』 の能力であり、これを纏ったルアンユーさんは、『力、速さ、神々しさ』 で、ソフィーさんを圧倒する事になったそうです。
「くっ、流石に鳳凰相手ではドゥの能力も追いつかないわね。だけど……アン、キャトル、サンク、力を貸しなさいっ!」
ソフィーさんはドゥとトロアを解除し、数字の『1』 を示すアンの能力である『思考を現実化させる』 を呼び寄せたそうです。
続いて数字の『4』 を示すキャトルの『安定』 、そして数字の『5』 を示す『変化』 の能力を使い、ルアンユーさんと同じく鳳凰の翼を、思考の安定と変化の現実化で創造し舞い上がったのだと言っていました。
「そんなその場凌ぎの偽鳳凰なんかに、私の鳳凰が負けるもんですかっ!!」
「そうかしら? セットゥっ!!」
セットゥとは数字の『7』 を示し、『正しい道を照らす』 能力を持つそうです。そしてソフィーさんはこの4つの目数字を使い、ルアンユーさんのどこを狙えば良いかを見極めたのだと言っていました。
「いっけーっっっ!!!」
「無駄よ。そこっ!」
2体の鳳凰と化した身体がぶつかり合ったそうです。そして凄まじい衝突音と共に激しい光を放ち、2人は地面へと落下してしまったと、私は聞きました。
だけど、立ち上がった人は。
「……ふぅ。良い攻撃だったわ、ルアンユー。悪いけど先を急ぐから、領土には入らせて貰うわよ」
僅差だったそうですが、ソフィーさんの魔力が上回っていたそうです。
そしてゼロ君を抱え、わたしの領土へと向かったソフィーさん。だけどその身体もまた、ルアンユーさんの攻撃により傷付けられていたのです。
「な~」
「大丈夫よ。私の性でゼロは視力を失ってしまったのだから、必ず取り戻してあげるわ……」
そう言えば、ソフィーさんは仕事帰りにそのまま魔法の国へ来ていました。途中で鯖缶とは別の携帯食を食べていたそうなのですが、流石にそれだけでは足りなく、傷と空腹で今にも倒れそうな状態であったそうです。
だけどゼロ君の為、何とか私の領土近くまで辿り着く事になったらしいのです。
「あれ、ソフィーじゃないか。何でルアンユーの領土にいるんだい?」
「アキナ……翡翠はどこにいるの?」
ソフィーさんは事の成り行きを簡潔に話、私を連れて来て欲しいとアキナ君に頼んだそうです。
「へ~、猫に適正がある何て、僕も始めて知ったよ。まあ、良いか。翡翠、来て」
「は~い。どうしたのアキナ君? って、ソフィーさん?」
天使さん達もそうなのですが、私もアキナ君に呼ばれる事で、直ぐに駆け付ける事が出来るのです。
「翡翠、貴女にお願いがあるの。ミルキの能力を使って、この子の視力を治して欲しいのよー
「え? 猫の視力? それより、ソフィーさんの方がボロボロですよ?」
自分は大丈夫であるから、子猫の視力を治し欲しいと頭を下げていたソフィーさん。アキナ君でもこんな状況のソフィーさんを初めて見たらしいのですが、一先ず私はミルキさんを呼ぶ事にしました。
「どうしたの、翡翠ちゃん?」
「えとね、ソフィーさんが抱えている猫の視力を治して貰いたいんだって。ミルキさん、出来る?」
ミルキさんは少し間を置き、出来ない事はないと言いました。だけど、やらないとも。
ソフィーさんはアグリッタさんの元遣いで、知った仲ではあるのですが今は敵だと言う事だそうです。そして私の不利になりそうな事はしないと、ミルキさんは断ったのでした。
「……ミルキの言う通りね。私は恩を受けたとしても、神黒翡翠を手に入れる為なら翡翠を倒すわ。だけど……」
私自身はソフィーさんが敵であろうと、救いたいと考えていました。そこで、アキナ君がある提案をしたのです。
「ソフィー、ならこうしよう。君の数字の能力の秘密を教えてよ。それなら良いだろ、ミルキ?」
「確かに数字の能力は危険。秘密が分かれば、翡翠ちゃんも戦い易くなるわね」
数字の能力は、他の魔法に比べても上級位の力を持つそうです。その秘密を聞きだそうとしたアキナ君でしたが、ソフィーさんは数秒黙り込み言葉を発したのでした。
「……良いわ、教える。但し、この子の治療が先よ」
「ソフィーさん……。ミルキさん、同化して。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠……エボリューションっ!」
ミルキさんと同化し、白衣姿に変身した私。そしてソフィーさんから子猫を預り、顔に優しく手を当てました。
「ゼロ……」
「この子はゼロ君って言うんですね。大丈夫、ミルキさんの力ならきっと治せます」
勿論、ソフィーさんもミルキさんを同化させた事はあるのですが、今回の様な能力の使い方はした事がなかった様です。
だけど、ミルキさんの能力を信じない訳ではなかったのですが、やはり不安は残こす事になっていた様でした。ヌフの能力で一度蘇生させている為、重ね掛けの魔法に効果があるのかと。
「…………終了ですよ、ソフィーさん」
「……ゼロ?」
「な~っ!」
ゼロ君はソフィーさんを見つめ、大声で鳴き出していました。どうやら治癒魔法は成功した様です。
そして約束通り、ソフィーさんは数字の能力の秘密を語り出そうと口を開き掛けたのですが、私は言わなくて良いですよと言いました。それを知ってしまえば、ソフィーさんと本気で戦えなくなってしまうと思ったからです。
その後、ソフィーさんの部屋にて。
「あっくしっ!! やっぱり薬貰って来よう……ズズ」
「な~?」
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第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
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