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Evo12 「1度だけの願い」
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私は敵である筈のソフィーさんが言った願いを叶えてしまいました。それを知ったアリスちゃんは私の甘さに激怒し、対決する事になってしまったのです。
だけどそれよりも先に、魔法の国で神黒翡翠の魔力が発せられていた事に気付いた、他の遣い達も駆け付け探す事になるのでした。
その後、アリスちゃんは奥の手を使い、私は跪いてしまいそうになったのですが何とか耐えて、一先ず仲直りは出来たのです。
「アリスちゃん、私達も神黒翡翠を探しに行かなきゃ」
「身も心もボロボロだけど、そうね」
ソフィーさん達の元へ向かった私達。だけど、神黒翡翠の気配はあるものの、その存在を見付け出す事は出来ないでいたのです。
「おかしいですわね? こんなに強い魔力を放っていると言うのに」
「あれ? 魔力が消えかけているわよ?」
まるで自分の存在を気付かせる為に、魔力の強弱をしている様な状況を示していた神黒翡翠。だけどやっぱり、私達は形として確認出来ず、遣い達はその場で立ちすくむ事になってしまったのです。
「どう言う事よ、翡翠?」
「そう言われましても……」
「待って。1つ試してみたい方法があるわ」
ソフィーさんは魔法の国に子猫のゼロ君を連れて来ていたのですが、ゼロ君の能力で神黒翡翠の居場所を探し出せるかも知れないと言ったのです。
その力は『メッセージ』 や『御告げ』 の能力であるらしく、それを使えばもしかしたらと言う事でした。
「ゼロ君にそんな力が」
「翡翠、これはアレよ。猫の手も借りたいと言うヤツよ」
「アリスちゃん……確かにそうだね」
何はともあれソフィーさんは変身し、ゼロ君の能力で試す事にしたのです。
「我に誓えしその力 今この時この瞬間
無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ! ゼロ、お願い」
「…………な~」
ゼロ君は私の真上を、ジッと見つめていました。だけどそこは空に似た風景があるだけで、特にこれと言った物は何も無い状況であったのです。
しかしそこで、マリアさんがある事に気が付いた様でした。
「何よ? 分かったんなら、さっさと教えなさいよ」
「ルアンユーはお黙りなさい。簀巻きにして川に投げ捨てますわよ。神黒翡翠は……戦闘領域にある筈ですわ」
魔法の国とは違う、遣い達が戦う場所である別次元の戦闘領域。確かに魔法の国を探したところで見付から無い訳でした。
だけどそこで、1つ問題が発生してしまったのです。戦闘領域は、遣い達が戦う意思を示さなければ現れないと言う事でした。その意思を持続する事で戦闘領域は保つ事が出来る為、遣い達は戦い続けなくてはいけないと言う事だったのです。
「さて、マリア。私の相手をして貰うわよ。我に遣えしその力 今この時この瞬間 十二の衣で纏わん……ルアンユー……エボリューションっ!」
「上等ですわ、ルアンユー。血祭りにして差し上げますわ。我に奏でしその力 今この時この瞬間 聖なる音源で魅了せん……マリア……エボリューションっ!」
始まってしまった遣い達の戦い。そこで私はアリスちゃんの体調を気にし、自分が戦ってくるので待っていて欲しいと告げたのでした。
「翡翠……。私の願いは後回しでもいけど、貴女こそ身体は大丈夫なの?」
「うん。平気だよ」
「なら、翡翠の相手は私がするわ。翡翠、私はどうしても負けられない理由があるの。たがら覚悟しなさい」
4人の遣い達が戦闘領域に移動しました。そして先ずは、ルアンユーさん対マリアさんにて。
「ルアンユー、一応、貴女の願いを聞いてあげますわ」
「あんたに言う筋合いは無いけど、私の願いはね……本物の『翡翠』 になる事よっ」
『ルアンユー』 とは中国語で『軟玉』 を示すらしいく、『翡翠』 の『硬玉』 とは違い価値の劣る翡翠石を意味しているらしいのです。
そしてルアンユーさんは私と出会い、自分もそうでありたいと言う思いが、強くなり始めたのだと告げていたそうです。
「……貴女らしい、くだらない理由です事。ファ、ファ♯、美しき音色を奏でなさいっ!」
「ちっ、やっぱ話すんじゃなかった。龍、火、纏いなさいっ!」
2人は魔法を駆使し、壮絶な戦いを繰り広げ始めていました。
一方、私達は。
「翡翠、貴女はやはりエリファスが言っていた通りの存在だったわ」
「え? 何て言ってたんですか?」
魔術師エリファスさんはソフィーさんに、私から目を離すなと指示を出していたそうです。それは偶然か必然か、神黒翡翠と同じ名を持つ私事、若竹 翡翠にアリスちゃんのお父さん同様、何か感じていたからだとソフィーは告げました。
そして私の近くにいる事により、必ず神黒翡翠は現れると、ソフィーさんに伝えていたそうなのですが、現にこうして神黒翡翠は現れた事で、ソフィーさんもエリファスさんが言っていた言葉に、確信を持つ事になった様なのです。
「さあ、決着を付けるわよ。ユイット、オンズ、そしてドゥ、セットゥっ!」
ソフィーさんは、以前戦った時よりもキレのある魔法を使っていました。それもその筈なのです。、直ぐ目の前には、神黒翡翠が存在している事は明確であるのですから。
そして2組の遣い達が同時にぶつかり合ったその時、感化されたかの様に神黒翡翠はその姿を現したのです。
「あれが……神黒翡翠なの?」
「ルアンユー、戦闘中によそ見は禁物ですわよっ!」
神黒翡翠は私が想像していた大きさよりも、かなり小さな物でした。そしてその姿は、漆黒色の『十字剣』 型であり、私達を見守るかの様に暖かな光を放ち出したのです。
「マリア、あんたの攻撃は見切ったわ」
ルアンユーさんはマリアさんの音攻撃に対し、耳栓をする事で避けられると考えたの様です。だけどマリアさんは。
「本当におバカさんです事。骨伝導を応用した攻撃ならば、身体に直で音を響かせる事が出来るのですわよっ!」
その後、結果から言うと2人は相討ちになり、双方気絶状態になってしまったのです。
一方、私はギリギリで応戦していたのですが、やっぱりソフィーさんの魔力には苦戦する事になっていました。
「これで終わりよ。サンク、オンズっ!」
「避けきれないっ!!」
ソフィーさんの一撃をまともに喰らい、私は吹き飛ばされてしまいました。だけどその着地点は、神黒翡翠がある場所であったのです。
そして、私と神黒翡翠の周りには光が覆い、ソフィーさんすら入れない状態になったのでした。
「……翡翠さん、漸く会えましたね」
「え? ええっ? 石が喋ってる……」
神黒翡翠には、人の意識が宿っていたのです。何故、宿っているかはもう少し後に語るのですが、一先ず私は話を聞く事にしました。
「私の名は、アースティンと言います。早速で申し訳ないのですが翡翠さん、貴女の願いを聞かせて下さい」
私が見た神黒翡翠は、月日と共に劣化し今にも砕けそうな状態でした。だけど神黒翡翠を手にした私の為に、1度だけ願いを叶えると言ってくれたのです。
「私の願いは、皆んなの平和と幸せです」
「分かりました。翡翠さんらしい願いですね。では、唱えて下さい。貴女を導く呪文を」
「……はい。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠 ……エボリューション」
変身し直したと同時に、私にだけ見えた世界の情勢。それは、炎天下にさらされていた草木に雨の恵みを与える風景であり、行く宛が無く命が尽き様としていた子猫が、獣医に救われる風景でした。そして、産みの苦しみに耐えた女性には、天使の様な子供が生まれた風景などであったのです。
偶然、神黒翡翠を手に入れる事が出来た私でしたが、それは私自身が望んだ願いでありました。
だけど、やっぱり神黒翡翠の魔力を持ってしても、完全なる世界の平和は与える事は出来なかったのです。ですが、ほんの一瞬だけですが、全ての生き物に幸せを感じさせる事が出来たのでした。
「……私の魔力では、これが限界です」
「アースティンさん……ありがとうございました」
アースティンさんは、最後の魔力で私に問いました。私はもう1度神黒翡翠に出会えるらしいのですが、その出会いは良き出会いなのか、悪しき出会いなのかは分からないそうなのです。だけど、それでも神黒翡翠を探せるかと。
「はいっ。きっと良い出会いにします」
「翡翠さんが私を見付けてくれたお陰で、やっと本当の眠りに就けます。ありがとう……」
私は神黒翡翠を握り締めたのですが、そのまま崩れ落ちてしまったのです。
その後、私は皆んなに状況を説明し、各々は一般世界へと戻って行く事になりました。
そして、私の学校にて。
「では、神黒翡翠はまだ、どこかにあるのかも知れないのですね?」
「うん。また会えるって、アースティンさんは言ってたよ」
私は悪しき出会いについては語らなかったのですが、アリスちゃんは次の願いとして、亡くなった母さんに会う事だと言い出したのです。だけど私に、霊的な話かとツッコまれる事になるのでした。
そしてその頃、ルアンユーさんとマリアさんは。
「ほんっと、翡翠は馬鹿よね。どうせなら、ちょっとくらい自分の為に使えば良いのに」
「いえ、貴女の途方も無く、くだらない願いよりはマシですわ」
「上等っ。今度こそ龍のエサにしてあげるわよっ!」
まあ何と言いますか、ケンカをするのも仲良しの証拠である……としておきましょう。
そしてソフィーさんは、職場で仕事をしていたそうなのですが。
「部長、取引先の件、了承を貰いました」
「やはりソフィー君は素晴らしいっ。是非、うちの息子と結婚して貰えないか?」
「丁重にお断り致します。と言うか、もうこんな時間だわ。お先に失礼します」
ソフィーさんはちょっとズル(魔法で移動) をし、自宅に着いたそうです。
「な~な~な~」
「はいはい。今日は、限定鯖缶をあげるから許してちょうだい」
薬のお陰で、猫アレルギーは治っていた様なのです。
そして神黒翡翠を失った直後の話に戻るのですが、私はアグリッタさんの所へ向かっていました。
「と言う訳で、神黒翡翠は砕けてしまいました」
「そうか。でも翡翠さんの願いが、少しでも叶って良かったよ」
私の願いは皆んなの幸せであり、アグリッタさんも平和な魔法の世界を望んでいる為、その行いは結果的に同じ事だったのかも知れません。
だけどそこで、アキナ君が余計な事を言い出したのです。
「そう言えば翡翠は、少し顔付きが大人になって来たね」
「え? いやいや、私何かまだまだだよっ」
「まあ、今回の件で翡翠は色んな経験をしたからね。疲労で変わったんだと思うよ」
私にしかめ面をされるアキナ君。だけど、私が少しずつ変わって来ている事は確かなのです。それはきっと、進化と呼べる成長なのかも知れません。
そしてほんの少し、後日談を。
「いらっしゃいませ~。お2人様ですか?」
私は自発的に動き出す為、光也君が働いている店にバイトとして、働き始めていたのです。
「翡翠、接客も大分慣れて来たな」
「うん。人と話すのって楽しいね」
「すいませ~ん。そこの奇妙な格好してる店員さん、注文取りに来なさ~い」
魔美華ちゃんとアリスちゃんが、お客として茶化しに来ていました。そして私が注文を受けに行くも、魔美華ちゃんはランチ3人前とケーキを10個。それから唐揚げとハンバーグだと言い出す始末だったのです。
「魔美華、注文し過ぎです。私はポテト20人前とステーキ8人前に、ハンバーガーを12人前だよ」
……まあ、食欲がある事は良い事です。そして最後に2人は、声を揃えて聞きたくない言葉を発したのでした。
「勿論、翡翠の奢りでねっ!」
そう言えば雲影さんの事をすっかり忘れていたのですが、神黒翡翠が出現した時、師匠の半助さんと一緒に一般世界で海に潜り修行していた為、気付かなかったそうです。
そして、私がまだ知らない魔術師もいるらしいのですが、その1人の屋敷にて。
「何で神黒翡翠が出現したと言うのに、遣いがいなかったのですかっ!」
「仕方ないですよ。遣いは解任してしまったばかりだったんですから」
彼女は卑美呼(ひみこ) と言い、鬼道邪術(干支) の魔力を遣いに与える魔術師だそうです。
そしてその頃、私は自宅で勉強をしていたのですが。
「来年は、私も高校3年生になるのかぁ」
「歳で言うと、18歳になるのかい?」
「うん、そうだよ。あっ、そう言えば前厄になるんだ。お祓いに行かなきゃ」
私には厄除けの能力を持つ、天使のエマさんがいるので大丈夫だとは思うのですが、念の為お正月に魔美華ちゃん達と厄除けをして貰う事になったのです。
「魔美華、貴女は厄除けしなくて良いよ」
「何でよ、アリス?」
「魔美華自身が、厄そのものだからだよ」
取っ組み合いになり、折角の振袖姿を台無しにしてしまう魔美華ちゃんとアリスちゃん。
そして年は開け、新たな1年が始まりました。私達はお祓いをして貰い、今年の抱負を語り合ったのです。
「今年こそ、買い溜めしてたゲームをクリアするぞ~」
「私の抱負は、お母さんが作ってくれた、チキンスープのレシピを思い出す事です」
目標は人それぞれなので、2人の抱負もそれで良いのです。そして最後に私の番となったのですが。
「私の抱負は、今年中には絶対無理だけど……いつかはきっと、素敵な女性になる事ですっ!」
恥を凌ぎ、発した抱負だったのですが、2人は少し考え後、痛烈な言葉を突き付けて来たのです。
「あ~翡翠、それは無謀じゃなくてね」
「無理な抱負です。現実を再認識するところから始めましょう」
「本当に酷い友達です……。でも、
明けましておめでとうっ!!」
新年早々、仲の良い3人でした。そして私は魔術師の遣いである魔法使いとして、新たな遣い達との戦いが始まるのです。
だけどそれよりも先に、魔法の国で神黒翡翠の魔力が発せられていた事に気付いた、他の遣い達も駆け付け探す事になるのでした。
その後、アリスちゃんは奥の手を使い、私は跪いてしまいそうになったのですが何とか耐えて、一先ず仲直りは出来たのです。
「アリスちゃん、私達も神黒翡翠を探しに行かなきゃ」
「身も心もボロボロだけど、そうね」
ソフィーさん達の元へ向かった私達。だけど、神黒翡翠の気配はあるものの、その存在を見付け出す事は出来ないでいたのです。
「おかしいですわね? こんなに強い魔力を放っていると言うのに」
「あれ? 魔力が消えかけているわよ?」
まるで自分の存在を気付かせる為に、魔力の強弱をしている様な状況を示していた神黒翡翠。だけどやっぱり、私達は形として確認出来ず、遣い達はその場で立ちすくむ事になってしまったのです。
「どう言う事よ、翡翠?」
「そう言われましても……」
「待って。1つ試してみたい方法があるわ」
ソフィーさんは魔法の国に子猫のゼロ君を連れて来ていたのですが、ゼロ君の能力で神黒翡翠の居場所を探し出せるかも知れないと言ったのです。
その力は『メッセージ』 や『御告げ』 の能力であるらしく、それを使えばもしかしたらと言う事でした。
「ゼロ君にそんな力が」
「翡翠、これはアレよ。猫の手も借りたいと言うヤツよ」
「アリスちゃん……確かにそうだね」
何はともあれソフィーさんは変身し、ゼロ君の能力で試す事にしたのです。
「我に誓えしその力 今この時この瞬間
無限の数で突き動かん……ソフィー……エボリューションっ! ゼロ、お願い」
「…………な~」
ゼロ君は私の真上を、ジッと見つめていました。だけどそこは空に似た風景があるだけで、特にこれと言った物は何も無い状況であったのです。
しかしそこで、マリアさんがある事に気が付いた様でした。
「何よ? 分かったんなら、さっさと教えなさいよ」
「ルアンユーはお黙りなさい。簀巻きにして川に投げ捨てますわよ。神黒翡翠は……戦闘領域にある筈ですわ」
魔法の国とは違う、遣い達が戦う場所である別次元の戦闘領域。確かに魔法の国を探したところで見付から無い訳でした。
だけどそこで、1つ問題が発生してしまったのです。戦闘領域は、遣い達が戦う意思を示さなければ現れないと言う事でした。その意思を持続する事で戦闘領域は保つ事が出来る為、遣い達は戦い続けなくてはいけないと言う事だったのです。
「さて、マリア。私の相手をして貰うわよ。我に遣えしその力 今この時この瞬間 十二の衣で纏わん……ルアンユー……エボリューションっ!」
「上等ですわ、ルアンユー。血祭りにして差し上げますわ。我に奏でしその力 今この時この瞬間 聖なる音源で魅了せん……マリア……エボリューションっ!」
始まってしまった遣い達の戦い。そこで私はアリスちゃんの体調を気にし、自分が戦ってくるので待っていて欲しいと告げたのでした。
「翡翠……。私の願いは後回しでもいけど、貴女こそ身体は大丈夫なの?」
「うん。平気だよ」
「なら、翡翠の相手は私がするわ。翡翠、私はどうしても負けられない理由があるの。たがら覚悟しなさい」
4人の遣い達が戦闘領域に移動しました。そして先ずは、ルアンユーさん対マリアさんにて。
「ルアンユー、一応、貴女の願いを聞いてあげますわ」
「あんたに言う筋合いは無いけど、私の願いはね……本物の『翡翠』 になる事よっ」
『ルアンユー』 とは中国語で『軟玉』 を示すらしいく、『翡翠』 の『硬玉』 とは違い価値の劣る翡翠石を意味しているらしいのです。
そしてルアンユーさんは私と出会い、自分もそうでありたいと言う思いが、強くなり始めたのだと告げていたそうです。
「……貴女らしい、くだらない理由です事。ファ、ファ♯、美しき音色を奏でなさいっ!」
「ちっ、やっぱ話すんじゃなかった。龍、火、纏いなさいっ!」
2人は魔法を駆使し、壮絶な戦いを繰り広げ始めていました。
一方、私達は。
「翡翠、貴女はやはりエリファスが言っていた通りの存在だったわ」
「え? 何て言ってたんですか?」
魔術師エリファスさんはソフィーさんに、私から目を離すなと指示を出していたそうです。それは偶然か必然か、神黒翡翠と同じ名を持つ私事、若竹 翡翠にアリスちゃんのお父さん同様、何か感じていたからだとソフィーは告げました。
そして私の近くにいる事により、必ず神黒翡翠は現れると、ソフィーさんに伝えていたそうなのですが、現にこうして神黒翡翠は現れた事で、ソフィーさんもエリファスさんが言っていた言葉に、確信を持つ事になった様なのです。
「さあ、決着を付けるわよ。ユイット、オンズ、そしてドゥ、セットゥっ!」
ソフィーさんは、以前戦った時よりもキレのある魔法を使っていました。それもその筈なのです。、直ぐ目の前には、神黒翡翠が存在している事は明確であるのですから。
そして2組の遣い達が同時にぶつかり合ったその時、感化されたかの様に神黒翡翠はその姿を現したのです。
「あれが……神黒翡翠なの?」
「ルアンユー、戦闘中によそ見は禁物ですわよっ!」
神黒翡翠は私が想像していた大きさよりも、かなり小さな物でした。そしてその姿は、漆黒色の『十字剣』 型であり、私達を見守るかの様に暖かな光を放ち出したのです。
「マリア、あんたの攻撃は見切ったわ」
ルアンユーさんはマリアさんの音攻撃に対し、耳栓をする事で避けられると考えたの様です。だけどマリアさんは。
「本当におバカさんです事。骨伝導を応用した攻撃ならば、身体に直で音を響かせる事が出来るのですわよっ!」
その後、結果から言うと2人は相討ちになり、双方気絶状態になってしまったのです。
一方、私はギリギリで応戦していたのですが、やっぱりソフィーさんの魔力には苦戦する事になっていました。
「これで終わりよ。サンク、オンズっ!」
「避けきれないっ!!」
ソフィーさんの一撃をまともに喰らい、私は吹き飛ばされてしまいました。だけどその着地点は、神黒翡翠がある場所であったのです。
そして、私と神黒翡翠の周りには光が覆い、ソフィーさんすら入れない状態になったのでした。
「……翡翠さん、漸く会えましたね」
「え? ええっ? 石が喋ってる……」
神黒翡翠には、人の意識が宿っていたのです。何故、宿っているかはもう少し後に語るのですが、一先ず私は話を聞く事にしました。
「私の名は、アースティンと言います。早速で申し訳ないのですが翡翠さん、貴女の願いを聞かせて下さい」
私が見た神黒翡翠は、月日と共に劣化し今にも砕けそうな状態でした。だけど神黒翡翠を手にした私の為に、1度だけ願いを叶えると言ってくれたのです。
「私の願いは、皆んなの平和と幸せです」
「分かりました。翡翠さんらしい願いですね。では、唱えて下さい。貴女を導く呪文を」
「……はい。我に宿りしその力 今この時この瞬間 開放へと導かん……翡翠 ……エボリューション」
変身し直したと同時に、私にだけ見えた世界の情勢。それは、炎天下にさらされていた草木に雨の恵みを与える風景であり、行く宛が無く命が尽き様としていた子猫が、獣医に救われる風景でした。そして、産みの苦しみに耐えた女性には、天使の様な子供が生まれた風景などであったのです。
偶然、神黒翡翠を手に入れる事が出来た私でしたが、それは私自身が望んだ願いでありました。
だけど、やっぱり神黒翡翠の魔力を持ってしても、完全なる世界の平和は与える事は出来なかったのです。ですが、ほんの一瞬だけですが、全ての生き物に幸せを感じさせる事が出来たのでした。
「……私の魔力では、これが限界です」
「アースティンさん……ありがとうございました」
アースティンさんは、最後の魔力で私に問いました。私はもう1度神黒翡翠に出会えるらしいのですが、その出会いは良き出会いなのか、悪しき出会いなのかは分からないそうなのです。だけど、それでも神黒翡翠を探せるかと。
「はいっ。きっと良い出会いにします」
「翡翠さんが私を見付けてくれたお陰で、やっと本当の眠りに就けます。ありがとう……」
私は神黒翡翠を握り締めたのですが、そのまま崩れ落ちてしまったのです。
その後、私は皆んなに状況を説明し、各々は一般世界へと戻って行く事になりました。
そして、私の学校にて。
「では、神黒翡翠はまだ、どこかにあるのかも知れないのですね?」
「うん。また会えるって、アースティンさんは言ってたよ」
私は悪しき出会いについては語らなかったのですが、アリスちゃんは次の願いとして、亡くなった母さんに会う事だと言い出したのです。だけど私に、霊的な話かとツッコまれる事になるのでした。
そしてその頃、ルアンユーさんとマリアさんは。
「ほんっと、翡翠は馬鹿よね。どうせなら、ちょっとくらい自分の為に使えば良いのに」
「いえ、貴女の途方も無く、くだらない願いよりはマシですわ」
「上等っ。今度こそ龍のエサにしてあげるわよっ!」
まあ何と言いますか、ケンカをするのも仲良しの証拠である……としておきましょう。
そしてソフィーさんは、職場で仕事をしていたそうなのですが。
「部長、取引先の件、了承を貰いました」
「やはりソフィー君は素晴らしいっ。是非、うちの息子と結婚して貰えないか?」
「丁重にお断り致します。と言うか、もうこんな時間だわ。お先に失礼します」
ソフィーさんはちょっとズル(魔法で移動) をし、自宅に着いたそうです。
「な~な~な~」
「はいはい。今日は、限定鯖缶をあげるから許してちょうだい」
薬のお陰で、猫アレルギーは治っていた様なのです。
そして神黒翡翠を失った直後の話に戻るのですが、私はアグリッタさんの所へ向かっていました。
「と言う訳で、神黒翡翠は砕けてしまいました」
「そうか。でも翡翠さんの願いが、少しでも叶って良かったよ」
私の願いは皆んなの幸せであり、アグリッタさんも平和な魔法の世界を望んでいる為、その行いは結果的に同じ事だったのかも知れません。
だけどそこで、アキナ君が余計な事を言い出したのです。
「そう言えば翡翠は、少し顔付きが大人になって来たね」
「え? いやいや、私何かまだまだだよっ」
「まあ、今回の件で翡翠は色んな経験をしたからね。疲労で変わったんだと思うよ」
私にしかめ面をされるアキナ君。だけど、私が少しずつ変わって来ている事は確かなのです。それはきっと、進化と呼べる成長なのかも知れません。
そしてほんの少し、後日談を。
「いらっしゃいませ~。お2人様ですか?」
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「うん。人と話すのって楽しいね」
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魔美華ちゃんとアリスちゃんが、お客として茶化しに来ていました。そして私が注文を受けに行くも、魔美華ちゃんはランチ3人前とケーキを10個。それから唐揚げとハンバーグだと言い出す始末だったのです。
「魔美華、注文し過ぎです。私はポテト20人前とステーキ8人前に、ハンバーガーを12人前だよ」
……まあ、食欲がある事は良い事です。そして最後に2人は、声を揃えて聞きたくない言葉を発したのでした。
「勿論、翡翠の奢りでねっ!」
そう言えば雲影さんの事をすっかり忘れていたのですが、神黒翡翠が出現した時、師匠の半助さんと一緒に一般世界で海に潜り修行していた為、気付かなかったそうです。
そして、私がまだ知らない魔術師もいるらしいのですが、その1人の屋敷にて。
「何で神黒翡翠が出現したと言うのに、遣いがいなかったのですかっ!」
「仕方ないですよ。遣いは解任してしまったばかりだったんですから」
彼女は卑美呼(ひみこ) と言い、鬼道邪術(干支) の魔力を遣いに与える魔術師だそうです。
そしてその頃、私は自宅で勉強をしていたのですが。
「来年は、私も高校3年生になるのかぁ」
「歳で言うと、18歳になるのかい?」
「うん、そうだよ。あっ、そう言えば前厄になるんだ。お祓いに行かなきゃ」
私には厄除けの能力を持つ、天使のエマさんがいるので大丈夫だとは思うのですが、念の為お正月に魔美華ちゃん達と厄除けをして貰う事になったのです。
「魔美華、貴女は厄除けしなくて良いよ」
「何でよ、アリス?」
「魔美華自身が、厄そのものだからだよ」
取っ組み合いになり、折角の振袖姿を台無しにしてしまう魔美華ちゃんとアリスちゃん。
そして年は開け、新たな1年が始まりました。私達はお祓いをして貰い、今年の抱負を語り合ったのです。
「今年こそ、買い溜めしてたゲームをクリアするぞ~」
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「私の抱負は、今年中には絶対無理だけど……いつかはきっと、素敵な女性になる事ですっ!」
恥を凌ぎ、発した抱負だったのですが、2人は少し考え後、痛烈な言葉を突き付けて来たのです。
「あ~翡翠、それは無謀じゃなくてね」
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