何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ

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第四章 シュナリオ王国

一線を超えて…

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「…んっ?……」

カーテンの隙間から微かに、漏れた朝日が顔に当たり眩しさから俺は、閉じていた目をゆっくりと開け目覚めた。
片手を上げまだ、ぼやぼやする目を軽く擦りながら、上半身だけ起こし眠気を飛ばす様に両腕を高く上げ欠伸をしながら軽く伸ばす

「ふぁ~…そっか…もう朝か…って…ん?」

腕を下ろすと、何か生暖かく柔らかいものにぶつかり微かに小さなきゅぅ……と言う鳴き声が聞こえた。

聞こえた鳴き声に、俺はハッと、夢でのことを思い出し布団を勢いよく捲るとそこには、真っ白で美しい毛並みをした子狼が最後に見た薄緑色の瞳で俺をじっと見つめていた。

この子は…!!フラン様に託された。

あの子《フェルリン》だ!

「…わー…マジか…」

思わずそう、小声で漏らしてしまったのは許してほしい。

ゆっくりと窓の方を見ると、まだ日が登り始めのようでまだ、ほのかに薄暗い
俺は、エルティア達が眠るベッドの方へ視線を向けまだエルティア達が静かに眠っているのを確認し、再びフェルリンの方へと視線を戻すと、フェルリンはふんっと鼻を鳴らしずっと俺を見つめている。

(さ~て、どうしたものか…突然、フェルリン…いや、見た目は(子狼)が俺のベッドに現れてそして、なんとなんと!いきなりテイマーのスキルまでもが、目覚めたから…この子をテイムしてみました!な~んて…どう考えても無理があり過ぎるな…どんなにファンタジーな世界であろうと、おかしすぎるだろ!…あ~ははは…マジでどうしよう…)

うぅ~んと頭を抱え悩んでいると…

『ルーク、その子だーれ?』

竜化状態で俺の隣ですやすやと寝ていたリヒトがいつの間にか、目を覚ましたらしく興味津々に
俺は、そんなリヒトの頭を優しく撫でた。

「おはよう。よく眠れた?リヒト」
『おはよう~!うん!よく眠れたよ!それで、この子はだ~れ?』
「あ~っと………」

何と説明しようかと頭を悩ませているとリヒトは、フェルリンが気になるようでゆっくりと近づきスンスンと匂いを嗅いでいる。どうやらフェルリンもリヒトが気になるのか同じ様に匂いを嗅いでいる。正直、その絵が可愛すぎて朝から癒されてた。

「リヒト…この子はね」
『この子…あの時のシルバーウルフに少し似てるね…』

リヒトの言葉に、ドキリッと肩が揺れる
(わ…リヒト鋭いな!そうだよな~。リヒトが、浄化した子達だし、気づかないわけないか…)

俺は、リヒトを見つめ、フェルリンの事や女神様の事を話すとリヒトは、ただ『そうなんだ~』と告げた。
リヒトは、フェルリンをジッと見つめた後、もう一度俺を見つめると、いつもの様に人化するとフェルリンに近づきゆっくりと手を伸ばし優しくフェルリンの頭を撫でた。

『辛かったね~もう…もう大丈夫だよ~。キミも、僕たちと一緒にこれから沢山、幸せになろうね~』
「リヒト…」

俺は、自然とリヒトとフェルリンを抱きしめていた。

(そうだ…幸せになるんだ。そして、素晴らしきスローライフを!!俺が…リヒトを…この子を守って…そして、自分自身も幸せになるんだ!!)

俺は、そう何度目かの決意を胸に刻み固めた。

だが…やっぱりこうなった以上、もう隠してはおけないだろう。これを機に、エルティア達にもちゃんと話した方がいいかもしれない。例え…その結果が、どんな形になったとしても…

アティカスくんとマリーさんは、既に俺の全てを話知っていてそれらを含め今の俺を受け入れてくれている…だからきっと、今回の事を話しても二人なら優しく微笑み受け入れてくれるだろう。そんな確信がある。

(よし!覚悟を決めろ俺!!!)


悩んだ末、日が完全に上り起きてきたエルティア達に話があると、真面目な顔で告げ全員を部屋に呼んだ。

「…って、感じなのですけど…あの…」

集まったエルティア達に俺は、夢での事や俺とリヒトの事を話しフェルリンを紹介すると、エルティア達は一瞬目を見開きポカンっとした後、静かに息を吐き出した。

「はぁ~…まさか、そんな事が…じゃあ、ルークとリヒトは同じ魂を分け合った者という事なんだね!これは、驚きだよ!!あぁ…!そうか!うんうん!そうか!だから!微かに似ていたのか…!」
「ほぉ~びっくりじゃの~、通りでリヒトから妙に竜王に似た気配を感じるわけじゃ…」
「おいおい…そんなのありかよ…すげーな…」
「驚きました…」

エルティアは、前のめりになりながら俺を見つめ何処か嬉しそうに頷き、フィン達も何一つ疑わ無い様子でさらりっと、俺の話を信じてくれた。

(え?マジで…こんなにあっさり受け入れるのか???)

俺は、戸惑いながら何度もエルティア達をおろおろと見つめ口を開いた。

「え…あの、こんな…信じられないような話を…こんなにもあっさりと信じてくれるんですか…?」
「ん?え…逆に何故、ルークは僕達が信じないと思うんだい?」
「ふぇ…?」

まさか、逆に聞き返されるとは思わず俺は、素っ頓狂な声を上げてしまった。

(いや…いやいやいや!普通ちょっとは疑うよな?え?俺がおかしいの?いや…俺、おかしくないよな??ん?んんんん???)

そんな俺にエルティアは、優しく微笑みながら頭を撫でると目を見つめ静かに告げた。

「ルーク…君が、何かをずっと隠していた事は、何となく分かっていたんだよ。」
「えッ!…う…嘘…だぁ~…」
「ははは…変な顔。僕は、それなりの力を持ったS級冒険者でエルフだよ?気づかない方が、おかしいと思わないかい?」
「………」
「それに、ルーク君…この数年結構長く、共にいたのにずっと敬語なのは、僕が君の師匠だからという理由だけじゃないだろう?」
「な…んで…」
「う~ん、何となくなんだけどね…僕と何処か一線をずっと引いているような…」

確かに…俺は、リヒトやアティカス達は別としてエルティアに、何処か一線を引いていた。それは、エルティアを決して信頼していなかった訳じゃない。

ただ─────

何処か自分の中で、勝手にエルティア達に線引きして一線を張っていた。

「ルーク、例え別の世界?では君が、36歳だったとしても今は成人したてのたった15歳の人間なんだよ。それに36歳だろうと、突然知らない世界で一人違う誰かの記憶を持ち目覚め…いきなりあの過酷な環境にいたんだ…どんなに強がり隠しても…君のその心は、とても不安でさぞ怖かっただろう…」

エルティアの言葉に、鈍器で頭を殴られた様な衝撃を受けた。

俺は…俺は……
初めて目覚めた時、この子ルーク記憶を見てなんと可哀想な子だと思った。
俺が、の俺が守り幸せにしなくては…という気持ちが前に出て、ひたすらに前を向いて頑張っていた。

自身の気持ちをずっと隅に追いやり後回しにして…

いつからか身体年齢に精神も引き摺らる感覚はずっと、感じていた。だが、その事自体俺はあまり気にしなかったが、ごく偶にとてもよく分からない不安に襲われる事もあった。

それが何故なのかずっと分からなかったが……

(いや…分からない振り気にしない振りをしていたんだろうな)

だが、エルティアの言葉で気付かされてしまった。

《あぁ…俺は、本当はずっと不安で怖かったのか…》

その瞬間、気づいてしまった己の気持ちに両手を強く握り俯いていると、エルティアが近づき俺の背中をそっと優しく撫でた。

「ルーク…僕は、いや…僕達はいつでも君達の〖味方〗なんだよ。だから、どうかもう一人で悩まないでおくれ…それに!僕は君より遥かに歳上なのだよ。それに、オリヴァーだって他の者たちだって…この世界では、君より皆…歳上なんだよ。だからさ…もっと甘えてもいいとは思わないかい?と言うか、甘えなさい!」

その言葉を聞いた瞬間、もう限界だった。
俺の目から自然と、とめどなく涙が溢れ出し頬を濡らす

(あぁ…クソッ…クソッ…なんで…涙が止まらないんだ…!)

袖口で、何度も雑に涙を拭い止めようとしていると…
目の前にアティカスとマリーが近づき、床に座りると俺が強く握りしめていた手に優しく触れてた。

「ルーク様…俺達のあの日の誓いは、いつまでも何処までも変わることはありません。この命ある限り…共におります。…だから、遠慮せずどうか…貴方様の不安も辛さも全て…俺達にも分けてください。」
「えぇ…そうですわ!私達は、ずっと…ずっと一緒なのですから…ルーク様、どんな些細な事でも私達に分けてください」

真剣な顔で真っ直ぐと見つめてくる二人に俺は、再び涙が溢れていた。

『僕も一緒だよ!ルーク!それに…この子も!!』
「うん…そうだね…そうだね。リヒト…ありがとう…ありがとうッ!」

俺は、この時はじめて〖この子〗でもなくて誰でもない。

鷹中 結糸として、ただ感情のままに思い切り泣いた。

リヒトをその胸に抱きしめて



気持ちの整理や涙が落ち着いた頃─────


エルティアが、フェルリンを見つめ口を開いた。

「それで…ルーク、この子フェルリンの名前は決めたのかい?」

俺は、フェルリンの頭を優しく撫で頷いた。

「…うん。ウォル…この子の名前は、《ウォル》にする」
「そう、ウォルか…うんうん!よい名だね。」
『ウォル?それが、この子のお名前…?』
「そうだよ。今日からこの子は、ウォルだ…」

リヒトは、目を輝かせウォルを見つめ呟いた。

『そっか…ウォル…ウォルか~』

リヒトは、嬉しそうに笑いながらウォルと優しく何度も呼びながらそっと抱きしめると、ウォルもそれに応えるように、きゅぅ…っと小さく鳴きながらリヒトの胸に頭を擦り付け嬉しそうに甘えていた。


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