何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ

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第三章 ルーゼント家編

お茶会の準備

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追いかけっこの結論から言えば…俺は、ロイドに捕まり泣きながら何度もせがまれ結局、俺が根負けしロイドを助ける事になった。

リリー夫人の主催するお茶会まであと四日…
俺とロイドは、厨房室で話し合っていた。
アティカスくんとマリーさんも一緒で、リヒトはマリーさんに抱っこされている

「師匠!何を作るんっスか!」
「俺も甘味は、別にそこまで詳しくないんだよね…それに珍しいってなると…う~ん…あ!あれならいけるかも!」
「あれって何っスか?」
「それは……」

ロイド達が、俺を見ながら不思議そうな顔をしている
俺は、思い出した甘味がどんなものか…ロイド達に説明すると皆の目が輝く

「これなら、プリン同様差程…難しくないしいいと思うんだよね!じゃあ~作ってみよう!」

俺がそう言うとロイド達は、頷くと俺が言った必要な物を取りに向かった。
(よし!やるか~本当は、嫌だけど…ロイドの事は嫌いじゃないしそれに…ここ|《この世界》で初めて出来た…と…友達のためだし…うん!頑張るか!)

そう思いながら俺は、ロイド達が待つ厨房台へと向かった。


とある街…
スラムの暗い路地裏に、ローブを被った男と数人のガラの悪そうな冒険者が向かい合い立っていた。

「おい!!こりゃあ!!どうなってやがる!!!」
「………」
「おいおい…!黙りかよこいつ?」
「無視すんじゃねぇ!ドナムの兄貴が、聞いてんだろうがー!!」

ドナムと呼ばれた男が、一歩ローブの男へと近づきローブの男を睨みつける

「お前の指示通りあの日…ルークっていうガキの後を追ってクーレの森に入り…お前に渡された魔石に渡されていた血を一滴落とした。だが、その瞬間…グリフォンが出てくるなんて聞いてねぇーぞッ!!!」
「………」
「それも普通のグリフォンじゃねぇーだろ!ありゃ!!《化け物》じゃねーかッ!!恐ろしい雄叫びを上げたと思ったら周りの草木が、枯れていきやがった…!その場にいた俺の仲間も怪我した奴やおかしくなっちまった奴までいやがる…」
「俺の兄貴もあの日から、おかしな事ずっと言っててまともじゃなくなっちまった…!これもお前が渡してきたあの変な魔石せいだ!!」
「………はぁ~」

ローブの男は、ため息をつくと睨みつけ騒いでいるドナム達を見た。

「貴方達が、どうなろうがどうでもいいんですよ…」
「なっ!?!」
「僕の目的は、達成しましたし…もう貴方達に用はありません…。それに、貴方達は、意気揚々と僕の提案に乗ってきたのでしょう…?金だって受け取った…なのに今更、騒ぐなんて…」
「うるせぇ!!!こんな事になるなんて聞いてりゃ…こんなクソみたいな提案なんかに乗らなかったさ!!」

ローブの男は、もう一度溜息をつくと…面倒臭い…。呟き…ローブの隙間からドナム達を蔑むような冷たく凍える様な瞳で見つめる。そして…先程まで、青色だった瞳が、血の様な真っ赤な色へと変化するとそれを見たドナム達が目を見開き叫ぶ。

「お前ッ…!!?!その目…?!」
「……ヒィ…《化け物》?!?」
「……あぁ…確かこの国では、黒髪赤目なだけで《化け物》でしたっけ…本当に馬鹿馬鹿しい…でも…」
「ッ!?!」

ローブの男が、ドナム達に手をかざした瞬間…
次々とドナム達は、もがき苦しみ倒れたかと思うと立ち上がり目を虚ろにして…一人は、首を自身で締め付けるように…また別の者達は、持っていたナイフで仲間同士で殺し合い始めた。

「僕は…本物の《化け物》だ…」

あまりにも悲惨な光景を残し、ローブの男は、ニヤリっと薄気味悪く笑いながら消えた。


隣国、グランドイーリス聖王国…
大聖堂

コツコツ…と音を立て、目の下にドス黒いクマがあるやつれた男が地下へと続く細い道を歩いていた。

「…クソ、絶対これが成功したら辞めてやるこんな場所!」

地下への道は、薄暗く冷たい空気が漂っている
間隔を空けて吊るされている光がほのかに道を照らす
暫く歩き辿り着いた扉を、やつれた男は躊躇いなく開ける中へ入る。中には、同じ様なローブを着た男が静かに立っていた。

「待たせたな…ルイン、お前の報告を聞こうか…」
「…あいつから受け取った報告書には、随分と面白い事が書いてありますよ…それに、僕も少し見てきましたから…彼の力を…」
「ほう…」

ルインと呼ばれたローブの男は、何処からか書類を出すとやつれた男へと渡す。渡された書類を受け取った男は、書類に視線を落とし目を見開いた。

「まさか…!この報告は本当なのか!?だとしたら、【呪詛】を浄化出来るほどの、力の持ち主という事だ…素晴らしい!!サミュエル様には、もう報告を?」
「…いいえ。」
「そうか…では、まだ報告はするな。まだ確信は、完全ではないからな。」
「はい。まぁ…今度行われるお茶会で、彼がどれぐらいの力を持っているのか分かるはずですよ…」
「?一体何をするつもりだ…?それと、このぷりん?とはなんだ?」
「……さぁ?あいつの考える事は、よく分からないので…ただ、面白い事になりますよ。きっと…」

ルインは、ふふふと不気味に笑う。
その目に光はなく…瞳の奥にあるのは、燃え滾るような恨みだけだった。


ルーゼント家…厨房室

「よし!出来た!!」
「わー!!これが、どーなつ?ってやつなんっスか!すげーいい匂いってスね!!!」
「ぷぎゃ!!ぷぎゃ!!」
「とても食欲が、そそられる香りですね…」
「美味しそうですわ!」

ロイド達が、出来上がった一口ドーナツに、目を輝かせ見つめている
ドーナツなら、今ある食材で作れると気づいた俺は、ドーナツを作ることにした。
そして、作ったドーナツを一口大にして、チョコを絡ませ出来上がったのが今、目の前にある一口ドーナツだ
(たしか…前世だと…ロリポップドーナツ?とか言ったか?)

「ほら!皆、食べてみて!リヒト…はい。あーん」

俺は、ドーナツを一つ取りリヒトの口元へと運ぶ
運ばれてきたドーナツにリヒトは、遠慮なくかぶりつく

「あーッむ!ぷぎゃ!?!ぷぎゅーーー!!」
「え!?美味し!!!めっちゃ美味しっスねこれ!!!え!?甘くて柔らかくて…!!」
「ッ!!外は、チョコでパリッとしていますが、中はしっとりと柔らかくて美味しいですね!!」
「まぁ!これは、紅茶にもよく合いそうですわ!とても美味しいですね!」

全員が、目を見開き美味しそうに作ったドーナツを頬張っている
俺も、一つ手に取り口へと入れる
(うん!美味い!!懐かしきドーナツの味だ…プリンの時もだけど、またこうして食えるなんて…最高だな)

「これなら俺でも作れるッスし!間違いなく気に入ってもらえるっスよ!!!師匠ー!ありがとうッス!」

そう言いロイドが、俺に抱きつこうと瞬間にアティカスくんとマリーさんが、俺を守り未遂に終わった。

「うぅ…ハグくらい、いいじゃないっスかー!」

俺は、ロイド達のやり取りを微笑みながら見つめていた。


そうしてお茶会の準備が着々と進み…


遂に…その日はやってきた。



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