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生配信18 夜配信まであと1時間!

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「あああ、楽しかった。やっぱり暇潰しには聡太さんだな」

 昼配信が予定より早く終わり、暇になった俺は、聡太さんの家に突撃した。突撃した俺を優しく迎え入れてくれた聡太さんは、親友通り越してマジ神。

 まあ、迎え入れてくれるまで時間はかかったが。

「さて、夜配信まであと1時間」

 現在22時。夜配信は予定通り、23時に行う。

 この1時間は何しても良い時間だ。

「さてさて、何をするかな」

 長くもあり短くもある1時間。

 何をするか考えていると、スマホに通知が来る。

「サキサキチャンネルが配信を始めた、と」

 良いタイミングの通知。1時間は暇なので、少しお邪魔させていただこうかな。

 俺はスマホの通知に触れ、スマホからサキサキさんの配信にお邪魔する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『じゃあねぇ。今日は『テトリス』をしていこうかな』

 サキサキさんの今日の配信は、テトリス配信。配信画面にはテトリスのホーム画面が映し出されている。

 テトリスか。あれ、結構頭使うんだよな。

 サキサキさんがこれからプレイする『テトリス』とは、一種のパズルゲームだ。

 どんなゲームかと言うと、上方から落ちてくる『テトリミノ』と呼ばれる様々な形をしたブロックを、回転させたり、落ちてきたままの状態で落とし、画面の底に、隙間なく横1列に並べるゲーム。

 横1列に並べたブロックは、その1列ごと消えていき、どんどん底に並べることができる。

 もちろん、ブロックを並べる枠は決まっており、上手く横1列に並べることができず、枠の中からはみ出した場合はゲームオーバーとなってしまう。

 1人で出来るゲームでもあり、複数人と対戦形式で出来るゲームでもある。

 今回は1人用だが、そんなパズルゲームを、あのサキサキさんがやるのだ。

「見ものだな」

 こう言ったら性格悪いとか言われそうだが、どう失敗するのか見てみたい。

『テトリスは初見なんだけど、色々動画見てきたから大丈夫。できる』

 そうサキサキさんは宣言し、テトリスが始まる。

『まずは、枠の右半分側にブロックをどんどん積んでいくでしょ』

 サキサキさんは、言った通りに枠の右側きっかりに積んでいく。

 俺的には半分というよりか、3分の2程度積んでも良いと思っている。

『半分くらいを上枠上限ギリギリまで積んだら、あとはもう半分を積む』

 反対の左側にどんどん積んでいき、1列2列と消していく。

 右側に貯金していたブロックが段々と無くなると、

『ブロックが無くなった右側、また貯めるんよ。どうよ、初見にしては上手くないか⁉︎』

 また貯金を作っていく。

 ちまちまとした作業のようなゲームなのだが、その作業がまた面白い。

 コメント欄ではどんな反応しているのか気になり、コメント欄を表示すると、

『初見とは思えないです』
『なかなかやるやん』
『ちゃんと予習した成果が出てる』
『このまま頑張って!』

 応援のコメントが多数送られてきている。でも、中には、

『Tスピンって知ってる?』
『Tスピンやると良いよ』
『その積み方なら素人でも出来るべ』

 と、応援以外のコメントもきている。

 素人でも出来るって、サキサキさんは素人なんですよ。あと多分だけど、サキサキさんTスピンとか知らないと思う。

 始めたばかりの人はTスピンといった技術は知らない。俺だって始めたばかりの頃はTスピンという技術知らんかったもん。

 まあ、案の定というか、やっぱりというか。

『Tスピンって何? Tの形のブロックが回せばいいの?』

 ちょうど落ちてきたTの形をしたブロックを、クルクル、クルクルと回している。

 そんなサキサキさんに、リスナーさん達は呆れることなく、ちゃんと教えてあげる。

『そう! それがTスピン』
『出来てるじゃん!』
『うますぎ! そんな早くクルクル回せる人見たことない』
『クルクル回しながら積むと、3列一気に消える』

 嘘の情報を。

『本当! クルクル回しながら積めばいいのね!』

 リスナーさん達の言葉を信じたサキサキさんは、クルクル回しながら、左側にブロックを持っていく。

『よし、これで3列は貰いだぜ!』

 本当に信じ込んでるサキサキさんは、クルクルと回しながら、Tブロックを空いている場所に持っていく。

『あっ!』

 まあ悲鳴で分かる通り、適当にクルクル回しながら積んだものだから、Tブロックは変な風に置かれてしまう。

『あっ』
『あっ』
『あっ』
『あっ』
『あっ』

 そして、ここから落ちてくるブロックのスピードが速くなるわけだが、サキサキさんはそれに対応できるのか?

『おい、嘘じゃねぇか! ってか、落ちてくるスピード早くなってない⁉︎ チッ、このTブロック邪魔なんだけど! あっ、あっ、あああああ!』

 配信画面の中央にはゲームオーバーの文字が。

 これは仕方ない。

 嘘の情報を吹き込んだリスナーさん達と、嘘だと教えなかったリスナーさん達が悪い。

 悪いのだが、失敗を見たかった俺からしたら、ナイスコメント。

 ってか、予習したのではないのか、サキサキさん?

 さて、失敗したところを見れたので、俺もコメントしとく。

『どまw』
『どまw』
『これは仕方ない』
『Takiチャンネル : どまw』
『どまw』

 リスナーさん達と同じコメントを送り、少し様子を見る。

『はああ。Tスピンってあれ嘘? 嘘なら教えて欲しいんだけどって、滝くん! いたの!』

 流れるコメントの数々から俺を見つけられたらしい。

「最初から見てたよ。っと」

 最初から居たことと全てを見ていたことを教える。

『ねぇ、Tスピンって何? 滝くんなら知ってる?』

 Tスピンというテトリスの技術は知っているし、出来る。出来るが故に、サキサキさんに教えとく。

「初心者のサキサキさんには、まだ難しい。普通に並べられるようになってからにしなさい。っと」

 すると、

『いや、もう私、上級者だし! あれだけ積めれば、上級者だし!』

 自分は上級者だと勘違いしているサキサキさん。

 残念ながらあなたは初心者中の初心者ですよ。

「あんなミス、上級者はしない。初心者は黙っていなさい」

『はあ⁉︎ 誰が初心者じゃ! 見てろよ、これからすごいプレイを見せてやる!』

「すごい珍プレイを見せてくれんですかぁ? 見ものですな!」

『カチン! おい、その言葉覚えてろよ! 謝らせてやるからな』

 そう言い、再度テトリスを始める。

「見せてもらいましょうか、上級者さん!」

 俺は少し煽り文句をコメント欄に送信し、俺の配信時間が来るまで、サキサキさんの配信を見続ける。

 夜配信5分前まで見続けていたが、サキサキさんの言うすごいプレイは1度も見ることは出来なかった。しかし、珍プレイを何度も見せてくれたサキサキさんは、俺の期待に応えてくれた。なので、

「まあ、初心者は黙ってプレイしてな。あばよ!」

 俺はこのコメントを残して、スマホの電源を落とす。

 最後、「ちょ、お前」とサキサキさんが何か言いたそうだったが関係ない。

「さて、こっちもこっちで配信を始めようかな」

 俺は、サキサキさんの言葉を無視して、自分の配信に集中するのであった。




 


 

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