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生配信20 焼肉会1

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 渋谷のハチ公像前。

 渋谷のハチ公像はよく待ち合わせの目印として、活用される。そのため、ハチ公像前は人が集まる。

 今回、我々も活用させてもらっているわけだが、まだ誰もいない。

 ハチ公像にいち早く到着したのは俺。

 待ち合わせ時間は17時。俺は集合時間の5分前に来た。

「そろそろ誰か来てもおかしくないんだけどな」

 ………もしかしたら誰か着いていたりして。

 今回、焼肉会に参加するメンバーは、聡太さんこと水上聡太さん。サキサキさんこと佐々木美玲さん。あと絵茶さんに、ゼロスさんとワンスさん。

 聡太さんと佐々木さんの顔は覚えている。イケメンと美人さんなので忘れることはない。

 しかし、絵茶さんやゼロスさん、ワンスさんとは今日が初対面。素顔を知らない。

 周りを見渡しても、いるのかどうかは、俺には分からないわけだ。

 なので、グループLINEに電話をかけてみる。

 プルプル。

 プルプル。

 プルプル。

 3コールしたのに、誰も出てくれない。

 無視? 無視ですか? 

 お友達だと思っていたのは、俺だけだったんですかね? 

 誰かぁああ! 誰か出てぇええ!

 

「………なんてね」



 もしかしたら電車の中で、出れないのかもしれない。

 もしかしたら自転車を漕いでて、手が離せないのかもしれない。

 そういう可能性があるので、気長に待ってみる。電話の方は、迷惑になるので切っておく。

 待っている間やることがないので、Twitterを開き、メンバーのTwitterを監視する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 まずは、ゼロスさんのTwitterアカウント。

『今日は楽しみ! 
 エーペックスのダメージ勝負に参加してない俺ですが、Takiチャンネルの滝さんとSouちゃんチャンネルの聡太さんに、お誘いしていただき、焼肉を食べに行きます!』

 との事。

 この呟きは、今日の午前8時くらいに呟かれている。

 いやあ、マジでゼロスさん天使みたいな人だな。

 『DbDデトバイデイライト』の耐久配信の時だって、誘ったらすぐ来てくれて、嫌な顔せず付き合ってくれた。

 今回のメンバーでは、1番まともな人。いや、配信仲間の中で1番頼りになる人だな。

 まあ、今回会うのが初めてだけど。

 ゼロスさんの呟きに、返信するリスナーさん達のコメントを軽く読み、次に行く。

 ゼロスさんと来たら、次はワンスさん。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ワンスさんのTwitterアカウント。

 これは1時間前だから、16時くらいかな。

『ゼロス、めっちゃ楽しみにしてんの草生える!

 服とかさ、「何着ればいいかな」って「この上とこの下、合うかな?」とか身だしなみ気にしてんの。

 ゼロスは友達少ないから、こういう所可愛いんだよね。

 楽しみにしてたのかゼロス。まあ、楽しみなのは私も一緒なんだけどさ』
 
 との事。

 ゼロスさんとワンスさんって夫婦なんだってね。

 俺も今日知ったんだよね。

 兄弟か、友達だと思ってたから、夫婦だって知った時びっくりしたよ。

 電車の中で「ウソッ!」って声に出しちゃって、周りから変な目で見られた………まあ、そんなことは置いといて。

 ワンスさん、めちゃくちゃゼロスさんのこと好きじゃん!

 呟きの殆どが、ゼロスさんに関すること。

 この呟きを集めて本にしたら、ゼロスさんの日記が完成するほど、ゼロスさんの事しか書かれてない。

 ………おもろい夫婦だな。

 このワンスさんの呟きに、ゼロスさんが返信している。

『おい、バラすな! 恥ずかしいだろ!』

 服のことかな? 奥さんにコーディネートされたゼロスさん、めっちゃ気になるし、めっちゃ弄りたいな。

 ここで『ゼロス&ワンス』の夫婦配信者のTwitterは見終わった。次は、

「絵茶さんか、サキサキさんだな」

 俺はどちらを先に見るか迷っていると、聡太さんが今、何か呟いたらしく、通知が来る。

 じゃあ、先に聡太さんを見るか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 聡太さんのTwitterアカウント。

『おい、マジでやめろ!
 呪いのDMを俺に送ってくんな!

 滝に送れよ! 俺に送った所で意味ねぇから!

 あと、誰が滝の意見箱だよ。意見箱というよりか、ゴミ箱みたいになってんじゃねぇか!

 滝に恨みある奴は滝に送れ! いいな!』

 というものだった。

 ってか、まだ送られてきてるんだ。俺のところはもう治ったんだけど。

 このツイートは、今さっき呟かれたもの。

 ってことは、リスナーさん達から今もDMが届いてるってことでしょ。

 俺、最後に来たの4時間前だけどね。

 モテモテだな、聡太さん。

 ………リツイート、いいねを押してあげて、返信しとくか。

「ええっと、『ゴミ箱、ポイッ!』っと」

 こんな感じでいいよな。

 返信を返すと、聡太さんから、

『お前、ころ。す。あと少しで着く。覚えてろ! 確実にころ。す』

 だそうだ。

 がはははははは。

 ………来たら謝ろう。

 気を取り直して、次行ってみよう!

 残るは2人のみ。

 サキサキさんか絵茶さんか。

 どちらを先に見るか迷って、スマホと睨めっこしていると、グループLINEに着信が来る。

 現段階で、17時を3分過ぎている。

 着信先が誰か確認すると、ワンスさんからだった。

「はい、もしもし!」

『私ワンスさん。今、渋谷駅にいるの』

「へぇー、そうなんですか。ハチ公像前に来てくださいね」

 この調子だと、ゼロスさんとワンスさんが先に来るかな。

『私ワンスさん、今渋谷駅のハチ公改札の前にいるの』

「ん? はい、そんな一々報告しなくてもいいですよ。ハチ公像に来てくださいね」

『私ワンスさん。今、ハチ公改札を抜けて外に出たところ』

 こちらの質問や言うことは無視のようだ。多分だがこれは、

「メリーさんの真似でもしてます?」

『私ワンスさん。今ここを曲がったらハチ』

「3分遅刻だということを思い出していただけると」

『すみません。もう着くんで、許してください! ほら、走って!』

 うん、ゼロスさんもいるようだな。

 さて、スマホを持ってあそこを曲がってくる2人組がゼロスさんとワンスさん。

 おお、走ってくる3人組!

 ………3人組? あれ、スマホを持って走ってくる女性が1人と男性が2人。

 女性の方はワンスさんでいいのかな?

 声しか聞いたことがなく、声だけで人物像を想像していたので、印象が全然違う。

 俺が想像していた人物像は、スポーツ女子みたいな活発な女性だった。

 しかし、こっちに近づいてくる女性はスポーツ女子というか、ビジュアル系バンドみたいな感じの女性。

 金髪のショートヘアに革ジャンを着て、ダメージジーンズを履いている。

 振ってくる手には指輪が付いており、見る感じにイカつい。耳にはピアスが4個付いている。

「どうも! 滝君、ですよね?」

 名前の確認を小声でしてくれるあたり、ワンスさんに違いない。

「どうも初めまして。滝田遼平と申します」

「どうも、ご丁寧に。笹原一美ささはらかずみって言います。漢数字の1に、美しいって書いて一美です!」

 ああ、なるほど。

「だから(名前がワンス)なんですね」

「そうっすよ。だから(名前がワンス)なんですよ」

 言葉にしないが、伝わる。

 ワンスさんこと、一美さんに自己紹介を終え、後ろに控えてる男性に自己紹介をする。

「ゼロスさんですよね。滝田遼平と申します」

「あっ、えっと………どうも。同じく笹原零ささはられいって言います。漢字のゼロって書いて、れいって読みます」

「………なるほど(だから、ゼロスか)」

「そうなんですよ(安直ですけど、それでゼロスみたいな感じです)」

 こちらも、言わずに伝わる。

 一美さんの時と同じで、ゼロス——零さんの見た目も、想像とは全く違う。

 FPSが上手く、ノリが良かったので、陽キャのように思っていた。だが、どう見てもそうではない。

 陽の者でもなければ、陰の者でもない。そこら辺にいる普通の男性。

 格好だって、至って普通。

 何故か分からないが親近感が湧くのは、俺も普面ふつめんだからだろうか。

 そんなこんなで、お互いに自己紹介を終える。

 え? 3人目にはいいのかって?

 いいの、いいの。

 だって3人目の男性は、

「ゴミ箱、ポイッ!」

 俺の意見箱ゴミ箱だもん。

「誰が、ゴミ箱だ! お前、殺すぞ!」

 そう言って、俺の頭を掴み、抱え、ヘッドロックをしてくるのは、見ていて腹が立つほどイケメン面の聡太さん。

 ふっ、イケメンが俺のゴミ箱か………いい気味だね!

 頭蓋骨が軋む音を感じながら、優越感に浸る。

 今来た3人は、もう挨拶を済ませているらしく、零さんが「そこまでにしといた方が」と止めに入ってくれる。

 一美さんの方は、スマホをこちらに向け、写真やら動画やら撮っている模様。

 ちなみに、この時点で時刻は17時10分。来ていない人は、佐々木さんと初めましての絵茶さんのみ。

 うーん、何してんだろうね? 俺の頭蓋骨が割れる前に来てくれると嬉しいんだが。

 4人でわちゃわちゃと騒いでいると、ピコンっとスマホに通知が。

「聡太さん、離して離して! 通知、通知!」

「………チッ、仕方ねぇな」

 スマホをポッケから取り出し、内容を確認すると、

「「「「あああ」」」」

 4人同時に、落胆の声が。

「全員、絵茶さんのTwitterですか?」

「うん、私が見たには絵茶かな」

 同じものを見た、と一美さんは言ってくれる。

「ちなみに俺も、一美と一緒のかな」

 零さんも。

 となると、聡太さんも、

「あの馬鹿、何してんだよ」

 絵茶さんのようだ。

 Twitterの呟きを見る限り、まだ来れそうにないらしい。

 なので、

「どっか暇潰せる場所行きませんか?」

 近くにある喫茶店を差し、提案する。

「それもそうね」

「ですね」

「あいつら来たら、ちょっと説教だな」

 俺たちは絵茶さん達がくるのを待つべく、喫茶店に移動するのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 絵茶さんのTwitterアカウント。

『やべぇぇええええええ!

 サキサキちゃんと遊んでたら、寝過ごしちゃった!

 17時集合なのに、今なんと17時10分!

 怒らないで欲しいな………滝さん、聡太さん。ゼロっさんにワンちゃん。

 全部全部、サキちゃんが悪いの。怒るなら、サキちゃんにしてね。

 今から家を出ます! よろです』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


 


 
 


 
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