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生配信20 焼肉会2

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「はい、滝です」

 待ち合わせ場所の近くにある喫茶店で休憩をしていると、スマホが鳴る。

 LINEからの着信。画面にはの4文字が表示されている。

『すみません、送れました。今、ハチ公前にいます』

「はーい。そこで待ってて貰えますか?」

『了解でーす』

「ちなみに、佐々木さんもそこに居ますか?」

『2人一緒にいまーす』

「了解です。今から向かいます」

 通話を切り、スマホの時計を見る。

 現在時刻は、17時35分と。35分の遅刻だ。

「なんだって?」

 俺の横でアイスコーヒーを飲んでいる聡太さんが訊いてくる。

「今、着いたそうです」

 アイスティーをズズズッと飲み干し、スマホをポッケに突っ込む。

「サキサキさんって、そんなに美人さんなの?」

 興味津々のワンスこと一美さん。先程まで遅れた2人について話していたので、若干興奮気味。

「そうですね。このクソイケメンの聡太さんと並んでも、タメを張れるほどの美人さんですね」

「よせよ、褒めるな」

 褒めたつもりはないんですけど? クソが付いてる時点で、貶しているつもりなんですけどね?

「まじか! このイケメンの聡太君と同じぐらいの美人さんなんだ!」

 早く会ってみたい、って顔の一美さん。一方、ゼロスこと零さんは、

「すぅー、緊張してきた。ちゃんと話せるかな?」

 初対面には弱いらしく、緊張気味。

「大丈夫、大丈夫。基本、ポンコツだから。あの人」

 聡太さんがフォローに回り、アイスコーヒーを飲み終える。

「さて、じゃあ、迎えに行きますか」

 みんながみんな、注文したドリンクを飲み終えたので、席を立ち、お店を出る。

 ハチ公像前まで、そう距離はないので喋りながら歩いていくと、1人だけ凄い存在感の女性が居るのが見える。

「もしかして、あれ?」

「あっ、更に緊張してきた」

 一美さんと零さんにも見えたらしい。

 俺と聡太さんは「「そうです、あれです」」と指差しながら伝えた。

 指を差している俺と聡太さんに、佐々木さんが気付いたのか、横にいる女性の手を取り、こちらに向かってくる。

 あの横にいる人が絵茶さんか。確かに学生だな。

 パッと見て、学生だと分かる。

 何故かって?

 だって、

「なんで制服で来てんの? コスプレかなんかか?」

 制服でこっちに来てるんだもの。

 ちなみに、聡太さんだけが知らない。絵茶さんが高校生だということを。

「すみません、遅れてしまって」

 申し訳無さそうに謝る佐々木さん。

 遅れたわけを訊くと、どうやら今日の10時ごろからこの2人は遊んでいたらしく、遊び疲れて寝てしまったらしい。

 可愛い理由だこと。

「まあ、許すには許しますけど、罰は受けてもらわないと。そうだな………牛タンは無しって事で」

「「ええ!」」

 なんですか、その悲しそうな顔は。

 冗談ですよ、と心の中で呟く。

「そうだな、30分異常遅れている訳だし。カルビもなしって事で」

「「う、うそだ」」

 聡太さんの言葉により、悲しそうな顔から絶望した顔へと変化する。
 
「そういう流れなら、ロースなんかもダメにする?」

「「………」」

 涙目になってますよ、お2人とも。

 俺が牛タンで、聡太さんがカルビ。一美さんがロースか。焼肉屋行く意味がなくなってきてるな。

 涙目の2人は、まだ発言していない零さんに希望の眼差しを向ける。しかし、

「………サンチュだけなら食べていいですよ」

 最後の希望だと思っていた男から伝えられた言葉は、死亡宣告そのものだった。

「………私もえっちゃんも、芋虫じゃあない」

「………肉、肉が食べたかった」

 ポロポロと溢れる涙。

 こんな所で号泣されても困るので、「冗談ですよ、冗談」と伝えると、フラフラっと俺に近づき、

「牛タン食べていいんですか?」

「カルビもロースもハラミも?」

 すがるように服を掴んでくる。

「ちょ、離して」

 距離が近い! 美女と女子高校生に迫られる気分は、正直とてもいい気分なのだが、周りの目がキツい。

 ほら、そこら中の人がこっち見てますよ! 目立っちゃってますから、離れて!

 2人の頭を押し、服から剥がす。

 剥がれた2人に対して、俺からの答えは、

「おほん。食べても良いですけど、条件があります。まずは、自己紹介! ちゃんと出来たら、奢りますよ」

 挨拶しなさい、というものだった。

 こうしてメンバーが無事集まり、各々、自己紹介をする。

 知っている者同士だろうが、先程挨拶したばかりだろうが、1から自己紹介をするのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ? じゃあ、絵茶さんはマジの高校生なの? んで、絵茶っていうのが本名?」

「はい! そうですよ!」

 事実を知った聡太さんは「コスプレじゃなかったんだ」と制服を見て言う。

 絵茶こと、桜田絵茶さくらだえちゃは、現在17歳の高校2年生らしい。

 身長160ピッタと少し小さいが、ポニーテールと小柄がマッチしていて可愛らしい女の子に見える。配信でのブラック絵茶が、演技なのではないか、と疑いたくなる。
 
「顔、ちっちゃいね! 絵茶は将来、小悪魔女子になるかもな!」

「ふふふ、褒めないでよ、ワンちゃん!」

 笑う姿は年相応で、幼く見える。童顔だからなのかもしれない。

「美玲ちゃんも本当に聞いた通りの美人さんだね? 私が男だったら抱いてるね、確実に」

「だ、抱くって、そんな」

 若干下ネタに分類される言葉を聞き、顔を少し赤らめる佐々木さん。

 一美さんは興奮しているらしく、佐々木さんと絵茶さんに絡んでいく。

 あの2人のことは一美さんに任せるとして、

「絵茶さんの名前が本名なら、苗字で呼んだ方が良いですかね?」

 身バレの要素が増えたため、男性陣は緊急会議を開いていた。

「確かに、名前バレから身バレするかもしれないし、危険ですね」

 今日集まったメンバーは素顔をバラしていない。零さんの言う通り、名前から身バレする恐れが出てくる。

「じゃあ、どうする? 佐々木さんみたいにえっちゃんって呼ぶか? ってか、呼べるのか、お前ら?」

 聡太さんの問いに、俺と零さんはそっぽを向く。

 呼べる訳あるか! もし、えっちゃん呼びで呼んで、「はあ、馴れ馴れしいんですけど? マジきもいわ」なんて言われてみろ。俺、配信活動やめて、一生引きこもる自信あるわ。

 ってか、女子高生という存在に恐怖してるんだから、俺は。

 女子高生の絵茶さんの呼び方について、3人であれやこれやと考えていると、

「何してるんですか?」

 佐々木さんが不思議そうな顔してこちらを見ている。

「男子だけでコソコソして怪しい! エロい話でもしてたんじゃないの?」

「うわ、無いわ。男子は脳内ピンク色だから近づかないどこ」

 一美さんの煽りに、乗っかる絵茶さん。

「あんま調子に乗んなよ、一美。はしゃぎ過ぎてると、痛い目見るぞ」

 おちょくってくる一美さんに、零さんが強く出る。ってか、名前呼びなんですね、零さん。

「痛い目なんて見ないから。ってか、マジでエロいこと考えてたら殺すぞ、零」

 強く出た零さんに、反論する一美さん。嫉妬ですかね、一美さんの最後の一言は嫉妬から出てきたんですかね?

 2人の間に険悪ムードが流れるが、それは置いといて、俺は今話していた懸念事項を女子3人に話す。

 すると、

「苗字で呼べば良いんじゃ無いの、普通に」

 何当たり前なことを難しく考えてんの、みたいな顔で最適解な案を出す絵茶さん。

 うん、そうだね。普通に考えて苗字で呼べばいいね。

 全く思いつかんかったわ。

 でも、素直に思いつかなかったとは、言いたく無いので、

「はあ、面白味もない案だなぁ。でも、それしか無さそうなんで、苗字読みにしますわ。ありがとうね、桜田さん」

「はあ⁉︎」

 決して負け惜しみとかではないよ。大切なことなので、2回言うけど、負け惜しみじゃあないからね!

 こうして絵茶さんだけは苗字読みとなり、緊急会議はこれにて終了となる。

 えっ? 聡太さんはそのままなのかって?

 いいんじゃない? 聡太なんて名前どこにでもいるでしょ!

 聡太さんの場合は適当になるが、それでよし。イケメンなどぞんざいに扱うのが、正しい扱い方なんだから。

 とまあ、メンバーも集まったことだし、そろそろ予約した焼肉店に行かなくては。

「18時予約なので、そろそろここを離れなきゃいけません。ついてきて下さい」

 道案内のため先頭を歩く俺。

「おい、コラ! 何が面白みのない案だ? 面白い案出してみろよ! 聞いてんのか、コラ」

 絵茶さんを無視して歩く。焼肉屋に着くまで、永遠と背中を叩かれ続けたが、気にしない。

 背中が赤く染まっている気がするが、気にしない。

 絵茶さんだけでなく、佐々木さんも面白がって叩いているが気にしない。

 気にしないって言ったら、気にしなあああああい!


 
 





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