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生配信27 夜も記念配信

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「はい、どうも! 今日もゲーム配信、配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です」

 こうして始まった夜配信。

『こん!』
『こん~』
『こん』
『こん~』

 開始前から400人近くの人が待機してくれていた。

 登録者数20万の配信者となると、始まる前から待ってくれているリスナーが………頑張ってきた甲斐があったというものだ。

 感動を覚えつつ、夜配信でプレイするゲームを紹介していく。

「この夜配信もね、一応記念配信ですので、リスナーさん参加型をやっていこうと思います」

『おおお!』
『起動してくるわ!』
『俺も』
『マジでか!』

 マジのマジよ!

 この記念配信が出来るようになったのも、ひとえにリスナーさん達のおかげですから。

 恩返しはしないよね。

 そういう訳で、参加型を開始する。

「参加型の約束は覚えていると思うので、言いません。んで、コースの設定なんだけど、基本はランダムでお願いします」

 まずは走るコースをランダムに設定しとく。

 得意なコースばっかりで勝負するのは、公平じゃないからね。

 キャラについては何も言わない。

 何も言わないということは、設定なし。つまりなんでも使って良い。

 まあ、俺はいつものキャラ——クッパを使っていく。

 何故、クッパなのかって?

 クッパって見た目通り重いんだよね。体当たりされてもそこまで弾かれることないし、逆に体当たりすると敵を弾いてくれるんだよね。

 つまり、アイテム以外でやられることはない………と勝手ながら思っています。

 さて、マッチングルームにリスナーさん達も入ってきたんで、早速第1レースを開始しますか。

「ああ、1人1レースずつでお願いします。何度も何度も同じ人がやったら他の人回らないんで」

 ここだけは何度でも言おう。

 案外、しれっと入ってくる人いるんだよね。気をつけてはいるんだけど。

 さて、今回走るコース選ぶんですが、選択肢は4つ。

 マリオサーキットにベビィパーク、ヘイホーこうざん、おまかせの4種類。

 4つのコースから1つ選ぶんですが、これは前もって伝えた通り、

「コースはおまかせのランダムで行きますので、おまかせを選んでください」

 ランダムにすることで、選択肢以外のコースでも遊べるようになる。

 今回選ばれたコースは、

「『wii モーモーカントリー』ですね」

 レーン上に牛という障害物が出てくるコース。

 この牛が邪魔なんですよ。

 ちなみにこのコース、めっちゃ嫌い。

 まあランダムで決まった事だし文句は言わないけどね。

「さて、コースも決まりましたし、そろそろ始まりますかね」

 ロードが始まり、レースが始まる。

 第1レース。

 案の定、クッパは俺1人。そのほかは自分達で作ったアバターやピーチ姫、キノピオなどのキャラを選択している。

 キャラの中で1番多いのはピーチ姫なのだが、マリカーのピーチ姫には何の恨みもないので、なんとも思わない。マリカーのピーチ姫は。

「まずは慣らし運転。1位を取りに行きたいとは思ってるけど、まあ、慣らしで走らせてもらうわ」

『保険ですか?』
『負けた後の言い訳を最初に言う派ですか?』
『うわ』
『気持ちで負けてるから12位やね』

「保険とかじゃないから。やめてもらえます、そういうの。あと、『うわ』とか言うコメント、1番傷つく」

『否定したと言うことは』
『やっぱり保険か』
『ゲーム上手いところ見せてくださいよ』
『滝、まあ頑張ってよw』

 おうおう、見てろよ。

 絶対に1位取ってやるからな。

 コメントを読んでいるうちに、ジュゲムが信号機を持って空から降りくる。

 ピッ。

「よしゃ、行きますか!」

 ピッ。

 アクセルを踏み始め、スタートダッシュの準備をする。

 そして、

 ピッー!

「よしゃああ」

 スタートダッシュからの、前の人にぶつかる。

「邪魔じゃあ!」

『輩!』
『不良やん』
『まあこれはあるある』
『やったれ!』

 俺のプレイに賛否両論なリスナーさん達。

 スタートダッシュを決め、近くのリスナーさんに当たった事もあり、順位は割と高めの5位。

 1周目はこの順位をキープしときたい。

 5位くらいだと、アイテムがクソることはない。

 キープしたいからアイテムは、守りに使うか。

 そうこう思っているうちに、1回目のアイテムが手に入る。

「2個欲しかったな」

 4位のリスナーさんが2個のアイテムボックスを取ったため、1つのアイテムボックスしか取れなかった。

 でも、

「3連ミドリ甲羅はデカイな」

 なかなか良いアイテムを取ることができた。

 すぐさまアイテムを使い、ミドリ甲羅を纏う。

 これで前後の攻撃や、当たり屋みたいなリスナーさんからも守ることができる。

 1周目も中盤。

 牛が邪魔をしてくるも、ちゃんと避け、順調。

 後ろのリスナーさん達がどんどん近づいてくる中、2回目のアイテムボックスがやってくる。

 そろそろミドリ甲羅使っていくか。

 後ろに向けて3つとも発射。

 ピッタリくっ付いてきたピーチ姫に1ヒット。そして、更に後ろにいた8位か9位ぐらいのリスナーさんにもヒットで、3分の2甲羅が当たった。

「このまま行けば1位いけるんじゃない?」

 ちなみに1位から4位までの距離はまだ諦めるほどの距離じゃない。

『このまま行けばな』
『そう甘くないのが、勝負事』
『後ろから追い上げがくるぞ』
『慢心したから12位かな』

 慢心はしていないが、確かに追い上げ勢が怖い。

 なので、早めにアイテムボックスをとしたいところだが、

「あっ!」

 後ろからアカ甲羅。

 アカ甲羅は前に投げると、前の人目掛けて飛んでくるアイテム。

 5位の俺が食らったことにより、6位と7位のリスナーさん達が俺を抜かしていく。
 
 目の前のアイテムボックスを取られた俺は、現在アイテムなしの状態になってしまった。

「やばいやばいやばい!」

 ドリフトをして加速して行くも、アイテムない状態なので守りが薄い。

『ほら見たことか』
『こっからが怖いぞ』
『滝を潰せ!』
『やったれ、ボコボコにしろ!』

 最近、アンチ寄りのリスナーさん達が増えたような気がするのは気のせいだろうか?

 ………気にしない方がいいな。

 さて、どうやって1位と距離を縮めるか。

「もう、ドライブテクニックで詰めるしかないんだよな」

『アイテムないしね』
『ドリフト加速か?』
『諦めろ』
『もう無理や!』

「諦めたらそこでレースは終わりだろうが!」

 俺は絶対に1位を取るんだ!

「見てるがいい、これが配信者のドラテクよ!」

 ………

 ……

 …

『なんか言うことある?』
『カッコつけたって意味ないやん』
『お疲れw』
『まあ、だろうな』

 コメント欄に励ましの言葉は一切なく、全て『分かってた』みたいなコメントばかり。

 ええ、そうです。

 12位になぜかなってしまいました。

 いや、途中までいい感じに行けていたんですよ!

 1周目は、5位から7位に落ちたものの順位を維持して、2周目に入る前に抜かして5位に戻りました。

 んで、2周目は5位から4位、3位と順々に抜かしていき、目の前には2位と1位がいて、トップ争いをしてましたよ。

 そんで、何故か3周目に12位まで落ちてゴール。

「なんで12位なの? ここまで落ちた記憶ないんだけど? バグかな?」

『バグではなく、テクニックの問題だね』
『記憶ないの? 説明いる?』
『普通にしょうもない』
『マジでしょうもない順位の落ち方』

 バグではなく仕様でしたか。あと、

「しょうもないはやめろ!」

 自分でもしょうもないって分かってるから。あえて言わなくていいから!

 ええ、トップ争いしていたにも関わらず、なぜ最下位に落ちたかと言うと、

「マジで運がなかった」

 そうです、運のせいです。

『運ちゃあ運だね』
『運のせいにするなって言いたいけど運のせいだね』
『アイテム運もなかったしね』
『おもろすぎて腹痛い』

 そんなに面白い出来事ではなかったんですけどね!

 何が起きたのかというと、3位の俺はトップ争いをしていました。

 1位2位の真後ろに陣取り、次のアイテムボックス次第で、1位の座を狙っていた。そこまでは良い。

 アイテムボックスが目の前で来たところに、俺のすぐ側をアオ甲羅が通って来て、それに勘付いた1位がバック。

 アオ甲羅の爆破に巻き込まれた2位と俺は、共に停滞。停滞していたことにより後続にどんどん抜かされていきました。

 その時の順位が7位だったかな?

 そのあと、俺はアカ甲羅を受け、9位に転落。

 アイテムを拾うも、雷に打たれ、アイテムを落としてしまい、アイテムない状態で走行。

 後続にはスター効果のピーチ姫やキラー状態になったピーチ姫。

 しかも、スターのピーチ姫は俺にワザと当たってきて、スタン状態になってしまい、最後尾を走っていたリスナーさんにも抜かされ、俺が最下位。

 頑張れば最下位にならなくても済むような位置に11位のリスナーさんがいるも、

「あの牛マジで邪魔」

 このマップの動く障害物こと牛に進路を邪魔され、抜け出せず、最下位のままレースが終了してしまった。

『でも運も実力のうちって言うし』
『確かに』
『じゃあ、これが滝の実力か』
『まあ分かってたけどね』

 牛にもイラつくが、この『運も実力のうち』とか書いたリスナーさんにもイラつくわ。

「まあ、最初の方はいい感じだったし、それに慣らし運転だったしね。次よ、次こそが俺の実力よ!」

 第2レース。

 順位は10位。

『笑』
『笑』
『これも運ですか』
『いや流石だな。前回よりも2位順位は上がってんじゃんw』

「ちょっと肩の調子がね。うん、今良くなったわ! 次見ててみ」

 第3レース。

 順位は11位。

「すぅー。これはアイテムが悪い。だって、7位くらいなのにアイテム全部バナナってどう言うことよ!」

『アイテムのせいね』
『そうだね、アイテムのせい』
『はいはい、バナナが悪いね』
『バナナ、バナナ』

「くっ」

 第4レースも第5レースも順位は下から数えた方が早いくらいの順位。

 コメント欄では、『これが実力』『まあだろうね』などのコメントを多くもらった。

 少しくらいは応援してよ。

 そして、第6レース。

「今度こそ、1位を」

『高すぎる目標はダメだよ』
『そうだな、5位目指そう?』
『欲張るにはダメだよ』
『普通に走りなさい』

 諭してくるリスナーさん達。

 うるせぇの一言を言いたいが、言えない。これまでの順位が順位だから。

 だからこそ、今度こそ。

 そう思いレースに挑む。

 すると、リスナーさんらしき人の名前に目がいく。

「オムライスはケチャップ、ねぇ」

 今日の晩ご飯はデミグラスのオムライスだった俺。なので、聴きながらゲームをしているそのリスナーさんに向けて、

「オムライスはデミグラスです」

 そう言い、レースが開始される。

『オムライスはケチャップだろ!』
『王道はケチャップ。けど、デミグラスも上手い』
『俺はデミグラス派』
『ケチャップ』

 とまあ、こんな感じにコメント欄が騒いでるので、

「美味しければなんでも良い」

 とだけ言っておく。

 そして、

「目の前にケチャップ派のリスナーさんがいるので、アカ甲羅をプレゼント」

 赤がお好きなんでしょ?

 そのまま、その人を抜いて行く。

 1周目はこれまで同様、良い順位をキープしている。

 現在4位。

 後ろには、ケチャップ派のリスナー。

 2周目もその順位のまま、走行し、アイテムボックスを取る。

「おお、今回はアイテム運がいいな」

 なお、2個のアイテムボックスを取り、1つ目がアカ甲羅3連、2個目が単発のアカ甲羅。

 なので、後ろピッタリについてるリスナーさんに向けて、アカ甲羅をプレゼント。

「バイバイ、ケチャップ派」

 多分今頃、「滝、ウザ!」とか言ってるんだろうな。

 でもこれが勝負事。仕方なし、仕方なし。

 残っている甲羅を上手に使い、3周目には1位に上り詰めた。

 このまま行けば勝てる。

 3周目もアイテムをちゃんと取り、後方からの攻撃に備えて、バナナを後ろに持って行く。

 何としてでも1位を取りたい。  

 レースも終盤に差し掛かり、激しいアイテム戦になる。

 未だに1位をキープしている俺。そして、

「2位の人の恨むがやばいような気がする」

 2位のリスナーはあのケチャップ派の人。

 目の前には最後のアイテムボックスがある。

「これは取らなければ!」

 必死に走行し、2個のアイテムボックスを取る。

 アイテムの中身は、バナナとアカ甲羅。

 バナナを後ろで待機させ、後ろからの攻撃を守る。

 もうそろそろゴールが見えてくると言う時に限ってくるのが、アオ甲羅。

 なので、

「バックします」

 ワザとバックをし、2位の人を巻き込む。

 巻き込み、そして、残していたアカ甲羅を投げつけ、そのままゴール。

 アカ甲羅を投げつけられた2位のリスナーさんは、3位へと順位が落ち、ゴールして行った。

「どうよ、これが1位の走りよ!」

『最後のバックは良かった』
『いい判断』
『ケチャップの人、怒ってるなw』
『俺だったら、ブチギレよ』

 コメント欄には称賛の言葉と、ケチャップの人に対する言葉だらけになった。

「俺から1位の座を奪おうとするから、いけなかったんだよ。そしてらアカ甲羅なんてぶつけないのに」

『嘘つけ』
『絶対ぶつけてた』
『嘘はいけないよ』
『ダウト!』

「まあ、喜んでるんじゃないですかね。ケチャップと同じ色だし」

『色は関係ないでしょ』
『確かに喜んでるかも』
『奇声を上げながら喜んでる』
『良かったな』

「はははははははははは」

 とまあ、ケチャップの人を弄って、笑ってみたものの、何故だが嫌な予感がする。

 直感的な何かなのだが、物凄く寒気がしてならない。

 ここは空気を変えよう。

「さて、1位も取ったことだし、ささっと次のレースに行こうか」

 話題は次のレースへと変わる。

 リスナーさん達も参加したいからなのか、コメントを打つのをやめ、マリカーに集中。

「じゃあ、第3レース始めます」

 その後、俺の気のせいだったのか、配信は順調に進んでいき、配信終了の時間まで、リスナーさん達とマリカをすることができた。

「はい、じゃあね、もう時間なので配信を閉じまーす。今日もご視聴ありがとうございました。もしよかったら、高評価とチャンネル登録の方よろしくお願いします」

 そう言い、「お疲れ!」と言って配信を閉じた。

 配信を閉じ、いつものようにタバコを一服吸う。

「ふぅ」

 そういえばあの寒気はなんだったんだろう?

「すぅ、ふぅ。ああいう時は必ず何か起きるんだよな」

 直感………第六感というべきなのか、割と勘がいいガキなんですよね。

「何にも起きないといいな」

 吸ったタバコの吸い殻を処理して、歯を磨き、ベッドへ向かう。

 そして、

「明日何も起きませんように」

 神様に祈り、眠った。

 あんだけを弄って遊んで、何も起きないわけないのに。










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