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「成すぞ、紋章No.11正義」
シンパンの両手の甲のように、背中が輝く。
「クッ、熱い!」
チリチリと焼けるような痛みに襲われる。が、次第に痛みは引き、優しい光に包まれているような感覚へと変わる。
変わったことはそれだけ。
「どうだ、慎二? なんか身体の奥から力が湧いて来たみたいな感じなのか?」
目を輝かせながら、自身が期待している通りの答えを待つ京介。
京介には悪いが、正直に答えよう。
「いや、特に」
あっそう、と目に見て分かるように落ち込むが無視しよう。
それよりも、
「シンパン、この背中」
「ああ、それが正義の紋章。背中だから見えてないだろうけど、剣と天秤が描かれて「聞きたいのはそれじゃない」ん? じゃあ何さ?」
剣と天秤が描かれていること自体は知っている。世界から正義を授かったときに、1度見ている。
俺が聞きたいのは、
「この紋章、刺青みたいに残ったりしないだろうな? 今学期中に水泳の授業がまだ1回残っててだな」
「今それ………確かにまだ1回残ってたな。バレたら退学とかになんのか?」
「即退学にはならないと思う。まずは生活指導室とかかしら?」
この紋章が消えるにかどうかなのだが。
流石に、背中に刺青のような物がある高校生は、問題がある。消えるのか、消えないのかだけを知りたい。
「気のするところそこなんだね、君達。………残らないよ、力が発動中しか浮き上がらないから」
なら、安心だ。水泳の授業も安心して受けられる。
じゃあ、今度は目の前のことに集中しよう。
シンパンの言葉から考えるに、紋章が浮かび上がっている今、正義が発動中ということ。
しかし、相手にも俺にも何も起きていない。
シンパンが隠者を発動した際も、見た目だけで判断は難しかった。
じゃあ、俺もそうなのか?
それとも、何かしなければ発動していても意味がないのか?
シンパンが隠者を発動した時のこと、その時の言葉を思い出せ。
確か「対象に向けて発動すると」って言っていなかったか?
俺の正義もシンパンのと同様に、対象を決めなければならないんだとしたら?
………やってみるか。
「正義の対象は怪物」
怪物を目で捉える。
「京介、俺に何か変化はあるか?」
「変化はない。お前の頭上に天秤が出現したくらい」
それを変化と言うんだが?
頭上の天秤を見ると、受け皿の1つに火が灯っている。
片方だけとなると、もう1人を対象にしなくちゃいけないのか。
なら、もう1人は、
「正義の対象を自身に」
自分から何かが抜けていくのを感じ、やっと力を理解した。
紋章No.11正義は、対象を2名選ぶことにより力を発揮する。
対象2名の罪を秤にかけ、重い方——つまり罪が重い方に罰を与える力。
天秤の両受け皿に火が灯り、傾く。
「シンパン、力を解いてくれ」
「いいのかい? まだどういう力か見ていないのに」
「大丈夫、理解したから」
シンパンが力を解いたのだろう。
怪物とやっと目が合う。
「なあ、お前の正義と俺の正義、どちらが本当の正義なのか、試そうか」
「げけいjxっ。ふぉjdrbf、kskぢjdんd!(ふざけやがって。処刑だ、全員処刑だ!)」
シンパンの隠者で隠れていたことに対して、怒り狂っている怪物。
別にふざけていた訳じゃ無いんだが、怪物に説明する義理はない。
最短距離で突進してくる怪物は、まるで重機の暴走かのように、触れるモノ、進行方向にあるモノ全てを壊す勢いだった。
あんなモノに突っ込まれたら、生きていられないんだろうな。
と、考えられるくらい冷静でいて余裕がある。
というのも、
「これで終わりだ、大罪人——東京駅の怪物よ」
頭上の天秤は測りを終え、片方は言い逃れ出来ぬほどの罪深く、もう片方は罪を知らない赤子のように軽かった。
「剣よ、大罪人に罰を」
目の前に現れる巨大な剣。
剣先はこれから断罪する者に向けられている。
怪物の目にも剣が写っているのにも関わらず、止まることはなかった。
どっちの正義が正しいのか。
それを証明するかのように交差する。
「行け」
「hdけhldbsk!(処刑処刑処刑処刑処刑!)」
—————————ザシュ。
「………hdけい、hxkskwkj?(………俺の正義が、暴力が負けた?)」
剣は的確に怪物の首を捉え、胴体と切り離した。
落ちた首は最後にそう呟き、体と共に灰と消える。
「………ふぅ、これで終わりだよな?」
「そう、これで終わり」
怪物は死に、この東京駅も消える。
捕まっていた人達も助かり、辛い記憶もここにいた記憶さえ消えてなくなる。
感謝はされないけど、父さんや母さんのように正義は成せた。
「………………疲れた」
そう俺は呟き、意識を手放した。
だから、この後どうなったのかは知らない。
後日京介に聞くまでは。
京介に聞いたのが悪かったのだろう、ちょっと意味が分からない点がある。
美妃先輩かシンパンに聞けば良かった。
だって、京介、
「俺も何か帰りに世界から力貰った!」
って言うんだから。
シンパンの両手の甲のように、背中が輝く。
「クッ、熱い!」
チリチリと焼けるような痛みに襲われる。が、次第に痛みは引き、優しい光に包まれているような感覚へと変わる。
変わったことはそれだけ。
「どうだ、慎二? なんか身体の奥から力が湧いて来たみたいな感じなのか?」
目を輝かせながら、自身が期待している通りの答えを待つ京介。
京介には悪いが、正直に答えよう。
「いや、特に」
あっそう、と目に見て分かるように落ち込むが無視しよう。
それよりも、
「シンパン、この背中」
「ああ、それが正義の紋章。背中だから見えてないだろうけど、剣と天秤が描かれて「聞きたいのはそれじゃない」ん? じゃあ何さ?」
剣と天秤が描かれていること自体は知っている。世界から正義を授かったときに、1度見ている。
俺が聞きたいのは、
「この紋章、刺青みたいに残ったりしないだろうな? 今学期中に水泳の授業がまだ1回残っててだな」
「今それ………確かにまだ1回残ってたな。バレたら退学とかになんのか?」
「即退学にはならないと思う。まずは生活指導室とかかしら?」
この紋章が消えるにかどうかなのだが。
流石に、背中に刺青のような物がある高校生は、問題がある。消えるのか、消えないのかだけを知りたい。
「気のするところそこなんだね、君達。………残らないよ、力が発動中しか浮き上がらないから」
なら、安心だ。水泳の授業も安心して受けられる。
じゃあ、今度は目の前のことに集中しよう。
シンパンの言葉から考えるに、紋章が浮かび上がっている今、正義が発動中ということ。
しかし、相手にも俺にも何も起きていない。
シンパンが隠者を発動した際も、見た目だけで判断は難しかった。
じゃあ、俺もそうなのか?
それとも、何かしなければ発動していても意味がないのか?
シンパンが隠者を発動した時のこと、その時の言葉を思い出せ。
確か「対象に向けて発動すると」って言っていなかったか?
俺の正義もシンパンのと同様に、対象を決めなければならないんだとしたら?
………やってみるか。
「正義の対象は怪物」
怪物を目で捉える。
「京介、俺に何か変化はあるか?」
「変化はない。お前の頭上に天秤が出現したくらい」
それを変化と言うんだが?
頭上の天秤を見ると、受け皿の1つに火が灯っている。
片方だけとなると、もう1人を対象にしなくちゃいけないのか。
なら、もう1人は、
「正義の対象を自身に」
自分から何かが抜けていくのを感じ、やっと力を理解した。
紋章No.11正義は、対象を2名選ぶことにより力を発揮する。
対象2名の罪を秤にかけ、重い方——つまり罪が重い方に罰を与える力。
天秤の両受け皿に火が灯り、傾く。
「シンパン、力を解いてくれ」
「いいのかい? まだどういう力か見ていないのに」
「大丈夫、理解したから」
シンパンが力を解いたのだろう。
怪物とやっと目が合う。
「なあ、お前の正義と俺の正義、どちらが本当の正義なのか、試そうか」
「げけいjxっ。ふぉjdrbf、kskぢjdんd!(ふざけやがって。処刑だ、全員処刑だ!)」
シンパンの隠者で隠れていたことに対して、怒り狂っている怪物。
別にふざけていた訳じゃ無いんだが、怪物に説明する義理はない。
最短距離で突進してくる怪物は、まるで重機の暴走かのように、触れるモノ、進行方向にあるモノ全てを壊す勢いだった。
あんなモノに突っ込まれたら、生きていられないんだろうな。
と、考えられるくらい冷静でいて余裕がある。
というのも、
「これで終わりだ、大罪人——東京駅の怪物よ」
頭上の天秤は測りを終え、片方は言い逃れ出来ぬほどの罪深く、もう片方は罪を知らない赤子のように軽かった。
「剣よ、大罪人に罰を」
目の前に現れる巨大な剣。
剣先はこれから断罪する者に向けられている。
怪物の目にも剣が写っているのにも関わらず、止まることはなかった。
どっちの正義が正しいのか。
それを証明するかのように交差する。
「行け」
「hdけhldbsk!(処刑処刑処刑処刑処刑!)」
—————————ザシュ。
「………hdけい、hxkskwkj?(………俺の正義が、暴力が負けた?)」
剣は的確に怪物の首を捉え、胴体と切り離した。
落ちた首は最後にそう呟き、体と共に灰と消える。
「………ふぅ、これで終わりだよな?」
「そう、これで終わり」
怪物は死に、この東京駅も消える。
捕まっていた人達も助かり、辛い記憶もここにいた記憶さえ消えてなくなる。
感謝はされないけど、父さんや母さんのように正義は成せた。
「………………疲れた」
そう俺は呟き、意識を手放した。
だから、この後どうなったのかは知らない。
後日京介に聞くまでは。
京介に聞いたのが悪かったのだろう、ちょっと意味が分からない点がある。
美妃先輩かシンパンに聞けば良かった。
だって、京介、
「俺も何か帰りに世界から力貰った!」
って言うんだから。
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