C×C 〜クラウンxクラウン〜

九月生

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「成すぞ、紋章クラウンNo.11正義」

 シンパンの両手の甲のように、背中が輝く。

「クッ、熱い!」

 チリチリと焼けるような痛みに襲われる。が、次第に痛みは引き、優しい光に包まれているような感覚へと変わる。

 変わったことはそれだけ。

「どうだ、慎二? なんか身体の奥から力が湧いて来たみたいな感じなのか?」

 目を輝かせながら、自身が期待している通りの答えを待つ京介。

 京介には悪いが、正直に答えよう。

「いや、特に」

 あっそう、と目に見て分かるように落ち込むが無視しよう。

 それよりも、

「シンパン、この背中」

「ああ、それが正義の紋章クラウン。背中だから見えてないだろうけど、剣と天秤が描かれて「聞きたいのはそれじゃない」ん? じゃあ何さ?」

 剣と天秤が描かれていること自体は知っている。世界から正義を授かったときに、1度見ている。

 俺が聞きたいのは、

「この紋章、刺青みたいに残ったりしないだろうな?  今学期中に水泳の授業がまだ1回残っててだな」

「今それ………確かにまだ1回残ってたな。バレたら退学とかになんのか?」

「即退学にはならないと思う。まずは生活指導室とかかしら?」

 この紋章が消えるにかどうかなのだが。

 流石に、背中に刺青のような物がある高校生は、問題がある。消えるのか、消えないのかだけを知りたい。

「気のするところそこなんだね、君達。………残らないよ、力が発動中しか浮き上がらないから」

 なら、安心だ。水泳の授業も安心して受けられる。

 じゃあ、今度は目の前のことに集中しよう。

 シンパンの言葉から考えるに、紋章が浮かび上がっている今、正義が発動中ということ。

 しかし、相手にも俺にも何も起きていない。

 シンパンが隠者を発動した際も、見た目だけで判断は難しかった。

 じゃあ、俺もそうなのか?

 それとも、何かしなければ発動していても意味がないのか?

 シンパンが隠者を発動した時のこと、その時の言葉を思い出せ。

 確か「対象に向けて発動すると」って言っていなかったか?

 俺の正義もシンパンのと同様に、対象を決めなければならないんだとしたら?

 ………やってみるか。

「正義の対象は怪物アイツ

 怪物を目で捉える。

「京介、俺に何か変化はあるか?」

「変化はない。

 それを変化と言うんだが?

 頭上の天秤を見ると、受け皿の1つに火が灯っている。

 片方だけとなると、1

 なら、もう1人は、

「正義の対象を自身に」

 自分から何かが抜けていくのを感じ、やっと力を理解した。

 紋章クラウンNo.11正義は、対象を2名選ぶことにより力を発揮する。

 対象2名のを秤にかけ、重い方——つまり罪が重い方に罰を与える力。

 天秤の両受け皿に火が灯り、傾く。

「シンパン、力を解いてくれ」

「いいのかい? まだどういう力か見ていないのに」

「大丈夫、理解したから」

 シンパンが力を解いたのだろう。

 怪物とやっと目が合う。

「なあ、お前の正義暴力と俺の正義、どちらが本当の正義なのか、試そうか」

「げけいjxっ。ふぉjdrbf、kskぢjdんd!(ふざけやがって。処刑だ、全員処刑だ!)」

 シンパンの隠者で隠れていたことに対して、怒り狂っている怪物。

 別にふざけていた訳じゃ無いんだが、怪物に説明する義理はない。

 最短距離で突進してくる怪物は、まるで重機の暴走かのように、触れるモノ、進行方向にあるモノ全てを壊す勢いだった。

 あんなモノに突っ込まれたら、生きていられないんだろうな。

 と、考えられるくらい冷静でいて余裕がある。

 というのも、

「これで終わりだ、大罪人——東京駅の怪物よ」

 頭上の天秤は測りを終え、片方は言い逃れ出来ぬほどの罪深く、もう片方は罪を知らない赤子のように軽かった。

「剣よ、大罪人に罰を」

 目の前に現れる巨大な剣。

 剣先はこれから断罪する者に向けられている。

 怪物の目にも剣が写っているのにも関わらず、止まることはなかった。

 どっちの正義が正しいのか。

 それを証明するかのように交差する。

「行け」

「hdけhldbsk!(処刑処刑処刑処刑処刑!)」



 —————————ザシュ。



「………hdけい、hxkskwkj?(………俺の正義が、暴力正義が負けた?)」

 剣は的確に怪物の首を捉え、胴体と切り離した。

 落ちた首は最後にそう呟き、体と共に灰と消える。

「………ふぅ、これで終わりだよな?」

「そう、これで終わり」

 怪物は死に、この東京駅も消える。

 捕まっていた人達も助かり、辛い記憶もここにいた記憶さえ消えてなくなる。

 感謝はされないけど、父さんや母さんのように正義は成せた。

「………………疲れた」

 そう俺は呟き、意識を手放した。

 だから、この後どうなったのかは知らない。

 後日京介に聞くまでは。

 京介に聞いたのが悪かったのだろう、ちょっと意味が分からない点がある。

 美妃先輩かシンパンに聞けば良かった。

 だって、京介、

「俺も何か帰りに!」

 って言うんだから。


 

 

 
 
 
 

 

 





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