双子西遊記 ~愛と教えの物語~

猩々

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第23話 安仁の婚儀

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 翌日、鬼の里は祝祭ムードに包まれていた。安仁アンジンと猪八戒の婚儀は、里にとって久しぶりの慶事だった。

 朝早くから、安仁は支度に追われていた。里の女性たちが総出で花嫁の身支度を手伝っている。

「安仁様、お美しゅうございます」

「本当にお幸せそうで」

 安仁は伝統的な鬼族の婚礼衣装に身を包んでいた。深紅と金で彩られた美しい着物に、頭には鬼族伝統の飾りを着けている。額の角も、特別な装飾で美しく飾られていた。

「ううむ、恥ずかしいのう...」

 安仁は鏡を見ながらつぶやいた。年頃の花嫁らしい美しさがそこにあった。

 一方、猪八戒も婚礼の衣装に身を包んでいた。その美貌はさらに際立つ。

「婿殿、緊張されているのですか?」

 沙悟浄が茶化すように尋ねる。

「当然です。人生で一番大切な日ですから」

 猪八戒の表情は真剣だった。安仁の夫となることの責任と喜びが入り混じっている。

 婚儀は里の神殿で行われた。先祖と神に誓う厳格な式である。

 神殿には里の人々が集まり、見守っている。三蔵も女性の礼装で参列していた。すらりとした体に凛々しい顔立ち。その美しさに、孫悟空は目を奪われた。

「悟空?」

「い、いや...何でもない」

 孫悟空は慌てて目をそらした。

 式が始まると、安仁と猪八戒は神殿の前に並んで立った。

「我ら、先祖の霊と神々の前にて誓う」

 神官の厳かな声が響く。

「安仁よ、汝は猪八戒を夫として、生涯を共にすることを誓うか」

「はい...誓うのじゃ」

 安仁の声は小さかったが、はっきりとしていた。

「猪八戒よ、汝は安仁を妻として、生涯を守り抜くことを誓うか」

「はい、誓います」

 猪八戒の声には確固たる決意が込められていた。

「では、指輪の交換を」

 鬼族の伝統に従い、二人は特別な指輪を交換した。鬼族の長に代々受け継がれてきた、神聖な指輪である。

「これをもって、二人は正式に夫婦となった」

 神官の宣言と共に、里の人々から祝福の声が上がった。

「おめでとうございます!」

「安仁様、お幸せに!」

 安仁は頬を染めながら、猪八戒の隣に立っていた。猪八戒は安仁を見つめ、優しく微笑んだ。

 式の後、祝宴が開かれた。里中が二人の幸せを祝っている。

 宴もたけなわになった頃、安仁は三蔵のもとへやってきた。

「姉上、今日は来てくださってありがとう」

「おめでとう、安仁。本当に美しい花嫁です」

「照れるのう...でも、とても幸せなのじゃ」

 安仁の笑顔は、心からの幸福に満ちていた。

「のう、姉上…このまま…この里で共に暮らさぬか?」

 安仁の甘えるような申し出に、三蔵は微笑んだあと、申し訳なさそうに首を振った。

「ありがとう、安仁。でも、僕には果たすべき使命があります」

 三蔵は決意を込めて説明した。

「天竺でお経を取得して、弥龍お兄様にお渡ししたいのです。そうすれば、弥龍お兄様の地位が高まり、鬼の保護の法案化の実現に役立つでしょう」

 大切な妹の役に立ちたい。弥龍へ恩返しをしたい気持ちもあった。

「姉上…」

 安仁もまた、決意した。

「ならば、八戒と悟浄をお供につけるのじゃ。姉上をお守りするために」

「えっ...でも、新婚なのに」

 三蔵が困惑する中、猪八戒が前に出た。

「承知いたしました。三蔵様をお守りするのは、僕たちの使命です」

 沙悟浄も頷く。

「任せとけ」

 安仁は決意したように三蔵の手を取った。

「儂は妹として、姉上に大切なことをお教えせねばならぬ」

「大切なこと?」

「姉上の本当のお名前は『月人ユエレン』というのじゃ。母上がつけてくださった、美しい名前じゃ」

 三蔵は驚いた。

「月人...それが僕の本当の名前」

「うむ。それでは、二人で両親の墓参りをするのじゃ」

 安仁は三蔵の手を取り、里の奥にある墓地へ向かった。そこには、双子の両親が眠っている。
 
 安仁は、姉に一目会うことが叶えば、それ以上を求めるつもりはなかった。しかし、この数日、三蔵とともに過ごした時間が、姉妹の絆を強く実感させた。
 別れの前に、家族のひとときを味わいたかった。

 月明かりが静かに墓地を照らしていた。二基の墓石が並んで立っている。

「父上、母上」

 安仁が深々と頭を下げた。

「姉上と会うことができました」

 三蔵も隣で頭を下げる。

「はじめまして...お父さん、お母さん。僕は月人です」

 墓前で、姉妹は静かに祈りを捧げた。

「父上、母上、儂は今日、八戒と夫婦の契りを結びました。そして姉上との絆を深めることができました」

「どうか安仁を...そして里の皆をお守りください」

 二人の祈りが、静かな墓地に響いた。風が優しく吹き抜け、まるで両親が二人を見守っているかのようだった。

「姉上、本当は儂もついて行きたい。しかし里を離れることはできぬ。必ずまた、戻ってきてほしい」

 宝石がなければ、たちまち栄養不足に陥ってしまう。安仁たち純血の鬼には、里が命をつなぎ止める唯一の居場所であった。
 三蔵は、安仁の思いとともに旅立つ覚悟を決めた。

「はい。きっと」

 安仁が温かな余韻にひたりつつ夫婦の部屋に入ると、猪八戒はすでに床入りの準備を終えていた。

「八戒、折角夫婦になったが、明日からまたしばらくお別れじゃのう。」

 安仁は寝台に腰掛けて寂しそうにつぶやいた。

「ええ、僕も別れがたいのですが…ともかく、明日は早いのですから、早速始めましょう。」

 八戒は照れ隠しに咳払いをしてから、安仁の隣に腰を下ろした。

「何を始めるのじゃ?寝るのではないのか?」

 安仁は首を傾げた。

「まあ、寝るとも言いますが」

 猪八戒は安仁を優しく押し倒した。

「八戒、ま、まさか…」

 安仁は顔を真っ赤にして驚く。

「世継ぎを生み育てることも、長の重要なつとめですから」

 二人の夜は更けていった
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