双子西遊記 ~愛と教えの物語~

猩々

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第24話 三蔵の出立

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 翌朝、三蔵一行が里を出発する時がやってきた。

 朝早くから、里の人々が見送りに集まっていた。

「三蔵様と孫悟空様のおかげで、安仁アンジン様がお元気になられました」

「八戒兄ちゃん、悟浄兄ちゃん、頑張ってきてね」

 里の人々が口々に感謝と分かれの言葉を述べる中、安仁は大切な人達との別れの風景を見つめていた。
 長として生涯を里に捧げる運命。それは安仁の誇りそのもの。それでも、一人残る我が身がもどかしかった。

「八戒、悟浄」

 安仁が二人を呼び寄せる。

「姉上をよろしく頼む」

 安仁は、精一杯の笑顔で別れを告げる。

「承知いたしました」

 猪八戒は深々と頭を下げた。

「任せとけ」

 沙悟浄も力強く答えた。

「…安仁、八戒先生、出発までお二人でお話しください」

 三蔵が気を利かせて、安仁と猪八戒を二人きりにしてくれた。

 安仁は三蔵に頭を下げるやいなや、猪八戒の腕を取り、ずんずんと人気のない場所へと向かった。猪八戒も素直に従った。最後にもう少しだけ、二人の時間を過ごしたかった。

「八戒...」

「安仁」

 二人は見つめ合った。四年も離れ離れで、やっと再会できた。そして再びの別れである。自らの決断とはいえ、切なさが胸を締め付ける。

「昨日の花嫁姿の安仁は...いつにも増して美しかった」

 猪八戒がそっと呟く。

「そして夜は僕の腕の中で…」

 うっとりとした面もちで思いを馳せる猪八戒に、安仁の頬が真っ赤になった。

「も、もう...そのようなことを」

「夢のように幸せでした」

 猪八戒の目が輝いている。

「...儂もじゃ」

 安仁はますます恥ずかしそうに俯く。

 猪八戒が安仁の手を優しく握る。

「本当は離れたくありません。でも...」

「分かっておる」

 安仁が小さく頷く。

「儂の代わりに、姉上のお役に立つのじゃ」

「はい。必ず三蔵様を天竺にお送りします」

 猪八戒は安仁の瞳を見つめた。

「手紙を書きます。安仁のこと、里のこと、何でも教えてください」

「うむ。待っておる」

 安仁は猪八戒を見上げた。

「必ず戻ってくるのじゃぞ」

「ええ、必ず」

 猪八戒が安仁の頬に手を触れる。その優しい手つきに、安仁の頬が温かくなった。

 言葉よりも気持ちを伝えたくて、安仁は背伸びして猪八戒にそっと口づけた。

「…待っておるぞ」

 安仁の言葉に、猪八戒は力強く頷いた。

「はい。愛しています、安仁」

 ついに別れの時間がやってきた。一行は馬に荷物を積み、出発の準備を整えている。

「安仁、元気でな」

 沙悟浄が安仁の頭を軽く撫でた。幼い頃からの習慣だった。

「悟浄も気をつけるのじゃよ」

「悟空殿、姉上をお願いいたします」

 安仁は深々と頭を下げた。

「ああ、任せろ」

 孫悟空が頼もしく答える。

 最後に、安仁は三蔵と向き合った。

「姉上、また必ずお会いしましょうぞ」

「はい。今度は、もっと長く一緒にいられますように」

 三蔵の言葉に、安仁は微笑んだ。

「それまで、お互い頑張るのじゃ」

「行ってまいります」

 三蔵たちは里の門をくぐり、天竺への旅路に向かった。安仁は最後まで手を振り続けていた。

 安仁の瞳には涙が光っていた。ようやく出会えた姉たちとの別れは、想像以上に辛いものだった。

 しかし、安仁の心には希望があった。姉が無事に使命を果たし、皆が元気に戻ってきてくれることを信じて。

 里の人々が安仁を囲むように集まってきた。

「長、お寂しゅうございましょうが、皆がついております」

「安仁様、私たちがお支えします」

 里の人々の温かい言葉に、安仁は涙を拭いて振り返った。

「ありがとう、皆の者。儂には、お前たちがいるのじゃな」

 朝日が安仁の後ろ姿を照らしていた。愛する人たちを送り出し、長として、里を守り続ける決意を胸に。

 三蔵と猪八戒、沙悟浄、孫悟空は、新たな旅路を歩んでいた。それぞれの心に、安仁への想いを抱きながら。
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