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61 夢を叶えるために
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「え?……まさか、え?」
コンスタンとエクトル、ジュストが駆け寄ると、ジャンの口から手を離した編入生が頭を下げた。
「シルヴァン・ミュレーと申します。伯爵家です。」
「シルヴァン……。」
「ジャン様。とりあえず、料理を置いてもよろしいですか?」
シャルル改めシルヴァンは柔らかく笑うと言う。
ジャンは、涙を乱暴に拭いながら嫌そうに顔をしかめた。
「ジャン様ってなんですか!」
「私の方が家格が下だから当然でしょう。」
「……絶交しますよ。」
「それは、困るな。」
料理を、二年前シャルルが座っていた席に置くとシルヴァンは振り返った。
「心配をかけたね、ジャン。」
「本当に、本当にご無事で良かった。」
また涙をこぼし始めたジャンを囲んで、コンスタンとエクトルもシルヴァンを見つめてふっと息を吐き、顔を見合わせて笑った。
その様子をほっこりと見ていたジュストは、振り返ってがっくりと項垂れた。
シリルは、こちらの感動の再会を気にせず、リュシルを抱き込んでいる。リュシルは、シリルの腕のなかで、シルヴァンの方を見て嬉しそうに笑っていた。
「殿下、それはもう駄目です。」
見かねて声をかけたジュストに、シリルから不機嫌な視線が返ってくる。
全員の視線がそちらに向けられた。
「ああ、うん。シリル殿下。駄目だと思います。」
シルヴァンが声を上げる。首を傾げるリュシルに聞かせるように、
「年頃の男女は、例え婚約者でもそのように触れあいません。」
と言った。
「リュカの姿の時は見逃していたけれど、リュシルはどう見ても女性ですからね。リュカ…じゃないリュシルがそういうことに疎いのをいいことに、くっつきすぎなんですよ。」
ジュストも、更に言い募るとシリルが口を開いた。
「無理。七日間も会えなかったとか、もう死ぬかと思った。」
「はい、シリル殿下。私も会いたかったです。」
離す気の全く無いシリルに呆れながら、全員で席に着く。
「私は二年ぶりですよ、シリル殿下。」
「ああ、シルヴァン。元気そうで何より。」
「この部屋に来るのも大変だったのに、シリル殿下は相変わらずですね。」
くすくすと嬉しそうにシルヴァンが笑う。そのシルヴァンを見てジャンが笑っていた。
食べましょう、とリュシルに言われてようやくシリルはリュシルを離して席に着く。
「やっと、戻ったな。」
シリルがふっと笑って言い、全員が色んな思いを噛み締めながら、一番安い食堂の料理を堪能した。
「で、どうなされるのです?」
食べ終わったらまた、ソファでリュシルを膝の上に抱えたシリルに、ジュストが呆れた声を上げる。
「リュシルが女だってこと、気付いてたのか?」
「気付きますよ。シリル殿下に隠す気が無さすぎて。」
「お前の前では何にも考えて無いからなあ。」
苦言を呈そうとした出鼻をくじかれてジュストは黙りこんだ。
「……リュシルと、ずっと一緒にいたい。」
ぽつりとシリルが呟く。
「伯爵令嬢なら、大丈夫じゃないですか?候補に名前を上げても。」
ジュストはそっぽを向きながら答える。ぱっとシリルが顔を輝かしたのは、見なかった。
ベルナール伯爵夫人のことだ、このことも込みでリュシルを養女にしたに違いない。
「リュシル、これからもずっと、私のそばにいてくれないか?」
シリルは祈るように言葉を紡いだ。
「もちろん、喜んでお仕え致します。」
「隣に立っていて欲しい。」
「はい、もちろん。」
きちんと通じていない様子に、ジュストが見かねて口を出す。
「リュシル。隣に、だぞ。いいのか?」
「はい。」
「王太子妃になるってことだぞ。」
やっとリュシルは目を見開いた。けれど、あっさり頷く。
「シリル殿下がお望みなのでしたら。ダンスは踊れませんけれど。」
シリルは抱く手に力を込めた。
「私の願いは、ずっとリュシルと一緒にいることだ。」
「私も、シリル殿下のお側から離れたくないと、しみじみ思いました。」
二人の気持ちが固まっているのなら。それならいいか、と言いかけてジュストは口を押さえる。
シルヴァンが突っ込んでくれた。
「例え婚約者同士でも、膝の上に抱えてはいけない、と思います。婚約もまだです。」
弟だった人の言を聞きながらシリルは思う。
まだ今から、面倒なことはたくさんあるだろう。けれど、過ごしやすい場所と仲間に恵まれた。大切な伴侶候補にも会えた。学園生活も、満喫した。
私は、幸せなのだろう。
これからも、リュシルと共に在るという夢を叶えるために努力しよう。
終わり
コンスタンとエクトル、ジュストが駆け寄ると、ジャンの口から手を離した編入生が頭を下げた。
「シルヴァン・ミュレーと申します。伯爵家です。」
「シルヴァン……。」
「ジャン様。とりあえず、料理を置いてもよろしいですか?」
シャルル改めシルヴァンは柔らかく笑うと言う。
ジャンは、涙を乱暴に拭いながら嫌そうに顔をしかめた。
「ジャン様ってなんですか!」
「私の方が家格が下だから当然でしょう。」
「……絶交しますよ。」
「それは、困るな。」
料理を、二年前シャルルが座っていた席に置くとシルヴァンは振り返った。
「心配をかけたね、ジャン。」
「本当に、本当にご無事で良かった。」
また涙をこぼし始めたジャンを囲んで、コンスタンとエクトルもシルヴァンを見つめてふっと息を吐き、顔を見合わせて笑った。
その様子をほっこりと見ていたジュストは、振り返ってがっくりと項垂れた。
シリルは、こちらの感動の再会を気にせず、リュシルを抱き込んでいる。リュシルは、シリルの腕のなかで、シルヴァンの方を見て嬉しそうに笑っていた。
「殿下、それはもう駄目です。」
見かねて声をかけたジュストに、シリルから不機嫌な視線が返ってくる。
全員の視線がそちらに向けられた。
「ああ、うん。シリル殿下。駄目だと思います。」
シルヴァンが声を上げる。首を傾げるリュシルに聞かせるように、
「年頃の男女は、例え婚約者でもそのように触れあいません。」
と言った。
「リュカの姿の時は見逃していたけれど、リュシルはどう見ても女性ですからね。リュカ…じゃないリュシルがそういうことに疎いのをいいことに、くっつきすぎなんですよ。」
ジュストも、更に言い募るとシリルが口を開いた。
「無理。七日間も会えなかったとか、もう死ぬかと思った。」
「はい、シリル殿下。私も会いたかったです。」
離す気の全く無いシリルに呆れながら、全員で席に着く。
「私は二年ぶりですよ、シリル殿下。」
「ああ、シルヴァン。元気そうで何より。」
「この部屋に来るのも大変だったのに、シリル殿下は相変わらずですね。」
くすくすと嬉しそうにシルヴァンが笑う。そのシルヴァンを見てジャンが笑っていた。
食べましょう、とリュシルに言われてようやくシリルはリュシルを離して席に着く。
「やっと、戻ったな。」
シリルがふっと笑って言い、全員が色んな思いを噛み締めながら、一番安い食堂の料理を堪能した。
「で、どうなされるのです?」
食べ終わったらまた、ソファでリュシルを膝の上に抱えたシリルに、ジュストが呆れた声を上げる。
「リュシルが女だってこと、気付いてたのか?」
「気付きますよ。シリル殿下に隠す気が無さすぎて。」
「お前の前では何にも考えて無いからなあ。」
苦言を呈そうとした出鼻をくじかれてジュストは黙りこんだ。
「……リュシルと、ずっと一緒にいたい。」
ぽつりとシリルが呟く。
「伯爵令嬢なら、大丈夫じゃないですか?候補に名前を上げても。」
ジュストはそっぽを向きながら答える。ぱっとシリルが顔を輝かしたのは、見なかった。
ベルナール伯爵夫人のことだ、このことも込みでリュシルを養女にしたに違いない。
「リュシル、これからもずっと、私のそばにいてくれないか?」
シリルは祈るように言葉を紡いだ。
「もちろん、喜んでお仕え致します。」
「隣に立っていて欲しい。」
「はい、もちろん。」
きちんと通じていない様子に、ジュストが見かねて口を出す。
「リュシル。隣に、だぞ。いいのか?」
「はい。」
「王太子妃になるってことだぞ。」
やっとリュシルは目を見開いた。けれど、あっさり頷く。
「シリル殿下がお望みなのでしたら。ダンスは踊れませんけれど。」
シリルは抱く手に力を込めた。
「私の願いは、ずっとリュシルと一緒にいることだ。」
「私も、シリル殿下のお側から離れたくないと、しみじみ思いました。」
二人の気持ちが固まっているのなら。それならいいか、と言いかけてジュストは口を押さえる。
シルヴァンが突っ込んでくれた。
「例え婚約者同士でも、膝の上に抱えてはいけない、と思います。婚約もまだです。」
弟だった人の言を聞きながらシリルは思う。
まだ今から、面倒なことはたくさんあるだろう。けれど、過ごしやすい場所と仲間に恵まれた。大切な伴侶候補にも会えた。学園生活も、満喫した。
私は、幸せなのだろう。
これからも、リュシルと共に在るという夢を叶えるために努力しよう。
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