【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第一章 初めての幸せ

6 皇子 2

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 たぶん、無理と言われていたのに、四日目の朝に様子を見に行くと、ぽっかりと目を開けていた。
 きょろきょろと右目を動かし、何かに納得したようにこちらを見つめている。
 ああ、左目に気付いたかな?
 水を飲ませると、むせかえった。急ぎすぎたか。背中を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。なんだこれ、可愛いな。
 後から入ってきた常陸丸ひたちまるが五月蝿い。ベッドに戻すと、ほぅと息を吐いたので、まだ座る姿勢は辛かったのだろう。布団を掛けようとすると身動ぎした。
 そのとたんに、ひっと喉が引き攣る音がして、涙を滲ませている。

「痛いな、よしよし」

 腕をさすってやると呼吸が落ち着いてきた。常陸丸ひたちまるに痛み止めを持ってこいと言うと、また怒っている。

「殿下、いい加減になさってください。なぜ、壊れかけの戦闘人形ドールの手当てをしていらっしゃるのです? 本当に、それは危険なんですよ! 動けないうちに、壊してしまってください」

 腕の中の戦闘人形ドールが微かに頷くのが見えた。聞いているのか。壊れるとか壊すとか、違うだろ? こんなに、人間らしい反応を示すのに。

「壊れかけとか壊すとか、何を言っているんだ? 手当ての時にお前も見ただろ。人間だったじゃないか」

 そのまま腕をさすっていると、安心しきったような顔をして目を閉じた戦闘人形ドールを、銃を向けたままの常陸丸ひたちまるが苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

 
 戦闘人形ドールの部屋から何か大きな音がしたと報告が来て、慌てて向かう。見張りは扉の前に立ててあるが、中には入らないように言ってある。治療をしたり、オムツを替えたり、点滴を替えるときは担当の医療者と、俺か常陸丸ひたちまるが一緒に入るようにしている。戦闘人形ドールに怯えている者が多いので、丁度いい。
 中に入ると、水差しが割れていた。水を飲もうとしたのか、元気になってきたな、と少し嬉しい。
 常陸丸ひたちまるに水を頼むとまた、怒った。本当にこいつは五月蝿い。

「駄目ですよ、殿下。それはもう、動けるんですよ。二人にさせられるわけないじゃないですか」

 うんうんと頷く戦闘人形ドール。お前が頷くんかい、と言いたくなる。
 水が飲みたかったのだろう? と聞くと、またうんうんと頷く。可愛いな、これ。
 頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めてうとうとし始めた。
 水は、飲んでおいた方がいいだろうと飲ませる。ああ、また寝てしまうな、と思ったとき、微かな声が聞こえた。

「おいしい……」

 え? と顔を見たときにはもう、うっすらと笑みを浮かべて眠りについていた。そしてまた、常陸丸ひたちまるが苦虫を噛み潰したような顔で立っていた。
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