【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第一章 初めての幸せ

5 皇子 1

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 戦争の最後に、戦闘人形ドールを拾った。もう、二年ほど前から皇国の勝ちは間違いなく、後は如何にお互いの犠牲を少なくおさめるかの段階に入っていた。
 帝国の武器は旧式で、数も少なく、何故早く降伏してくれないのか不思議でしかなかった。下手をしたら、殲滅戦でしかない戦場は、気持ちのいいものではない。
 ただ、帝国の戦闘人形ドールには手を焼いた。小さな体で、ものすごい力があったり、人間離れした素早さだったりする。致命傷を受けてからも反撃してくるので、確実に息の根を止めろと通達がきていた。
 
 爆発音と共に腕の中に飛び込んできた戦闘人形ドールを、驚いて受け止めてしまった。左腕がぶっ飛んで、脇腹もぐちゃぐちゃに潰れている。破片が飛んだのか左目の上がぐっさり切れていた。
 思わず、この小さいのが戦闘人形ドールなのか、と抱き直すと、ぴくり、と右手が動いて軍服を握る。
 あったかい……と聞こえた。
 驚いて腕の中に目をやると、少し微笑んで目を閉じるのが見えた。
 あったかいのか、俺が?
 初めて言われたな、と驚く。なんだ、幸せそうな顔して、ずるいな。

「殿下、お離しください。それは戦闘人形ドールです」

 常陸丸ひたちまるの声がした。戦闘人形ドールの頭に銃を突き付けている。

「大丈夫だ、もう意識は無い」
戦闘人形ドールですよ。息の根を止めろ、です。油断しちゃいけません。早く離して。撃てません」
「いや、連れて帰る」
「馬鹿なこと言ってないで、早くおろせ!」
「本気だ。撃つならこのまま撃て。俺は離さん」
「はあ?」
戦闘人形ドールを調べるとでも言っておけばいいだろ」

 護衛兼補佐の常陸丸ひたちまるさえ黙らせれば、後はこちらのもの。俺は、皇子で総大将だからな。
 その日、帝国は全面降伏し、後始末のために借り上げた本陣のビルの一室を戦闘人形ドールの部屋にした。軍医に診せたが、たぶん無理です、という。とりあえず、今できることだけやってくれたらいいと宥めて、治療させる。
 戦争の後始末は、本当に面倒くさくて、疲れたら、誰もいない戦闘人形ドールの部屋に逃げ込むのが日課になった。様子も見られて一石二鳥だ。
 
 もう、ほんと戦争はじめた人が後始末してほしい。何で俺がこんなことしなきゃならんの、とか書類多すぎ、とか愚痴ってみる。
 戦闘人形ドールは、熱が高くて、はあはあと苦しそうに息をしているだけだが、気まぐれに、濡らしたタオルを額に置いてみると、すう、と気持ち良さそうな顔をする。
 冷たいのが気持ちいいのか、なんて言いながら側にいる間だけでも、タオルを乗せてやった。
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