【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第二章 人として生きる

24 緋色 14

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 赤虎せきとらの手に銃が握られているのを見て、ほとんど条件反射でその手を撃った。

「あああああ!」

 赤虎せきとらが大袈裟に悲鳴を上げる。五月蝿い奴だ。
 ベッドの辺りの人だかり。その軍人たちを見て、常陸丸ひたちまる利胤としたねが躊躇いなく足を撃っていく。呻き声を上げてうずくまるのを、近付いて蹴り飛ばした。
 白衣の二人は、成人なるひとに被さっている。守っていたのか?と見ると、足から流れる血が目に入った。

「ひいろ」

 頭が沸騰しかけたところに掠れた高めの声が聞こえる。

成人なるひと

 近寄ると、白衣の二人が震えながら見上げてくる。
 構わず手を伸ばして抱きしめた。

「ちょっと遅かったな。すまん」
「帰る」
「ああ、帰ろうか」

 骨が折れるような音がして、赤虎せきとらの悲鳴が聞こえた。
 
「じいさま、その辺で」

 常陸丸ひたちまるの声がする。俺より先に、利胤としたねが切れたか。

「この怪我の治療は、難しいか。とりあえず、痛み止めは使えるか」
「は、は。あの」
成人なるひとの状態を言え」
「筋弛緩剤で足の自由を奪っております。それが切れるまで麻酔は待った方が良いかと」

 守っていたかと思ったが、許せる範囲では無いな。とりあえず一発ずつ平手でぶん殴る。成人なるひとを横向きに抱き上げた。

「死にたくなければ、外へ出ろ。この建物一つで手を打つ」

 何のことか分からない、という顔をしているが知ったことではない。さっさと研究所と呼ばれる建物を出た。
 常陸丸ひたちまるの声が建物内に響く。放送室を使ったようだ。

「この建物は間もなく爆破する。死にたくなければ外へ出ろ」

 利胤としたねが、ずるずると赤虎せきとらを引き摺って出てきた。痛い、痛いと喚いている。ある程度建物から離れて手を離すと、急いでこちらに寄ってきた。

「じいじ」
成人なるひと。じいじが馬鹿じゃった。皇族だろうが何だろうが、屋敷で止めればよかった。すまんかった。痛い思いをさせた」
「帰る」
「すぐ終わるからな。帰ろうな」

 成人なるひとは痛みのあまり、気を失うこともできないのだろう。脂汗を流している。
 何人か白衣の人間が建物の外へ出てきた。
 常陸丸ひたちまるに追い立てられながら、足を撃たれた軍人たちも支え合って出てくる。置いてくれば良いものを、相変わらず優しいことだ。

「この建物に、他に人はいないな。見知った顔は全部あるか」

 常陸丸が確認している。

「あの、どういうことでしょうか」

 おずおずと白衣の一人が常陸丸に声をかけた。

「放送の通りだ。生き物は出したな」
「え。あ、はい。しかし、ここには貴重な資料が」

 建物の中に入っていった利胤としたねが帰ってきた。小型の爆弾をぶら下げていったから、仕掛けてきたのだろう。
 黙って三人で、持ってきたすべての手榴弾を投げ込んだ。轟音と共に建物が崩れる。何かに火がついて燃え始めた。
 白衣の奴らが悲鳴を上げていたが、この程度で納めたのだから、我慢強くなったと褒めてほしいくらいだ。
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