42 / 1,325
第二章 人として生きる
24 緋色 14
しおりを挟む
赤虎の手に銃が握られているのを見て、ほとんど条件反射でその手を撃った。
「あああああ!」
赤虎が大袈裟に悲鳴を上げる。五月蝿い奴だ。
ベッドの辺りの人だかり。その軍人たちを見て、常陸丸と利胤が躊躇いなく足を撃っていく。呻き声を上げてうずくまるのを、近付いて蹴り飛ばした。
白衣の二人は、成人に被さっている。守っていたのか?と見ると、足から流れる血が目に入った。
「ひいろ」
頭が沸騰しかけたところに掠れた高めの声が聞こえる。
「成人」
近寄ると、白衣の二人が震えながら見上げてくる。
構わず手を伸ばして抱きしめた。
「ちょっと遅かったな。すまん」
「帰る」
「ああ、帰ろうか」
骨が折れるような音がして、赤虎の悲鳴が聞こえた。
「じいさま、その辺で」
常陸丸の声がする。俺より先に、利胤が切れたか。
「この怪我の治療は、難しいか。とりあえず、痛み止めは使えるか」
「は、は。あの」
「成人の状態を言え」
「筋弛緩剤で足の自由を奪っております。それが切れるまで麻酔は待った方が良いかと」
守っていたかと思ったが、許せる範囲では無いな。とりあえず一発ずつ平手でぶん殴る。成人を横向きに抱き上げた。
「死にたくなければ、外へ出ろ。この建物一つで手を打つ」
何のことか分からない、という顔をしているが知ったことではない。さっさと研究所と呼ばれる建物を出た。
常陸丸の声が建物内に響く。放送室を使ったようだ。
「この建物は間もなく爆破する。死にたくなければ外へ出ろ」
利胤が、ずるずると赤虎を引き摺って出てきた。痛い、痛いと喚いている。ある程度建物から離れて手を離すと、急いでこちらに寄ってきた。
「じいじ」
「成人。じいじが馬鹿じゃった。皇族だろうが何だろうが、屋敷で止めればよかった。すまんかった。痛い思いをさせた」
「帰る」
「すぐ終わるからな。帰ろうな」
成人は痛みのあまり、気を失うこともできないのだろう。脂汗を流している。
何人か白衣の人間が建物の外へ出てきた。
常陸丸に追い立てられながら、足を撃たれた軍人たちも支え合って出てくる。置いてくれば良いものを、相変わらず優しいことだ。
「この建物に、他に人はいないな。見知った顔は全部あるか」
常陸丸が確認している。
「あの、どういうことでしょうか」
おずおずと白衣の一人が常陸丸に声をかけた。
「放送の通りだ。生き物は出したな」
「え。あ、はい。しかし、ここには貴重な資料が」
建物の中に入っていった利胤が帰ってきた。小型の爆弾をぶら下げていったから、仕掛けてきたのだろう。
黙って三人で、持ってきたすべての手榴弾を投げ込んだ。轟音と共に建物が崩れる。何かに火がついて燃え始めた。
白衣の奴らが悲鳴を上げていたが、この程度で納めたのだから、我慢強くなったと褒めてほしいくらいだ。
「あああああ!」
赤虎が大袈裟に悲鳴を上げる。五月蝿い奴だ。
ベッドの辺りの人だかり。その軍人たちを見て、常陸丸と利胤が躊躇いなく足を撃っていく。呻き声を上げてうずくまるのを、近付いて蹴り飛ばした。
白衣の二人は、成人に被さっている。守っていたのか?と見ると、足から流れる血が目に入った。
「ひいろ」
頭が沸騰しかけたところに掠れた高めの声が聞こえる。
「成人」
近寄ると、白衣の二人が震えながら見上げてくる。
構わず手を伸ばして抱きしめた。
「ちょっと遅かったな。すまん」
「帰る」
「ああ、帰ろうか」
骨が折れるような音がして、赤虎の悲鳴が聞こえた。
「じいさま、その辺で」
常陸丸の声がする。俺より先に、利胤が切れたか。
「この怪我の治療は、難しいか。とりあえず、痛み止めは使えるか」
「は、は。あの」
「成人の状態を言え」
「筋弛緩剤で足の自由を奪っております。それが切れるまで麻酔は待った方が良いかと」
守っていたかと思ったが、許せる範囲では無いな。とりあえず一発ずつ平手でぶん殴る。成人を横向きに抱き上げた。
「死にたくなければ、外へ出ろ。この建物一つで手を打つ」
何のことか分からない、という顔をしているが知ったことではない。さっさと研究所と呼ばれる建物を出た。
常陸丸の声が建物内に響く。放送室を使ったようだ。
「この建物は間もなく爆破する。死にたくなければ外へ出ろ」
利胤が、ずるずると赤虎を引き摺って出てきた。痛い、痛いと喚いている。ある程度建物から離れて手を離すと、急いでこちらに寄ってきた。
「じいじ」
「成人。じいじが馬鹿じゃった。皇族だろうが何だろうが、屋敷で止めればよかった。すまんかった。痛い思いをさせた」
「帰る」
「すぐ終わるからな。帰ろうな」
成人は痛みのあまり、気を失うこともできないのだろう。脂汗を流している。
何人か白衣の人間が建物の外へ出てきた。
常陸丸に追い立てられながら、足を撃たれた軍人たちも支え合って出てくる。置いてくれば良いものを、相変わらず優しいことだ。
「この建物に、他に人はいないな。見知った顔は全部あるか」
常陸丸が確認している。
「あの、どういうことでしょうか」
おずおずと白衣の一人が常陸丸に声をかけた。
「放送の通りだ。生き物は出したな」
「え。あ、はい。しかし、ここには貴重な資料が」
建物の中に入っていった利胤が帰ってきた。小型の爆弾をぶら下げていったから、仕掛けてきたのだろう。
黙って三人で、持ってきたすべての手榴弾を投げ込んだ。轟音と共に建物が崩れる。何かに火がついて燃え始めた。
白衣の奴らが悲鳴を上げていたが、この程度で納めたのだから、我慢強くなったと褒めてほしいくらいだ。
2,085
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる