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第四章 西からの迷い人
14 看病 成人
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「べちゃべちゃだな。」
緋色が右腕無しの人の額からタオルを持ち上げて洗面器に浸け、ぎゅう、と固く絞った。
「お前も、文句言っていいぞ。」
ベッドの上で右腕無しの人が緊張している。緋色が来ると休めないから、もう帰ったら?
「俺のことは気にするな。」
そう言って俺の額にちゅってする。あ、口も。口もちゅーする。
「あれ?緋色殿下?」
生松が食事を持って入ってきた。右腕無しの人が目を覚ましてから二日経っている。
「様子を見に来た。どうだ?」
「順調に回復してますよ。お粥も全て食べられるようになったし、雑炊にしてもらいました。お口に合うといいのですが。」
俺はベッド横の机に置いてもらった雑炊を覗きこむ。熱そうね。ふーふーしてあげるからね。
「そろそろ額のタオルはいらないんじゃないか。成人に任せてたら、びちょびちょだったぞ。」
「あはは。楽しそうだったので任せてましたが、そうですね、そろそろ熱も下がってきましたね。」
そう?まだ熱くない?俺は、右腕無しの人の額に手を置く。んー?分かりにくい。身を乗り出して額に額をくっつけようとしたら、緋色の手が俺の顔をばしっと掴んだ。
「あれ?」
「体温計で計れ。」
「くっつけたら分かるかも。」
「俺以外とくっつけるのは禁止だ。」
「なんで?」
「なんでも。」
ふーん。ま、いいけど。
そのまま俺がベッドから少し離された間に、生松がくすくすと笑いながら右腕無しの人を起こして枕を背中に挟んで座らせた。ベッドの上に机を出して雑炊を乗せ、左手にスプーンを握らせている。
「ご自分で食べられそうですか?」
ゆっくりと頷くのを見て、がっかりする。食べさせてあげるのに。
「がっかりすんな。」
「では、成人は見ていてあげてください。困ったら助けてあげて。殿下は一度出ましょうか。」
「は?」
「殿下がいると、落ち着いて食べられないでしょう。」
そうそう。
後は俺に任せて。
緋色は納得いかない顔で生松に連れていかれた。
右腕無しの人が、ほっとしたのが分かる。何だか下手くそな左手で雑炊を食べ始めた。
「ふーふーしなくていい?」
って聞いたら、ちょっと笑う。
水を飲みながら、何口か食べたけどお粥みたいには食べられなかったみたいで、時間がかかってもあまり減っていなかった。
「雑炊、食べにくい?」
その匂いは広末のご飯じゃないから、濃いのかも?
右腕無しの人は、困ったように笑って、もう少し食べようとする。
「残していいよ。」
「まだ死ねへんから……。」
うつむいた口から、寝言以外の言葉が初めてこぼれた。
緋色が右腕無しの人の額からタオルを持ち上げて洗面器に浸け、ぎゅう、と固く絞った。
「お前も、文句言っていいぞ。」
ベッドの上で右腕無しの人が緊張している。緋色が来ると休めないから、もう帰ったら?
「俺のことは気にするな。」
そう言って俺の額にちゅってする。あ、口も。口もちゅーする。
「あれ?緋色殿下?」
生松が食事を持って入ってきた。右腕無しの人が目を覚ましてから二日経っている。
「様子を見に来た。どうだ?」
「順調に回復してますよ。お粥も全て食べられるようになったし、雑炊にしてもらいました。お口に合うといいのですが。」
俺はベッド横の机に置いてもらった雑炊を覗きこむ。熱そうね。ふーふーしてあげるからね。
「そろそろ額のタオルはいらないんじゃないか。成人に任せてたら、びちょびちょだったぞ。」
「あはは。楽しそうだったので任せてましたが、そうですね、そろそろ熱も下がってきましたね。」
そう?まだ熱くない?俺は、右腕無しの人の額に手を置く。んー?分かりにくい。身を乗り出して額に額をくっつけようとしたら、緋色の手が俺の顔をばしっと掴んだ。
「あれ?」
「体温計で計れ。」
「くっつけたら分かるかも。」
「俺以外とくっつけるのは禁止だ。」
「なんで?」
「なんでも。」
ふーん。ま、いいけど。
そのまま俺がベッドから少し離された間に、生松がくすくすと笑いながら右腕無しの人を起こして枕を背中に挟んで座らせた。ベッドの上に机を出して雑炊を乗せ、左手にスプーンを握らせている。
「ご自分で食べられそうですか?」
ゆっくりと頷くのを見て、がっかりする。食べさせてあげるのに。
「がっかりすんな。」
「では、成人は見ていてあげてください。困ったら助けてあげて。殿下は一度出ましょうか。」
「は?」
「殿下がいると、落ち着いて食べられないでしょう。」
そうそう。
後は俺に任せて。
緋色は納得いかない顔で生松に連れていかれた。
右腕無しの人が、ほっとしたのが分かる。何だか下手くそな左手で雑炊を食べ始めた。
「ふーふーしなくていい?」
って聞いたら、ちょっと笑う。
水を飲みながら、何口か食べたけどお粥みたいには食べられなかったみたいで、時間がかかってもあまり減っていなかった。
「雑炊、食べにくい?」
その匂いは広末のご飯じゃないから、濃いのかも?
右腕無しの人は、困ったように笑って、もう少し食べようとする。
「残していいよ。」
「まだ死ねへんから……。」
うつむいた口から、寝言以外の言葉が初めてこぼれた。
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