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第四章 西からの迷い人
13 安息の場所 壱臣
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故郷には居場所は無かった。たぶん、ずっと。
弟を跡取りにしたい継母は、うちのことが邪魔で邪魔で仕方なかったのだ。父は、できる範囲で守ってくれた。だから、生き延びることができたけれど。
忙しい父の目を盗んで仕掛けられる罠は、年齢を重ねる毎に激しさを増した。広い広い城の、どこにも安全な部屋は無くて、厨房へ逃げ込んだのは最終的に正解やったんやろう。
見習い料理人として過ごした日々は、少しだけ楽しかった。調理師免許も取ることができた。
もうこの道で生きていく、と告げたときの父の顔は悲しそうやったけど、お金を持たせて国を出してくれた。世間知らずには、旅をするのも一苦労やったけど、父が付けてくれた護衛の半助が色んなことを教えてくれながら守ってくれて、何とか西と言われる地域を抜けた。
気が緩んだんやろう。
うちも半助も。
襲撃を受けて、命からがら逃げ切ったけど、半助の受けた刃には毒が塗られていたらしい。毒の回った右腕を切り落とし、医者に預けた。うちを狙ってくるのやから、うちがそばに居てはまた命が危ない。半助の意識が無いうちに、更に東へ逃げた。一人で。
人が多い所の方が見つかりにくいかと人の多い方へ向かっていたら、王都にいたらしい。そんなことも分かってなかった。お金にはまだ余裕があるけど、宿に泊まり続けていればいつかは無くなる。
住み込みのできる店を探して、調理師免許を見せれば簡単に雇ってもらうことはできたけど、どうにも味付けが違いすぎて上手くいかず、いくつも解雇された。
思い切って空き店舗を借り、慣れた味付けのままで店を開いてみた。西の醤油や出汁を手に入れるのも大変やったけど、有り金をはたいて勝負に出たのだ。店舗には小さな仮眠部屋があって、そこで寝ることもできた。ほっとした。これで暮らしていける、と。
けど、味付けの違いは全く受け入れてもらえなかった。食べてもらえれば、それなりに受け入れてくれる人もいるやろうと思っていたけど、まさか見た目で味が付いていないと言われるなんて思ってもいなかったのだ。
持ち帰りのだし巻き玉子が少し売れてるくらいじゃ暮らしていけない。それどころか、もうお金に全く余裕は無かった。
そんな頃に、うちの料理を美味しいと食べてくれる子ども達が現れた。作り方を教えてくれ、とまで言ってくれる見習い料理人と、見た目は細いのに二三人前をぺろりと平らげる大食いの子と、左腕が肘までしかなく、左目も傷があり閉じたままの少食で猫舌の小さな子ども。無い腕が、置いてきた半助を思い出させて、つい世話を焼いていた。
手土産を持って帰って宣伝もしてくれたようやけど、うちは店を維持することはできんかった。
それなら一緒に働こうとの見習い料理人村次君の言葉に乗ってみれば、まさかまさかの離宮の中。
皇家の食事を作るなんて聞いてない、と言っても今更や。まさかの緋色殿下の伴侶だった少食な成人君に食べさせることができるだけで合格とは。
綺麗な部屋をもらって、大きなお風呂にのんびり浸かって、ベッドに横になってみれば、いつの間にか深く深く眠っていた。
安心して働いて、風呂に入り清潔なベッドで眠る日々。過分な給料も約束された。離宮の人は、みんな優しい。
成人君の腕を見て半助を思う。
無事やと、伝えたい。
会いたい。
ただ、安心して眠れる場所が欲しかったはずやのに、いざその場をもらってみれば、一人であることが寂しかった。
うちは、なんて欲張りな人間なんやろう……。
弟を跡取りにしたい継母は、うちのことが邪魔で邪魔で仕方なかったのだ。父は、できる範囲で守ってくれた。だから、生き延びることができたけれど。
忙しい父の目を盗んで仕掛けられる罠は、年齢を重ねる毎に激しさを増した。広い広い城の、どこにも安全な部屋は無くて、厨房へ逃げ込んだのは最終的に正解やったんやろう。
見習い料理人として過ごした日々は、少しだけ楽しかった。調理師免許も取ることができた。
もうこの道で生きていく、と告げたときの父の顔は悲しそうやったけど、お金を持たせて国を出してくれた。世間知らずには、旅をするのも一苦労やったけど、父が付けてくれた護衛の半助が色んなことを教えてくれながら守ってくれて、何とか西と言われる地域を抜けた。
気が緩んだんやろう。
うちも半助も。
襲撃を受けて、命からがら逃げ切ったけど、半助の受けた刃には毒が塗られていたらしい。毒の回った右腕を切り落とし、医者に預けた。うちを狙ってくるのやから、うちがそばに居てはまた命が危ない。半助の意識が無いうちに、更に東へ逃げた。一人で。
人が多い所の方が見つかりにくいかと人の多い方へ向かっていたら、王都にいたらしい。そんなことも分かってなかった。お金にはまだ余裕があるけど、宿に泊まり続けていればいつかは無くなる。
住み込みのできる店を探して、調理師免許を見せれば簡単に雇ってもらうことはできたけど、どうにも味付けが違いすぎて上手くいかず、いくつも解雇された。
思い切って空き店舗を借り、慣れた味付けのままで店を開いてみた。西の醤油や出汁を手に入れるのも大変やったけど、有り金をはたいて勝負に出たのだ。店舗には小さな仮眠部屋があって、そこで寝ることもできた。ほっとした。これで暮らしていける、と。
けど、味付けの違いは全く受け入れてもらえなかった。食べてもらえれば、それなりに受け入れてくれる人もいるやろうと思っていたけど、まさか見た目で味が付いていないと言われるなんて思ってもいなかったのだ。
持ち帰りのだし巻き玉子が少し売れてるくらいじゃ暮らしていけない。それどころか、もうお金に全く余裕は無かった。
そんな頃に、うちの料理を美味しいと食べてくれる子ども達が現れた。作り方を教えてくれ、とまで言ってくれる見習い料理人と、見た目は細いのに二三人前をぺろりと平らげる大食いの子と、左腕が肘までしかなく、左目も傷があり閉じたままの少食で猫舌の小さな子ども。無い腕が、置いてきた半助を思い出させて、つい世話を焼いていた。
手土産を持って帰って宣伝もしてくれたようやけど、うちは店を維持することはできんかった。
それなら一緒に働こうとの見習い料理人村次君の言葉に乗ってみれば、まさかまさかの離宮の中。
皇家の食事を作るなんて聞いてない、と言っても今更や。まさかの緋色殿下の伴侶だった少食な成人君に食べさせることができるだけで合格とは。
綺麗な部屋をもらって、大きなお風呂にのんびり浸かって、ベッドに横になってみれば、いつの間にか深く深く眠っていた。
安心して働いて、風呂に入り清潔なベッドで眠る日々。過分な給料も約束された。離宮の人は、みんな優しい。
成人君の腕を見て半助を思う。
無事やと、伝えたい。
会いたい。
ただ、安心して眠れる場所が欲しかったはずやのに、いざその場をもらってみれば、一人であることが寂しかった。
うちは、なんて欲張りな人間なんやろう……。
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