【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

32 お買い物とお仕事  成人

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「新しくできた総合デパートに行きましょう!」

 乙羽おとわの提案に緋色ひいろがうーん、と唸った。
 三雲が運転して、助手席に緋椀ひまり、二列目に緋色ひいろと俺と乙羽おとわ。三列目に常陸丸ひたちまる壱臣いちおみ半助はんすけが乗ったワゴン車はぎゅうぎゅう詰め。三列目、狭そうね。

乙羽おとわ、今回は商店街にしてくれるか。」
「ええ?新しくできたとこに行ってみたかったあ。」
「うーん、捕り物があるかもしれなくてな。新しい建物を壊したくない。」
「え?」
「捕り物って何?」

 建物を壊すようなことするの?じゃあ、商店街も危ないのじゃない?

「外の方が被害が少ないだろ?」
「ねえ、捕り物って何?」
「ああ、うーん。悪い人を捕まえるってことだ。」
「悪い人。」
「そ。俺の大事なもんに手を出そうとする人間。」
「ふーん?」
「気にすんな。お前らは普通に買い物してろ。」
「それはうちらの関係者やろか。」

 壱臣いちおみがおずおずと口を出す。

「まあ、そうだな。」
「すみません。ご迷惑をおかけして。」
「裏仕事のねずみ共は、王城の門の中には入れなかったからお前らを離宮うちから出さないようにしてたんだが。まあ、使用人として王城に入り込んでいるねずみは朱実あけみが把握している。今回のいきなりの外出がバレてるなら、わざと情報を流して外のねずみを俺に捕まえさせる魂胆ってことだ。何かあっても朱実あけみの所為だから気にするな。」
「……はい。」
「それにな、休みの日に外出できないと不便だろ?パンツ買ってこいって怒られるのはもうごめんだぞ。そろそろ、お前らも好きに出掛けられるようにしといた方がいい。」
「商店街、楽しいよ。」

 三列目を振り返ると壱臣いちおみがにこっと笑っていた。

「知っとりますよ。」
「うん。」
「今回はお仕事も兼ねてるなら仕方ないけど、次は総合デパートに行きましょうね。すごく大きくて広いんだって。」
乙羽おとわ。次の休みにとりあえず二人で行こう。」

 常陸丸ひたちまるが言うと乙羽おとわがにこにこした。

「そうね。先に見に行ってパンツがどこにあるか調べておくわ。」
「いや、あの、乙羽おとわさん?パンツは今日買いますんで、しばらくは……。」

 あははは、と笑い声が響く。楽しいな。
 目線をずらすと、半助はんすけがうつむいて静かだ。

半助はんすけ、しんどい?」

 俺が聞いたら、慌てて首を横に振ってぽつりと呟いた。

「……ありがとうございます。おみのこと大事なものて言うてくれて。」

 ん?
 違うよ。

半助はんすけもだよ。」
「え?」
半助はんすけも。」

 半助はんすけは驚きすぎて唖然としている。知らなかったの?半助はんすけもとっくに。

緋色ひいろや俺たちの大事なものだよ。」
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