【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

41 九鬼を継ぐもの 1  一二三

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 皇城の晩餐会に招かれた。
 招待状が届いたときは、母の言う通り何も問題など無かったのだと、少し安堵した。私は、当主から正式に指名されて皇都へと赴いた訳ではなかったからだ。
 第二皇子の結婚式へ出席するにあたり、父が名代みょうだいとして指名したのは従兄の弐角にかくだった。次期当主の指名はまだ行われていないが、人々が集まる大きな行事に名代として送る人物が、当主の意中の者であると誰もが認識するだろう。
 何故、私ではないのか。
 息子ではなく、自身の弟の第二子を指名するなんて。
 父が、いつまでも次期当主の指名をしないのは、兄がいるからだと言われてきた。腹違いの兄。出来損ないだと聞いている。公式な場に姿を現したことはほとんどないため、会ったことがあまりない。
 あれには当主など勤まらない。次期当主は一二三ひふみさましかあり得ない、と周りの者は皆そう言った。期待に応えようと、頑張ったつもりだ。言われるままに勉強して、剣の腕を磨いた。母も母方のお祖父様も、いつも褒めてくれている。
 しかし、しっかりと勉強して高校を卒業したというのに、父は城での仕事を与えてはくれなかった。
 しばらくして、兄が、次期当主指名を辞退して城を出たとの噂を聞いた。
 今度こそ、父は私を呼ぶだろう、と思ったのに、叔父の屋敷に入り浸り、弐角にかくに執務の手解きをしている、と聞こえてきた。
 これは一体、どういうことなのだろう。
 父は、自身より有能な息子に権力を奪われるのを恐れているのだと、母やお祖父様、城に残る家臣はそうやって私に言い聞かせてくれる。
 そうなのだろうか。
 領内は平和で、学校に通っていた頃に聞こえた話では、父はとても民に慕われていた。母やお祖父様の伝えてくる話とずいぶん違う。更に、私があまりにも父に似ていないことで、血筋を疑う声も耳に入る。ほとんど会ったことがない兄や、従兄の弐角にかくは父にそっくりなのだとも。
 何もすることができずに取り残された城で、母は言った。

御方おかたさまが城へお戻りにならないのでしたら、貴方が当主として振る舞えば良いのです。」

 そんな馬鹿な、と思ったが、城の家臣たちは私を当主として扱い始めた。
 そういうものなのだろうか。
 確かに、領地を治めるための城はここであるのに当主が不在なのだから、誰かが名代をせねばならないだろう。それは、自分しかいないように思われた。
 当主の息子として育ってきたのだから。
 そして、何をするのが当主なのかも分からぬまま、城に参内する家臣の挨拶を受けて過ごしている時に、唐突に帰城した父が、赤虎せきとらさまの結婚式へは弐角にかくを名代として送る、と家臣たちへ向けて通達した。
 式は、まだまだ先であるが、参列の有無を聞くふみが届いたため正式な返事を送る、とのことだった。
 少数で赴く予定だが、手土産や祝いの品の準備があるため、早めの手配をしてくれ、との指示が幾人かの家臣に下り、あっという間に通達の儀は終わってしまった。
 指示を受けた家臣は、素早く下がっていくし、父もすぐに大広間から下がっていこうとしている。
 下がっていった家臣たちに見覚えは無かった。普段、城へ参内していない者たちなのだろうか。私へ挨拶をしていない者。
 いや、そんなことより。

「お待ちください、父上。」

 私は、必死で父に呼び掛けた。
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