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第四章 西からの迷い人
51 甘いデザートの後には 成人
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「アイスクリーム?」
「皇族の食事に招かれた人だけが食べられる、幻のデザート。自慢できますね。」
弐角に答えたのは力丸。
「え?幻?」
「うん。城でしか出されないから、どんな金持ちがお金を出しても食べられない。城の食事にたまに付くデザートだから。」
「へええ。内緒のレシピ?」
「そうそう。」
「え、もしかして、俺も頂けるんやろか?」
「もちろん、才蔵のもあるよ。」
「わ、若……。俺、来て良かった……。何かあったら絶対、生きて帰れへんって、この家の人が一人増える度に思たけど、来て良かったー。」
才蔵が何か半泣きになってる。
「え?何かって何?物騒だなあ。」
「だって、招かれたの、城ちゃうし、他の人、城に入っていくし、俺一人やし、若だけは何とか逃がさなあかんと思って……。」
「大袈裟なんだよ。殿下は、臣に会わせてくれただけやろ。」
「若はこんなんやし。」
「まあ、良かったじゃん?」
力丸が腕を伸ばして、ぽんぽんと才蔵の頭を撫でた。
あれ?俺まだ全然食べられてないのに、アイスクリームが出てきてる。
いいなあ。俺もアイスクリーム食べたい。ご飯を全部食べたら入らなくなる気がするんだよ。
才蔵がアイスクリームを恐る恐る口に入れて、声もなく驚いている。弐角も、一口食べてびっくりして、しげしげとアイスクリームの器を持ち上げて眺めていた。
「早く食べないと溶けるよ。」
力丸に言われて、それでも少しずつ口に運んでいる。だんだん才蔵が、にこにこしてきた。分かる。美味しいよね。
二人を見ている俺の口には、炊いた野菜が運ばれている。俺、自分の箸を置いてしまってた。緋色はアイスクリーム食べないから、今、俺に食べさせながらお客様の様子を見ているみたいだった。
弐角がこちらを見ながら、しみじみと言った。
「緋色殿下は、意外と世話焼きなんですね。臣も半助も助けてもろて、こうして招いて頂いて……。噂なんて当てにならんもんやな。」
「噂?」
「恐いお方やと、お聞きしとりました。」
「その噂、間違ってないと思いますよ。」
力丸が弐角に答えている。
「九鬼の城、落としに行かなかったのは朱実殿下に、やめてくれと頼まれたからです。あと、あまりに相手が弱かったから、出掛けるのも面倒臭いって。」
「え?」
「命拾いしましたね。」
ほんとに良かったよね。弐角が壱臣と仲良しって分かったし、もう大丈夫。
「それは、つまり……。」
「とっくに逆鱗に触れてます。」
「九鬼が、ですか?」
「いや?違ったみたいで何より。」
あ、のんびり食べてた一二三も、アイスクリームもらって嬉しそうに笑ってる。甘いもの、好きなのかなあ。
俺もアイスクリーム食べたい。
「弐角。」
「は。」
緋色の呼びかけに、弐角が背筋を伸ばした。
「赤虎が、披露宴の招待券を二通送ったらしいが、伴侶も婚約者もいないなら九鬼は一人参加だな。」
「え?二通……?あ、いえ。ええ。俺は一人で参加する予定でおりました。」
「そうか。最終確認を頼まれていた。」
「な、何ですって?」
ずっと、食事もせずに黙ってその場を睨み付けていた綾女が、急に声を上げる。
「九鬼からは、一二三さんが参ります!そこの傍系やない、殿の子が参りますとも。」
「皇族の食事に招かれた人だけが食べられる、幻のデザート。自慢できますね。」
弐角に答えたのは力丸。
「え?幻?」
「うん。城でしか出されないから、どんな金持ちがお金を出しても食べられない。城の食事にたまに付くデザートだから。」
「へええ。内緒のレシピ?」
「そうそう。」
「え、もしかして、俺も頂けるんやろか?」
「もちろん、才蔵のもあるよ。」
「わ、若……。俺、来て良かった……。何かあったら絶対、生きて帰れへんって、この家の人が一人増える度に思たけど、来て良かったー。」
才蔵が何か半泣きになってる。
「え?何かって何?物騒だなあ。」
「だって、招かれたの、城ちゃうし、他の人、城に入っていくし、俺一人やし、若だけは何とか逃がさなあかんと思って……。」
「大袈裟なんだよ。殿下は、臣に会わせてくれただけやろ。」
「若はこんなんやし。」
「まあ、良かったじゃん?」
力丸が腕を伸ばして、ぽんぽんと才蔵の頭を撫でた。
あれ?俺まだ全然食べられてないのに、アイスクリームが出てきてる。
いいなあ。俺もアイスクリーム食べたい。ご飯を全部食べたら入らなくなる気がするんだよ。
才蔵がアイスクリームを恐る恐る口に入れて、声もなく驚いている。弐角も、一口食べてびっくりして、しげしげとアイスクリームの器を持ち上げて眺めていた。
「早く食べないと溶けるよ。」
力丸に言われて、それでも少しずつ口に運んでいる。だんだん才蔵が、にこにこしてきた。分かる。美味しいよね。
二人を見ている俺の口には、炊いた野菜が運ばれている。俺、自分の箸を置いてしまってた。緋色はアイスクリーム食べないから、今、俺に食べさせながらお客様の様子を見ているみたいだった。
弐角がこちらを見ながら、しみじみと言った。
「緋色殿下は、意外と世話焼きなんですね。臣も半助も助けてもろて、こうして招いて頂いて……。噂なんて当てにならんもんやな。」
「噂?」
「恐いお方やと、お聞きしとりました。」
「その噂、間違ってないと思いますよ。」
力丸が弐角に答えている。
「九鬼の城、落としに行かなかったのは朱実殿下に、やめてくれと頼まれたからです。あと、あまりに相手が弱かったから、出掛けるのも面倒臭いって。」
「え?」
「命拾いしましたね。」
ほんとに良かったよね。弐角が壱臣と仲良しって分かったし、もう大丈夫。
「それは、つまり……。」
「とっくに逆鱗に触れてます。」
「九鬼が、ですか?」
「いや?違ったみたいで何より。」
あ、のんびり食べてた一二三も、アイスクリームもらって嬉しそうに笑ってる。甘いもの、好きなのかなあ。
俺もアイスクリーム食べたい。
「弐角。」
「は。」
緋色の呼びかけに、弐角が背筋を伸ばした。
「赤虎が、披露宴の招待券を二通送ったらしいが、伴侶も婚約者もいないなら九鬼は一人参加だな。」
「え?二通……?あ、いえ。ええ。俺は一人で参加する予定でおりました。」
「そうか。最終確認を頼まれていた。」
「な、何ですって?」
ずっと、食事もせずに黙ってその場を睨み付けていた綾女が、急に声を上げる。
「九鬼からは、一二三さんが参ります!そこの傍系やない、殿の子が参りますとも。」
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