【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

134 大人の時間 2  緋色

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八朔はっさくに逆心あり。家門取り潰しの上、一族郎党皆罪人の扱いとし、相応の処分を下す。全ては決定事項である。」

 俺を上座に据えたため、一段下がった場所に座っていた壱鷹いちたかの声には、ただ事実を淡々と告げる響きがあった。
 ざわ、と部屋が揺れる。流石に分かりやすく声を漏らす者はいないが、驚きは隠せない。

「すでに通達済みではあるが、改めて次期当主として弐角にかくを紹介しよう。弐藤にふじに預かってもらっていた我が子である。今後はこの城で暮らす。見知りおきのほど、よろしく頼む。弐角にかくの兄の壱臣いちおみは、料理人として皇国の緋色ひいろ殿下の屋敷にお仕えすることとなったため、城を出る。」

 羽織袴姿の壱鷹いちたかと同列に並んで家臣の方を向いていた、同じく羽織袴姿の弐角にかくと、弐角にかくに借りた背広姿の壱臣いちおみが良く似た顔で軽く頷く。
 その瓜二つな顔に、思わず声の出た者もいるのだろう。ざわめきは更に大きくなった。

「さて、何か異議があれば聞こう。」

 まず声を上げたのは、真ん中に置かれている罪人の一人だった。八朔はっさくの跡取りだった者か。

「然るべき手続きもなく家門取り潰しが決定事項とは、君主の横暴が過ぎまする。この事態こそ九鬼くきは君主足り得ずとのあかし。」
此度こたびの皇都への招待、私が誰を名代みょうだいとすると言うたか覚えておろうか。八朔はっさくの娘とその孫は、ぞろぞろと恥さらしにも大勢の者を連れて皇都を訪れ名代みょうだいを騙り、皇家の方々にまでご迷惑をおかけした。その罪、まことに許しがたし。私は許可を出しておらぬというのに、どのような経緯で九鬼くきの紋の入った車を使用して、九鬼くきの財産を使って旅をしたものか。八朔はっさくの名を冠していた者どもの処遇の決定と共に、その辺りの話を聞かせてもらう故、皆にはしばらく城に滞在してもらいたく思う。」

 家臣の中の幾人かの顔色が悪くなり、きょろきょろと辺りを見回す姿も見られる。不正に関わった心当たりのある者なのだろう。

「恐れながらお尋ねいたします。」
「ふむ。何なりと。」
八朔はっさく当主、与市よいちさまは何処いずこにおわしますか。」
「怪我をして寝込んでおる。」
一昨日おとつい出会った時には非常にお元気な様子でいはりましたが。」
「怪我の経緯を知りたいんか?城においでくだされた緋色ひいろ殿下の前に勝手にまかりこし、自分が城の主だと名乗ったので、不審者として撃たれたんや。」

 尋ねた家臣は息を飲んだ。

「か、勝手に……とは……?」
「私の許可を得ていない全てのことは、勝手であろう。ここは九鬼くきの城であり、治めるは九鬼くき壱鷹いちたかである。名代みょうだいを務められるは、我が子壱臣いちおみ弐角にかくのみ。各々おのおのがた、努々ゆめゆめ忘れるな!」
「は、ははっ。」
「ははあ。」

 幾つかの声が重なり、家臣たちが自然と頭を下げるのが見えた。
 
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