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第五章 それは日々の話
16 治療 2 緋色
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「他には?」
生松は成人の強張りに気付かず、手を離すと話を続けた。
「ラジオの音」
「そう。それは何故?」
「んー。指令に似てるから」
「指令?」
「頭にくる命令。ざざってなるときがあって、何か音が、箱に入ってる時に聞こえるみたいな音で、似てる」
「そうですか。今は、指令は聞こえない?」
「うん。ない」
嬉しそうに、にこっと笑う。
「静かで、いい」
頭に勝手に流れてくる命令か。うるさそうだな。
「それは良かった。他には?」
「んー?点滴?」
「ああ。苦手ですねえ」
「うん。薬とか注射とか嫌だ」
「それは何故?」
「うーん、壊れるかもしれないから」
ぐ、と抱いている腕に力を込めてしまった。ん?と振り返る成人に、しまったと少し力を緩める。壊れる、なんて言わなくなっていたのに、また……。生松に目で制されて口を固く閉じる。
「そうですか。おかしな話ですね。薬も注射も点滴も、体の異常を治すためにするというのに」
「……そう、だけど」
「治らなかった方を見たことがあったのかな?それなら嫌になりますね」
「うん、そう。苦しくなったり、変になったり、する、から……」
成人の呼吸が浅くなる。
「成人。息をゆっくり吐いて。そう。ゆっくり吸って……」
差し出された水を受け取りストローで少し飲んで落ち着いた。
「私は絶対に、成人を苦しめたりしませんよ?ね?」
「うん」
力強く頷く。
「知ってる。でも、ちょっと怖い」
「もっと信じてもらえるように頑張りますね」
「んーん。信じてる。点滴したら、苦しくなくなるって知ってる」
「ありがとうございます」
「お風呂も嫌じゃなくなった。点滴も嫌じゃなくなるかも」
「おや。お風呂は嫌じゃなくなったんですね」
やはり、風呂は……。
「好き。あったかい。気持ちいい」
「お一人で入られたことはありますか?」
「……?お風呂は誰かと行く。俺は緋色と行く」
「そう」
「緋色とだけ入る」
「それは何故?」
「緋色としかしたくないから」
「……?お風呂は体を綺麗にして疲れを取るためのものですよ?」
「お風呂で綺麗にしてもらったら、綺麗にしてくれた人と痛くて気持ち悪いことしなくちゃならない」
「……ああ」
生松は笑みを浮かべたまま一度、深呼吸をした。
「このおうちでは、そんなことはないです。殿下もそんなことなさらないでしょう?」
「緋色は気持ちいいことしかしない」
にひゃ、と笑う顔に、生松が苦笑いを浮かべる。
「はいはい。そうでしょうとも」
生松は成人の強張りに気付かず、手を離すと話を続けた。
「ラジオの音」
「そう。それは何故?」
「んー。指令に似てるから」
「指令?」
「頭にくる命令。ざざってなるときがあって、何か音が、箱に入ってる時に聞こえるみたいな音で、似てる」
「そうですか。今は、指令は聞こえない?」
「うん。ない」
嬉しそうに、にこっと笑う。
「静かで、いい」
頭に勝手に流れてくる命令か。うるさそうだな。
「それは良かった。他には?」
「んー?点滴?」
「ああ。苦手ですねえ」
「うん。薬とか注射とか嫌だ」
「それは何故?」
「うーん、壊れるかもしれないから」
ぐ、と抱いている腕に力を込めてしまった。ん?と振り返る成人に、しまったと少し力を緩める。壊れる、なんて言わなくなっていたのに、また……。生松に目で制されて口を固く閉じる。
「そうですか。おかしな話ですね。薬も注射も点滴も、体の異常を治すためにするというのに」
「……そう、だけど」
「治らなかった方を見たことがあったのかな?それなら嫌になりますね」
「うん、そう。苦しくなったり、変になったり、する、から……」
成人の呼吸が浅くなる。
「成人。息をゆっくり吐いて。そう。ゆっくり吸って……」
差し出された水を受け取りストローで少し飲んで落ち着いた。
「私は絶対に、成人を苦しめたりしませんよ?ね?」
「うん」
力強く頷く。
「知ってる。でも、ちょっと怖い」
「もっと信じてもらえるように頑張りますね」
「んーん。信じてる。点滴したら、苦しくなくなるって知ってる」
「ありがとうございます」
「お風呂も嫌じゃなくなった。点滴も嫌じゃなくなるかも」
「おや。お風呂は嫌じゃなくなったんですね」
やはり、風呂は……。
「好き。あったかい。気持ちいい」
「お一人で入られたことはありますか?」
「……?お風呂は誰かと行く。俺は緋色と行く」
「そう」
「緋色とだけ入る」
「それは何故?」
「緋色としかしたくないから」
「……?お風呂は体を綺麗にして疲れを取るためのものですよ?」
「お風呂で綺麗にしてもらったら、綺麗にしてくれた人と痛くて気持ち悪いことしなくちゃならない」
「……ああ」
生松は笑みを浮かべたまま一度、深呼吸をした。
「このおうちでは、そんなことはないです。殿下もそんなことなさらないでしょう?」
「緋色は気持ちいいことしかしない」
にひゃ、と笑う顔に、生松が苦笑いを浮かべる。
「はいはい。そうでしょうとも」
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