441 / 1,325
第五章 それは日々の話
91 共に過ごした時間が目に見えた 緋色
しおりを挟む
豚カツは、旨かった。ものすごく好みの料理だった。これは、離宮でも作って貰えるようにお願いしよう。
常陸丸も同じ感想だったらしく、一口食べて、うまっ、と呟いた後は、もくもくと食べていた。
乙羽と成人も、海老!と喜んで、一生懸命食べていたし、キャベツの千切りに色々な味のソースをかけて楽しんでいた。そういえば、うちの料理は、火を通してあるものがほとんどだ。生より量が取れるし、お腹に優しいらしい。この二人のための献立は、優しい味がして油が少な目だから、たまにこういう品を食べると刺激があって、旨い、と強く感じるのかもしれない。もちろん、普段のうちの食事に、不満は一切無いが。
「この、ごまだれってのが好き」
「俺も」
二人が気に入ったソースは、ごまの風味がして甘酸っぱい、こっくりとした味のものだ。酸味が少なくて甘味が強いところが好みなのかもしれない。俺は、玉ねぎだれが気に入った。ぽん酢に、玉ねぎを炒めて甘味を出してから入れたもの、かな。常陸丸も、玉ねぎだれをかけている。
「ヒレってのが少し軟らか目なんですね。乙羽、食べてみるか?」
「うん」
躊躇いなく、あ、と小さな口が開く。食べやすく切ってあるヒレカツのひとかけを、更に小さくした常陸丸が、自然な仕草でその口に運んだ。
ん、ん、ん、と頑張って噛んだ乙羽が、美味しい、と笑った所で隣を向くと、成人がわくわくとこちらを見ている。
「食べるか?」
乙羽より咀嚼する力が弱いので、少々心配な硬さだが、何でも食べてみたいと思うようになったのは、いいことだな。
うんうんと頷いて開いた口に、小さなヒレカツを運ぶ。
ぱくりと咥えて、美味しそうに目を細めた。俺にはとても軟らかい肉だが、成人にはやはり少し硬かったようで、一生懸命噛んでいる様子をはらはらと見守る。
「殿下も上手になりましたね」
「ん?」
「食べさせるのが」
常陸丸がまた、ヒレカツを小さくして乙羽に渡しながら言った。
まあ、確かに。最初の頃は、なかなか難しかった。力丸が上手に食べさせている様子に、腹が立ったものだ。世話をされることはあっても、誰かを世話する機会なんてない。末っ子だし。……力丸のやつ、何で世話が上手なんだ?同じ末っ子のくせに。
泉門院家は一族で世話焼きだから、引退した当主たちが武術道場を開いていたな。人の出入りが多く、世話の必要な人間の相手をするのもお手のものってことか。
「美味しかった」
やっと小さなヒレカツを飲み込んだらしい成人が、にこっと笑って味噌汁をふーふーし始める。顎が疲れたか。しばらく味噌汁だな。
成人以外の人間の世話をしようなんて小指の先ほども思わないので、練習もくそもない。上手になったのだとしたら、それは、成人と共にいた時間が積み重なったということだ。
それは、なかなかいいな。
「緋色、美味しい?」
余程、緩んだ顔をしていたらしい。勘違いした成人に、ああ、と頷く。
お前と食べるご飯は、いつだって美味しいぞ。
常陸丸も同じ感想だったらしく、一口食べて、うまっ、と呟いた後は、もくもくと食べていた。
乙羽と成人も、海老!と喜んで、一生懸命食べていたし、キャベツの千切りに色々な味のソースをかけて楽しんでいた。そういえば、うちの料理は、火を通してあるものがほとんどだ。生より量が取れるし、お腹に優しいらしい。この二人のための献立は、優しい味がして油が少な目だから、たまにこういう品を食べると刺激があって、旨い、と強く感じるのかもしれない。もちろん、普段のうちの食事に、不満は一切無いが。
「この、ごまだれってのが好き」
「俺も」
二人が気に入ったソースは、ごまの風味がして甘酸っぱい、こっくりとした味のものだ。酸味が少なくて甘味が強いところが好みなのかもしれない。俺は、玉ねぎだれが気に入った。ぽん酢に、玉ねぎを炒めて甘味を出してから入れたもの、かな。常陸丸も、玉ねぎだれをかけている。
「ヒレってのが少し軟らか目なんですね。乙羽、食べてみるか?」
「うん」
躊躇いなく、あ、と小さな口が開く。食べやすく切ってあるヒレカツのひとかけを、更に小さくした常陸丸が、自然な仕草でその口に運んだ。
ん、ん、ん、と頑張って噛んだ乙羽が、美味しい、と笑った所で隣を向くと、成人がわくわくとこちらを見ている。
「食べるか?」
乙羽より咀嚼する力が弱いので、少々心配な硬さだが、何でも食べてみたいと思うようになったのは、いいことだな。
うんうんと頷いて開いた口に、小さなヒレカツを運ぶ。
ぱくりと咥えて、美味しそうに目を細めた。俺にはとても軟らかい肉だが、成人にはやはり少し硬かったようで、一生懸命噛んでいる様子をはらはらと見守る。
「殿下も上手になりましたね」
「ん?」
「食べさせるのが」
常陸丸がまた、ヒレカツを小さくして乙羽に渡しながら言った。
まあ、確かに。最初の頃は、なかなか難しかった。力丸が上手に食べさせている様子に、腹が立ったものだ。世話をされることはあっても、誰かを世話する機会なんてない。末っ子だし。……力丸のやつ、何で世話が上手なんだ?同じ末っ子のくせに。
泉門院家は一族で世話焼きだから、引退した当主たちが武術道場を開いていたな。人の出入りが多く、世話の必要な人間の相手をするのもお手のものってことか。
「美味しかった」
やっと小さなヒレカツを飲み込んだらしい成人が、にこっと笑って味噌汁をふーふーし始める。顎が疲れたか。しばらく味噌汁だな。
成人以外の人間の世話をしようなんて小指の先ほども思わないので、練習もくそもない。上手になったのだとしたら、それは、成人と共にいた時間が積み重なったということだ。
それは、なかなかいいな。
「緋色、美味しい?」
余程、緩んだ顔をしていたらしい。勘違いした成人に、ああ、と頷く。
お前と食べるご飯は、いつだって美味しいぞ。
1,466
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる