【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

147 悪い子のススメ  成人

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「いつ行こうかな。もう、すぐに行っちゃう?」
「え?いいの?」

 赤ちゃんが大きくなって、お腹が少しふくらんできた赤璃あかりさまの体調も気になるし、そんな急に出かけてもいいのかってことも気になる。雫石しずく母さまは、何をするか、どこへ行くかを何日も前に決めてから、動くようだったから。

「殿下」

 困ったような侍女さんの声が聞こえてそちらを向くと、ふるふると首を横に振っている。
 やっぱり。そんな急に出かけられないよね。俺も、緋色ひいろに聞いて、いいよって言ってもらわないと出かけられないよ。

「はいはい。言ってみただけよ」

 本当に残念そう。

緋色ひいろに聞いてみる?」
「なーんで、緋色ひいろ殿下に……、ああ、なるも許可がないと出られないんだっけ?」
「えーと。緋色ひいろがいいよって言ったら行こ?」
「私は朱実あけみがいいよって言ったらね。ああ、面倒くさい」

 そうか。赤璃あかりさまは朱実あけみ殿下がいいよって言ってからか。

「面倒くさくないよ」

 だって、緋色ひいろ朱実あけみ殿下も俺と赤璃あかりさまを大事に思ってくれてるから、そうやって気にかけてくれてるんだもん。

「なるはもう少し、悪い子になってもいいのよ」
「悪い子?」
「そう、悪い子!緋色ひいろに黙ってお出かけしたり、たくさん食べ過ぎちゃ駄目ーって言われてる物を、お腹いっぱい食べたり」

 それ、風邪引いて寝込むかお腹壊して寝込むやつ。

「後は、そうね。壁に落書きしたり、夜遅くまで起きてたりってのはどう?」

 夜は眠たくなって、いつの間にか寝ちゃうと思う。

「落書きって何?」

 俺は、美容液を馴染ませ終わった手を侍女さんに拭いてもらって、次は櫛で赤璃あかりさまの髪を梳いている。

「落書きは、あれよ。絵や文字を、書いちゃいけないとこに書くことよ」
「何で書いちゃいけないとこに書くの?」
「んー?何でだろ?」

 侍女さんが、んんっと変な声を出した。
 え?とそちらを向くといつもより少し笑った顔で、失礼しました、と言う。

「今、笑ったわね」
「いえ。そろそろお茶と軽食をお持ちしましょう」

 侍女さんが、くるりと背を向けて部屋を出ていった。

「悪い子になるの、大変だね」
「悪い子になるのは簡単だって聞いたんだけど」
「誰に?」
「うーん。学校の先生?」

 覚えてないの?

「何かね、子どもの頃に、悪い子になるのは簡単だから、ならないように自制心を持って過ごしましょう、みたいなことを言われた気がするのよ」
「ふーん」
「どんなのが悪い子なのか、考えるだけで大変だとは思わなかったわ」

 うん。
 とりあえず、悪い子になると、体調を崩しそうだからやめとこ。

 
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